2025年12月16日

(14)悔しい結末

 今季から学生アメリカンフットボールの頂点を競う甲子園ボウルの仕組みが変更になり、初めて関西リーグのチーム同士がトップの座を競うことになった。関西リーグを勝ち抜いた関西学院大学ファイターズと、リーグ戦では敗れたが、関東地区の代表校などを破って復活した立命館大学パンサーズ。互いにライバルとして戦ってきた両チームが今季を締めくくる晴れ舞台に上ったのだ。
 天気は晴れ。しかし、甲子園球場につきものの浜風が強い。この浜風が勝敗のカギを握っているのでは、と余計な心配をしながら一塁側アルプス席最上段の席に着く。席の隣はファイターズが公式試合のたびに設営している放送席。チームの小野宏ディレクターたちが観客のみなさんに向けて、プレーの解説などをされる「ミニラジオ放送局」である。
 午後1時40分、試合開始。ハーフライン付近から攻撃を始めた立命がQBキープ、WRへのミドルパスなどで陣地を進め、あっという間にゴール前15ヤード。そこからパスを決めてTD。あれよあれよという間に7ー0。
 これで勢い付いた相手は、続くファイターズの攻撃を余裕で食い止め、自陣16ヤードから2度目の攻撃シリーズ。ここでもランとパス、それにQBのキープと目先を変えながら陣地を進め、最後はQBが左サイドを駆け上がってTD。キックも決めて14ー0。
 この勢いに飲まれたのか、ファイターズの攻撃は進まない。あっという間にパントに追いやられる。けれども、ここでファイターズ守備陣が踏ん張る。4プレーで攻撃権を取り戻し、攻撃陣に反撃を託す。
 しかし、次の攻撃シリーズも4プレーで終わり、またも相手の攻撃。それを守備陣が完封し、再び攻撃権はファイターズに。今度は、自陣34ヤードからという場所からの攻撃とあって、QBが星野兄に代わり、WR五十嵐に20ヤードのパスを投じて陣地を進め、最後はRB井上が1ヤードをダイブしてTD。K大西のキックも決まって14ー7と追い上げる。
 けれども、相手は勢いに乗っている。QBのランで陣地を進め、長いパスを通してTD。あっという間に21ー7と引き離す。
 しかし、再び登場したQB星野弟がWR小段へのパスで陣地を進め、自身のキープ、RB永井のランなどで相手陣奥深くに攻め込み、残る2ヤードを自身のランでTDに結びつけた。大西のキックも決まって21ー14。立ち上がりに2本のTDを決められ、苦しい戦いとなったが、何とか追い上げ、勝敗の行方を後半に持ち込んだ。
 だが、この日の相手は一味違う。第3Qに入っても攻撃の勢いは衰えず、QBのランでTD。28ー14とリードを広げる。 
 この加点が効いたのか、ファイターズの攻撃陣には焦りのような雰囲気が生まれ、思い通りに攻撃が進まない。逆に相手守備陣にはゆとりが生まれ、それがファイターズの攻撃を止めるのに役立っていることがスタンドからでも見えてくる。
 守備が安定すると、攻撃陣にもゆとりが生まれる。第4Qにもフィールドゴールとタッチダウンで10点を加え、最終のスコアは38ー14。ファイターズにとっては悔しさの募る結末となった。
 外野から応援しているだけの私にとっても悔しい結末だが、それを悔やんでも仕方がない。今季限りでこのコラムを書くことを辞退させていただき、来年からは別の形でチームを応援させていただこうと考えている。長年のご愛読、本当にありがとうございました。心から感謝しています。
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2025年12月03日

(13)いざ! 甲子園ボウル

 11月30日、大阪市の長居陸上競技場で行われた全日本大学選手権準決勝の相手は関西大学。関西学生リーグでは、ファイターズが7点のリードを持って最終盤まで頑張ったが、最後の最後に同点に追いつかれ、引き分けに持ち込まれた相手である。
 それでも、ファイターズは関西リーグの最終戦で立命館に勝利しているから、かつてのような関西リーグと関東リーグの覇者同士が戦う仕組みなら、その時点で関西の代表として関東の代表校と大学フットボールの王者を決める甲子園ボウルへの出場権を手にしていたはずだが、今は違う。
 各地にある多様な大学リーグの覇者にも門戸を開いて戦い、最後まで勝ち抜いた二つのチームが大学選手権(甲子園ボウル)で戦う仕組みになっている。
 すでに、一方のヤマでは立命館が勝ち抜いて出場を決めており、残る一つがこの日の試合で決まる。
 関大にとっては、リーグ戦で立命館に敗れた悔しさを晴らし、甲子園でリベンジを期す絶好のチャンス。逆に、ファイターズのファンにとっては、6勝1分けながら関西リーグの優勝を決めているのに、と何となく割り切れない気持ちの残る対戦である。
 けれども、これは秋のシーズンが始まる前から決まっていたこと。外部の人間がとやかく言う問題ではない。まずは、目の前の相手に勝ち、再度、立命を相手に勝つしかない。選手諸君には、格好の目標ができた、存分に戦ってくれ、と祈るような気持ちで、長居のスタジアムに向かった。
 関大のキック、ファイターズのレシーブで試合が始まる。第1ダウンの攻撃でいきなり反則。5ヤードを後退させられたが、RB井上のラン、QB星野弟からWR小段へのパスでダウンを更新。さらにWR五十嵐へのパスなどで陣地を進め、仕上げは大西の48ヤードFG。まずは3点を確保して、選手を落ち着かせる。
 攻撃が進めば守りも落ち着く。次の相手攻撃をDLが完封。ダウンを更新できなかった相手は、滞空時間の長いパントで陣地を進める。
 次のファイターズの攻撃は進まず、攻撃権は相手に移ったが、ここでファイターズにビッグプレーが出る。ハーフライン付近からの攻撃で、相手QBが投じた短いパスをファイターズのDB永井慎太郎がインターセプト。そのままゴールまで走り込んでTDに仕上げたのだ。大西のKも決まって10ー0。
 このプレーに刺激されたのか、ファイターズの守備陣の動きが見違えるようによくなる。2年生DL、田中志門が強烈な当たりで相手を止め、4年生LBの大竹、1年生DLの武野が連続して素晴らしいタックルを相手に浴びせる。田中と武野はともに追手門高校の出身。ともに身体が大きく、動きも速い。高校時代も攻守の要とした活躍してきた二人が今後、ファイターズでコンビを組み、励まし合って成長していくのが楽しみだ。
 守備陣が勢いづくと攻撃陣も元気になる。自陣12ヤード付近から始まった次の攻撃シリーズでは、RB永井秀のランなどでダウンを更新、ハーフライン付近まで陣地を進める。相手守備陣がRBやWRへの対処に追われているのを見たQB星野弟がここで勝負。自らボールを抱えてゴールまで突っ走る。大西のキックも決まって17ー0。絵に描いたようなQBのTDに応援席は沸騰する。
 攻撃が勢いづけば、守備陣も一層元気になる。武野が187センチ、117キロの恵まれた身体を自在に操り、真っ向から相手にぶつかっていく。
 第2QにはQB星野弟からWR五十嵐に鮮やかな25ヤードTDパスが決まり、前半を24−0で折り返す。
 後半はファイターズのキック、関大のレシーブでスタート。しかし、ファイターズ守備陣は勢いづいている。相手陣18ヤードから始まった最初のプレーでDB永井が相手に強烈なタックルを浴びせ、DB東田が素早い動きで相手パスをカットする。ダウンを一度更新されたが、守備陣が踏ん張って攻撃権を奪取。
 自陣18ヤードから始まったファイターズの攻撃。まずはランプレーでダウンを2度更新。自陣34ヤードまで進んだところで、QB星野からWR小段に22ヤードのパス。それが通って相手陣に入り、仕上げはWR百田への長いパス。一瞬、オーバースローか、と思うほどの豪快なパスだったが、相手守備を抜き去って見事にキャッチ。そのままエンドゾーンに駆け込んでTDに仕上げた。大西のキックも決まって31−0。
 大きなリードを持って迎えた第4Q。関大の攻撃でスタートしたが、ファイターズ守備陣は自信をもって対応する。DB永井の素早いタックル、同じく東田のパスカットなど、それぞれのプレイヤーが自身の長所を生かした動きで相手攻撃の芽を摘んでいく。
 一方、攻撃陣はリードしていることも手伝って、自分たちのペースで試合を進めていく。時計の針を進めるのも作戦のうちというのだろう。RB井上、永井、平野を走らせて時間を稼ぎ、随所にパスを織り込んで目先を変えながら陣地を進める。その手法が功を奏したのだろう。第4QだけでもRB平野のラン、永井のランでTDを獲得。相手のパスを奪い取り、TDに結びつけた1年生DB増田の活躍もあって、最後は52ー7という大差をつけて関西の代表となり、甲子園ボウルの出場権を手にした。
 しかし、それを喜ぶのはまだ早い。甲子園ボウルは学生王者を決める戦いであり、勝ってこそ喜べる舞台である。そこで勝利を手にするために更なる取り組みを続けてもらいたい。
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2025年11月11日

