20日は、2024年度関西学院大学ファイターズの初戦。場所は神戸市の王子スタジアム。迎える相手は東の伝統校、慶応。戦後間もなくから、ファイターズとは縁の深かったチームである。
この日は、大学の新入生歓迎行事の一つとして、この春、関西学院大学に入学したばかりの1年生を無料で招待する仕組みが作られたため、ファイターズの応援席は満員。かつて見たことのないほど数のそろったチアリーダーが繰り広げる華やかな応援もあって、試合前からスタンドは盛り上がった。
慶応のキックで試合開始。自陣24ヤードから始まったファイターズの攻撃は、QB柴原が率い、WR辻や五十嵐へのパスとRB伊丹、澤井のランを組み合わせて確実に陣地を進める。あれよあれよという間に相手ゴール前に迫り、仕上げは伊丹が中央を走り抜けてTD。キックも決まって7−0と先行する。
攻撃のリズムがいいと、守備も呼応する。相手がパス攻撃でダウンを更新し、さあ、これから反撃と勢い込んで投じたパスをDB松島が鮮やかにインターセプト。そのまま25ヤードほどを走って相手陣41ヤード付近から再びファイターズの攻撃。思い切りのよいランプレーで攻め、FGで3点を追加して10−0。
得点の上ではファイターズが主導権を握ったように見えるが、相手の士気は全く衰えない。逆に、選手層の厚いファイターズの2度目の攻撃シリーズをFGによる3点に抑えたことで、オレたちも戦いようによっては対等に戦えるぞ、と自信を付けたようにも見える。
案の定、相手QBは、立て続けに長いパスを投げ込んでくる。たとえ通らなくても、3本に1本が通れば陣地は進む、と覚悟を決めたような思い切りのよいパスを連発。一気にTDにまで持ち込み、10−7と追い上げる。
この局面で、チームを落ち着かせたのが昨シーズンから実績のあるRB陣。まずは伊丹が相手の蹴ったボールをセンターライン付近までリターン。続けて澤井が立て続けに中央を突いて陣地を進め、伊丹のラン、棚田へのパスなどで相手ゴールに迫る。第4ダウン残りインチという場面で澤井がTD。16−7とリードを広げる。
後半に入っても、ファイターズ守備陣の防御は堅い。相手QBの思い切りのよいパス攻撃に悩まされながら、素早い動きでそれを防ぎ、陣地は進めさせない。
局面が動いたのは、ファイターズベンチが次々とフレッシュなメンバーを登用してから。その代表が2年生QBリンスコット・トバヤスと1年生WR片桐太陽。リンスコットは昨年、DBとして起用されたが、高校(箕面自由)時代はQBとして活躍した選手。今春、入学したばかりの片桐は大産大附属高校時代、QBやWRとして知られた選手である。昨年、1年生でありながらWR・リターナーとして大活躍した小段選手とコンビを組んでいた選手と言えば、分かりやすいだろう。
僕は今季、上ヶ原のグラウンドで彼の動きを見る機会が何度かあったが、そのたびに上級生が彼の「スーパーキャッチ」を目にして、思わず拍手している場面に遭遇した。この日、彼がグラウンドに姿を見せた瞬間、その時の情景がよみがえり、今日もあのプレーを見せてくれ、と思わず願った。
期待はかなえられた。リンスコットからの長いパスを2本、立て続けにキャッチし、一気に陣地を進めたのである。上ヶ原のグラウンドでの動きを、そのまま初戦で披露出来る度胸のよさにも感動した。
初めての試合で、堂々と振る舞い、自分の持ち味を存分に発揮する。それは、今春入部した同級生はもちろん、上級生にとっても大いに刺激になることだろう。
互いに刺激し、競争することでチームの力が上がっていく。
彼だけではない。今春、ファイターズの門を叩いた新入生には、フットボール未経験者を含め、将来が期待できるメンバーが何人もいる。彼らが片桐の活躍に刺激され、練習に励んで、生き生きと活動してくれる日が楽しみでならない。
2024年04月21日
(1)光が見えた
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| in 2024 Season
2023年12月22日
(19)「強さの源」
関西学院大学ファイターズの強さの源はどこにあるか……。それを問い掛けた記事が甲子園ボウルの前日、朝日新聞阪神版に掲載された。日頃、私が考えていることと全く同じ考え方であり、それをフットボール専門記者が分かりやすく紹介されていることに、心から感動した。
朝日新聞のネットでも配信されたので、読まれた方は少なくないだろう。けれども、阪神版という地域限定の記事であり、未読の方もおられると思うので、記事の大筋を補足の説明も加えて紹介しよう。
アメフットは1プレーごとに次の作戦を決める。攻撃陣は練り上げたプレーを次々に繰り出し、守備陣はそれに対応し、時には仕掛けていく。選手は無制限に交代できるので、誰を起用して追う攻めるか(守るか)という戦略がカギを握る。
当然、相手のデータを集めるスタッフ、戦略を組み立てるコーチ陣、選手の能力を伸ばす練習やトレーニング施設が必要であり、そのための資金も含めた総合力が問われる。そうした問題意識を持って(ファイターズは)「指導者体制の質量の拡大、リクルート網の強化、トレーニングセンターなど施設・財政面の拡充、OB会との連携協力体制の構築」などを挙げ、それを細部まで詰めて実行してきた。
その姿を、指導者としてチームに戻った頃の大村監督の感想として「めちゃくちゃ細かい所まで突き詰めてやってて、これがほかのどのチームにもない関学の強みやなと実感した」と紹介。「めんどくさくても、それと向き合うことで身体能力で負けていてもチームとして勝負できる可能性が出てくる。突き詰めていく文化は非常に大事で、それは社会に出ても生きてくる」と続けている。
続けて筆者は、東京から関学に進学した3年生OL、近藤剣之助選手の言葉を引いて、ファイターズの活動の一端を説明する。
彼は「ボールを持った選手以外の10人の役割分担(アサイメント)が、一つのプレーに対して何通りもあることに驚かされた」「関学では、何でこうなっているか、を大事にする。すると、無限に考え方が膨らむ。強い理由を実感した」という。
巧みな戦術であっても、選手が体現できなければ意味がない。だから関学では1年を通じて各ポジションで基本技術を徹底して積み上げ、戦うための土台を作る。
毎年のように日本1を目指せる環境が整っているから高校の優秀な選手がやってくる。そしてまた、いいチームが出来るという好循環が生まれている、と結ぶ。
筆者は朝日新聞の篠原大輔記者。全盛期の京大ギャングスターズでラインメンの一人として活躍。卒業後は朝日新聞に入社し、アメフットの専門記者として活躍。長くスポーツ部で務め、いまは別の部署に移っているが、土曜と日曜は全てアメフットの取材に捧げるというアメフット愛にあふれた記者である。朝日新聞の読者なら「関学大 最多6連覇」「61得点圧倒 精度高めた攻撃」という大見出しで9面に掲載された甲子園ボウルの記事と見開きになった関西学院大学の全ページカラー広告をご覧になったと思うが、そのコピーを書いた記者でもある、と紹介すれば、その見識の深さが想像できるはずだ。
(この広告は関西学院広報室が大阪本社管内の近畿地区に限定して出稿・掲載したものだが、反響が非常に大きく、東京本社管内(関東地区)の24日付け朝刊に改めて掲載することが急きょ決まったという)
実は、私もこのコラムでこうしたファイターズの魅力を存分に書きたかった。とりわけ長年のライバル校の不祥事が連日のように新聞紙上を賑わせ、大学の課外活動の在り方そのものに社会の関心が集まっているいま、「ちょっと待って。不祥事を起こした大学の例だけで、部活動全体を語らないでほしい。学生を主役にして毎年人材を育て、全国の頂点を極め続けてる部活動もありますよ」「その内容を詳しく紹介しましょうか。学生はもちろん、指導者にとっても目からうろこというような事例がいくらでもありますよ」とこのコラムで声を上げたかった。
けれども、私がこの文章を書いているのはファイターズのホームページ。自画自賛と受け取られがちでもあり、あえて避けてきた。
その隙間を埋めてくれたのが16日付朝日新聞の篠原記者の記事であり、18日付の関西学院大学の全面広告である。ライターの一人として心から感謝します。
(今回を持って今季のコラムは終了します)
朝日新聞のネットでも配信されたので、読まれた方は少なくないだろう。けれども、阪神版という地域限定の記事であり、未読の方もおられると思うので、記事の大筋を補足の説明も加えて紹介しよう。
アメフットは1プレーごとに次の作戦を決める。攻撃陣は練り上げたプレーを次々に繰り出し、守備陣はそれに対応し、時には仕掛けていく。選手は無制限に交代できるので、誰を起用して追う攻めるか(守るか)という戦略がカギを握る。
当然、相手のデータを集めるスタッフ、戦略を組み立てるコーチ陣、選手の能力を伸ばす練習やトレーニング施設が必要であり、そのための資金も含めた総合力が問われる。そうした問題意識を持って(ファイターズは)「指導者体制の質量の拡大、リクルート網の強化、トレーニングセンターなど施設・財政面の拡充、OB会との連携協力体制の構築」などを挙げ、それを細部まで詰めて実行してきた。
その姿を、指導者としてチームに戻った頃の大村監督の感想として「めちゃくちゃ細かい所まで突き詰めてやってて、これがほかのどのチームにもない関学の強みやなと実感した」と紹介。「めんどくさくても、それと向き合うことで身体能力で負けていてもチームとして勝負できる可能性が出てくる。突き詰めていく文化は非常に大事で、それは社会に出ても生きてくる」と続けている。
続けて筆者は、東京から関学に進学した3年生OL、近藤剣之助選手の言葉を引いて、ファイターズの活動の一端を説明する。
