甲子園ボウルへの出場権を目指す大学選手権準決勝の相手は法政大学。舞台は東京・江戸川区のスピアーズえどりくフィールド。恥ずかしながら初めて聞く競技場である。試合の前々日、上ケ原のグラウンドで、ファイターズの練習を見学している時、K.G.FIGHTERS CLUB(OB/OG会)前会長の竹田さんから「法政戦には当日の出発ですか」と聞かれ、「知らない場所だし、東京まで出掛けるのは、高齢者にはつらい。当日はネットの中継を見ながら応援させていただきます」と答えた。
ところが、ネットの中継を一人で見るというのも、なんか物寂しい。そんな時に、自宅から自転車で10分ほどの場所に住む友人から、ネットの中継をテレビで観戦しながら応援しないか、と声をかけてくれた。
早速、彼の自宅に押し掛け、テレビの画面に集中する。しかし、試合の状況は厳しい。立ち上がり、ファイターズはRB伊丹と澤井、それにQB星野弟による徹底したラン攻撃。途中に1本、WR小段へのパスを通して立て続けにダウンを更新する。これはいい感じ、と思った途端に相手がインターセプト。せっかくの勢いに水を差される。
しかし、その2プレー後、今度は1年生DL田中がインターセプトのお返し。素早い身のこなしで相手レシーバーの前に入ってジャンプ。見事にパスを捕らえる。さすがは高校時代、DLとTEの両面でスタメンに起用され、チームの攻守の要となっていた選手である。その力をこの舞台で発揮した度胸も満点だ。
次の攻撃シリーズもファイターズはランプレーが中心。途中、短いパスを1本盛り込んでダウンを更新し続け、K楯がFGを決めて3点を先制する。
だが、相手もスピードがあって身のこなしも軽やかなRBを駆使して一気に攻め込んでくる。途中、第4ダウンショートという場面でも果敢にプレーを選択。しっかりダウンを更新して、仕上げはFG。即座に同点に追いつく。
しかし、ファイターズの士気は高い。OL近藤が強烈なブロックで走路を開き、RBが陣地を稼ぐ。QB星野弟がWR五十嵐へ短いパスを通して陣地を稼ぎ、相手がパスを警戒すると今度は澤井や伊丹を走らせる。RB陣に警戒の目が集まると、再びパスアタック。ランとパスをうまく噛み合わせて陣地を稼ぎ、仕上げはWR坂口への短いパスでTD。キックも決めて10−3とリードする。
相手も負けてはいない。次の攻撃シリーズで即座にやり返す。それもファイターズと同様、パスとランをうまく使い分けた攻撃だから、守備陣が対応しきれない。あっという間にTD。キックも決めて即座に同点に追いつく。
前半が終了し、第3Qが終わっても、両者の均衡が保たれたまま。
均衡を破ったのは法政。身のこなしの軽快なRBを駆使して陣地を進め、4Qに入ってすぐに短いパスでTD。キックも決めて17−10と引き離す。
「これはやばいぞ」という気持ちと、「いや、この試合は1Qが15分。時間はたっぷりある。じっくり自分たちのペースで攻めてくれ」という気持ちが交錯する中で試合は進む。そうした中で反撃のチャンスを切り開いたのがファイターズ守備陣。第4Qが始まって間もなくの自軍の攻撃が不発に終わった後の相手の攻撃をしっかり食い止め、再び攻撃陣にボールを渡す。
その最初のプレーで、星野が同じ1年生のWR立花に8ヤードのパスを決め、「うちはランばかりではない、パスもあるぞ」と相手を警戒させたうえで、伊丹と澤井を走らせる。相手の目がランプレーに向いたと見極めると再び立花へのパス。そういう形で陣地を進める。一度、攻撃権が相手に移ったが、守備陣がしっかり押さえ、再びファイターズの攻撃。そこからもパスとランを絶妙に使い分けて陣地を進めて相手に追いつき、17−17で延長戦に入った。
迎えたタイブレーク。守備陣は法政の攻撃をFGによる3点に抑えたが、後攻のファイターズのキックは外れ、勝敗が分かれた。
選手や関係者の無念を思うと、言葉もない。チームの柱と期待されながら、けがで出場がかなわなかったメンバーの胸中を想像するだけでもつらくなる。このコラムを書くこと自体を遠慮したい気持ちになる。
このコラムを書かせていただくようになったのは、たしか2006年。朝日新聞社を退職して間もないころだった。以来、関西で開かれる公式戦はすべて試合会場に出向いて応援し、プレーヤーとしても、スタッフとしても活動したことのない素人の目に映る場面を記録し、文章にしてきたが、横着した報いだろうか。試合は17−17で延長戦に入り、最後は先攻の法政がFGを決め、それに失敗したファイターズが敗れた。関西リーグでの立命戦の敗北を加えると悔しさはさらに募る。
攻守の中心になる選手が何人もけがや特別な事情で戦列を離れざるを得なかったことを勘案すれば、ここまで勝ち進んできたことをもっと高く評価する人がいてもおかしくないし、逆に、つまらん言い訳はするな、今ある力で勝ち切るのがファイターズだ、これまで勝ち続けてきたチームもそれぞれに事情をかかえていたが、それを克服して勝ち続けてきた。だからこそ称賛されているのだ、という人もいるだろう。
そういう環境にあって、ここまで頑張ってきた今季のチームを僕は高く評価したい。関西リーグの立命戦で悔しい思いをし、東京での法政戦でまたも涙を飲む。それもまた人生の一里塚、勝ち続けてきたからこそ味わえる貴重な体験であると受け止め、明日への扉を開いてもらいたい。悔しい体験があってこそ、人は頑張れる。僕はその言葉をかみしめて生きてきた。
2024年12月02日
(16)悔しい結末
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2024年11月24日
(15)4年生の頑張りと1年生の奮闘
23日は、甲子園ボウルの出場権をかけて東西の上位チームが競う一日。関西代表の関大は早稲田と、ファイターズは慶応との試合が組まれた。
試合会場は神戸ユニバー記念競技場。神戸市の西端に近い山地を切り開いて建設された素晴らしい施設である。しかしながら、私の住んでいる西宮市からは距離があり、電車の乗り換えなどに戸惑うことも予想されるので、キックオフ(13時)のはるか前から自宅を出た。関東代表との戦いに気持ちが弾んでいたせいかもしれない。
ファイターズのレシーブで試合開始。リターナーとして起用されたのは1年生WRの立花。今春入部したばかりだが、レシーバーとして随時起用され、その才能の一端を披露している。どんな走りをしてくれるかと期待したが、相手の蹴ったボールがそこまで届かず、その前に構えていた伊丹がキャッチ。RBのエースでもある彼が相手陣48ヤードまでリターンした。そこから伊丹の時間が始まる。まずは左の密集を突いて5ヤードのラン。QB星野弟がWR小段に短いパスを通してダウンを更新すると、そこからは伊丹のワンマンショー。途中、WR五十嵐に短いパスを一つ通しただけで、あとはひたすら伊丹が走り続けてTDまでもっていく。大西のキックも決まって7ー0。
対する相手は徹底したパス攻撃。能力の高いQBが10ヤード前後のパスを投げ続けてダウンを2度更新。ぐいぐいと陣地を進めてくる。その攻勢を受け止めるのがファイターズの守備陣。けがから復帰したばかりの1年生DE田中志門の奮闘もあって、決定的なチャンスは与えない。1Qの終盤から2Qに移っても、パス中心の慶応、伊丹のランを中心とした関学という状況は変わらない。その流れを切ったのがDB杉本。相手が投じたハーフライン近くのパスを奪って攻守交代。ファイターズはそこから伊丹のラン、星野からWR百田へのパス、再び伊丹のラン、さらには再度WR百田へのパスなどで着実に陣地を進め、伊丹のランでTD。13ー0とリードを広げる。
後半になってもパスの慶応、ランとパスの関学という構図は変わらない。
慶応の攻撃で始まった第3Q最初のシリーズ。相手のパスが思い通りに通らず、わずか4プレーで攻守交代。ハーフライン近くから始まったファイターズの攻撃は星野弟からWR五十嵐へのパス、RB伊丹のラン、TE安藤へのパスなどで陣地を進める。相手ゴール前20ヤード付近まで到達すると、そこから7回連続でボールを伊丹に託す。その期待に応えた伊丹が残り2ヤードをジャンプして相手ゴールにボールを運びTD。大西のキックも決まって20ー0。
その後、第4Qに相手のパスで7点を返されたが、20ー7で試合は終了。ファイターズの堅い守りと、思い切った攻めが功を奏した。