(12)強豪相手に見事な勝利

 関西学生リーグの最終戦は、立命館大が相手。今季、リーグで戦ったすべてのチームに余裕で勝ち抜いてきた強豪である。先々週、ファイターズの試合が終わった後、関西大と戦っている姿を観戦したが、ファイターズが苦しんだ関大を相手に、悠々と戦い、大差で勝利した姿に「次戦はこのチームが相手。ファイターズも、難しい戦いを強いられるだろうな」と考えながら帰宅したことを覚えている。
 けれども、試合の朝。日課としている散歩の途中にひらめいた。「強いチームに勝ってこそファイターズ。これまでも、厄介な相手に勝つための作戦を練り、チームが一丸になって戦い、勝利への道を切り開いてきた。今季のチームもそういう強い気持ちで戦ってくれるに違いない」「あとは選手に託すのみ。僕は余計なことを考えず、しっかり応援しよう」。そう考えながら、試合会場の大阪・万博記念競技場に向かった。
 会場に到着。広い立派なグラウンドだが、小雨が降り続いている。傘の用意はしてきたが、それだけでは心もとない。ファイターズの応援席で販売されている簡易雨具を購入して頭からすっぽりとかぶり、万全の備えで席に着く。
 ファイターズのキックで試合開始。先攻の相手は手堅くラン攻撃に出るが、ファイターズDLの反応がよく、的確に対応するため、陣地は進まない。4プレーで攻守交代。しかし、ファイターズの攻撃も似たようなものだ。ランプレーを中心に陣地を進めようとするが、相手は一歩も譲らない。互いに守り合っているうちに前半が終わりかける。
 前半終了間際。センターラインを越えたあたりで攻撃権を手にしたファイターズが勝負に出た。QB星野太吾がWRリンスコットと百田に連続でパスを決め、FG圏内まで陣地を進める。そこからK大西が42ヤードFGを決め、3ー0で前半終了。
 これで緊張が解けたのか、3Qに入ると攻守ともに動きがよくなる。まずは攻撃陣。
 RB井上と永井が立て続けに走ってダウンを更新。QB星野太吾のラン、WRリンスコットへのパスなどで、あれよあれよという間に相手ゴールに迫る。残りは11ヤード。QB星野がパスと見せかけたドローで中央を駆け抜けてTD。10−0とリードを広げて勢いづく。
 攻撃が勢いに乗ると、守備陣も元気になる。DLの田中志門らが素早い動きで即座に攻撃権を取り戻すと、攻撃陣がそれに呼応する。2年生ながらエース級の活躍をしているRB永井が立て続けに走って36ヤードのTDランに結び付けた。大西のキックも決まって17ー0。
 点差は開いたが、相手の士気はくじけない。第3Qの後半、自陣24ヤード付近から始まった攻撃で陣地を進め、第4Qに入った最初のプレーでFGを決める。
 得点は17ー3。ファイターズがリードしているが、相手には底力がある。どうしても勢いを止めたい。ファイターズのラインが踏ん張ってRBやQBを走らせ、時間を消費しながら陣地を進める。仕上げは星野が走ってTD。キックも決まって24ー3。ファイターズが関西の覇者となった。
 ともに負けられない、と意識して戦ったこの試合。互いに収穫は多かったと思われるし、観戦している方も楽しかった。
 しかし、観客の数が一向に増えないのはどういうことだろう。
 大阪モノレールから阪急宝塚線に乗り換え、今津線に乗って帰宅するまでの間、一人で考え込んでいた。
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2025年10月29日