彼は「ボールを持った選手以外の10人の役割分担(アサイメント)が、一つのプレーに対して何通りもあることに驚かされた」「関学では、何でこうなっているか、を大事にする。すると、無限に考え方が膨らむ。強い理由を実感した」という。
巧みな戦術であっても、選手が体現できなければ意味がない。だから関学では1年を通じて各ポジションで基本技術を徹底して積み上げ、戦うための土台を作る。
毎年のように日本1を目指せる環境が整っているから高校の優秀な選手がやってくる。そしてまた、いいチームが出来るという好循環が生まれている、と結ぶ。
筆者は朝日新聞の篠原大輔記者。全盛期の京大ギャングスターズでラインメンの一人として活躍。卒業後は朝日新聞に入社し、アメフットの専門記者として活躍。長くスポーツ部で務め、いまは別の部署に移っているが、土曜と日曜は全てアメフットの取材に捧げるというアメフット愛にあふれた記者である。朝日新聞の読者なら「関学大 最多6連覇」「61得点圧倒 精度高めた攻撃」という大見出しで9面に掲載された甲子園ボウルの記事と見開きになった関西学院大学の全ページカラー広告をご覧になったと思うが、そのコピーを書いた記者でもある、と紹介すれば、その見識の深さが想像できるはずだ。
(この広告は関西学院広報室が大阪本社管内の近畿地区に限定して出稿・掲載したものだが、反響が非常に大きく、東京本社管内(関東地区)の24日付け朝刊に改めて掲載することが急きょ決まったという)
実は、私もこのコラムでこうしたファイターズの魅力を存分に書きたかった。とりわけ長年のライバル校の不祥事が連日のように新聞紙上を賑わせ、大学の課外活動の在り方そのものに社会の関心が集まっているいま、「ちょっと待って。不祥事を起こした大学の例だけで、部活動全体を語らないでほしい。学生を主役にして毎年人材を育て、全国の頂点を極め続けてる部活動もありますよ」「その内容を詳しく紹介しましょうか。学生はもちろん、指導者にとっても目からうろこというような事例がいくらでもありますよ」とこのコラムで声を上げたかった。
けれども、私がこの文章を書いているのはファイターズのホームページ。自画自賛と受け取られがちでもあり、あえて避けてきた。
その隙間を埋めてくれたのが16日付朝日新聞の篠原記者の記事であり、18日付の関西学院大学の全面広告である。ライターの一人として心から感謝します。
(今回を持って今季のコラムは終了します)
posted by コラム「スタンドから」 at 01:07| Comment(2)
| in 2023 Season
2023年12月19日
(18)うれし涙の甲子園
関西学院大学ファイターズが17日、甲子園球場で開かれた第78回甲子園ボウルで、関東代表の法政大学を相手に61ー21で圧勝。過去にどのチームも成し遂げたことのない6年連続の優勝を果たした。
18日付け朝日新聞9面には「関学大 最多6連覇」「61得点圧倒 精度高めた攻撃」という大きな見出しが踊り、その詳細を伝えている。これだけでもすごいことなのに、その隣の8面には「史上初の甲子園ボウル6連覇達成」「背負っていたモノを下ろしました」という見出しを付けた関西学院大学の全ページカラー広告が掲載された。グラウンドの真ん中で互いに肩を組み、気合いを入れている選手の姿が映し出されたその紙面を眺めながら、特別な感慨を抱かされた。
スコア以上の圧勝だった。三塁側アルプススタンドの中央で、ファイターズが開設している場内限定の「放送席」近くから応援していても、試合の開始から終了まで、攻守の選手が躍動している姿が大きく見える。自軍の得点シーンだけでなく、得点につながるプレーの一つ一つが夢を運んでくれる。
立ち上がりこそ、相手の思い切ったパスプレーに戸惑ったが、DB東田君の好プレーでそれを防ぎ、攻撃権をつかんでからはファイターズのショータイム。
まずは自陣26ヤードから始まった初の攻撃シリーズ。第1プレーはQB星野君からWR鈴木君へのミドルパス。それがドンピシャで通ってダウン更新。次はRB前島君のランと星野君のキープ。途中、鈴木君への2度目のパスを挟んで再び星野君のラン。相手陣32ヤードに迫ったところで前島君が短いパスを受けて走り、ゴール前18ヤード。そこから今度は星野君が走ってTD。
相手守備陣がランを警戒している場面ではパス。パスを警戒すればラン。双方に目配りしているときには、自身のキーププレー。まさに変幻自在の攻撃であり、日頃の練習で繰り返してきたプレーが面白いように決まる。当然のように、攻守共に盛り上がる。
オフェンスの盛り上がりに呼応して、ディフェンスが発憤する。相手陣24ヤード付近から始まった法政の第1プレーはラン。それをLB海崎君が見事な出足で仕留め、7ヤードのロス。7ヤードのランプレーを挟んだ第3ダウンでは、相手QBの投じたパスにDB高橋君が思い切りよく飛び込んでカット。ここしかないというタイミングで見せたビッグプレーだ。
ディフェンスに好プレーが続けば、攻める方も気合いが乗る。
自陣47ヤード付近から始まったファターズ2度目の攻撃シリーズ。まずはRB伊丹君が5ヤードのラン。守備陣にランアタックを警戒させたところで、星野君がWR五十嵐君へ長いパス。それが見事に決まってTD。わずか2プレー(PATを含めて3プレー)で14−0とリードを広げる。
攻守がかみ合えば、全体の意気が上がる。次の攻撃シリーズこそ陣地を進められなかったが、今度はキッキングチームが役割を果たす。自分たちの蹴ったボールを相手ゴール前1ヤードで押さえ、相手の攻め手を制約したのだ。次のプレー。動きのよいDB東田君がエンドゾーン内でボールキャリアを仕留めてセーフティ。2点を追加して16−0。
第2Qに入ってもファイターズペースで試合が進む。まずはK大西君が32ヤードのフィールドゴールを決めて19−0。次のシリーズでは相手のリターナーがファンブル。それをキッキングチームが押さえて相手ゴール前25ヤード付近からファイターズの攻撃。RB澤井君と伊丹君のランでゴール前13ヤードと進んだところで、今度はQB星野君が走ってTD。26ー0とリードを広げる。
こうなると、守備陣も余裕をもってプレーできる。DB波田君がナイスタックルを見せれば、DLショーン君が長身を利して相手のパスをインターセプト。そのままゴールまで50ヤード近くを走り切ってTD。
今季は足のけがで苦しみ、ほとんど出場機会がなかった選手とは思えないような動きで「ショーンタイム」を演じてくれた。
攻守それぞれが持ち味を発揮して前半だけで33点。後半にも、さらに28点を追加し、終わってみれば61−21。控えのメンバーも下級生たちも次々に出場し、応援席の期待に応えてくれた。ほんの3週間前、関大に悔しい敗戦を喫し、絶望の淵に落とされたチームが、甲子園の晴れ舞台でその悔しさを糧に、見事な試合を見せてくれた。
その象徴が、甲子園ボウルの最優秀選手に選ばれた星野君である。彼が試合後、報道陣のインタビューを終えた後に涙を拭っている姿を見て、これがこの日グラウンドで戦ったチーム全員の涙、うれし涙だと思った。
それは仲間を支え、仲間に支えられて今季を戦ってきたファイターズの全員が共有できる涙でもあろう。関西リーグ最終戦では同点、逆転のチャンスを逃がして関大に敗れ、一瞬、甲子園が見えなくなった。ある時期はコロナ禍に苦しみ、インフルエンザの集団感染にも見舞われた。けがで長期間、試合から離脱せざるを得ない選手も少なくなかった。この日、活躍したメンバーの中にもそういう選手は少なくない。先に挙げたショーン君もこの試合でほぼ完全に復帰。同じく、今季は戦列を離れることが多かった前島君も、この試合では完全復帰。素晴らしい活躍をしてくれた。
星野君もまた、今季はけがに見舞われ、つい先日まではチーム練習にも加われなかった一人である。
そうしたメンバーが今季最後の晴れ舞台で復活し、活躍してくれた。6連覇も嬉しいが、けがで苦しんだ面々が復帰し、甲子園で輝いてくれたことが本当に嬉しかった。
18日付け朝日新聞9面には「関学大 最多6連覇」「61得点圧倒 精度高めた攻撃」という大きな見出しが踊り、その詳細を伝えている。これだけでもすごいことなのに、その隣の8面には「史上初の甲子園ボウル6連覇達成」「背負っていたモノを下ろしました」という見出しを付けた関西学院大学の全ページカラー広告が掲載された。グラウンドの真ん中で互いに肩を組み、気合いを入れている選手の姿が映し出されたその紙面を眺めながら、特別な感慨を抱かされた。
スコア以上の圧勝だった。三塁側アルプススタンドの中央で、ファイターズが開設している場内限定の「放送席」近くから応援していても、試合の開始から終了まで、攻守の選手が躍動している姿が大きく見える。自軍の得点シーンだけでなく、得点につながるプレーの一つ一つが夢を運んでくれる。
立ち上がりこそ、相手の思い切ったパスプレーに戸惑ったが、DB東田君の好プレーでそれを防ぎ、攻撃権をつかんでからはファイターズのショータイム。
まずは自陣26ヤードから始まった初の攻撃シリーズ。第1プレーはQB星野君からWR鈴木君へのミドルパス。それがドンピシャで通ってダウン更新。次はRB前島君のランと星野君のキープ。途中、鈴木君への2度目のパスを挟んで再び星野君のラン。相手陣32ヤードに迫ったところで前島君が短いパスを受けて走り、ゴール前18ヤード。そこから今度は星野君が走ってTD。
相手守備陣がランを警戒している場面ではパス。パスを警戒すればラン。双方に目配りしているときには、自身のキーププレー。まさに変幻自在の攻撃であり、日頃の練習で繰り返してきたプレーが面白いように決まる。当然のように、攻守共に盛り上がる。