チームの柱となる4年生が力を発揮し、今春入学したばかりの1年生がそれに張り合って力を発揮し始める。この日は1年生のQB星野弟、WR立花、DB小暮が先発で起用され期待に応えた。春のシーズンにいち早くデビューしたDL田中志門もけがから回復、元気に戻ってきた。LBの永井弟も、試合の立ち上がりで素晴らしいタックルを決めている。
1年生の彼らが大学フットボールの経験を積み、さらに成長してくれれば、関西リーグで立命に敗れ、悔しい思いをしたチームの雰囲気にも影響するだろう。その悔しさをかみしめ、それを起爆剤にして奮闘している4年生と、大学生の試合に出られること、チームに貢献できることを励みにして日々成長を続けるフレッシュマン。双方の努力がかみ合えば、チームはさらに成長する。そこから甲子園ボウルへの道が開ける。
上級生、下級生関係なく力を発揮できる環境が整っているのがファイターズの最大の強みである。その強みを生かすべく更なる鍛錬を続け、残る2試合を勝ち続けてもらいたい。
試合会場は神戸ユニバー記念競技場。神戸市の西端に近い山地を切り開いて建設された素晴らしい施設である。しかしながら、私の住んでいる西宮市からは距離があり、電車の乗り換えなどに戸惑うことも予想されるので、キックオフ(13時)のはるか前から自宅を出た。関東代表との戦いに気持ちが弾んでいたせいかもしれない。
ファイターズのレシーブで試合開始。リターナーとして起用されたのは1年生WRの立花。今春入部したばかりだが、レシーバーとして随時起用され、その才能の一端を披露している。どんな走りをしてくれるかと期待したが、相手の蹴ったボールがそこまで届かず、その前に構えていた伊丹がキャッチ。RBのエースでもある彼が相手陣48ヤードまでリターンした。そこから伊丹の時間が始まる。まずは左の密集を突いて5ヤードのラン。QB星野弟がWR小段に短いパスを通してダウンを更新すると、そこからは伊丹のワンマンショー。途中、WR五十嵐に短いパスを一つ通しただけで、あとはひたすら伊丹が走り続けてTDまでもっていく。大西のキックも決まって7ー0。
対する相手は徹底したパス攻撃。能力の高いQBが10ヤード前後のパスを投げ続けてダウンを2度更新。ぐいぐいと陣地を進めてくる。その攻勢を受け止めるのがファイターズの守備陣。けがから復帰したばかりの1年生DE田中志門の奮闘もあって、決定的なチャンスは与えない。1Qの終盤から2Qに移っても、パス中心の慶応、伊丹のランを中心とした関学という状況は変わらない。その流れを切ったのがDB杉本。相手が投じたハーフライン近くのパスを奪って攻守交代。ファイターズはそこから伊丹のラン、星野からWR百田へのパス、再び伊丹のラン、さらには再度WR百田へのパスなどで着実に陣地を進め、伊丹のランでTD。13ー0とリードを広げる。
後半になってもパスの慶応、ランとパスの関学という構図は変わらない。
慶応の攻撃で始まった第3Q最初のシリーズ。相手のパスが思い通りに通らず、わずか4プレーで攻守交代。ハーフライン近くから始まったファイターズの攻撃は星野弟からWR五十嵐へのパス、RB伊丹のラン、TE安藤へのパスなどで陣地を進める。相手ゴール前20ヤード付近まで到達すると、そこから7回連続でボールを伊丹に託す。その期待に応えた伊丹が残り2ヤードをジャンプして相手ゴールにボールを運びTD。大西のキックも決まって20ー0。
その後、第4Qに相手のパスで7点を返されたが、20ー7で試合は終了。ファイターズの堅い守りと、思い切った攻めが功を奏した。
チームの柱となる4年生が力を発揮し、今春入学したばかりの1年生がそれに張り合って力を発揮し始める。この日は1年生のQB星野弟、WR立花、DB小暮が先発で起用され期待に応えた。春のシーズンにいち早くデビューしたDL田中志門もけがから回復、元気に戻ってきた。LBの永井弟も、試合の立ち上がりで素晴らしいタックルを決めている。
1年生の彼らが大学フットボールの経験を積み、さらに成長してくれれば、関西リーグで立命に敗れ、悔しい思いをしたチームの雰囲気にも影響するだろう。その悔しさをかみしめ、それを起爆剤にして奮闘している4年生と、大学生の試合に出られること、チームに貢献できることを励みにして日々成長を続けるフレッシュマン。双方の努力がかみ合えば、チームはさらに成長する。そこから甲子園ボウルへの道が開ける。
上級生、下級生関係なく力を発揮できる環境が整っているのがファイターズの最大の強みである。その強みを生かすべく更なる鍛錬を続け、残る2試合を勝ち続けてもらいたい。
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2024年11月12日
(14)悔しい戦いを糧に
今年度の関西学生リーグ最終戦、立命館大学との試合中、僕の胸中にはずっと「我慢や」「耐えろ」「踏ん張れ」という言葉が交錯していた。
それほど厳しい戦いだった。力強いラインと能力の高いQB、RBを擁する相手は、攻撃に絶対の自信を持っているようで、真っ向からの戦を挑んでくる。QBは長いパスを次々と投じてくるし、時には自らボールを保持して密集を突き抜け、ダウンを更新する。主将・永井兄が率いるファイターズの守備陣もそれに対応。肝心なところはピタリと抑え、なかなか得点を許さない。それでも先手を取ったのは立命。立命陣25ヤードから始まった攻撃シリーズ。相手QBは長いパスを投じ、自らボールをもって突進する。18ヤードを走り、次は長いパス。一気にゴール前に攻め込むと、残り2ヤードを2年生RBがTDに仕上げる。これは手強いぞ、と感心しながら次なるファイターズの攻撃に目をやる。QBは1年生の星野弟。まずはWR百田へのパスで6ヤード、次はRB伊丹が走って9ヤード。相手の目がランプレーに集まったところで1年生WR立花へのミドルパス。22ヤードを稼いでハーフラインを越える。そこからWR小段への短いパスを通したところで第1Qが終了。 攻める方向が変わっても、RB伊丹がランで陣地を進め、仕上げも伊丹。その動きを予知して備える相手守備陣を押し切ってTD。7ー6と迫る。
しかし、相手も手強い。ファイターズのキックで始まった次のプレー。守備陣のカバーに一瞬のスキができたのに乗じて相手の主将RBが65ヤードを独走。あっという間に14−6と引き離される。長年、ファイターズを応援してきたが、こんな場面に遭遇したのは久しぶりだ。一瞬、呆然としたが、それでも試合は続く。今度は自陣35ヤード付近からの攻撃だ。我慢のしどころであり、気持ちを奮い立たせる場面だ。その期待に応えて星野が百田や五十嵐に次々とミドルパスを通し、あっというまに相手陣に入る。間にランプレー二つを挟んで再び百田へのミドルへパス。しっかり陣地を進めた後はRB陣の出番。TE安藤へのパスを一つ挟んだ後、伊丹が中央突破でTD。2点を狙った伊丹のランも決まって14−14と追いつく。続く相手の攻撃は時間との闘い。第2Qも残り2分を切っていたが、巧みにパスを織り交ぜ、時計を止めながら攻め続け、しっかりFGに仕上げて17−14で前半終了。
後半に入っても立命の攻撃、ファイターズの守備という構図は変わらない。互いにがっぷり組み合って譲らず、第3Qは双方ともに無得点。第4Q終盤に立命がランプレーでTDを挙げ、24―14で勝利。双方ともに6勝1敗で今季関西リーグを終えた。しかし、当事者同士の対戦で立命が勝利していることから、甲子園ボウル出場権をめぐる扱いは立命が1位相当。ファイターズが2番手となった。
ファイターズはこの後、全日本大学選手権のトーナメント準々決勝でまず関東3位の慶應大と対戦し、勝てば準決勝でおそらく関東1位の法政大と対戦する。それにも勝利することができれば、決勝の甲子園ボウルに出場できる。
ファイターズにはまだ挽回の機会はある。主力に負傷者が多く、最後まで不本意な戦いを強いられた今季の関西リーグだが、いまは我慢の時である。 全員が心を結び、火の玉となって甲子園ボウル出場に向かって戦おうではないか。
それほど厳しい戦いだった。力強いラインと能力の高いQB、RBを擁する相手は、攻撃に絶対の自信を持っているようで、真っ向からの戦を挑んでくる。QBは長いパスを次々と投じてくるし、時には自らボールを保持して密集を突き抜け、ダウンを更新する。主将・永井兄が率いるファイターズの守備陣もそれに対応。肝心なところはピタリと抑え、なかなか得点を許さない。それでも先手を取ったのは立命。立命陣25ヤードから始まった攻撃シリーズ。相手QBは長いパスを投じ、自らボールをもって突進する。18ヤードを走り、次は長いパス。一気にゴール前に攻め込むと、残り2ヤードを2年生RBがTDに仕上げる。これは手強いぞ、と感心しながら次なるファイターズの攻撃に目をやる。QBは1年生の星野弟。まずはWR百田へのパスで6ヤード、次はRB伊丹が走って9ヤード。相手の目がランプレーに集まったところで1年生WR立花へのミドルパス。22ヤードを稼いでハーフラインを越える。そこからWR小段への短いパスを通したところで第1Qが終了。 攻める方向が変わっても、RB伊丹がランで陣地を進め、仕上げも伊丹。その動きを予知して備える相手守備陣を押し切ってTD。7ー6と迫る。