(11)学びながら成長を

 26日、神戸大学との試合は京都・西京極のたけびしスタジアム京都。
 以前は西京極陸上競技場と呼ばれ、隣にはプロ野球の試合も行われた野球場や公園もある。そんな環境が市民の憩いの場にもなっている。
 僕がこの公園の素晴らしさを知ったのは約33年前。朝日新聞社で働いていた時である。京都支局のデスクとして単身で赴任。紙面を作り、若い記者たちを育てる役割を担っていたが、職場でのやり取りだけではなかなか記者は育たない。若い記者たちと気持ちを通わせるための手法を考えていた時に、入社3年目の記者から提案があった。彼は大学時代、サイクリング同好会に所属し、東京の多摩川周辺を自転車で走り回っていたという。提案の内容は「2週間に一度、単身者だけで日曜日に京都市内や周辺の景勝地をめぐるサイクリングをやりませんか。僕がリーダーとして安全を確保します」。「それは面白い。僕も中学、高校時代は自転車通学。往復32キロの砂利道を走っていた男だ。支局の有志を集めて遊ぼう」。そういって若い記者に呼びかけ、それに応じた記者たちと、2週間に一度、京都市内や鴨川の上流部を走り回る「サイクリング・コンパ」を続けていた。その時に初めてこの競技場を訪れ、立派な施設であり、公園だと驚いたことを思い出す。
 前書きが長くなった。試合に戻ろう。
 立ち上がり。RB永井が一気に走り、あっという間に相手ゴール前11ヤード。QBのランを挟んで仕上げも永井。今度は中央を走り抜けてTD。K大西のキックも決まって7−0。文字通り「あれよあれよという間」の先制点となった。
 どんな試合でも、先制すればチームは落ち着く。次の相手攻撃を守備陣が完璧に抑え、自陣45ヤード付近から再びファイターズの攻撃。今度も主役は星野弟と永井。それぞれの走りで陣地を進め、間にWR五十嵐に20ヤードと8ヤードのパスを決めて相手ゴール前に迫る。仕上げはまたも永井。ゴールまでの3ヤードを駆け抜け2本目のTD。大西キックも決まって14ー0。
 次の相手攻撃を守備陣が完封。2Qに入ってもファイターズの攻勢は続く。星野がWR五十嵐、小段に立て続けにパスを通して相手ゴールに迫ると、仕上げはまたもRB永井。短い距離を確実に走ってTD。大西のキックも決まって21ー0。
 攻撃が安定すると、守備にもゆとりが生まれ、そのゆとりがビッグプレーを生み出す。逆に相手は、何とかしなくては、という思いが強くなり、その分、動きが硬くなる。動きが硬くなると、捕れるボールを落としたり、相手のカバーを間違えたりすることが起きてくる。
 逆に、守る側はミスを恐れず、大胆なプレーを選択することが増えてくる。この日の試合でいえば、第2Qの半ばにファイターズ守備陣が決めたパントブロックの直後に、攻撃陣が決めた星野弟からWR小段へのTDパスや、その次の神戸攻撃陣が仕掛けたパスをDB加藤が奪い取ったプレーなどがその具体例となるだろう。
 攻撃と守備。まったく異なる役割を分担して戦うアメリカンフットボールではあるが、このようなプレーが目の前で展開されると、アメフットってすごい、体力と運動能力の戦いだけでなく、心と心の戦いまでを目の前に描いてくれる、すごい競技だと思ってしまう。自由な考え方に価値を置く人の多いアメリカで、このスポーツが圧倒的な人気を有するということも、なるほどと思ってしまう。
 余計なことを考えているうちに試合は第3Q。相手の攻撃を守備陣が完封して迎えた後半最初の攻撃シリーズ。勢いに乗ったファイターズはパス攻撃を進める。QBが星野弟から星野兄に交代。彼が立て続けにパスを決め、自ら走って陣地を進める。わずか3プレーでTDを奪う。その姿を見て、よくぞグラウンドに戻ってくれた、と思う気持ちを共有してくださる方も多いだろう。
 攻撃が頑張れば守備も頑張る。
 ファイターズの得点で攻撃権が相手に移った最初のプレーで、ファイターズ守備陣にビッグプレーが飛び出した。DBの1年生、藤原が相手のパスを奪い取ったのだ。QBを務めている星野兄弟と同じ東京・足立学園の出身で、今春入学したメンバーの中でも期待された選手がインターセプト。さらに練習に励み、ファイターズ守備陣のリーダーにと願わずにはおれなかった。
 彼のプレーで手にした攻撃シリーズを、ファイターズはFGで締めくくり、44ー0で試合終了。試合の展開を見ながら、続々と経験の少ないメンバーを起用し、育てようとするファイターズベンチの手法に共感させられた一戦だった。
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2025年10月16日

(10)悔しい引き分け

 13日の対戦相手は関西大学。ここ数年、厳しい戦いを強いられている相手だ。会場は京都・西京極のたけびしスタジアム京都。設備の整った立派なグラウンドだが、甲東園からは遠い。しかし、その遠さにもかかわらず、両サイドのスタンドに多くの観客が詰めかけている。多くのファンが来場してくれた今日のグラウンドで、初めて応援に来た人たちも堪能させるような戦いを繰り広げてくれ」という気持ちがさらに高まった。
 期待は裏切られなかった。双方が全力で攻め合い、守りあって、終わってみれば17―17。どちらにも軍配が上がらず「痛み分け」のような状態で試合を終えた。
先手を取ったのはファイターズ。相手が自陣40ヤード付近から投じた短いパスをDB加藤がインターセプトして攻撃権を奪取。相手陣46ヤード付近から始まった攻撃でRB平野、RB永井が立て続けに走って相手ゴール前。そこからRB井上が7ヤードを走ってTD。K大西のキックも決まって7―0と先手を取る。
 しかし、相手もひるまない。能力の高いQBのパスにランプレーを織り交ぜて陣地を進める。仕上げは長いパス。それが右サイドに決まってTD。キックも決めて同点に追いつく。
 これは、難しい試合になるぞ、と思った通り、双方ともに攻め合い、守り合っているうちに前半が終了。
 第3Qに入っても状況は変わらない。双方が攻め合い、守り合って互いに無得点。それでも先手を取ったのがファイターズ。第3Q終了間際にQB星野弟がWR小段へ21ヤードのパスを通して陣地を進める。4Qに入っても星野弟のキープ、小段へのパスであっという間に相手ゴール前。そこから星野弟がWR五十嵐に短いパスを決めてTD。14−7とリードを広げる。
 しかし、相手の士気は下がらない。果敢なパス攻撃で陣地を進め、ファイターズの反則でつかんだチャンスをFGに結びつけてまずは3点を獲得。次の攻撃シリーズでファイターズがFGで3点を返し、再び7点差を取り戻す。
 残り時間は2分。ファイターズの守備力を考えれば、そのまま逃げ切れるかも、という考えも浮かんだが、相手は全力で攻め込んでくる。時間との戦いもあって、パス攻撃しか選択肢がないような状況だったが、短いパスを次々と決めてゴールに迫り、終了間際に同点に追いついた。
 その粘り、その気迫、その結束。プレーヤーの技術にプラスしたそうした「資源」を総動員して引き分けに持ち込んだ相手の戦いぶりに、ファイターズの諸君も考えさせられることが多かったに違いない。こういう戦いを経験し、さらなる成長を続けてこそ、未来は開ける。
 引き分けという結果から学び、更なる向上につなげるなら、引き分けに持ち込まれた悔しさも穫(かて)になる。それを次なる神戸大戦で証明してもらいたい。
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2025年09月30日