オフェンスの盛り上がりに呼応して、ディフェンスが発憤する。相手陣24ヤード付近から始まった法政の第1プレーはラン。それをLB海崎君が見事な出足で仕留め、7ヤードのロス。7ヤードのランプレーを挟んだ第3ダウンでは、相手QBの投じたパスにDB高橋君が思い切りよく飛び込んでカット。ここしかないというタイミングで見せたビッグプレーだ。
ディフェンスに好プレーが続けば、攻める方も気合いが乗る。
自陣47ヤード付近から始まったファターズ2度目の攻撃シリーズ。まずはRB伊丹君が5ヤードのラン。守備陣にランアタックを警戒させたところで、星野君がWR五十嵐君へ長いパス。それが見事に決まってTD。わずか2プレー(PATを含めて3プレー)で14−0とリードを広げる。
攻守がかみ合えば、全体の意気が上がる。次の攻撃シリーズこそ陣地を進められなかったが、今度はキッキングチームが役割を果たす。自分たちの蹴ったボールを相手ゴール前1ヤードで押さえ、相手の攻め手を制約したのだ。次のプレー。動きのよいDB東田君がエンドゾーン内でボールキャリアを仕留めてセーフティ。2点を追加して16−0。
第2Qに入ってもファイターズペースで試合が進む。まずはK大西君が32ヤードのフィールドゴールを決めて19−0。次のシリーズでは相手のリターナーがファンブル。それをキッキングチームが押さえて相手ゴール前25ヤード付近からファイターズの攻撃。RB澤井君と伊丹君のランでゴール前13ヤードと進んだところで、今度はQB星野君が走ってTD。26ー0とリードを広げる。
こうなると、守備陣も余裕をもってプレーできる。DB波田君がナイスタックルを見せれば、DLショーン君が長身を利して相手のパスをインターセプト。そのままゴールまで50ヤード近くを走り切ってTD。
今季は足のけがで苦しみ、ほとんど出場機会がなかった選手とは思えないような動きで「ショーンタイム」を演じてくれた。
攻守それぞれが持ち味を発揮して前半だけで33点。後半にも、さらに28点を追加し、終わってみれば61−21。控えのメンバーも下級生たちも次々に出場し、応援席の期待に応えてくれた。ほんの3週間前、関大に悔しい敗戦を喫し、絶望の淵に落とされたチームが、甲子園の晴れ舞台でその悔しさを糧に、見事な試合を見せてくれた。
その象徴が、甲子園ボウルの最優秀選手に選ばれた星野君である。彼が試合後、報道陣のインタビューを終えた後に涙を拭っている姿を見て、これがこの日グラウンドで戦ったチーム全員の涙、うれし涙だと思った。
それは仲間を支え、仲間に支えられて今季を戦ってきたファイターズの全員が共有できる涙でもあろう。関西リーグ最終戦では同点、逆転のチャンスを逃がして関大に敗れ、一瞬、甲子園が見えなくなった。ある時期はコロナ禍に苦しみ、インフルエンザの集団感染にも見舞われた。けがで長期間、試合から離脱せざるを得ない選手も少なくなかった。この日、活躍したメンバーの中にもそういう選手は少なくない。先に挙げたショーン君もこの試合でほぼ完全に復帰。同じく、今季は戦列を離れることが多かった前島君も、この試合では完全復帰。素晴らしい活躍をしてくれた。
星野君もまた、今季はけがに見舞われ、つい先日まではチーム練習にも加われなかった一人である。
そうしたメンバーが今季最後の晴れ舞台で復活し、活躍してくれた。6連覇も嬉しいが、けがで苦しんだ面々が復帰し、甲子園で輝いてくれたことが本当に嬉しかった。
posted by コラム「スタンドから」 at 08:55| Comment(2)
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2023年12月11日
(17)充実した時間
今、日本の学生フットボール界において、一番充実した時間を過ごしているのは、東の法政、西の関西学院であろう。双方共に、17日に阪神甲子園球場で開催される甲子園ボウルに向けて懸命に努力し、目的を持った練習に励んでいるからだ。
今季のファイターズは、関西学生リーグ最終戦で関西大学に敗れた。その結果、先にリーグ戦を終えていた立命館とあわせ、三校がいずれも6勝1敗で優勝を分け合うことになった。試合後の抽選で甲子園ボウルへの出場権を手にしたのがファイターズ。当然、出場権を逃がしたライバルチームの思いも背負って戦わなけれればならない立場にある。
そういう条件下、師走に入っても関西では唯一、大学王者になるべく「目的を持った時間」を過ごし、「目的を持った練習」に励んでいるのがファイターズである。私の記憶している限りでは、少なくとも5連覇を成し遂げた昨年までのチームは、この期間にさらなる技術を身に付け、新たなパワーを手にして、甲子園ボウルに臨んでいた。とりわけ4年生は毎年、関西リーグで勝ち続けた喜びを一端、棚に上げ、自分たちだけにに与えられた「戦うための時間」を、より有意義に過ごそうと、懸命に取り組んでいた。
別の言い方をすれば、こうした「特別な時間」を与えられた喜びを力に変え、チームが一致結束して戦ったからこそ、それぞれの年次のチームが賜杯を手にし、5連覇という結果を呼び込んだのだろう。
さて、今季のチームはどうか。ライバルチームの面々が今季を終了し、来季への準備をしているこの時期に、関西では唯一許された大学王者への挑戦が出来る「特別な時間」を有効に使えているだろうか。関西リーグで見えた欠点や弱点を克服するために、さらなる努力を重ねているだろうか。
とりわけ4年生にとっては、文字通り今度の試合が最後になる。その試合を悔いなく戦うための準備はできているか。主将や副将だけでなく、それぞれのパートに責任を持つリーダーやプレーヤー。さらにはスタッフも含めて「学生日本一」と呼ばれるにふさわしい行動を重ねているか。
下級生もまた、4年生を助けてチームの底上げを果たす役割を果たさなければならない。スタッフを含め、チームで活動する全員が懸命に働き、チームの底上げに貢献していかなければならない。
そういう貴重な期間がこの3週間であり、その間の活動を通じてチームに新たな「伸びしろ」が生まれる。過去、勝ち続けてきたチームは、そういう「ライバルたちが持てない時間」を生かし切ったからこそ5年連続で学生王者の座に着くことができた。僕はそう考えている。
さて、残すところあと数日。その間に甲子園練習もあるから、自分たちだけが他者の目を気にせず、存分に練習できる時間は限られている。監督やコーチから指摘されるから頑張る、ではなく、自分たちが勝ちたいから、もう一段階上を目指した練習に励む。それが出来るのがファイターズの選手であり、スタッフであるはずだ。
残された時間は短い。それを有意義に使って準備を進めてもらいたい。それは待ったなし、言い分けなしの時間でもある。
今季のファイターズは、関西学生リーグ最終戦で関西大学に敗れた。その結果、先にリーグ戦を終えていた立命館とあわせ、三校がいずれも6勝1敗で優勝を分け合うことになった。試合後の抽選で甲子園ボウルへの出場権を手にしたのがファイターズ。当然、出場権を逃がしたライバルチームの思いも背負って戦わなけれればならない立場にある。
そういう条件下、師走に入っても関西では唯一、大学王者になるべく「目的を持った時間」を過ごし、「目的を持った練習」に励んでいるのがファイターズである。私の記憶している限りでは、少なくとも5連覇を成し遂げた昨年までのチームは、この期間にさらなる技術を身に付け、新たなパワーを手にして、甲子園ボウルに臨んでいた。とりわけ4年生は毎年、関西リーグで勝ち続けた喜びを一端、棚に上げ、自分たちだけにに与えられた「戦うための時間」を、より有意義に過ごそうと、懸命に取り組んでいた。
別の言い方をすれば、こうした「特別な時間」を与えられた喜びを力に変え、チームが一致結束して戦ったからこそ、それぞれの年次のチームが賜杯を手にし、5連覇という結果を呼び込んだのだろう。
さて、今季のチームはどうか。ライバルチームの面々が今季を終了し、来季への準備をしているこの時期に、関西では唯一許された大学王者への挑戦が出来る「特別な時間」を有効に使えているだろうか。関西リーグで見えた欠点や弱点を克服するために、さらなる努力を重ねているだろうか。
とりわけ4年生にとっては、文字通り今度の試合が最後になる。その試合を悔いなく戦うための準備はできているか。主将や副将だけでなく、それぞれのパートに責任を持つリーダーやプレーヤー。さらにはスタッフも含めて「学生日本一」と呼ばれるにふさわしい行動を重ねているか。
下級生もまた、4年生を助けてチームの底上げを果たす役割を果たさなければならない。スタッフを含め、チームで活動する全員が懸命に働き、チームの底上げに貢献していかなければならない。
そういう貴重な期間がこの3週間であり、その間の活動を通じてチームに新たな「伸びしろ」が生まれる。過去、勝ち続けてきたチームは、そういう「ライバルたちが持てない時間」を生かし切ったからこそ5年連続で学生王者の座に着くことができた。僕はそう考えている。
さて、残すところあと数日。その間に甲子園練習もあるから、自分たちだけが他者の目を気にせず、存分に練習できる時間は限られている。監督やコーチから指摘されるから頑張る、ではなく、自分たちが勝ちたいから、もう一段階上を目指した練習に励む。それが出来るのがファイターズの選手であり、スタッフであるはずだ。
残された時間は短い。それを有意義に使って準備を進めてもらいたい。それは待ったなし、言い分けなしの時間でもある。
posted by コラム「スタンドから」 at 21:02| Comment(1)
| in 2023 Season
2023年11月28日
(16)悔しい試合を糧に