しかし、相手も手強い。ファイターズのキックで始まった次のプレー。守備陣のカバーに一瞬のスキができたのに乗じて相手の主将RBが65ヤードを独走。あっという間に14−6と引き離される。長年、ファイターズを応援してきたが、こんな場面に遭遇したのは久しぶりだ。一瞬、呆然としたが、それでも試合は続く。今度は自陣35ヤード付近からの攻撃だ。我慢のしどころであり、気持ちを奮い立たせる場面だ。その期待に応えて星野が百田や五十嵐に次々とミドルパスを通し、あっというまに相手陣に入る。間にランプレー二つを挟んで再び百田へのミドルへパス。しっかり陣地を進めた後はRB陣の出番。TE安藤へのパスを一つ挟んだ後、伊丹が中央突破でTD。2点を狙った伊丹のランも決まって14−14と追いつく。続く相手の攻撃は時間との闘い。第2Qも残り2分を切っていたが、巧みにパスを織り交ぜ、時計を止めながら攻め続け、しっかりFGに仕上げて17−14で前半終了。
後半に入っても立命の攻撃、ファイターズの守備という構図は変わらない。互いにがっぷり組み合って譲らず、第3Qは双方ともに無得点。第4Q終盤に立命がランプレーでTDを挙げ、24―14で勝利。双方ともに6勝1敗で今季関西リーグを終えた。しかし、当事者同士の対戦で立命が勝利していることから、甲子園ボウル出場権をめぐる扱いは立命が1位相当。ファイターズが2番手となった。
ファイターズはこの後、全日本大学選手権のトーナメント準々決勝でまず関東3位の慶應大と対戦し、勝てば準決勝でおそらく関東1位の法政大と対戦する。それにも勝利することができれば、決勝の甲子園ボウルに出場できる。
ファイターズにはまだ挽回の機会はある。主力に負傷者が多く、最後まで不本意な戦いを強いられた今季の関西リーグだが、いまは我慢の時である。 全員が心を結び、火の玉となって甲子園ボウル出場に向かって戦おうではないか。
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2024年11月08日
(13)関西学院の脈動
本箱を整理していたら、興味深い冊子が見つかった。2011年10月に朝日新聞出版が発行したアエラの「関西学院大学」特集号である。「世界市民になる」というサブタイトルにある通り、世界に羽ばたく関西学院大学の魅力を様々な角度からアピールした冊子である。
その中で「関西学院の脈動」というタイトルでに大学が誇るクラブ活動を二つ取り上げ、その魅力を現場から報告している。体育会系では「アメリカンフットボール部」、文化系では「グリークラブ」。アメフット部の紹介は8ページにわたり、そのトップには、見開き2ページを使って黄色い三日月が抱える「KG」の文字が輝く青いヘルメットが据えられている。
筆者は、グリークラブがプロのルポライター、そしてアメフット部は小生。その筆者紹介欄には1968年、文学部日本文学科卒、朝日新聞社会部記者、論説委員、編集委員を経て2006年度から紀伊民報編集局長などとあり、親切なことにファイターズの公式HPでコラム「スタンドから」を連載中とも記されている。
僕はそこで、戦後の草創期から開拓されたファイターズのアメフット人脈を紹介するとともに、指導者としても大きな足跡を残された米田満さん、古川明さん、武田建さんたちの業績を取り上げつつ、その下で育ったコーチや監督が引き継いだ「よき社会人を育てる」チーム作りと、ファイターズというチームの根底を流れる取り組みの一端を紹介している。
例えば、長く監督を務められた鳥内監督は、毎年新しいシーズンが始まる前に、新4年生と個別面談。「どのようにチームに貢献するのか、どのようなチームを作りたいのか」「フットボールを通じてどんな人間になりたいのか」と問いかけ、「上に立つ者ほど重い責任を負い、規範を守る取り組みが求められる」と強調されている。
選手に負けないくらいの気概を持って取り組んでいるマネジャーやトレーナー、分析スタッフのことにも触れ、毎年、納会で表彰される「アンサングヒーロー賞」、つまり「地味な働きであっても、身を挺してチームのために貢献した部員」に光を当てる賞についても説明。これがファイターズというチームの根っこにある考え方だと強調している。
大雑把に言えば、歴代のメンバーがライバルとの戦いの中で培い、醸成してきたファイターズの歴史、その特徴について記した文章である。
こんな記事を書き、印税を頂いたことなど、すっかり忘れていたが、今季、関西リーグの最終戦、立命大との戦いの直前に、ひょっこりと本棚から見つかったのも何かの縁だろう。チームに届け、現役の諸君を応援するささやかなツールになれば、と考えている。
その中で「関西学院の脈動」というタイトルでに大学が誇るクラブ活動を二つ取り上げ、その魅力を現場から報告している。体育会系では「アメリカンフットボール部」、文化系では「グリークラブ」。アメフット部の紹介は8ページにわたり、そのトップには、見開き2ページを使って黄色い三日月が抱える「KG」の文字が輝く青いヘルメットが据えられている。
筆者は、グリークラブがプロのルポライター、そしてアメフット部は小生。その筆者紹介欄には1968年、文学部日本文学科卒、朝日新聞社会部記者、論説委員、編集委員を経て2006年度から紀伊民報編集局長などとあり、親切なことにファイターズの公式HPでコラム「スタンドから」を連載中とも記されている。
僕はそこで、戦後の草創期から開拓されたファイターズのアメフット人脈を紹介するとともに、指導者としても大きな足跡を残された米田満さん、古川明さん、武田建さんたちの業績を取り上げつつ、その下で育ったコーチや監督が引き継いだ「よき社会人を育てる」チーム作りと、ファイターズというチームの根底を流れる取り組みの一端を紹介している。
例えば、長く監督を務められた鳥内監督は、毎年新しいシーズンが始まる前に、新4年生と個別面談。「どのようにチームに貢献するのか、どのようなチームを作りたいのか」「フットボールを通じてどんな人間になりたいのか」と問いかけ、「上に立つ者ほど重い責任を負い、規範を守る取り組みが求められる」と強調されている。
選手に負けないくらいの気概を持って取り組んでいるマネジャーやトレーナー、分析スタッフのことにも触れ、毎年、納会で表彰される「アンサングヒーロー賞」、つまり「地味な働きであっても、身を挺してチームのために貢献した部員」に光を当てる賞についても説明。これがファイターズというチームの根っこにある考え方だと強調している。
大雑把に言えば、歴代のメンバーがライバルとの戦いの中で培い、醸成してきたファイターズの歴史、その特徴について記した文章である。
こんな記事を書き、印税を頂いたことなど、すっかり忘れていたが、今季、関西リーグの最終戦、立命大との戦いの直前に、ひょっこりと本棚から見つかったのも何かの縁だろう。チームに届け、現役の諸君を応援するささやかなツールになれば、と考えている。
posted by コラム「スタンドから」 at 08:05| Comment(1)
| in 2024 Season
2024年10月29日
(12)見どころ満載の熱戦
26日は関大戦。まだ始まったばかりと思っていた今季の関西リーグも、はや終盤の戦いに突入している。
会場は東大阪市の花園ラグビー場。初めて訪れた競技場である。近鉄・東花園駅で降りて10分ほど。多分、選手やチアリーダーらの関係者だろう。にぎやかにおしゃべりながら足を運ぶおばさんたちの後ろを追いかけるように歩いていると、どでかい建物が見えてきた。外から見ても素晴らしい建物だが、入場してみると、さらに素晴らしい。美しく整備された芝生。
入場すると、美しく整備された芝生のグラウンドが広がっている。観客席はホームとビジターチームが全く平等になるように設計されており、双方の応援席に次々と応援の人たちが詰めかけてくる。私の住む西宮市から遠いのが難点といえば難点だが、そんな勝手な都合よりも観客席からグラウンド全体を俯瞰できるのが何よりだ。