(9)激化する覇権争い

 今季4試合目の相手は京都大学。ひと昔前は、学生フットボール界の頂点を目指して互いにしのぎを削ったライバルである。
 古い話になるが、彼らがとてつもなく強かった時代(1990年代半ば)にチームを率いておられた水野監督に、当時、朝日新聞の社会部記者だった僕は、単独インタビューを申し込み、心よく引き受けていただいたことがある。その時に伺った選手を強化するための心得というか、秘訣ということに関する言葉が今も記憶に残っている。
 京都大学といえば、勉強に集中して入学した学生が大半と思えるのに、なぜ、学生アメフット界の頂点に立つチームが作れるのですか、という質問に対して、監督は次のような話をしてくださった。
 「1升瓶に1升の水を入れるのはだれでもできる。しかし、1升2合の水を入れるにはどうすればよいか」と僕は部員たちに問いかけるのです。無茶な質問ですが、学生たちは真剣に考え、それぞれの考えを話してくれましたという話だった。
 僕が「1升を超える2合は汗になって流れる。だから100%で満足せず、限界を超える120%の努力を」という意味に受け取ればいいのですか、と答えると、まあ、そんなことでしょう、と笑顔で答えられた。
 そういうチームの遺伝子を引き継いでいるのか、この日の京大は強かった。
 しかし、主導権を握ったのはファイターズ。第1Q早々にQB星野弟からWR百田へのミドルパスで先制。10分過ぎには自らキープして2本目、さらに平野の27ヤードランで3本目と畳みかけ、21ー0。2Qに入って京大が反撃し、FGを決めて食い下がったが、ファイターズは攻撃の手を緩めず、星野からWR棚田弟へのパス、TE川口へのパスで得点を重ね、前半終了時で35ー3。
 後半に入っても、その流れは変わらず、平野のラン、途中で交代したQB星野兄からWR棚田弟へのTDパスを決めて49ー3。
 メンバーの少ない京大は、終始劣勢だったが、それでも最後にTDを決め、伝統チームの意地を見せた。
 プロ野球が幅を利かし、高校野球やサッカー、テニス、バレーボールやラグビーなどがそれぞれのファンをもって、盛んに活動している日本のスポーツ界でにおいて、アメフットのファンは肩身が狭い。けれども、伝統のあるチームに加えて新しい力を結集したチーが台頭してくれば、必ずファンは増える。近年、関大や立命館を加えた関西学生リーグの覇権争いが激化しているのも、新しいファンを開拓するエンジンになるはずだ。
 その意味でも、次なる関大、立命との戦いを注目したい。
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2025年09月24日

(8)試練の戦いは続く

 今季3戦目の相手は近畿大。厳しい暑さを避けるため、試合開始は午後6時。会場はナイター設備の完備した神戸ユニバー記念競技場である。
 ここは1984年秋に開設され、1985年に開催されたユニバーシアード世界大会のメーン会場となった。
 当時、朝日新聞の社会部記者だった僕は、社会部取材班のキャップとして、大会に関する「サイドストーリー」を書く役割を与えられ、この競技場に送り込まれた。
 どんな取材をし、どんな記事を送ったのか全く記憶にないが、とにかく担当の部長や神戸支局長から褒められ、社内の賞をもらった思い出のあるグラウンドである。
 「会場が遠いから、車で行きましょう」とチームの小野デイレクターから声をかけていただき、同乗させてもらう。
 会場に到着して間もなく試合開始。先攻は近大。QBが短いパスを通し、RBを走らせ、自身も走る。あれよ、あれよという間に2度もダウンを更新する。
 ファイターズの守備陣も負けてはいない。DLの新井イケンナや武野が踏ん張り、強い当たりで相手に圧力を掛けて陣地を進ませない。
 双方ともに一歩も引かぬ戦いが動いたのは2Qに入ってから。まずは近大が第2Q3分44秒に24ヤードのパスを成功させ、キックも決めて7―0。
 「これは厳しい戦いになるぞ」と気をもんだが、ファイターズはくじけない。次の相手が蹴ったボールをリターナーに入ったWR百田がキャッチ、一気に相手ゴールに迫る。仕上げはRB永井。残された1ヤードを突破してTD。大西のキックも決まって7―7。
 ようやく一息つける、と思った次の場面。近年見たこともない恐ろしい場面が飛び出す。
 ファイターズのキッカーが相手ゴール前まで蹴ったボールをキャッチしたリターナーが、一気にファイターズゴールまで駆け抜けてTDを奪ったのだ。ファイターズのメンバーは、そんな事態が想定できていなかったのか、それとも相手の動きが予測以上に素早かったのか。追いかけようとしたメンバーはいたが、だれも追いつけない。PATも決まって、あっという間に逆転だ。
 スタンドから応援している人たちもあ然として言葉もないような状態だったが、グラウンドで戦う選手たちはこれで発奮したのだろう。RB井上のラン、QB星野兄からWR百田やリンスコットへのパスなどで確実に陣地を稼いでいく。仕上げはRB井上がゴール前からのランでTDを挙げて、前半を同点で終える。
 後半は関学リターンで始まったが第1ダウンを更新できず、逆に近大はパスをランを織り交ぜ、ゴール前3ヤードで第1ダウンとなる。ここで守備が踏ん張りFGの3点に抑えたのが大きかった。
 再びリードされてもファイターズは動じなかった。次のシリーズの自陣23ヤードからの最初のプレー。マン・ツー・マンとなった守備を見切ってWR五十嵐に絶妙のパスが通り、そのまま77ヤードを独走してTD。キックは外れたが20−17。ようやくリードを奪う。
 リードを奪って攻守ともに落ち着いたのか、次の攻撃シリーズも星野兄からWRリンスコットへの25ヤードのパスでTD。27―17とリードを広げる。
 攻撃が勢いづくと、守備にも一段と勢いが出てくる。次の相手攻撃では1年生ながら守備の要となっているDL武野が相手QBの投じたスクリーンパスを奪い取り、そのままゴールまで18ヤードを走ってTD。キックも決まって34―17と、さらにリードを広げる。
 スコア的には「勝負あり」という状況になったが、そんなことを思っているようでは厳しいリーグ戦は戦えない。それを承知している選手たちは4Qに入っても手を緩めない。  
QBが星野兄から星野弟に交代し、それを象徴する場面が第4Qの初め、3分28秒に出現した。QB星野弟がWR小段へ36ヤードのパスを通してTD。PATも決めて7点を追加したのである。
 星野弟も小段も、この日前半はあまり出番がなかったが、ともにチームにとってはここからの後半戦に欠くことのできない主力メンバーであり、実戦で一層経験を積んでもらいたい選手である。その二人を終盤に起用したベンチと、その起用に応えて見事なTDで締めくくった二人の姿に、僕は深い感動をおぼえた。
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2025年09月02日