26日、吹田市の万博記念競技場で開かれた関西学生アメリカンフットボールの最終戦、関西大との決戦は、16−13で関西大に軍配が上がった。スタンドから応援している限り、両者ともに気力・体力・思考力、そしてチームの結束力の限りを尽くした戦いだと思えたが、そのいずれかで相手がわずかに上回っていたのだろう。相手にとっては歓喜の勝利、ファイターズにとっては悔やんでも悔やみきれぬ結果に終わった。
ちなみに、ファイターズのホームページにアップされている数字を関学サイドから見てみよう。タッチダウンは1本−2本、PATは1本−1本、フィールドゴールは2本、1本。ファーストダウンを成功させた回数は17回−11回、総獲得ヤードは332ヤード−250ヤード、インターセプトをされた回数は0−1。攻撃時間は関学が31分40秒で関大は16分20秒。
すべての記録でファイターズが優っているのに、肝心の得点は13-16。
一体、どういうことだろう。なぜこうした結末を迎えたのだろう。
13-16で迎えた4Q終盤。相手がフィールドゴールを決めて3点をリードした場面から以降の展開を振り返ってみよう。ファイターズの攻撃はRB澤井の好リターンで自陣37ヤード付近から。まずはエースRB伊丹が立て続けに走ってハーフライン付近まで陣地を進める。次はパスで前進かと思ったところでQB鎌田のキーププレー。これが決まって相手陣に進出。次のプレーはTE安藤へのパス。それも決まってダウン更新。さらにRB澤井が相手陣21ヤードまで走り、フィールドゴールを狙える位置までたどり着く。
しかし、相手守備陣も必死である。次のパスプレーで起死回生のタックルを決めてQB鎌田の腕の中からボールをはじき出す。こぼれたボールにファイターズのオフェンス陣が食いつき、なんとか攻撃権を維持するが、このプレーで相手の守備陣が一気に燃え上がった。LBやDBが素早い上がりでファイターズのボールキャリアに向かい、陣地を押し戻す。
残り時間が1分を切って迎えた。第4ダウンの攻撃。相手ゴールは遠く、同点につながるフィールドゴールを決めるには、あまりにもリスクが高い。最後は遠投力のあるQB鎌田から彼が一番信頼するWR鈴木への長いパスしかないという場面。だが、相手もそれを十分に警戒し、二人のDBが連携して守っている。
さて、勝負はいかに、という場面。期待通りゴール中央付近に走り込んだ鈴木にパスが投じられたが、横合いから飛び込んできた相手DBに阻まれ、敗北が事実上、確定した。
両チームともに守備陣が見せ場を作り、攻撃陣が一瞬の隙を突いて陣地を進める。互いに譲らぬ戦いだった。しかしながら、すでに立命館との試合に敗れ、失うモノが何もないという状況でこの試合に臨んだ相手と、立命に勝ち、6勝を挙げて優勝を決めていたファイターズの面々との間には、勝敗にこだわる気持ちの持ちようが微妙に違っていたのかもしれない。その微妙な差異が勝負の明暗を分けたのではないか。
それはこの日、フィールドで戦った選手たち全員が身に染みて感じたことだろう。それこそがチームの財産である。
勝負事は天の時、地の利、人の和によって決まるという。この日は幸い、試合後の抽選会で海崎主将が当たりくじを引き、甲子園ボウルにつながる試合への出場権を獲得してくれた。
確かにこの日の敗戦は悔しい。けれども、再度、学生フットボール界の頂点に挑める機会は与えられた。それは「諸君、もっともっと頑張ってみなさい。自分たちの力で新しいページを開きなさい」という勝負の神様からのお告げであろう。
16−13という結果を胸に刻み、チームに属する全ての人間が協力し、鍛えあって、甲子園ボウル6連覇を目指す。それはファイターズの諸君だけに与えられたチャンスである。このギフトを生かそうではないか。
ちなみに、ファイターズのホームページにアップされている数字を関学サイドから見てみよう。タッチダウンは1本−2本、PATは1本−1本、フィールドゴールは2本、1本。ファーストダウンを成功させた回数は17回−11回、総獲得ヤードは332ヤード−250ヤード、インターセプトをされた回数は0−1。攻撃時間は関学が31分40秒で関大は16分20秒。
すべての記録でファイターズが優っているのに、肝心の得点は13-16。
一体、どういうことだろう。なぜこうした結末を迎えたのだろう。
13-16で迎えた4Q終盤。相手がフィールドゴールを決めて3点をリードした場面から以降の展開を振り返ってみよう。ファイターズの攻撃はRB澤井の好リターンで自陣37ヤード付近から。まずはエースRB伊丹が立て続けに走ってハーフライン付近まで陣地を進める。次はパスで前進かと思ったところでQB鎌田のキーププレー。これが決まって相手陣に進出。次のプレーはTE安藤へのパス。それも決まってダウン更新。さらにRB澤井が相手陣21ヤードまで走り、フィールドゴールを狙える位置までたどり着く。
しかし、相手守備陣も必死である。次のパスプレーで起死回生のタックルを決めてQB鎌田の腕の中からボールをはじき出す。こぼれたボールにファイターズのオフェンス陣が食いつき、なんとか攻撃権を維持するが、このプレーで相手の守備陣が一気に燃え上がった。LBやDBが素早い上がりでファイターズのボールキャリアに向かい、陣地を押し戻す。
残り時間が1分を切って迎えた。第4ダウンの攻撃。相手ゴールは遠く、同点につながるフィールドゴールを決めるには、あまりにもリスクが高い。最後は遠投力のあるQB鎌田から彼が一番信頼するWR鈴木への長いパスしかないという場面。だが、相手もそれを十分に警戒し、二人のDBが連携して守っている。
さて、勝負はいかに、という場面。期待通りゴール中央付近に走り込んだ鈴木にパスが投じられたが、横合いから飛び込んできた相手DBに阻まれ、敗北が事実上、確定した。
両チームともに守備陣が見せ場を作り、攻撃陣が一瞬の隙を突いて陣地を進める。互いに譲らぬ戦いだった。しかしながら、すでに立命館との試合に敗れ、失うモノが何もないという状況でこの試合に臨んだ相手と、立命に勝ち、6勝を挙げて優勝を決めていたファイターズの面々との間には、勝敗にこだわる気持ちの持ちようが微妙に違っていたのかもしれない。その微妙な差異が勝負の明暗を分けたのではないか。
それはこの日、フィールドで戦った選手たち全員が身に染みて感じたことだろう。それこそがチームの財産である。
勝負事は天の時、地の利、人の和によって決まるという。この日は幸い、試合後の抽選会で海崎主将が当たりくじを引き、甲子園ボウルにつながる試合への出場権を獲得してくれた。
確かにこの日の敗戦は悔しい。けれども、再度、学生フットボール界の頂点に挑める機会は与えられた。それは「諸君、もっともっと頑張ってみなさい。自分たちの力で新しいページを開きなさい」という勝負の神様からのお告げであろう。
16−13という結果を胸に刻み、チームに属する全ての人間が協力し、鍛えあって、甲子園ボウル6連覇を目指す。それはファイターズの諸君だけに与えられたチャンスである。このギフトを生かそうではないか。
posted by コラム「スタンドから」 at 19:59| Comment(6)
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2023年11月13日
(15)決戦!ヤンマースタジアム
11日は立命館との決戦。関西リーグの試合を克明に追っている観戦仲間によれば、今季の学生フットボール界では、実力No.1ではないかという強敵である。
彼の言葉を借りれば「2年生のQBが素晴らしい。パスも一流だし、自分でも走れる。RBにはスピードでぶっちぎれるメンバーがいるので、一発TDの怖さが常にある」という。
そんな相手にファイターズはどう対応するか。攻撃では自分たちの長所を最大限に発揮し、守備では相手の長所を無効化できればベストだが、そうは問屋が卸さない。ベンチが知恵を絞って作戦を練り、それを全ての選手が完璧に実行する。そこから道が開ける。さて、その作戦は?と、メンバー表をチェックしながらキックオフを待った。
ファイターズのレシーブで試合開始。しかし、最初の攻撃シリーズはダウンを更新できず、簡単に攻撃権が相手に移る。これはしんどい試合になるぞ、と思った瞬間、相手RBが最初のプレーでファンブル。相手ゴール前12ヤードという絶好の位置でファイターズに攻撃権が移る。
よっしゃ、行け!と、周囲の応援席から声が上がる。その声が届く前に、グラウンドではQB星野が相手ゴールに駆け込んだTE安藤にふわっとしたパス。それが見事に通ってTD。相手のミスを逃さずに先制点につなげた。
立命の次の攻撃は、相手陣30ヤード付近から。スピードのある相手リターナーの独走を防ぐため、あえて奥深くまでは蹴らなかったのでしょう、とスタンドの放送席でファイターズファンに向けた放送をされていたディレクターの小野宏さんが解説されている。
なるほど、と頷きながら見つめた立命の攻撃。その第1プレーで相手QBが投じたパスをDB中野がインターセプト、一気に相手ゴール前まで走り込む。
わずか1プレーで攻守交代。それも相手ゴール前10数ヤードの好位置。この好機に体重90`、突破力抜群のRB大槻がボールを託された。期待に違わず、2度のランで相手ゴールに突入。チームとして2本目のTDに仕上げ、K大西のキックも決まって14−0とリードを広げる。
しかし立命の攻撃陣には突破力がある。スピードのあるRB、どこへでも自在にパスを投じるQB。双方の威力を見せつけながら攻め込むから、守備陣は大変だ。なんとかその攻撃をファイターズ守備陣が食い止め、フィールドゴールの3点を与えただけでしのぐ。
立命は第2Qの次のシリーズも強力なランであっという間に関学のゴール前に迫る。一気にエンドゾーンを落とされるかと覚悟したが、ここからファイターズ守備陣が粘って、最後は4thダウンのギャンブルプレーをロスタックルで阻止した。