ファイターズのレシーブで試合開始。その第1プレー。TE安藤がサイドライン沿いに駆け上がり、24ヤードほどのゲイン。ハーフライン付近から今度はRB伊丹が走り、パスを受けて、立て続けにダウンを更新。相手ゴール前28ヤード付近まで迫る。
押せ押せムードになったところで、なんとエースQB星野秀太が倒れた。立ち上がれないほどのダメージを受けている。先日の京大戦で復帰し、鮮やかな司令塔ぶりを発揮し、さすがはお兄ちゃん、とチームメートを安心させていたのに、復帰2戦目早々にまたもリタイア。「かわいそうに。神様もあんまりではないか」と思わず、天を仰ぐ。チームにも動揺があったのか、その次のプレーで狙ったFGは外れ、無得点で攻守交代。嫌な予感がする。
けれども、試合に臨んでいる選手たちは目の前のプレーに集中するしかない。守備陣が奮起し、1年生の時から活躍している能力の高い相手QBのパス攻撃を何とか食い止める。
「ここは我慢比べ。攻守とも我慢に我慢を重ね、機会を捕まえたら一気に爆発させてくれ」と祈るような気持である。
それにチームが応えてくれた。攻撃ではラインの面々が相手を押し込み、RBやQBが動きやすいように空間を作る。その空間を生かしてRB伊丹が立て続けに走る。素早い身のこなしとパワフルな動きで陣地を稼ぎ、あっという間に相手ゴール前10ヤード。「お兄ちゃん」に代わって出場したQB星野太吾の動きもよい。即座に8ヤードを走り、ゴール前2ヤード。相手は壁を作って防ぐが、オフェンスラインの押しが強く、その勢いを利してRB澤井がのTDにつなげる。キックも決まって7ー0。
相手も負けていない。次の攻撃シリーズではしっかりFGを決めて7ー3。2Qに入ってもスコアに差はあっても5分と5分の戦は続く。ファイターズがFGで3点を追加すれば関大も即座にFGを決めて10ー6。
「関大は自分たちの攻撃パターンを持っています。一方、ファイターズはオフェンス陣が相手を押し込んでいます。双方のチームがそれぞれの持ち味を生かした熱戦です」。ファイターズが場内だけで開局しているFM放送の解説を担当されている小野宏さんの声にも力が入ってくる。
そういう動きの中で、徐々に力を発揮し始めたのがファイターズ。自陣25ヤードから始まった次の攻撃シリーズで、まずはQB星野弟が14ヤードを走り、次はWR小段への短いパス。次はRB伊丹が45ヤードを走って相手ゴール前16ヤード。そこからRB澤井のランなどで陣地を進め、仕上げも澤井のラン。大西のキックも決まって17ー6とリードを広げる。
攻撃陣が安定すると、守備陣にも余裕が出る。第2Q終了間近に相手が投じたロングパスも、DB豊野が余裕をもってインターセプト。相手の攻撃を断ち切る。
後半になってもこの流れは変わらない。ファイターズはRB伊丹と澤井のランで陣地を稼ぎ、仕上げは星野弟からWR五十嵐へのTDパス。それが決まってさらにリードを広げる。第4Qに入っても勢いは止まらない。QB星野のドロープレーで陣地を稼ぎ、それに呼応する形でRB伊丹がTDを決める。立ち上がりの苦しさが嘘のようなゲーム展開となったが、それもこれもオフェンスラインが踏ん張り、DLやLB、DBがそれぞれの役割を忠実に果たしてきた結果だろう。格段に能力の高いQBとRB、レシーバーを有する相手が彼らの長所を生かすため、逆にプレーの幅を狭めてしまったように見えたのとは対照的な結果となった。
最終のスコアは31−15。ファイターズが勝利をつかんだが、こういう戦いぶりを目の前に見て、アメフットという競技の奥の深さをしみじみと感じた。双方がそれぞれの長所を生かそうとして知恵を絞り、技と力を真っ向からぶつけあったこの日の試合は、今後、ほかのチームにとっても格好の研究材料になるに違いない。
会場は東大阪市の花園ラグビー場。初めて訪れた競技場である。近鉄・東花園駅で降りて10分ほど。多分、選手やチアリーダーらの関係者だろう。にぎやかにおしゃべりながら足を運ぶおばさんたちの後ろを追いかけるように歩いていると、どでかい建物が見えてきた。外から見ても素晴らしい建物だが、入場してみると、さらに素晴らしい。美しく整備された芝生。
入場すると、美しく整備された芝生のグラウンドが広がっている。観客席はホームとビジターチームが全く平等になるように設計されており、双方の応援席に次々と応援の人たちが詰めかけてくる。私の住む西宮市から遠いのが難点といえば難点だが、そんな勝手な都合よりも観客席からグラウンド全体を俯瞰できるのが何よりだ。
ファイターズのレシーブで試合開始。その第1プレー。TE安藤がサイドライン沿いに駆け上がり、24ヤードほどのゲイン。ハーフライン付近から今度はRB伊丹が走り、パスを受けて、立て続けにダウンを更新。相手ゴール前28ヤード付近まで迫る。
押せ押せムードになったところで、なんとエースQB星野秀太が倒れた。立ち上がれないほどのダメージを受けている。先日の京大戦で復帰し、鮮やかな司令塔ぶりを発揮し、さすがはお兄ちゃん、とチームメートを安心させていたのに、復帰2戦目早々にまたもリタイア。「かわいそうに。神様もあんまりではないか」と思わず、天を仰ぐ。チームにも動揺があったのか、その次のプレーで狙ったFGは外れ、無得点で攻守交代。嫌な予感がする。
けれども、試合に臨んでいる選手たちは目の前のプレーに集中するしかない。守備陣が奮起し、1年生の時から活躍している能力の高い相手QBのパス攻撃を何とか食い止める。
「ここは我慢比べ。攻守とも我慢に我慢を重ね、機会を捕まえたら一気に爆発させてくれ」と祈るような気持である。
それにチームが応えてくれた。攻撃ではラインの面々が相手を押し込み、RBやQBが動きやすいように空間を作る。その空間を生かしてRB伊丹が立て続けに走る。素早い身のこなしとパワフルな動きで陣地を稼ぎ、あっという間に相手ゴール前10ヤード。「お兄ちゃん」に代わって出場したQB星野太吾の動きもよい。即座に8ヤードを走り、ゴール前2ヤード。相手は壁を作って防ぐが、オフェンスラインの押しが強く、その勢いを利してRB澤井がのTDにつなげる。キックも決まって7ー0。
相手も負けていない。次の攻撃シリーズではしっかりFGを決めて7ー3。2Qに入ってもスコアに差はあっても5分と5分の戦は続く。ファイターズがFGで3点を追加すれば関大も即座にFGを決めて10ー6。
「関大は自分たちの攻撃パターンを持っています。一方、ファイターズはオフェンス陣が相手を押し込んでいます。双方のチームがそれぞれの持ち味を生かした熱戦です」。ファイターズが場内だけで開局しているFM放送の解説を担当されている小野宏さんの声にも力が入ってくる。
そういう動きの中で、徐々に力を発揮し始めたのがファイターズ。自陣25ヤードから始まった次の攻撃シリーズで、まずはQB星野弟が14ヤードを走り、次はWR小段への短いパス。次はRB伊丹が45ヤードを走って相手ゴール前16ヤード。そこからRB澤井のランなどで陣地を進め、仕上げも澤井のラン。大西のキックも決まって17ー6とリードを広げる。
攻撃陣が安定すると、守備陣にも余裕が出る。第2Q終了間近に相手が投じたロングパスも、DB豊野が余裕をもってインターセプト。相手の攻撃を断ち切る。
後半になってもこの流れは変わらない。ファイターズはRB伊丹と澤井のランで陣地を稼ぎ、仕上げは星野弟からWR五十嵐へのTDパス。それが決まってさらにリードを広げる。第4Qに入っても勢いは止まらない。QB星野のドロープレーで陣地を稼ぎ、それに呼応する形でRB伊丹がTDを決める。立ち上がりの苦しさが嘘のようなゲーム展開となったが、それもこれもオフェンスラインが踏ん張り、DLやLB、DBがそれぞれの役割を忠実に果たしてきた結果だろう。格段に能力の高いQBとRB、レシーバーを有する相手が彼らの長所を生かすため、逆にプレーの幅を狭めてしまったように見えたのとは対照的な結果となった。
最終のスコアは31−15。ファイターズが勝利をつかんだが、こういう戦いぶりを目の前に見て、アメフットという競技の奥の深さをしみじみと感じた。双方がそれぞれの長所を生かそうとして知恵を絞り、技と力を真っ向からぶつけあったこの日の試合は、今後、ほかのチームにとっても格好の研究材料になるに違いない。
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2024年10月15日
(11)さあ、ここからが勝負!