(7)秋の初戦は見どころ満載

 8月31日午後5時半、神戸市の王子競技場で今季関西リーグの初戦、ファイターズと甲南大学の試合が始まった。
 8月も終りというのに、この時間になってもまだまだ暑い。防具をつけ、ヘルメットをかぶってグラウンドで戦う選手にとっては、相手と同時に暑さとの戦いも引き受けなければならない。
 そんな厳しい条件だったが、両チームとも知恵を絞り、体力の限りを尽くして戦い、見ごたえのある試合となった。
 先攻は甲南。昨年の覇者、ファイターズを相手に真っ向から立ち向かい、まずはラン攻撃でダウンを更新。この試合に向けてしっかり準備してきたことうかがえる立ち上がりとなった。
 しかし、ファイターズ守備陣は慌てない。相手の工夫してきた次の攻撃にしっかり対応し、パントに追いやる。
 守備が踏ん張れば、攻撃も力を発揮する。先発したQBの星野弟がWR小段にドンピシャのパスを通して一気に相手ゴール前に迫る。この好機をけがから復帰したRB永井がTDに仕上げ、K大西のキックも決まって7ー0と先手を取る。
 けれども、甲南の士気は高い。工夫を凝らしたラン攻撃で即座にダウンを更新。速いテンポで攻撃を続ける。それをファイターズ守備陣が懸命に食い止め、相手の攻撃を断ち切る。
 守備陣がリズムをつかむと、オフェンスのリズムもよくなる。WR五十嵐へのパス、星野のキープで陣地を進め、仕上げはRB平野への短いパス。それが決まってTD。14ー0とリードを広げる。
 しかし、この日の甲南は粘り強い。能力の高いQBが自ら走り、パスを投げて陣地を進め、仕上は40ヤード近いTDパス。それが決まって14−7。ファイターズファンに向けた実況放送を担当されているメンバーからも、「やりますねえ」の声が漏れる。
 けれども、やられたらやり返せ、と闘志をかき立てたのがリターナーの位置に入ったWR小段。相手のキックをゴール前でキャッチすると、即座に走り、相手守備陣をかわしながら自陣40ヤード付近まで陣地を進める。そこからQBのスクランブル、小段への短いパス、RB永井のランなどでFG圏内まで陣地を進め、仕上げはK大西のFG。ゴールまでは結構、距離があったが、さすがは場数を踏んでいる4年生。見事にそれを決めて17ー7。
 後半、3Qに入ってもゲームを支配しているのはファイターズ。メンバーが限られている相手に疲労の影が差すのと反比例するように、多彩なメンバーをつぎ込んでいく。昨シーズンのけがから復帰し、WRとリターナーとの任務を完全に果たしている小段、昨季、衝撃のデビューをしながら、春の初戦であっという間に故障者入りしてしまったRB永井−−。極めつけは4年生WR川崎とQB星野兄。
 二人はこの日、試合終了まで残り1分半で登場。それを見た僕は一瞬、これもファンサービスのひとつか、ベンチも粋なことをやるな、と思ったが、どっこい、そんな甘ったるい話ではなかった。
 相手ゴール前6ヤード。第3ダウン2ヤード。関学オフェンスとしてはおそらくこの日最後のプレー。さてどうするか。僕は即座に星野から川崎へのパスを投じ、キャッチしてくれ!と思わず拳を振り上げた。
 目の前で願った通りにパスが投じられ、川崎がエンドゾーン左隅でそれを確保した。タッチダウン。まるで子供向けのおとぎ話にあるような幕切れとなった。
 その場面を見て、これは二人に話を聞きたい。一緒に喜びたい。そう思ってグラウンドに駆け下り、二人の話を聞いた。
 想像した通りだった。二人は足立学園(東京)、鎌倉学園(神奈川)からスポーツ選抜入試で関西学院大学に入学。同じ関東育ちということで、1年時から親しく付き合ってきた。大阪弁が標準語のようなチームに入り、みそ汁の味から道路の歩き方まで異なるような土地で互いに助け合い励ましあってチームに貢献してきた。けれども、ともに選手生命が危ぶまれるけがをして戦線から離脱。大学生の収穫期といわれる4年生になっても、試合で思い通りの活躍ができるまで我慢に我慢を重ねてきた。
 そんな状況にありながら、上ケ原のグラウンドではチームのリーダーとしての役割を担い、下級生の指導にも力を尽くしてきた。
 そういう姿を見てきただけに、二人のこの日の活躍はうれしかった。そんなことを告げると「今日はまだまだ回復途上。これからもしっかり鍛えて、チームのために貢献します。勝負はこれから。頑張ります!」。ともに、そう言ってニコニコとした表情を見せてくれた。
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2025年07月11日