守備陣の頑張りに応えたのがQBの星野。直後の自陣6ヤードからの攻撃で、ロングパスをヒットさせて敵陣に侵入し、その後はランプレーで陣地を進め、残る12ヤードを自身が走りきってTD。21−3と突き放す。今季はけがや病気のため、練習もままならない状態が続いていたが、ようやく回復。自在にフィールドを駆け巡った。その姿を見ながら、決戦を前に、よくぞ戻ってきてくれたと胸をなで下ろす。
胸をなで下ろすといえば、ディフェンスのキーマン、ショーンも今季初めてフィールドに立ってくれた。ほんの短い時間の出場にとどまったが、その長身を生かしたセンスあふれるプレーは健在。大事な場面で相手のパスをカットするなど期待に違わぬプレーを見せてくれた。難敵・立命が相手だけに、完全回復近しというプレーに、ファンの一人としてほっとした。
そうこうしているうちに前半は終了。あっという間に後半に入ったが、双方の我慢比べは続く。立命はQBを中心にランとパスを組み合わせた堂々たる攻めを繰り返すが、ファイターズ守備陣が的確に反応し、なかなか陣地を進めさせない。ファイターズもまたランとパスを組み合わせたプレーで陣地を進めるが、TDを奪うところまでは攻めきれない。
第3Qも半ば近くなったところでファイターズがFGを決め24−3。ようやく優位に立ったと思った瞬間、今度は立命が反撃。ランとパスをたくみに組み合わせて陣地を進め、残り2分を切ったところでTD、14点差に迫る。
並の相手なら14点の差があれば、そんなに心配することはない。けれども、目の前で切れの良いプレーを展開する相手のオフェンスを見ていると、とても安全圏とは思えない。
そんな流れを断ち切ったのがDB中野。相手QBがサイドライン際に投じたショートパスを奪い取り、そのまゴールまで64ヤードを駆け込んでTD。31−10と引き離す。彼自身、この日2本目のインターセプトが、そのまま相手の息の根を止めた。
けれども、スタンドから見ている限り、双方の実力に、この得点差ほどの差はなかったように思える。攻守ともに決定力を持ったライバルを相手に攻守蹴がかみ合ったからこその勝利であろう。
2年生QBを守り切ったオフェンスライン、たぐいまれな能力を有する相手オフェンスの勢いを1列目、2列目、3列目が互いにカバーし、助け合ってそいだ守備陣。数少ない得点チャンスを確実に得点に結びつけたQB星野とRB、WR陣。さらに言えば、普段の練習時から彼らの長所、短所を掌握し、それぞれの長所が生きるような選手起用、プレー選択を続けた監督、コーチ陣。まさに総力を挙げてつかんだ勝利である。
リーグ戦も残り1試合。しかし、相手の関大には昨シーズン、悔しい思いをさせられている。この日、活躍の場がなかったメンバーを含め、チームが一丸となってその雪辱を期し、完全優勝を目指してさらなる努力を重ねてもらいたい。
彼の言葉を借りれば「2年生のQBが素晴らしい。パスも一流だし、自分でも走れる。RBにはスピードでぶっちぎれるメンバーがいるので、一発TDの怖さが常にある」という。
そんな相手にファイターズはどう対応するか。攻撃では自分たちの長所を最大限に発揮し、守備では相手の長所を無効化できればベストだが、そうは問屋が卸さない。ベンチが知恵を絞って作戦を練り、それを全ての選手が完璧に実行する。そこから道が開ける。さて、その作戦は?と、メンバー表をチェックしながらキックオフを待った。
ファイターズのレシーブで試合開始。しかし、最初の攻撃シリーズはダウンを更新できず、簡単に攻撃権が相手に移る。これはしんどい試合になるぞ、と思った瞬間、相手RBが最初のプレーでファンブル。相手ゴール前12ヤードという絶好の位置でファイターズに攻撃権が移る。
よっしゃ、行け!と、周囲の応援席から声が上がる。その声が届く前に、グラウンドではQB星野が相手ゴールに駆け込んだTE安藤にふわっとしたパス。それが見事に通ってTD。相手のミスを逃さずに先制点につなげた。
立命の次の攻撃は、相手陣30ヤード付近から。スピードのある相手リターナーの独走を防ぐため、あえて奥深くまでは蹴らなかったのでしょう、とスタンドの放送席でファイターズファンに向けた放送をされていたディレクターの小野宏さんが解説されている。
なるほど、と頷きながら見つめた立命の攻撃。その第1プレーで相手QBが投じたパスをDB中野がインターセプト、一気に相手ゴール前まで走り込む。
わずか1プレーで攻守交代。それも相手ゴール前10数ヤードの好位置。この好機に体重90`、突破力抜群のRB大槻がボールを託された。期待に違わず、2度のランで相手ゴールに突入。チームとして2本目のTDに仕上げ、K大西のキックも決まって14−0とリードを広げる。
しかし立命の攻撃陣には突破力がある。スピードのあるRB、どこへでも自在にパスを投じるQB。双方の威力を見せつけながら攻め込むから、守備陣は大変だ。なんとかその攻撃をファイターズ守備陣が食い止め、フィールドゴールの3点を与えただけでしのぐ。
立命は第2Qの次のシリーズも強力なランであっという間に関学のゴール前に迫る。一気にエンドゾーンを落とされるかと覚悟したが、ここからファイターズ守備陣が粘って、最後は4thダウンのギャンブルプレーをロスタックルで阻止した。
守備陣の頑張りに応えたのがQBの星野。直後の自陣6ヤードからの攻撃で、ロングパスをヒットさせて敵陣に侵入し、その後はランプレーで陣地を進め、残る12ヤードを自身が走りきってTD。21−3と突き放す。今季はけがや病気のため、練習もままならない状態が続いていたが、ようやく回復。自在にフィールドを駆け巡った。その姿を見ながら、決戦を前に、よくぞ戻ってきてくれたと胸をなで下ろす。
胸をなで下ろすといえば、ディフェンスのキーマン、ショーンも今季初めてフィールドに立ってくれた。ほんの短い時間の出場にとどまったが、その長身を生かしたセンスあふれるプレーは健在。大事な場面で相手のパスをカットするなど期待に違わぬプレーを見せてくれた。難敵・立命が相手だけに、完全回復近しというプレーに、ファンの一人としてほっとした。
そうこうしているうちに前半は終了。あっという間に後半に入ったが、双方の我慢比べは続く。立命はQBを中心にランとパスを組み合わせた堂々たる攻めを繰り返すが、ファイターズ守備陣が的確に反応し、なかなか陣地を進めさせない。ファイターズもまたランとパスを組み合わせたプレーで陣地を進めるが、TDを奪うところまでは攻めきれない。
第3Qも半ば近くなったところでファイターズがFGを決め24−3。ようやく優位に立ったと思った瞬間、今度は立命が反撃。ランとパスをたくみに組み合わせて陣地を進め、残り2分を切ったところでTD、14点差に迫る。
並の相手なら14点の差があれば、そんなに心配することはない。けれども、目の前で切れの良いプレーを展開する相手のオフェンスを見ていると、とても安全圏とは思えない。
そんな流れを断ち切ったのがDB中野。相手QBがサイドライン際に投じたショートパスを奪い取り、そのまゴールまで64ヤードを駆け込んでTD。31−10と引き離す。彼自身、この日2本目のインターセプトが、そのまま相手の息の根を止めた。
けれども、スタンドから見ている限り、双方の実力に、この得点差ほどの差はなかったように思える。攻守ともに決定力を持ったライバルを相手に攻守蹴がかみ合ったからこその勝利であろう。
2年生QBを守り切ったオフェンスライン、たぐいまれな能力を有する相手オフェンスの勢いを1列目、2列目、3列目が互いにカバーし、助け合ってそいだ守備陣。数少ない得点チャンスを確実に得点に結びつけたQB星野とRB、WR陣。さらに言えば、普段の練習時から彼らの長所、短所を掌握し、それぞれの長所が生きるような選手起用、プレー選択を続けた監督、コーチ陣。まさに総力を挙げてつかんだ勝利である。
リーグ戦も残り1試合。しかし、相手の関大には昨シーズン、悔しい思いをさせられている。この日、活躍の場がなかったメンバーを含め、チームが一丸となってその雪辱を期し、完全優勝を目指してさらなる努力を重ねてもらいたい。
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2023年11月10日
(14)初めてのフットボール記事
職業として新聞記事を書き始めたのは、1968年3月。長野県にある信濃毎日新聞社に入社した翌日のことだ。そこで2年9カ月勤めて朝日新聞社に転職。60歳の定年まで勤めた後、和歌山県にある紀伊民報に再就職し、今年3月末まで一途に記事を書き続けてきた。
けれども、新聞にフットボールに関係する記事を書いたことは、数えるほどしかない。信濃毎日新聞では地方支局の勤務経験しかなく、朝日新聞では社会部関係の取材、紀伊民報では編集の責任者として論説やコラムを書いてきたからだ。
野球が好きだったから、それでも野球に関係する記事やコラムを書く機会は少なくなかった。いま話題の阪神タイガースに関係する記事も、その昔、阪神支局や大阪の社会部で働いているときに何本も書いている。
阪神支局で働いていた1975年11月には、人気絶頂の江夏投手が秋季練習中の甲子園球場に病いに苦しむ小学生を招き、「学校に通えるようになったら、試合で使うボールをプレゼントします」と約束していた「約束のボール」を手渡して励ました話題を特ダネとして社会面のトップに書いた。これは社内の特別の賞を受けたし、1985年に優勝して日本一になった時には、これまた社会面のトップに「生きててよかった」という大見出しの躍る記事を書いた。
2003年には「週刊朝日」から依頼されて、シーズンの優勝が決まるはるか前の7月15発行の「阪神優勝」と銘打った増刊号に「伊勢神宮で20年に一度、行われる遷宮という聖なる神事と同じように、タイガースもまた、20年単位で応援しなければやっていけないチームである。(中略)試合のたびに一喜一憂せず、優勝という言葉も胸の奥深くにしまって、いまは心静かに20年に一度の聖なる秋に備えようではないか」という長文の署名記事を書いたこともある。