13日は京大との対戦。かつては「宿命のライバル」と呼ばれ、何度も痛い目にあわされたチームである。僕は、朝日新聞大阪本社の社会部で「遊軍記者」として働いていたころに水野弥一監督(当時)にインタビューし、その「チーム作りの哲学」の一端を紙面で紹介したことがある。
例えばこんな言葉を覚えている。「僕は常々、選手に言うんです。1升瓶に1升の水を詰めることはだれにもできる。では、1升瓶に1升2合の水をどうしたら詰められるか」。もちろん選手は「それは無理です」と答える。「当然のことでしょう。でも、そこでまたいうんです。当然のことです、と言っている限り、初めから無理と言っている限り、関学には勝てない。何か方法はないかと考え、知恵を絞り、何とか突破口を見つけ、その壁を突破する手段、方法を考える。これまで関学に勝った先輩たちは、そういうことをやってきた。君らもそれをやらない限り関学には勝てんぞ」。
さすが「カリスマ」と呼ばれていた人の言葉である。恐ろしく乱暴な表現だが、選手を鼓舞し、やる気にさせる力があったのだろう。当時の京大は本当に強かった。
これは大昔の話ではあるが、13日、王子競技場で戦った京大の士気の高さを眼前に見て、思わずこの言葉と水野さんの魂が今もこのチームに宿っているのではないかと思ったことは確かである。
例えば立ち上がりの攻撃。彼らは能力の高いQBの力を最大限に発揮させるプレーを次々に選択。最初の攻撃シリーズでFGを決めて先制。守備陣もそれに応えてファイターズの攻撃を完封。2度目の攻撃もFGを狙える位置まで攻め込んできた。
そんな嫌な流れを変えたのがエースRB伊丹のランとQB星野弟からWR百田へのパス。それで落ち着いたのか、ハーフラインを超えたあたりから星野弟がWR五十嵐へ長いパス。それを確実にキャッチしてTD。7−3と逆転する。
しかし、相手の士気は衰えない。前半残り5分を切ったところでFGを決め、7−6と追いすがる。
それでもなんとか踏ん張るのが、今年のファイターズ。QB星野弟がWR小段や百田、五十嵐らに次々とミドルパスを通し、最後はK大西のFG。10ー6で前半を折り返す。
後半に入ると、QBが星野兄に交代。今季はけがで出遅れていたが、ようやく回復。満を持しての出場である。「大丈夫か、無理するなよ」と祈るような気持ちで見ていたが、本人は意気軒高。RB伊丹のラン、WR百田へのパスなどで陣地を進め、仕上げはRB伊丹。中央を突破してTD。
攻撃のエースが帰ってくると、チームは落ち着く。守備陣も余裕ができたのか、対応が的確になって、相手に陣地を進めさせない。
4Qに入ってすぐの攻撃シリーズも1年生WR立花へのパス、QBのスクランブル、伊丹のランなどで陣地を進める。仕上げも伊丹のランで24−6と引き離す。その後、TDを1本返されたが、相手の粘りもそこまで。ファイターズは攻守ともに次々と新しいメンバーを繰り出し、そのメンバーが期待に応える。RB井上、深村がTDを重ね、締めくくりは4年生QB柴原から3年生WR辻へのTDパス。この日、すべてのキックを決めている大西が最後のTFPも決めて45−12。前半の苦しい戦いが嘘のような結末になった。
しかし、リーグ戦はここからが勝負。続く関大、立命館には昨シーズン、苦しい戦いを強いられている。チームの真価が問われるのはここからである。気持ちを引き締め、反省すべきは反省し、一段と高いレベルを目指して励んでいただきたい。
例えばこんな言葉を覚えている。「僕は常々、選手に言うんです。1升瓶に1升の水を詰めることはだれにもできる。では、1升瓶に1升2合の水をどうしたら詰められるか」。もちろん選手は「それは無理です」と答える。「当然のことでしょう。でも、そこでまたいうんです。当然のことです、と言っている限り、初めから無理と言っている限り、関学には勝てない。何か方法はないかと考え、知恵を絞り、何とか突破口を見つけ、その壁を突破する手段、方法を考える。これまで関学に勝った先輩たちは、そういうことをやってきた。君らもそれをやらない限り関学には勝てんぞ」。
さすが「カリスマ」と呼ばれていた人の言葉である。恐ろしく乱暴な表現だが、選手を鼓舞し、やる気にさせる力があったのだろう。当時の京大は本当に強かった。
これは大昔の話ではあるが、13日、王子競技場で戦った京大の士気の高さを眼前に見て、思わずこの言葉と水野さんの魂が今もこのチームに宿っているのではないかと思ったことは確かである。
例えば立ち上がりの攻撃。彼らは能力の高いQBの力を最大限に発揮させるプレーを次々に選択。最初の攻撃シリーズでFGを決めて先制。守備陣もそれに応えてファイターズの攻撃を完封。2度目の攻撃もFGを狙える位置まで攻め込んできた。
そんな嫌な流れを変えたのがエースRB伊丹のランとQB星野弟からWR百田へのパス。それで落ち着いたのか、ハーフラインを超えたあたりから星野弟がWR五十嵐へ長いパス。それを確実にキャッチしてTD。7−3と逆転する。
しかし、相手の士気は衰えない。前半残り5分を切ったところでFGを決め、7−6と追いすがる。
それでもなんとか踏ん張るのが、今年のファイターズ。QB星野弟がWR小段や百田、五十嵐らに次々とミドルパスを通し、最後はK大西のFG。10ー6で前半を折り返す。
後半に入ると、QBが星野兄に交代。今季はけがで出遅れていたが、ようやく回復。満を持しての出場である。「大丈夫か、無理するなよ」と祈るような気持ちで見ていたが、本人は意気軒高。RB伊丹のラン、WR百田へのパスなどで陣地を進め、仕上げはRB伊丹。中央を突破してTD。
攻撃のエースが帰ってくると、チームは落ち着く。守備陣も余裕ができたのか、対応が的確になって、相手に陣地を進めさせない。
4Qに入ってすぐの攻撃シリーズも1年生WR立花へのパス、QBのスクランブル、伊丹のランなどで陣地を進める。仕上げも伊丹のランで24−6と引き離す。その後、TDを1本返されたが、相手の粘りもそこまで。ファイターズは攻守ともに次々と新しいメンバーを繰り出し、そのメンバーが期待に応える。RB井上、深村がTDを重ね、締めくくりは4年生QB柴原から3年生WR辻へのTDパス。この日、すべてのキックを決めている大西が最後のTFPも決めて45−12。前半の苦しい戦いが嘘のような結末になった。
しかし、リーグ戦はここからが勝負。続く関大、立命館には昨シーズン、苦しい戦いを強いられている。チームの真価が問われるのはここからである。気持ちを引き締め、反省すべきは反省し、一段と高いレベルを目指して励んでいただきたい。
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2024年10月01日
(10)ヒーローインタビュー余話
29日午後、王子スタジアムで開かれた関西リーグの4戦目。近畿大学との試合は44−14でファイターズの勝利。先週の神戸大学との試合と同様、能力の高い相手QBの個人技に幻惑されたが、攻撃陣が常に先手を取り、守備陣も次第に対応できるようになって、終わってみれば44―14。攻守蹴を合わせた地力の差を見せつけるような形で勝利した。
その原動力がQBの先発、星野弟とRB、WR陣。RBではリーダーの伊丹が切れ味の良い走りと強い当たりで陣地を稼ぎ、TDも決める。レシーバー陣では、ともに2年生WRの小段と百田がそれぞれ長いパスを受けてTD。28−14で前半を折り返す。
後半も似たような展開。相手の工夫を凝らした攻撃にファイターズのLB、DB陣が適切に対応。DB加藤のインターセプトやK大西の見事なFGも勝利に貢献した。
試合後、グラウンドに降りると、何人もの選手がインタビューを受けている。それを聞きながら、終わった後でそれぞれの選手にひとこと声をかける。公式インタビューが終わった後だから、ヒーローたちもほっとしているのだろう。みんな本音で答えてくれる。例えば次のようなやりとりである。
「すごくいい走りの連発やったな。当たりが強くなって少々のことでは止められなくなっているのがスタンドからでも分かるわ」
「ええ。パワーで勝負。もっと走れ、もっと当たれと思って頑張りました。次も頑張ります」(以上、1Q後半から2Qの初めにかけて、立て続けにランでゲインを重ね、2本のTDを決めたRB伊丹君)
「走って、投げて、よく頑張ったな。1年生とは全く思えないプレーに毎回驚いてるよ。小段君へのTDパス、百田君へのTDパス。それぞれ距離はあったけど、見事に決めたのがすごかった」
「お二人は確実に捕ってくださるので、思い切り投げています。百田さんの時は、一気にゴールまで、と祈るような気持でした」
隣に、けがで欠場が続いている兄の秀太君が来たので
「兄貴の留守を弟がしっかり守っている。ええ兄弟や」
そういうと、
「僕ももうすぐ復帰します。兄弟で張り合って頑張ります」という。
それを聞いた弟が、すかさず「僕も頑張ります」と声をそろえる。思わず記念写真を撮りたいような二人の笑顔だった。
その後、小段君や百田君にも声をかける機会があったが忙しそうだったので今回は省略。それでも、小段君は「けがはすっかり回復しました。出遅れた分、これから頑張ります」と宣言してくれた。