(6)大阪・東京での講演会

 このところ、コラムの更新が途絶えている。春のシーズンが一区切りついて、書き手も一休みしようと決めて、勝手「夏休み」に入っていたのだ。
 もちろん春の公式戦が終わってからもJV戦が3試合あったし、暑さ対策をしながらチームの練習も続いている。
 私個人の役割としては、スポーツ選抜入試で入学を希望する高校生に、入試に必須の小論文の「書き方指導」の仕事がある。先日も、西宮市内の施設に集まってもらって(都合のつかない人はリモートによる参加)、小論文の書き方を指導。課題を与えて文章を書いてもらったりするのが僕の役割。そんな作業を何度か繰り返しながら、文章を書くことが苦手という高校生に「なるほど、こんな風に書けばよいのか」と理解し、文章で自分の考えを伝えることの楽しさを身に着けてもらうのが僕の仕事である。
 そんなオフシーズンの話題として記しておきたいことがある。ファイターズのホームページ上にお知らせが出ている。
 今年もやりますアメフット講座。「アメリカンフットボールの本当の魅力」。8月2日(土曜日)午後6時から2時間。大阪・中之島フェスティバルタワー12階、アサコムホール 会員2860円、一般3300円(設備費110円を含む)。申し込み、問い合わせは主催の朝日カルチャーセンター川西教室(072―755―2381)」 
 この講座は毎年のように朝日カルチャーセンター川西教室で開かれてきたが、足の便の良い大阪市内中心部で開催してほしいというファンからの要望もあり、今年は中之島に会場が変更されたそうだ。広く豪華なアサコムホールで、さて、どんな話が展開されるのか。どんな映像が映し出されるのか。今からワクワクしている。
https://www.asahiculture.com/asahiculture/asp-webapp/web/WWebKozaShosaiNyuryoku.do?kozaId=8018326
 さらに今年は東京でも8月23日に小野ディレクターによる講演が初めて開かれることになった。
「K.G.ファイターズ東京講演会」
主催:一般社団法人「KG FIGHTERS CLUB」(関西学院大学アメリカンフットボール部OBOG会)
日時:2025年8月23日(土)15時半〜17時半(開場は15時)
場所:ワイム貸会議室 高田馬場(東京都新宿区高田馬場1-29-9TDビル6階)
講師:小野宏 関西学院大学アメリカンフットボール部ディレクター
「アメリカンフットボールの本当の魅力 〜2024年の激闘を振り返る&2025秋の展望〜」
申し込み:https://forms.gle/Vo3r7SuB8VjQgD7w6
受講料:3000円(税込)
http://www.kgfighters.com/topics_detail2/id=1649
 以前から東京の関学同窓の方々から要望があったと聞く。関東近辺のファイターズファンの皆さんは、シーズン直前の時期にぜひ聞きに行かれてはいかがだろうか。
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2025年06月10日

(5)法政に完勝して雪辱

 6月8日は、王子スタジアムで春シーズン最後の試合。相手は法政大。昨年の全日本大学選手権準決勝で苦い汁を飲まされたチームである。それぞれ当時の4年生が卒業し、メンバーはかなり入れ替わっているが、春シーズンを締めくくり、「チームの現在地」を知るためには、最適の相手であろう。
 先攻はファイターズ。自陣25ヤードから始まった最初のプレーは、QB星野弟のスクランブル。5ヤードを稼ぐとともに、自身の気持ちをほぐす狙いもあったのだろう。このプレーで落ち着いたのか、次はWR百田への短いパス。それも決まって、ダウンを更新。続けてRB井上、平野に走らせ、相手陣に入る。
 気持ちにゆとりができると、プレーの選択肢も広がる。次はWR五十嵐への長いパス。これが決まって相手ゴール前5ヤード。ここからRB松村と平野を走らせてTD。K降矢のキックも決まって7―0。攻撃陣が結束して主導権を握った。
 攻撃陣が役割を果たすと、守備陣も奮起する。ラインが相手を押し込み、相手のラン攻撃の芽を摘み、前進を許さない。
 相手は、パスで活路を開こうとしたが、守備陣はそれにも適切に反応する。1度はダウンを更新されたが、2度目は許さない。DB東耕が相手のパスを奪い取り、関学陣38ヤードからの攻撃につなげる。
 守備が頑張れば、攻撃の意気も上がる。まずはRB平野が走り、次はQB星野太吾からWR百田へのパス。相手ゴールまで28ヤードまで迫ったところで、WR小段へのミドルパス。それが見事に決まってTD。PATも決めて14―0とリードを広げる。
 攻撃が順調に進めば、守備陣にもゆとりが生まれる。次の法政の攻撃を完封し、再び攻撃権を取り戻す。
 第2Qに入ってすぐに始まったファイターズの攻撃は、自陣24ヤード付近から。ここからランとパスを巧妙に使い分けて前進。立て続けにダウンを更新し、仕上げは星野。相手守備陣がレシーバーとRBをマークしている間隙をついて、ゴールまでの22ヤードを走り抜けてTD。20―0とリードを広げる。
 攻撃が勢いづけば、守備も踏ん張る。
 次の法政の攻撃は自陣25ヤードから。その第1プレーで一瞬、守備陣のカバーが遅れ、あわや独走という場面があったが、DB伊東が俊敏な動きでそれを防ぐ。彼は高校時代、サッカーをやっていたが、大学では「日本一」のファイターズでアメフットをやりたいと志願してきた男だ。
 彼の動きに刺激されたのか、次のプレーでは同じ3年生のLB油谷が果敢なタックルでボールキャリアを止める。
 守備陣の活発な動きが出ると、攻撃陣も呼応する。自陣36ヤード付近から始まった次のオフェンス。QB星野からの短いパスを受けた4年生WR五十嵐が次々と相手DBをかわし、そのまま相手ゴールまで駆け込んだ。独走を食い止めようとして手の届きそうな場所まで迫ってきた選手だけでも4人。昨年の甲子園ボウルで栄冠を手にしたチームで登用された超一流のメンバーである。
 そんな選手の動きを次々と巧みなステップでかわし、TDにまで持ち込んだ五十嵐の粘りと技術。小野ディレクターの現役時代から、ファイターズを応援してきた僕にも、こんなプレーを見た記憶は数少ない。
 話が横道に入った。試合に戻る。
 ファイターズが27―0とリードして迎えた第3Q。点差には関係なく、相手はランプレーを軸に粘り強く攻め込んでくる。4度にわたってダウンを更新し、仕上げにFGを狙う。それが外れて前半終了。
 第3Qが始まる。法政は自陣23ヤードから始まった攻撃で4回続けてダウンを更新。あれよあれよという間にゴール前30ヤードまで陣地を進めてくる。これはやばいと思ったが、肝心なところでラン攻撃が進まず、やむなくFGにチャレンジ。これが外れて攻守交代。
 ファイターズの攻撃は自陣25ヤードから。この時点で27―0とリードしているだけに、チームにはゆとりがある。ランプレーを中心に、時間を使いながら攻撃を続ける。RB深村のラン、WR川崎や百田への短いパスなどで確実に陣地を進める。
 そうして迎えた第4Q。最初のプレーで、RB平野が4ヤードを走りTD。キックも決まって34―0。
 試合終了間近に相手にTDを決められたが、最終のスコアは34―7。ファイターズの現在地を知る格好の試合となった。
 しかしながら、手強い相手は法政だけではない。目の前の関西には関大、立命という厄介な相手がいる。日本一を目指すためには、この夏、必死に鍛えて自らの力を高めるしかない。春の試合で見つけた自らの強さと弱さを胸に刻み、仲間と励ましあいながら、1段も2段も上の世界を目指してもらいたい。頑張るのはいま、この時だ。
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2025年05月27日