けれども、アメフット関係の取材にはなぜか縁がなく、初めて社会面に記事を書いたのは1975年の秋。当時、監督だった武田建先生に「アメフットの魅力を伝えたいので、それにふさわしい部員を」と声を掛けて紹介してもらったスナッパー、吉川宏さんの話だった。
先生によると「RBの谷口君、QBの玉野君など、僕が期待している選手はたくさんいますが、せっかくの機会ですから、一番地味な役割でありながら、得点に直結する仕事をしている部員を」ということで紹介された選手である。
当時の僕は、アメフットには好守共にいくつものポジションがあり、足の速い人、腕力のある人、身体のでかい人など、それぞれの長所を組み合わせ、総合力て戦うスポーツだということは知っていたが、ゴールキックの時だけに登場し、スナップを投じるだけでチームに貢献している人がいることは知らなかった。その驚きを写真付きの記事にして送稿すると、担当デスクも驚き、社会面に掲載してくれた。
以上、昔のことをあれこれを紹介させていただいたのは、ほかでもない。この話もまたアメフットの魅力を伝えていると考えるからだ。足の速い人、多少、動きが悪くてもそれを補って余りある腕力や体力のある人、誰よりもボールを正確に投げられる人、相手の動きに誰よりも素早く反応出来る人、戦術や戦略を考えることが得意な人、ビデオの撮影やそれを練習教材として編集することに長けている人、ミスをして落ち込んだ仲間を慰め、励ますことの出来る人……。そうした多様な才能を持った人の持ち味を生かし、それをチームの総合力として戦える点がアメフットの最大の特徴である。選手の交代自由、ポジシの位置取りも基本的に自由。プレーごとに間合いがとられ、ベンチから作戦を指示し、グラウンドに出ている選手とベンチが共に戦えることも、他のスポーツにはない特徴といえるだろう。
そのトータルが勝敗を決める。そういう魅力を持ったスポーツがアメフットである、と武田先生は教えてくださったのだろう。
半世紀近く前、初めてのフットボール取材でそのことを教わって以来、フットボールはチームの総合力をどう高め、どのように結集し、どう発揮出来るかが勝敗を分けると、僕は思い定めている。週末の立命館との戦いでは、その総合力を存分に発揮してもらいたい。
けれども、新聞にフットボールに関係する記事を書いたことは、数えるほどしかない。信濃毎日新聞では地方支局の勤務経験しかなく、朝日新聞では社会部関係の取材、紀伊民報では編集の責任者として論説やコラムを書いてきたからだ。
野球が好きだったから、それでも野球に関係する記事やコラムを書く機会は少なくなかった。いま話題の阪神タイガースに関係する記事も、その昔、阪神支局や大阪の社会部で働いているときに何本も書いている。
阪神支局で働いていた1975年11月には、人気絶頂の江夏投手が秋季練習中の甲子園球場に病いに苦しむ小学生を招き、「学校に通えるようになったら、試合で使うボールをプレゼントします」と約束していた「約束のボール」を手渡して励ました話題を特ダネとして社会面のトップに書いた。これは社内の特別の賞を受けたし、1985年に優勝して日本一になった時には、これまた社会面のトップに「生きててよかった」という大見出しの躍る記事を書いた。
2003年には「週刊朝日」から依頼されて、シーズンの優勝が決まるはるか前の7月15発行の「阪神優勝」と銘打った増刊号に「伊勢神宮で20年に一度、行われる遷宮という聖なる神事と同じように、タイガースもまた、20年単位で応援しなければやっていけないチームである。(中略)試合のたびに一喜一憂せず、優勝という言葉も胸の奥深くにしまって、いまは心静かに20年に一度の聖なる秋に備えようではないか」という長文の署名記事を書いたこともある。
けれども、アメフット関係の取材にはなぜか縁がなく、初めて社会面に記事を書いたのは1975年の秋。当時、監督だった武田建先生に「アメフットの魅力を伝えたいので、それにふさわしい部員を」と声を掛けて紹介してもらったスナッパー、吉川宏さんの話だった。
先生によると「RBの谷口君、QBの玉野君など、僕が期待している選手はたくさんいますが、せっかくの機会ですから、一番地味な役割でありながら、得点に直結する仕事をしている部員を」ということで紹介された選手である。
当時の僕は、アメフットには好守共にいくつものポジションがあり、足の速い人、腕力のある人、身体のでかい人など、それぞれの長所を組み合わせ、総合力て戦うスポーツだということは知っていたが、ゴールキックの時だけに登場し、スナップを投じるだけでチームに貢献している人がいることは知らなかった。その驚きを写真付きの記事にして送稿すると、担当デスクも驚き、社会面に掲載してくれた。
以上、昔のことをあれこれを紹介させていただいたのは、ほかでもない。この話もまたアメフットの魅力を伝えていると考えるからだ。足の速い人、多少、動きが悪くてもそれを補って余りある腕力や体力のある人、誰よりもボールを正確に投げられる人、相手の動きに誰よりも素早く反応出来る人、戦術や戦略を考えることが得意な人、ビデオの撮影やそれを練習教材として編集することに長けている人、ミスをして落ち込んだ仲間を慰め、励ますことの出来る人……。そうした多様な才能を持った人の持ち味を生かし、それをチームの総合力として戦える点がアメフットの最大の特徴である。選手の交代自由、ポジシの位置取りも基本的に自由。プレーごとに間合いがとられ、ベンチから作戦を指示し、グラウンドに出ている選手とベンチが共に戦えることも、他のスポーツにはない特徴といえるだろう。
そのトータルが勝敗を決める。そういう魅力を持ったスポーツがアメフットである、と武田先生は教えてくださったのだろう。
半世紀近く前、初めてのフットボール取材でそのことを教わって以来、フットボールはチームの総合力をどう高め、どのように結集し、どう発揮出来るかが勝敗を分けると、僕は思い定めている。週末の立命館との戦いでは、その総合力を存分に発揮してもらいたい。
posted by コラム「スタンドから」 at 08:56| Comment(2)
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2023年10月30日
(13)驚きの京大戦
ついこの間、今年度のリーグ戦が始まったばかりと思っていたのに、もう5戦目。28日は、京都大との戦い。一昔前までは「宿命のライバル」として、熾烈な覇権争いを続けてきた相手である。
この日の試合を場内限定のFM放送で解説された小野宏ディレクターも、放送が始まると同時に「京大は本当に厄介な相手。現役時代から何度も痛い目に遭わされました。リーグ戦で勝ったのは2年生の時だけで、後は28−35、7−17、28−30で敗戦。コーチとしてチームに戻ってからも、何度も痛い目に遭いました」と、それぞれの試合展開を振り返って解説。「今年も、相手のQBが素晴らしいから、今日も厄介な試合になりますよ」と予想されていた。
悪い予感はよく当たる。ファイターズのキックで始まった京大の第1シリーズがその典型。自陣18ヤードから始まった攻撃は、いきなりパスプレーの連発。それにQBのランプレーを交えてぐいぐいと陣地を進める。あっという間に関学陣に入り、仕上げも10ヤードのパスでTD。7−0と先手を奪う。
これはこれは、と驚いているのは観客席。グラウンドの選手の胸中も同様だったろうが、ファイターズのオフェンス陣は、そんな気配は毛頭見せない。伊丹と澤井が立て続けにダウンを更新し、相手の守備陣をランプレーに集中させる。それを見極めたベンチはパスプレーを選択。それに応じてQB鎌田がWR鈴木に65ヤードのパスを通し、TD。大西のキックも決まって7−7と追い付く。
しかし相手も、QBの変幻自在のプレーを中心に一歩も譲らない。相手のキッキングチームも同様だ。次のファイターズの攻撃は自陣5ヤードから。ゴールラインを背負って、どう陣地を回復するのだろうと注目した第1プレー。ファイターズには、予想していなかったようなビッグプレーが飛び出した。
主役はRB伊丹。自陣ゴールライン上でQB鎌田からボールを渡された瞬間にカットを切り、そのまま右サイドライン際を駆け上がってTD。記録された獲得距離は95ヤード。伊丹の走力も素晴らしかったが、彼を守って追走し、相手守備陣のタックルを防ぎ切ったレシーバー陣の協力も見事だった。
このプレーに刺激されたのか、今度は守備陣が次々と素晴らしいプレーを連発する。DB波田と山村が立て続けにボールキャリアにタックルを見舞い、DL浅浦が素早い出足で何度も相手QBに襲いかかる。
好守がかみ合えば、試合は落ち着く。能力の高いQBを生かすべく「考えに考え抜かれたたプレー」(小野ディレクター)で攻め込んでくる相手の反撃をしのぎ、21−7で前半終了。
後半の立ち上がり、ファイターズは思わぬファンブルで相手に7点を返されるが、前半のリードがあるから慌てない。まずはK大西のフィールドゴールで3点。DB高橋のインターセプトでつかんだ相手ゴール前からの攻撃でQB鎌田がWR小段に10ヤードほどのTDパスを通し、キックも決めて7点を追加。31−14とリードを広げる。
こうなると、守備陣にも余裕が出てくる。立ち上がりは相手QBの変幻自在なパスに苦しんでいたが、徐々に反応できるようになってくる。まずはDB中野が相手のパスを反応良くインターセプト。そのままゴールまで駆け込んでTDに仕上げる。