今回は、たまたまオフェンスに偏った取材をしたため、守備陣の話題を取り上げられなかったが、守備陣を含めこういう部員が日々、課題をもって練習に取り組み、心身を鍛え、どんな時、どんな相手にも、全力でプレーする。それがファイターズの魅力である。
そういえば、身近に見たRB伊丹君の体形が下級生のころとは比較にならないほど強靭になっていた。こういう4年生に接するだけでも、ファイターズというチームに出会えてよかったと思える。
その原動力がQBの先発、星野弟とRB、WR陣。RBではリーダーの伊丹が切れ味の良い走りと強い当たりで陣地を稼ぎ、TDも決める。レシーバー陣では、ともに2年生WRの小段と百田がそれぞれ長いパスを受けてTD。28−14で前半を折り返す。
後半も似たような展開。相手の工夫を凝らした攻撃にファイターズのLB、DB陣が適切に対応。DB加藤のインターセプトやK大西の見事なFGも勝利に貢献した。
試合後、グラウンドに降りると、何人もの選手がインタビューを受けている。それを聞きながら、終わった後でそれぞれの選手にひとこと声をかける。公式インタビューが終わった後だから、ヒーローたちもほっとしているのだろう。みんな本音で答えてくれる。例えば次のようなやりとりである。
「すごくいい走りの連発やったな。当たりが強くなって少々のことでは止められなくなっているのがスタンドからでも分かるわ」
「ええ。パワーで勝負。もっと走れ、もっと当たれと思って頑張りました。次も頑張ります」(以上、1Q後半から2Qの初めにかけて、立て続けにランでゲインを重ね、2本のTDを決めたRB伊丹君)
「走って、投げて、よく頑張ったな。1年生とは全く思えないプレーに毎回驚いてるよ。小段君へのTDパス、百田君へのTDパス。それぞれ距離はあったけど、見事に決めたのがすごかった」
「お二人は確実に捕ってくださるので、思い切り投げています。百田さんの時は、一気にゴールまで、と祈るような気持でした」
隣に、けがで欠場が続いている兄の秀太君が来たので
「兄貴の留守を弟がしっかり守っている。ええ兄弟や」
そういうと、
「僕ももうすぐ復帰します。兄弟で張り合って頑張ります」という。
それを聞いた弟が、すかさず「僕も頑張ります」と声をそろえる。思わず記念写真を撮りたいような二人の笑顔だった。
その後、小段君や百田君にも声をかける機会があったが忙しそうだったので今回は省略。それでも、小段君は「けがはすっかり回復しました。出遅れた分、これから頑張ります」と宣言してくれた。
今回は、たまたまオフェンスに偏った取材をしたため、守備陣の話題を取り上げられなかったが、守備陣を含めこういう部員が日々、課題をもって練習に取り組み、心身を鍛え、どんな時、どんな相手にも、全力でプレーする。それがファイターズの魅力である。
そういえば、身近に見たRB伊丹君の体形が下級生のころとは比較にならないほど強靭になっていた。こういう4年生に接するだけでも、ファイターズというチームに出会えてよかったと思える。
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2024年09月25日
(9)準備のスポーツ
22日、王子スタジアムで行われた秋のリーグ3戦目は神戸大学との対戦。これが面白かった。相手がアメフットというスポーツの特性を最大限に生かした試合運びで「ハラハラドキドキ」の場面を連発。試合巧者といわれるファイターズの面々を振り回してくれたからだ。
どういうことか。まずは試合展開を見ていこう。
先攻はファイターズ。自陣22ヤードから、まずはRB伊丹のラン、QB星野弟からWR五十嵐へのパスでダウンを更新。「おお、いい感じ。今日もこの調子で頑張ってくれよ」と、スタンドから拍手をしていたが、どっこい、相手も対策を練っている。その後の攻撃を抑えて攻守交代。
ファイターズ2度目の攻撃シリーズもQBの個人技やRBへのパスなどでダウンを更新。あっという間に相手陣に入る。さらにWR百田へのミドルパスを通すが、このプレー中に不正なブロックがあったとして逆に罰退。それでも、五十嵐へミドルパスを通し、48ヤードのフィールドゴールを狙うが、わずかに外れて0−0。攻撃権が相手に移る。
もどかしい展開のまま試合は第2Qに入る。
その直後に、守備陣がビッグプレー。LB倉田が相手パスをインターセプト。わずか3プレーで攻撃権を奪う。このプレーに刺激されたのか、今度は攻撃陣が踏ん張る。
自陣28ヤードからQB星野がWR五十嵐へのミドルパスを決め、RB伊丹が鮮やかなランで相手陣に突入。そこから伊丹が走り澤井が走る。相手の目がRB陣に集まったところで今度はQB星野がライン沿いを駆け上がる。一気に相手ゴール前に進み、仕上げは伊丹が中央を抜けてTD。大西のキックも決まって7−0。
これでファイターズのペースになるかと思ったが、相手は工夫を凝らしたプレーでガンガン攻めてくる。RBへのパス、WRへの長いパス、合間にランナーを走らせる。隙を見てQBが自ら中央を抜ける。ラン攻撃と見せかけたパス。パスと見せかけたラン攻撃。QBとRB、WRの3者が右に左に展開し、どんどんパスを投げ、自ら走ってくる。ファイターズ守備陣の反応の速さを逆手に取ったようなプレーで陣地を進める。前半残り1分ほどとなったところでフィールドゴールを決めて7−3。一気にチームのムードが高まる。
しかし、ファイターズも受け身になっているだけではいられない。相手守備陣の反応の速さを逆手に取ったRB陣への短いパスを立て続けに決め、なんとかフィールドゴールを狙える位置まで陣地を進める。前半、残り時間28秒。ボールは相手ゴール前28ヤード。「決めて当然」というプレッシャーの中でK大西が見事にフィールドゴールを決め10−3で前半終了。
試合は後半に入っても似たような展開。互いに守りあってなかなか点が入らない。3Qは0−0、4Qは10−6。互いに持ち味を発揮して相手攻撃陣を食い止め、20−9でファイターズが勝った。
しかし、スタンドから見ている僕は、この試合に備えた神戸大の周到な準備にひたすら驚き、そういう準備が試合で発揮できる力をつけていることに感服した。ファイターズ守備陣の反応の速さを逆手にとり、右と思えば左に、左と思えば右を狙い、RBを走らせると見せかけてパスを投じる。合間にQBがWRをブロッカーにして一気に駆け上がる。RBにもWRにも機敏な選手がいるから、守備陣はだれをマークすればいいのか頭が混乱する。守る方にとっては厄介な手法でガンガン攻めてくるから、守備陣の対応もより難しくなる。
攻める側は、そういう準備に充分時間がさけるが、守備陣はその場、その場で瞬時に判断し、行動するしかない。事前の準備と考える力が勝敗に直結するアメフットの特徴を生かした神戸大の選手とベンチの「力」に、思わず「脱帽」という気分だった。
アメフットは「知的スポーツ」と形容される。長年、ファイターズの戦い振りを観戦してきた中で、その言葉を実感する機会がいくつもあった。全盛期の日大との戦い、フットボール知能と根性が合体した京大、才能あふれる高校生を次々と獲得して一時代を築いた立命を相手に、苦しい戦いを強いられ、「創意と工夫」「準備の徹底」に活路を見出してきたファイターズにとって、今度は「フットボールは準備のスポーツ」と腹をくくって挑んできた神戸大もまた厄介な相手になるのではないかと考えた。
どういうことか。まずは試合展開を見ていこう。
先攻はファイターズ。自陣22ヤードから、まずはRB伊丹のラン、QB星野弟からWR五十嵐へのパスでダウンを更新。「おお、いい感じ。今日もこの調子で頑張ってくれよ」と、スタンドから拍手をしていたが、どっこい、相手も対策を練っている。その後の攻撃を抑えて攻守交代。
ファイターズ2度目の攻撃シリーズもQBの個人技やRBへのパスなどでダウンを更新。あっという間に相手陣に入る。さらにWR百田へのミドルパスを通すが、このプレー中に不正なブロックがあったとして逆に罰退。それでも、五十嵐へミドルパスを通し、48ヤードのフィールドゴールを狙うが、わずかに外れて0−0。攻撃権が相手に移る。
もどかしい展開のまま試合は第2Qに入る。
その直後に、守備陣がビッグプレー。LB倉田が相手パスをインターセプト。わずか3プレーで攻撃権を奪う。このプレーに刺激されたのか、今度は攻撃陣が踏ん張る。
自陣28ヤードからQB星野がWR五十嵐へのミドルパスを決め、RB伊丹が鮮やかなランで相手陣に突入。そこから伊丹が走り澤井が走る。相手の目がRB陣に集まったところで今度はQB星野がライン沿いを駆け上がる。一気に相手ゴール前に進み、仕上げは伊丹が中央を抜けてTD。大西のキックも決まって7−0。
これでファイターズのペースになるかと思ったが、相手は工夫を凝らしたプレーでガンガン攻めてくる。RBへのパス、WRへの長いパス、合間にランナーを走らせる。隙を見てQBが自ら中央を抜ける。ラン攻撃と見せかけたパス。パスと見せかけたラン攻撃。QBとRB、WRの3者が右に左に展開し、どんどんパスを投げ、自ら走ってくる。ファイターズ守備陣の反応の速さを逆手に取ったようなプレーで陣地を進める。前半残り1分ほどとなったところでフィールドゴールを決めて7−3。一気にチームのムードが高まる。