(4)もう一つ上の世界

 25日午後、神戸市の王子スタジアムで行われた関西大学との試合は、春とは思えぬほど熱のこもった戦いとなった。
 双方ともに、秋の本番を意識しているのだろう。攻守ともに、この相手に勝たなくては甲子園への道は開けないと思い定めたようなプレーを連発。互いに一歩も譲らぬ気持ちをぶつけあった。
 結果は17―9。後半、QB星野弟からWR小段へのホットラインが機能したファイターズが勝利したが、どちらが勝っても「よくやった。秋にもこんな試合を見せてくれ」と言いたくなるような戦いとなった。
 先手を取ったのは、能力の高いQBとRBが息の合ったプレーで陣地を進めた関大。最初の攻撃シリーズこそハーフライン近くで止められたが、続くファイターズの攻撃で、QB星野の投じたパスを関大DLがはじき上げ、浮いた球を守備陣がキャッチして攻守交代。
 思わぬ展開となったが、今度はファイターズ守備陣が踏ん張る。相手のラン攻撃をしっかり封じ込め、なんとかFGの3点を与えただけで食い止める。
 次のファイターズは自陣20ヤードから。焦らず、ラン攻撃で陣地を進める。その圧力に押されたのか、相手守備陣がレイトヒットの反則。ファイターズはそれを機に相手陣に入り、仕上げはK大西の47ヤードFG。相手に傾きかけた流れを取り戻す。
 3―3のまま2Qに入る。互いに相手の動きが読めてきたようだが、能力の高いQBとスピードにあふれたRBを有する関大の勢いは止まらない。それを必死に食い止めるファイターズの守備陣。互いに一歩も譲らぬまま前半終了。
 3Qに入っても関大の勢いは止まらない。ファイターズのパスを奪い取って攻撃権を手にすると、ランプレーでぐいぐいと攻め込んでくる。それをファイターズ守備陣が必死に食い止めるが、FGを立て続けに決められ、3Q終了時点では9−3。
 けれども、ファイターズの攻撃陣もQB星野からWR小段へのパスを武器にして攻撃の幅を広げ、テンポよく攻め込む。4Q開始早々、星野から小段へのパスを続けさまに通してTD。PATも決めて10−9と逆転。
 こうなると、守備陣も勢いづく。次の相手攻撃をしっかり抑えてパントに追い込む。
 勢いはファイターズ。即座に攻撃権を取り戻す。ここからRB平野のラン、WR百田へのパスと目先を変え、時間を使いながら陣地を進める。途中、一度は相手に攻撃権を奪われたが、守備陣が的確に対応し、即座にセンターライン付近で攻守交代。残り時間は5分を切っている。
 ここからチームでも有数の安定感がある小段へのパス、RB平野のランなどで陣地を進め、相手ゴールに迫る。十分に時間を消費したと見極めたところで、再び小段へのパス。それが決まって16−9。キックも決まって17−9。厳しい戦いに勝利を収めた。
 このように試合経過を振り返ると、ファイターズが順当に勝利を手にしたと思われる読者もおいでになるだろう。
 しかし、前半の相手の戦い方、とりわけ運動能力の高い選手たちの動きを見ていると、とてもじゃないが、そんな気分にはなれない。それは試合でぶつかり合った選手にとっても同様であろう。
 強い相手がいるから、勝ちたいという気持ちが生まれる。それが向上心を刺激し、もう一つ上の世界を見てみたくなる。その繰り返しで人は成長する。
 それが、大学卒業後、60年近く現役の新聞記者として働いてきた私の実感である。ファイターズに身を置く諸君もまた、「もう一つ上の世界」を見るために頑張ってもらいたい。
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2025年05月13日

(3)ホームで披露「新しい力」

 11日は、龍谷大学とのJV戦。会場は上ヶ原の第3フィールド。入場料は無料。事前の広報が少なかったせいもあってか、グラウンドに顔を出すと、見知らぬ人から「今日はJV戦ですか」と声をかけられた。
 JV戦であろうとなかろうと、私にとってはさしたる区別はない。この季節になると、今春、入部したばかりの新入生がぼつぼつ起用されるようになるから、彼らの動きを見るのが何よりも楽しい。
 折も折、アシスタントディレクターの宮本さんから声が掛かる。「今日の試合、1年生RBの森下に注目して下さい。きっと、驚かれると思いますよ」。「確かスポーツ選抜入試の勉強会に出ていた生徒ですね。近年は対面ではなくインターネットを通じた勉強会だから、顔と名前がすぐに合わないけど、背番号を頼りにチェックして応援します」。そんな会話をしているうちに試合が始まる。
 先攻はファイターズ。自陣30ヤード付近から攻撃を開始。まずは先発のQB星野弟が立て続けにWRに短いパスを通して陣地を進める。相手守備陣がパスを警戒すると、今度はRB深村のランで相手ゴール前28ヤード。仕上げは星野からWRリンスコットへのパスでTD。キックも決まって7―0。精度の高いパスとランを織り交ぜた攻撃で試合の主導権を握った。
 けれども、快調にスタートしても、試合経験の少ないメンバーが出てくると、様子が変わる。立ち上がりは攻守ともに、ちぐはぐな動きが出て、逆に相手は勢いづく。
 そういう膠着状況の中で目を引いたのが、宮本さんの話にあったRB森下。第3Q早々、相手のFGで7−6と追い上げられた場面である。自陣24ヤード付近から始まったファイターズの攻撃で2回続けて走り、あっと間に相手陣38ヤード。勢いづいたチームはそこからランとパスを織り交ぜて陣地を進める。途中、短いパスを通して、仕上げは3年生RB松村の19ヤードラン。14―6とリードを広げる。
 守備陣が頑張って、相手攻撃を抑えて迎えたファイターズの次の攻撃は、センターライン付近から。ここでも森下が走って即座にダウンを更新。勢いに乗ったQB片境がWR川崎へのパスを通して相手ゴール前。途中、ランプレーで時計を進め、最後の5ヤードは川崎へのTDパス。それが通って試合終了。
 このように、メンバーは次々と交代したが、守備陣が踏ん張り、攻撃陣もそれに呼応して頑張った。攻守ともに工夫を凝らしてファイターズに挑んできた龍谷大学の戦いも素晴らしかったが、それを若いメンバーを積極的に起用したファイターズが破った。両チームにとって、思った以上に収穫があった試合ではないか。こんな試合なら、これからもどんどんやってほしい。そんなことを考えながら家路についた。
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2025年05月06日