ファイターズに勢いが出ると、相手も焦り出す。相手リターナーが自陣奥深くからリターン中にボールをファンブル。それを確保したファイターズが相手ゴール前26ヤード付近から攻撃に移る。QB星野がWR鈴木、五十嵐に短いパスを通し、自らのキーププレーで陣地を稼いで、RB澤井のTDランに結びつける。
終わってみれば45−20。高い能力を持ったQBを中心に、練りに練った作戦で長年のライバルを倒そうとする相手を、ファイターズは攻撃と守備が互いに助け合って倒した。
互いに知恵を絞り、力を尽くして戦う戦士たち。その奮闘に拍手を送りながら「こういうライバルがいるからこそ、アメフットは面白い。応援したい」という気持ちが募ってくる。
同時に、なぜ、こんなに魅力的なスポーツなのに観客席が満席にならないのか、不思議でならない。何度も繰り返すが、なんとかしてこの魅力をより多くの方々に共有してもらい、試合会場に足を運んでもらえるような方策はないのだろうか。
次週は立命館が相手。これまた、最終戦の関大戦とともに、絶対に見逃せない試合である。1人でも多く友人、知人を連れ出してスタンドに参集してもらいたい。
この日の試合を場内限定のFM放送で解説された小野宏ディレクターも、放送が始まると同時に「京大は本当に厄介な相手。現役時代から何度も痛い目に遭わされました。リーグ戦で勝ったのは2年生の時だけで、後は28−35、7−17、28−30で敗戦。コーチとしてチームに戻ってからも、何度も痛い目に遭いました」と、それぞれの試合展開を振り返って解説。「今年も、相手のQBが素晴らしいから、今日も厄介な試合になりますよ」と予想されていた。
悪い予感はよく当たる。ファイターズのキックで始まった京大の第1シリーズがその典型。自陣18ヤードから始まった攻撃は、いきなりパスプレーの連発。それにQBのランプレーを交えてぐいぐいと陣地を進める。あっという間に関学陣に入り、仕上げも10ヤードのパスでTD。7−0と先手を奪う。
これはこれは、と驚いているのは観客席。グラウンドの選手の胸中も同様だったろうが、ファイターズのオフェンス陣は、そんな気配は毛頭見せない。伊丹と澤井が立て続けにダウンを更新し、相手の守備陣をランプレーに集中させる。それを見極めたベンチはパスプレーを選択。それに応じてQB鎌田がWR鈴木に65ヤードのパスを通し、TD。大西のキックも決まって7−7と追い付く。
しかし相手も、QBの変幻自在のプレーを中心に一歩も譲らない。相手のキッキングチームも同様だ。次のファイターズの攻撃は自陣5ヤードから。ゴールラインを背負って、どう陣地を回復するのだろうと注目した第1プレー。ファイターズには、予想していなかったようなビッグプレーが飛び出した。
主役はRB伊丹。自陣ゴールライン上でQB鎌田からボールを渡された瞬間にカットを切り、そのまま右サイドライン際を駆け上がってTD。記録された獲得距離は95ヤード。伊丹の走力も素晴らしかったが、彼を守って追走し、相手守備陣のタックルを防ぎ切ったレシーバー陣の協力も見事だった。
このプレーに刺激されたのか、今度は守備陣が次々と素晴らしいプレーを連発する。DB波田と山村が立て続けにボールキャリアにタックルを見舞い、DL浅浦が素早い出足で何度も相手QBに襲いかかる。
好守がかみ合えば、試合は落ち着く。能力の高いQBを生かすべく「考えに考え抜かれたたプレー」(小野ディレクター)で攻め込んでくる相手の反撃をしのぎ、21−7で前半終了。
後半の立ち上がり、ファイターズは思わぬファンブルで相手に7点を返されるが、前半のリードがあるから慌てない。まずはK大西のフィールドゴールで3点。DB高橋のインターセプトでつかんだ相手ゴール前からの攻撃でQB鎌田がWR小段に10ヤードほどのTDパスを通し、キックも決めて7点を追加。31−14とリードを広げる。
こうなると、守備陣にも余裕が出てくる。立ち上がりは相手QBの変幻自在なパスに苦しんでいたが、徐々に反応できるようになってくる。まずはDB中野が相手のパスを反応良くインターセプト。そのままゴールまで駆け込んでTDに仕上げる。
ファイターズに勢いが出ると、相手も焦り出す。相手リターナーが自陣奥深くからリターン中にボールをファンブル。それを確保したファイターズが相手ゴール前26ヤード付近から攻撃に移る。QB星野がWR鈴木、五十嵐に短いパスを通し、自らのキーププレーで陣地を稼いで、RB澤井のTDランに結びつける。
終わってみれば45−20。高い能力を持ったQBを中心に、練りに練った作戦で長年のライバルを倒そうとする相手を、ファイターズは攻撃と守備が互いに助け合って倒した。
互いに知恵を絞り、力を尽くして戦う戦士たち。その奮闘に拍手を送りながら「こういうライバルがいるからこそ、アメフットは面白い。応援したい」という気持ちが募ってくる。
同時に、なぜ、こんなに魅力的なスポーツなのに観客席が満席にならないのか、不思議でならない。何度も繰り返すが、なんとかしてこの魅力をより多くの方々に共有してもらい、試合会場に足を運んでもらえるような方策はないのだろうか。
次週は立命館が相手。これまた、最終戦の関大戦とともに、絶対に見逃せない試合である。1人でも多く友人、知人を連れ出してスタンドに参集してもらいたい。
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2023年10月17日
(12)練習の成果
先週日曜日は、近畿大学との戦い。10月も半ばとあって暑さは和らぎ、雨の心配もない快適な環境で試合が始まった。
先攻はファイターズ。自陣36ヤードから始まった最初の攻撃シリーズこそ反則で陣地を進められなかったが、自陣32ヤードから始まった2度目の攻撃はRB伊丹と前島を交互に起用。個人技に優れた2人の多彩な攻撃で確実に陣地を進めていく。
最初にボールを託されたのは伊丹。短いスイングパスを受けて走ったかと思えば、次はドロープレーから一気に中央を抜け出す。一瞬、相手守備陣に捕まりそうな場面でも、独特のステップで身をかわして陣地を稼ぐ。
仕上げは前島。相手ゴールまで29ヤードを一気に走ってTD。相手守備陣が迫ると、急ブレーキをかけて相手をかわし、その瞬間、ギアをトップスピードに上げて走る彼ならではの先制点である。K大西のキックも決まって7−0。
先制すると、守備陣は落ち着く。相手は、レベルの高いQBを中心に多彩な攻撃を仕掛けてくるが、浅浦を中心とした守備のフロントと、LB海崎、永井、DB波田という経験豊富なメンバーが核になったバックスが互いに助け合って攻撃を食い止める。
第2Qに入っても一進一退の攻防が続く中、均衡を破ったのはファイターズ。DBのリーダー波田が相手QBがセンターライン付近から投じたパスを確保すると、そのままゴールまで駆け込んでTD。大西のキックも決まって14−0。
ビッグプレーが出ると、チーム全体が盛り上がる。相手陣23ヤードから始まった次の攻撃シリーズでは、QB鎌田からTE安藤への8ヤードのパス、RB前島のオフタックルを抜けた鋭い走りでTD。21−0とリードを広げる。
後半になってもファイターズの勢いは止まらない。自陣45ヤードから始まった第3Q最初の攻撃ではQB鎌田がWR衣笠、五十嵐、小段へのパスを立て続けに通し、相手ゴール前11ヤード。そこからは一転、RB伊丹のランを2本。残り2ヤードはRB大槻の中央ダイブでTD。堅実なプレーでリードを広げていく。
こうした攻撃の中で光ったのは、QB鎌田のパス。レシーバー陣のリーダー鈴木へのミドルパスを立て続けに通し、合間には衣笠や小段へのパスを交えて変化を付ける。この日のトータルスコアを見ると、WR鈴木に6回101、小段に3回42、衣笠に3回39、TE安藤に2回25、五十嵐に1回6ヤードを通している。思い通りにパスが通らずに苦しんでいた前節とは異なり、調子が上がってきたようだ。
QBといえば、けがで戦列を離れていた2年生の星野もこの試合、ほんの数プレーだったが出番があり、元気な姿を見せてくれた。これまた心強い。
リーグ戦も前半の4試合を終わり、佳境に入ってきた。これから立ち塞がる京大、立命、関大は好守ともにそれぞれの特徴を持った強敵である。ファイターズの一員として闘うメンバー全員が、この日までの4試合でつかんだ自身の特徴を生かし、足らずを補って全力で相手にぶつかる態勢を構築してもらいたい。
幸い、けがやインフルエンザなどで戦列を離れていたメンバーも徐々に復帰している。この日の試合で、久しぶりに元気な姿を見せ、いい動きを見せてくれたメンバーもいるし、シーズン当初から起用されている1年生も試合ごとに力を発揮している。
もちろん、2年生や3年生にもチームの主力と言ってよい人材が何人もいる。この日の先発メンバーを見ても、守備ではDL村田、山本、LB永井、DB東田らが名を連ね、1年生からはDB藤田が起用された。
オフェンスでもLT近藤、C巽、RT森永、RB伊丹、スナッパー柴原は3年生、2年生にはLG紅本、TE川口、K大西が起用され、WR小段に至っては1年生である。
こうしたメンバーが4年生を支え、チームを盛り上げていくことで、チーム力は上がっていく。強力なメンバーをそろえている立命や関大とも対抗出来るはずだ。若いメンバーが試合ごとに力を付け、急激な成長曲線を描いていくのを見られるのも、学生スポーツの大きな魅力である。
先攻はファイターズ。自陣36ヤードから始まった最初の攻撃シリーズこそ反則で陣地を進められなかったが、自陣32ヤードから始まった2度目の攻撃はRB伊丹と前島を交互に起用。個人技に優れた2人の多彩な攻撃で確実に陣地を進めていく。
最初にボールを託されたのは伊丹。短いスイングパスを受けて走ったかと思えば、次はドロープレーから一気に中央を抜け出す。一瞬、相手守備陣に捕まりそうな場面でも、独特のステップで身をかわして陣地を稼ぐ。