しかし、ファイターズも受け身になっているだけではいられない。相手守備陣の反応の速さを逆手に取ったRB陣への短いパスを立て続けに決め、なんとかフィールドゴールを狙える位置まで陣地を進める。前半、残り時間28秒。ボールは相手ゴール前28ヤード。「決めて当然」というプレッシャーの中でK大西が見事にフィールドゴールを決め10−3で前半終了。
試合は後半に入っても似たような展開。互いに守りあってなかなか点が入らない。3Qは0−0、4Qは10−6。互いに持ち味を発揮して相手攻撃陣を食い止め、20−9でファイターズが勝った。
しかし、スタンドから見ている僕は、この試合に備えた神戸大の周到な準備にひたすら驚き、そういう準備が試合で発揮できる力をつけていることに感服した。ファイターズ守備陣の反応の速さを逆手にとり、右と思えば左に、左と思えば右を狙い、RBを走らせると見せかけてパスを投じる。合間にQBがWRをブロッカーにして一気に駆け上がる。RBにもWRにも機敏な選手がいるから、守備陣はだれをマークすればいいのか頭が混乱する。守る方にとっては厄介な手法でガンガン攻めてくるから、守備陣の対応もより難しくなる。
攻める側は、そういう準備に充分時間がさけるが、守備陣はその場、その場で瞬時に判断し、行動するしかない。事前の準備と考える力が勝敗に直結するアメフットの特徴を生かした神戸大の選手とベンチの「力」に、思わず「脱帽」という気分だった。
アメフットは「知的スポーツ」と形容される。長年、ファイターズの戦い振りを観戦してきた中で、その言葉を実感する機会がいくつもあった。全盛期の日大との戦い、フットボール知能と根性が合体した京大、才能あふれる高校生を次々と獲得して一時代を築いた立命を相手に、苦しい戦いを強いられ、「創意と工夫」「準備の徹底」に活路を見出してきたファイターズにとって、今度は「フットボールは準備のスポーツ」と腹をくくって挑んできた神戸大もまた厄介な相手になるのではないかと考えた。
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2024年09月09日
(8)圧勝支える全力プレー
7日は今季2戦目の大阪大戦。3日に桃山学院大との戦い終えたばかりというのに、中3日の試合が組まれた。8月末から迷走した台風の余波とは言うものの、過去に経験したことのない過密日程に驚き、同時に選手諸君にけががないように、と祈りながら神戸ユニバー記念競技場に向かった。
グラウンドでは、京大と神戸大がロースコアの熱戦を繰り広げている。しかし、夕方とはいえスタンドには直射日光が照りつける。それを逃れるため、トイレの入り口付近の日陰に逃げ込むが、それでも熱い。
午後5時半。阪大のキックで試合開始。まずはRB伊丹が自陣11ヤード付近から左サイドを駆け上がってダウンを更新。続くプレーはQB星野弟からWR百田へ19ヤードのパス。さらに、ともに負傷から回復したWR小段とWR川崎に立て続けにパスを通してハーフラインを超える。ランプレーを一つ挟んで再び小段への長いパス。一気にゴール前に迫り、仕上げはエースRB伊丹のランでTD。大西のキックも決まって7―0。
こうなると先発メンバーに起用された1、2年生も落ち着く。逆に今季、1部に上がったばかりの相手は、前年の優勝チーム相手に自分たちの力を存分に発揮できないようだ。時にいいプレーが出てもそれが続かない。
あっという間に攻守交代。ファイターズ2度目の攻撃は自陣32ヤード付近から。まずはQB星野がミドルパスを通して相手陣に入る。相手がパスを警戒しているのを見極めると、今度はRB伊丹と澤井を続けさまに走らせてTD。キックも決まって14―0。
たたみかけるようなファイターズの攻撃を目の当たりにしたせいか、阪大の攻撃陣がぎくしゃくしてくる。ランは進まず、パスは通らない。わずか4プレーで攻守交代。
逆に、ファイターズの1年生QB星野弟は伸び伸びと持ち味を発揮する。例えば自陣47ヤードから始まったファイターズ3度目の攻撃。まずはエースRB伊丹を立て続けに走らせて14ヤードを稼ぎ、ダウンを更新。相手の注意をランプレーに引き寄せたうえで、すかさずRB澤井にパス。ダウンを更新した次のプレーで、今度はWR五十嵐に縦パスを通してTD。「これが今春、入部したばかりの1年生の動きかよ」との声が応援席から聞こえてきたが、まったく同感だった。
ファイターズはその後、第2Qに17点、第3Qに14 点、第4Qに21点を追加して合計73点。対する阪大は、随所にいいプレーが出るのだが、ファイターズの守備陣がその都度、適切に対応し、得点は許さない。後半からは次々に交代メンバーが起用されたが、大量得点を背景に彼らも伸び伸びとプレーし、最後まで得点を許さず、試合終了。
しかしながら、ファイターズが初戦で戦った桃山学院と同様、阪大も終始、知恵を絞った攻撃をかけてきた。この姿勢が続く限り、チームは成長する。彼らはやがて、京大、神戸大とともに関西リーグに並び立つ日が来るのではないか、という予感さえするチームだった。
グラウンドでは、京大と神戸大がロースコアの熱戦を繰り広げている。しかし、夕方とはいえスタンドには直射日光が照りつける。それを逃れるため、トイレの入り口付近の日陰に逃げ込むが、それでも熱い。
午後5時半。阪大のキックで試合開始。まずはRB伊丹が自陣11ヤード付近から左サイドを駆け上がってダウンを更新。続くプレーはQB星野弟からWR百田へ19ヤードのパス。さらに、ともに負傷から回復したWR小段とWR川崎に立て続けにパスを通してハーフラインを超える。ランプレーを一つ挟んで再び小段への長いパス。一気にゴール前に迫り、仕上げはエースRB伊丹のランでTD。大西のキックも決まって7―0。
こうなると先発メンバーに起用された1、2年生も落ち着く。逆に今季、1部に上がったばかりの相手は、前年の優勝チーム相手に自分たちの力を存分に発揮できないようだ。時にいいプレーが出てもそれが続かない。
あっという間に攻守交代。ファイターズ2度目の攻撃は自陣32ヤード付近から。まずはQB星野がミドルパスを通して相手陣に入る。相手がパスを警戒しているのを見極めると、今度はRB伊丹と澤井を続けさまに走らせてTD。キックも決まって14―0。
たたみかけるようなファイターズの攻撃を目の当たりにしたせいか、阪大の攻撃陣がぎくしゃくしてくる。ランは進まず、パスは通らない。わずか4プレーで攻守交代。
逆に、ファイターズの1年生QB星野弟は伸び伸びと持ち味を発揮する。例えば自陣47ヤードから始まったファイターズ3度目の攻撃。まずはエースRB伊丹を立て続けに走らせて14ヤードを稼ぎ、ダウンを更新。相手の注意をランプレーに引き寄せたうえで、すかさずRB澤井にパス。ダウンを更新した次のプレーで、今度はWR五十嵐に縦パスを通してTD。「これが今春、入部したばかりの1年生の動きかよ」との声が応援席から聞こえてきたが、まったく同感だった。
ファイターズはその後、第2Qに17点、第3Qに14 点、第4Qに21点を追加して合計73点。対する阪大は、随所にいいプレーが出るのだが、ファイターズの守備陣がその都度、適切に対応し、得点は許さない。後半からは次々に交代メンバーが起用されたが、大量得点を背景に彼らも伸び伸びとプレーし、最後まで得点を許さず、試合終了。
しかしながら、ファイターズが初戦で戦った桃山学院と同様、阪大も終始、知恵を絞った攻撃をかけてきた。この姿勢が続く限り、チームは成長する。彼らはやがて、京大、神戸大とともに関西リーグに並び立つ日が来るのではないか、という予感さえするチームだった。
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2024年09月05日
(7)躍動する新戦力
3日はファイターズの今季、開幕日。迷走した台風が8月末には近畿地方を直撃するという予報が出たことから、1日に予定されていた今季の初戦、桃山学院大との試合日が急遽変更され、3日午後7時キックオフとなった。
会場となった万博公園の球技場周辺は闇に包まれ、グラウンドだけが明りに包まれている。平日の夜とあって、観客も少ない。
なんとも寂しい光景だったが、1試合目の立命と大阪大との試合が終わり、ファイターズの面々がグラウンドに出てくると空気が一変。一気に試合モードが高まる。そんな中、場内限定のラジオ放送で試合の実況と解説を担当され.る小野さんから頂いたチームのメンバー表を眺め、試合前の練習をしている選手と背番号を確認する。なんと、今春入学したばかりの1年生が3人も先発に名を連ねている。QBの星野弟(足立学園)、DLの田中志門(追手門学院)、DBの豊野桂也(啓明学院)である。それぞれ春のシーズンから出番があり、1年生とは思えないほどの存在感を見せていたが、秋の初戦からスタメンとは驚いた。
ファイターズのキックで試合が始まる。だが、ファイターズの守備の最前列が強くて素早い当たりで相手を押し込み、あっという間に攻守交替。この主役が1年生ながら春の試合から右のDLとしてスタメンを張っている田中志門というのだから、ファンとしては驚きと喜びで一杯だ。このチャンスを追手門高校の先輩で今は堂々のエースRB伊丹が生かしてTD。続く相手の攻撃も主将を務めるLB永井兄を中心にした守備陣が完封。相手に付け入る隙を与えない。