(2)新戦力が次々と

 春シーズン2試合目の相手は京大。かつてはともに、学生アメフット界のトップを目指して闘い続けた相手である。近年は組織が強化され、練習環境も整ったファイターズが有利な戦いを続けているが、それでも「宿命のライバル」意識は存在し、秋のリーグ戦では毎年のように厳しい戦いを続けている。
 以下は余談だが、そんな京大の全盛期に、朝日新聞社会部の記者をしていた僕は、当時の水野監督に単独インタビューを敢行。「ギャングスターズはなぜ勝てるのか、その強さの秘密は」と聞いたことがある。
 その質問に対する答えは「僕は毎年、新しいシーズンが始まる前に新4年生全員と個人面談をしますが、その時に必ず聞くのが『1升瓶に1升2合の水をどうしたら入れられるか』ということです。
 もちろん、そんなことは物理的に不可能です。けれども『それは不可能です』とするようではダメです。ダメと分かっていても、なにか方法はないかと考えること、そこから道は開けると僕は考えているのです」というような話だった。
 「強力な相手に勝つためには工夫が必要。そのためには、考えて考えて考えよ、というようなことですかね」と僕が応じると「まあ、そんなことですかね」と笑っておられた。その余裕のある表情が今も忘れられない。
 スタートしたばかりの今季のファイターズがそんな遺伝子を引き継ぐ京大を相手にどんな闘いをするのか。相手はどんな仕掛けをしてくるのか。あれこれ考えているうちにキックオフ。
 立ち上がり、相手のキックがサイドラインを割り、ファイターズは自陣35ヤードからの攻撃。QB星野弟がいきなり10ヤード走ってダウンを更新。続けて今度はWR五十嵐への短いパス。さらにランとパス、QBキープを織り交ぜて攻め続け、仕上げはRB井上の中央突破でTD。大西のキックも決まって7―0。
 続く京大の攻撃を4プレーで防ぎ、再びファイターズの攻撃。パスとランを組み合わせて陣地を進めるが、相手の守備も堅く、追加点は遠い。
 守備が堅いのはファイターズも同様だ。DB城島が鋭い出足で立て続けに相手の動きを止め、陣地の回復を許さない。双方が守りあう展開で前半終了。
 後半に入ると、ファイターズの攻守がかみ合ってくる。
 まずは最初の相手攻撃を守備陣が完封。それを受けて攻撃陣はTEへのパス、RBの中央突破、QBのキープなどで陣地を進める。小段への長いパスが相手の反則を誘発したこともあって、あっという間にゴール前10ヤード。ここからRB井上が5ヤード、深村が残り5ヤードを走ってTD。13―0とリードを広げる。
 勢いづいた攻撃に守備陣が応え、次の京大の攻撃を完封。それを受けた攻撃陣はQB星野弟がWR五十嵐に30ヤードのパスを通してTD。PATも決めて20―0。4Qに入っても攻撃の手を緩めず、FGで3点、星野からWRリンスコットへのTDパスとPATで7点。30―0で試合を締めくくった。
 このように試合経過だけを紹介していくと、ファイターズの圧勝のように受け止められる方も多いだろう。けれども、勝負はそんなに甘くはない。この展開のどこかでミスがあれば、相手に流れが移っていた可能性もある。そういう意味では、後半になって投入されたメンバーを含め、全員が最後まで手を緩めることなく戦ったこの試合の意義は大きい。この日の収穫と反省を上ヶ原での練習に生かし、よりたくましい集団になるべく励んでもらいたい。
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2025年04月21日

(1)新しいシーズン

 2025年4月19日、ファイターズの春シーズンが開幕した。相手は立教大学。古くから縁のあるチームである。会場は神戸市の王子スタジアム。待ちに待った初戦とあって、試合が始まる1時間以上前からファイターズの応援席はほぼ満席。私もまた、今季はどんなメンバーが出ているのかと、ワクワクしながら、チームが用意してくれたメンバー表に目を通す。
 攻守ともに、新しい名前が並んでいる。昨年の秋に先発メンバーとして出場していたのは、ほんの数人しかいない。けれども、昨季はともにけがに苦しんだQB星野(兄)君やWR小段君が試合開始直後から活躍。オフェンスの牽引者としての役割を果たしてくれた。   
 一方、昨季はLBとして注目された2年生の永井君が今季はRBに転向。立ち上がりから鋭い動きで陣地を稼ぎ、RBとしても高い能力があることを見せてくれた。
 守備で目を引いたのは、今季の主務を兼任するLBの大竹君。相手の最初の攻撃シリーズ3プレー目で相手パスを奪い取った。場所は相手ゴールまで26ヤードの地点。このプレーがファイターズのFGに結びつき、3点を先制。主務の仕事とプレーヤーを両立させるのは大変だろうが、このようなプレーを見せつけられると、守備の要としての役割にも期待が高まる。
 逆に、こうした試合展開に浮足立ったのか、相手にミスが出てファイターズが敵陣25ヤードからの攻撃権を手にした。この好機をRB井上君の5ヤードラン、WR百田君への11ヤードパスなどでつなぎ、仕上げはQB星野君からWR五十嵐君への8ヤードパスでTD。PATも決めて10−0とリードを広げる。
 これで、試合は落ち着き、ファイターズは次々とメンバーを入れ替える。QBは後半、星野君の弟に交代し、攻守ともに次々と新しいメンバーが登場する。開幕戦ということで、一人でも多く試合経験を積ませたい、練習時と同じパフォーマンスができるのか確認したい、というベンチの配慮もあったのだろう。
 終わって見れば10−0。第4Q終了まで点差の開かないままに終わった緊張感の中で進んだ試合で、その目的は十分に達せられたのではないか。
 この日、初めて対外試合の経験を積んだメンバーを含め、チームの全員がこの日の経験を糧に、更なる高みを目指してもらいたい。
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