仕上げは前島。相手ゴールまで29ヤードを一気に走ってTD。相手守備陣が迫ると、急ブレーキをかけて相手をかわし、その瞬間、ギアをトップスピードに上げて走る彼ならではの先制点である。K大西のキックも決まって7−0。
先制すると、守備陣は落ち着く。相手は、レベルの高いQBを中心に多彩な攻撃を仕掛けてくるが、浅浦を中心とした守備のフロントと、LB海崎、永井、DB波田という経験豊富なメンバーが核になったバックスが互いに助け合って攻撃を食い止める。
第2Qに入っても一進一退の攻防が続く中、均衡を破ったのはファイターズ。DBのリーダー波田が相手QBがセンターライン付近から投じたパスを確保すると、そのままゴールまで駆け込んでTD。大西のキックも決まって14−0。
ビッグプレーが出ると、チーム全体が盛り上がる。相手陣23ヤードから始まった次の攻撃シリーズでは、QB鎌田からTE安藤への8ヤードのパス、RB前島のオフタックルを抜けた鋭い走りでTD。21−0とリードを広げる。
後半になってもファイターズの勢いは止まらない。自陣45ヤードから始まった第3Q最初の攻撃ではQB鎌田がWR衣笠、五十嵐、小段へのパスを立て続けに通し、相手ゴール前11ヤード。そこからは一転、RB伊丹のランを2本。残り2ヤードはRB大槻の中央ダイブでTD。堅実なプレーでリードを広げていく。
こうした攻撃の中で光ったのは、QB鎌田のパス。レシーバー陣のリーダー鈴木へのミドルパスを立て続けに通し、合間には衣笠や小段へのパスを交えて変化を付ける。この日のトータルスコアを見ると、WR鈴木に6回101、小段に3回42、衣笠に3回39、TE安藤に2回25、五十嵐に1回6ヤードを通している。思い通りにパスが通らずに苦しんでいた前節とは異なり、調子が上がってきたようだ。
QBといえば、けがで戦列を離れていた2年生の星野もこの試合、ほんの数プレーだったが出番があり、元気な姿を見せてくれた。これまた心強い。
リーグ戦も前半の4試合を終わり、佳境に入ってきた。これから立ち塞がる京大、立命、関大は好守ともにそれぞれの特徴を持った強敵である。ファイターズの一員として闘うメンバー全員が、この日までの4試合でつかんだ自身の特徴を生かし、足らずを補って全力で相手にぶつかる態勢を構築してもらいたい。
幸い、けがやインフルエンザなどで戦列を離れていたメンバーも徐々に復帰している。この日の試合で、久しぶりに元気な姿を見せ、いい動きを見せてくれたメンバーもいるし、シーズン当初から起用されている1年生も試合ごとに力を発揮している。
もちろん、2年生や3年生にもチームの主力と言ってよい人材が何人もいる。この日の先発メンバーを見ても、守備ではDL村田、山本、LB永井、DB東田らが名を連ね、1年生からはDB藤田が起用された。
オフェンスでもLT近藤、C巽、RT森永、RB伊丹、スナッパー柴原は3年生、2年生にはLG紅本、TE川口、K大西が起用され、WR小段に至っては1年生である。
こうしたメンバーが4年生を支え、チームを盛り上げていくことで、チーム力は上がっていく。強力なメンバーをそろえている立命や関大とも対抗出来るはずだ。若いメンバーが試合ごとに力を付け、急激な成長曲線を描いていくのを見られるのも、学生スポーツの大きな魅力である。
posted by コラム「スタンドから」 at 12:41| Comment(2)
| in 2023 Season
2023年10月10日
(11)大学生の課外活動
前回のコラムは、次のような言葉で結んでいる。
「チームとしては苦しい戦いであったとしても、自分のプレーが通用するという自信を付けたメンバーもいるだろうし、自ら改善しなければならない点があることを体感した者もいるだろう」
「その気づきを個人として、またチームとして、どう止揚していくか。それを考え、明日の試合につなげ、実行していくのが、大学生が集団で取り組むスポーツの魅力であり、神髄であると僕は考えている」
どうしてこんなことを書いたのか。
一つはいま、あちこちの大学で、課外活動構成員の不祥事が次々と表面化しているからだ。指導という名を借りた下級生に対する暴力行為、薬物の不法所持や不法接種、女性に対する集団暴行事件……。ここ半年、1年ほどの間に大きく報じられた記事だけでも、その一端がうかがえる。
大学生の部活動だけではない。高校生の部活動でも、監督やコーチによる部員への私的制裁が後を絶たない。その一端は、日本高野連が定期的に公表している情報からでもうかがえる。
そんなニュースに接するたびに思い出すことがある。僕が現役記者時代、懇意にしており、後に日本高野連の理事としても席を同じくした、ある公立高校野球部指導者のことである。
彼はある日、こんな思い出話をして下さった。「僕も昔は熱血指導者。朝から晩まで高校生のことばかり考えていました。本気で怒った時はほっぺたを張り飛ばすし、言葉も荒くなる」「それでも、結果がついてこない。考えあぐねた末に、ふと思いついた。逆の発想で接したらどうか。そう思って、腹の立つときはニコニコ笑うようにしたのです」「ニコニコしながら、次は頑張れよ、期待してるで、と声を掛けるようにしたら、相手は『頑張ります』と答える。そんなことを繰り返しているうちに、チームの雰囲気も変わってくる。監督と選手の間に、目標を共有しているという実感が生まれてくる。そのご褒美が甲子園での優勝。選手が自ら目標を持って行動できるようにするだけで、優勝旗が手にできたのです。指導者としてこんなに嬉しいことはありませんでした」
これは、18歳未満の生徒を主役にした高校野球指導者の話である。大学生ともなれば、相手はもう大人である。自らが考え、互いに協力しあって、目標に向かって突き進んで行くのは当然だろう。
そういえば、ファイターズの前監督、鳥内さんも、こんな言葉をしばしば口にされていた。「ほんまに勝ちたいのは、お前らやろ。勝ちたいんやったら、勝てるようにチームをつくっていかなあかん。主役はお前らやで」
そのような考え方がチームに浸透し、4年生を中心に一丸となってお互いを高めあい、毎年、前年以上のチームをつくってきた歴史があるからこそ、手強い相手が立ちはだかるこの世界で勝ち続けているのだろう。
今年のチームも、そうした歴史の延長上にある。学生が主役となり、監督やコーチがそれを助ける。チームが一丸となって向上心を持ち、練習の成果を明日の試合につなげていく。
それが大学生が集団で取り組むスポーツの魅力であり、それを当たり前のこととして実行しているのがファイターズであろう。いつまでも応援したいチームであり続けるゆえんである。
「チームとしては苦しい戦いであったとしても、自分のプレーが通用するという自信を付けたメンバーもいるだろうし、自ら改善しなければならない点があることを体感した者もいるだろう」
「その気づきを個人として、またチームとして、どう止揚していくか。それを考え、明日の試合につなげ、実行していくのが、大学生が集団で取り組むスポーツの魅力であり、神髄であると僕は考えている」
どうしてこんなことを書いたのか。
一つはいま、あちこちの大学で、課外活動構成員の不祥事が次々と表面化しているからだ。指導という名を借りた下級生に対する暴力行為、薬物の不法所持や不法接種、女性に対する集団暴行事件……。ここ半年、1年ほどの間に大きく報じられた記事だけでも、その一端がうかがえる。
大学生の部活動だけではない。高校生の部活動でも、監督やコーチによる部員への私的制裁が後を絶たない。その一端は、日本高野連が定期的に公表している情報からでもうかがえる。
そんなニュースに接するたびに思い出すことがある。僕が現役記者時代、懇意にしており、後に日本高野連の理事としても席を同じくした、ある公立高校野球部指導者のことである。
彼はある日、こんな思い出話をして下さった。「僕も昔は熱血指導者。朝から晩まで高校生のことばかり考えていました。本気で怒った時はほっぺたを張り飛ばすし、言葉も荒くなる」「それでも、結果がついてこない。考えあぐねた末に、ふと思いついた。逆の発想で接したらどうか。そう思って、腹の立つときはニコニコ笑うようにしたのです」「ニコニコしながら、次は頑張れよ、期待してるで、と声を掛けるようにしたら、相手は『頑張ります』と答える。そんなことを繰り返しているうちに、チームの雰囲気も変わってくる。監督と選手の間に、目標を共有しているという実感が生まれてくる。そのご褒美が甲子園での優勝。選手が自ら目標を持って行動できるようにするだけで、優勝旗が手にできたのです。指導者としてこんなに嬉しいことはありませんでした」
これは、18歳未満の生徒を主役にした高校野球指導者の話である。大学生ともなれば、相手はもう大人である。自らが考え、互いに協力しあって、目標に向かって突き進んで行くのは当然だろう。
そういえば、ファイターズの前監督、鳥内さんも、こんな言葉をしばしば口にされていた。「ほんまに勝ちたいのは、お前らやろ。勝ちたいんやったら、勝てるようにチームをつくっていかなあかん。主役はお前らやで」
そのような考え方がチームに浸透し、4年生を中心に一丸となってお互いを高めあい、毎年、前年以上のチームをつくってきた歴史があるからこそ、手強い相手が立ちはだかるこの世界で勝ち続けているのだろう。
今年のチームも、そうした歴史の延長上にある。学生が主役となり、監督やコーチがそれを助ける。チームが一丸となって向上心を持ち、練習の成果を明日の試合につなげていく。
それが大学生が集団で取り組むスポーツの魅力であり、それを当たり前のこととして実行しているのがファイターズであろう。いつまでも応援したいチームであり続けるゆえんである。
posted by コラム「スタンドから」 at 16:20| Comment(3)
| in 2023 Season