ファイターズの2度目の攻撃は自陣38ヤードから。まずはランアタックで陣地を稼ぎ、守備陣の注意をラン攻撃に向けた瞬間にQB星野からWR小段へミドルパス。それが決まってダウンを更新。仕上げは星野のQBキープ。左サイドライン沿いを39ヤード、一気に駆け上がってTD。14−0と引き離す。
こうなると、完全にファイターズペース。守備陣は相手にダウンを更新させず、攻撃陣は攻撃権をとるたびにTDで締めくくる。まずは遠投は兄貴以上という星野が小段へ50ヤードのパスを決めて3本目、RB澤井のランで陣地を稼ぎ、WR川崎へのミドルパスで4本目のTD。第1ℚだけで27−0と引き離す。
第2Qに入っても、ファイターズの攻勢は続く。K 大西のフィールドゴールに続いてRB井上孝が立て続けに2本TDを奪い、前半だけで44−3。
勝ち負けとしての興味はこのあたりで薄れたが、それでもお互いの選手が全力で戦う姿は美しい。相手チームに渾身のプレーが出れば、思わず拍手を送り、自軍の選手が目覚ましいプレーをすれば、それを上回る拍手を続ける。
とりわけ、今春入部したばかりの1年生やこれまで出番の少なかった2年生が活躍する姿を見られるのが楽しい。前者でいえば、少ない出番で立て続けに2本のパスを受け、都合58ヤードを稼いだWR立花(箕面自由出身)や後半だけの出番だったが、素早い動きで4回72ヤードを走ったRB平野(啓明学院)や高等部で主将を務めたLB永井弟の動きも頼もしかった。後者でいえば、春のJV戦で活躍した2年生RB松村や深村の今後も注目される。
最初に紹介した1年生のQB星野弟やDL田中志門を含め、期待の下級生が今後、どんな活躍をするのか。それを受けて立つ上級生が自らの可能性をどこまで開拓できるのか。今後のチーム内競争の激しさを予感させる初戦だった。
会場となった万博公園の球技場周辺は闇に包まれ、グラウンドだけが明りに包まれている。平日の夜とあって、観客も少ない。
なんとも寂しい光景だったが、1試合目の立命と大阪大との試合が終わり、ファイターズの面々がグラウンドに出てくると空気が一変。一気に試合モードが高まる。そんな中、場内限定のラジオ放送で試合の実況と解説を担当され.る小野さんから頂いたチームのメンバー表を眺め、試合前の練習をしている選手と背番号を確認する。なんと、今春入学したばかりの1年生が3人も先発に名を連ねている。QBの星野弟(足立学園)、DLの田中志門(追手門学院)、DBの豊野桂也(啓明学院)である。それぞれ春のシーズンから出番があり、1年生とは思えないほどの存在感を見せていたが、秋の初戦からスタメンとは驚いた。
ファイターズのキックで試合が始まる。だが、ファイターズの守備の最前列が強くて素早い当たりで相手を押し込み、あっという間に攻守交替。この主役が1年生ながら春の試合から右のDLとしてスタメンを張っている田中志門というのだから、ファンとしては驚きと喜びで一杯だ。このチャンスを追手門高校の先輩で今は堂々のエースRB伊丹が生かしてTD。続く相手の攻撃も主将を務めるLB永井兄を中心にした守備陣が完封。相手に付け入る隙を与えない。
ファイターズの2度目の攻撃は自陣38ヤードから。まずはランアタックで陣地を稼ぎ、守備陣の注意をラン攻撃に向けた瞬間にQB星野からWR小段へミドルパス。それが決まってダウンを更新。仕上げは星野のQBキープ。左サイドライン沿いを39ヤード、一気に駆け上がってTD。14−0と引き離す。
こうなると、完全にファイターズペース。守備陣は相手にダウンを更新させず、攻撃陣は攻撃権をとるたびにTDで締めくくる。まずは遠投は兄貴以上という星野が小段へ50ヤードのパスを決めて3本目、RB澤井のランで陣地を稼ぎ、WR川崎へのミドルパスで4本目のTD。第1ℚだけで27−0と引き離す。
第2Qに入っても、ファイターズの攻勢は続く。K 大西のフィールドゴールに続いてRB井上孝が立て続けに2本TDを奪い、前半だけで44−3。
勝ち負けとしての興味はこのあたりで薄れたが、それでもお互いの選手が全力で戦う姿は美しい。相手チームに渾身のプレーが出れば、思わず拍手を送り、自軍の選手が目覚ましいプレーをすれば、それを上回る拍手を続ける。
とりわけ、今春入部したばかりの1年生やこれまで出番の少なかった2年生が活躍する姿を見られるのが楽しい。前者でいえば、少ない出番で立て続けに2本のパスを受け、都合58ヤードを稼いだWR立花(箕面自由出身)や後半だけの出番だったが、素早い動きで4回72ヤードを走ったRB平野(啓明学院)や高等部で主将を務めたLB永井弟の動きも頼もしかった。後者でいえば、春のJV戦で活躍した2年生RB松村や深村の今後も注目される。
最初に紹介した1年生のQB星野弟やDL田中志門を含め、期待の下級生が今後、どんな活躍をするのか。それを受けて立つ上級生が自らの可能性をどこまで開拓できるのか。今後のチーム内競争の激しさを予感させる初戦だった。
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2024年06月12日
(6)「君の可能性」
最近、ファイターズの試合や練習を見るたびに、懐かしい先生の顔と、その著書のタイトルとなっている詩が浮かんでくる。すでに何度か書いたことがあるが、日曜日の試合を見て改めて記したくなった。
それは群馬県の小学校を舞台に、子どもを主役にした独自の教授法を展開し、教育界に大きな足跡を残された斎藤喜博先生(1911〜1981)であり、その代表的な著書「君の可能性」(筑摩文庫)に収録されている「一つのこと」という次のような詩である。
一つのこと
いま終わる一つのこと
いま越える一つの山
風わたる草原
響きわたる心の歌
桑の海光る雲
人は続き道は続く
遠い道はるかな道
明日のぼる山もみさだめ
いま終わる一つのこと
この詩の後に、先生自身の説明がある。
「この詩は、いま自分たちは、みんなと力をあわせて一つの仕事(学習)をやり終わった。それはちょうど一つの山にのぼったようなものである。山の上に立ってみると草原にはすずしい風が吹いている。そこに立つと、いっしょにのぼってきた人たちとしみじみ心が通い合うのを感じる。そこから見ると、はるか遠くに桑畑が海のように見え、雲が美しく光っている。そしていまのぼって来た道を、人が続いて登ってくるのが見える。自分たちはいま、一つの山を登り終わったが、目の前にはさらに高い山が見えている。こんどはあの山を登るのだ、という意味である」
「学校の学習は、こういうことを、みんなと力をあわせてつぎつぎとやっていくのである。(中略)そういうことがおもしろくて楽しくてならないように、クラス全体、学校全体で力を合わせて学習をしていくのである。学校での学習、クラスでの学習とはこういうものである。ひとりがよいものを出すことによって、それが他のみんなに影響し、より高いものになって自分のところへ返ってくるのである」
先生は群馬県伊勢崎市近郊の小規模な小学校(島小学校、境小学校)で校長を務め、その教育実践で教育界に知られた教育者である。小学校長を定年で退職された後、宮城教育大学から招かれ、教育学の教授としても活躍された。その教育実践の成果を数多くの著作にまとめ、全集も出版されている。土屋文明に師事した歌人としても知られている。
僕は1970年12月、信濃毎日新聞から朝日新聞に移って前橋支局に勤務。前橋市政と文化欄を担当した時に「上毛歌壇」の選者をされていた先生とのご縁が生まれた。ほんの半年ほどの間だったが、その間、10回近くご自宅を訪問し、先生が主宰される教授学の勉強会に参加したり、個人的に指導を受けたりしてきた。
そうしたこともあって、この詩の意味することは十分に理解できたし、新聞記者としても、この詩にあるように、一つの山を登るごとに、新たな山にチャレンジしていこうと胸に刻んで生きてきた。
長い前書きとなったが、いま、ファイターズの諸君が日々取り組んでいることも全く同様であろう。日々、自らに課題を与え、それを一つ一つクリアしていく。階段を一つ上がったら、また異なる景色が見え、そこから新たな目標が生まれる。それを一つ一つクリアしていくことで、気がつけば当初は想像も付かなかった景色が見えてくる。それを仲間と励まし合い、競いながら達成していく。
その繰り返し。日々の練習ではその成果が見えなくても、いざ、ライバルと対峙したときに、その間の努力と頑張りが生きてくる。
ファイターズでの活動とは、いわば、その景色を見るための活動と断定してもよいのではないか。両親から頂いた才能、身体能力だけではなく、自らが意図して成長し、仲間もまた成長させる。
毎年、力のある4年生が卒業しても、新しい年には新たな戦士を育て、育って行く。常に新たな目標に向かって、全員が努力を重ねる。その積み重ねにこそファイターズの魅力がある。
関西大、立命館大という力のあるチームを相手に、新鮮なメンバーで戦い抜いた今季のファイターズに接して、僕はそんな思いを深くしている。
それは群馬県の小学校を舞台に、子どもを主役にした独自の教授法を展開し、教育界に大きな足跡を残された斎藤喜博先生(1911〜1981)であり、その代表的な著書「君の可能性」(筑摩文庫)に収録されている「一つのこと」という次のような詩である。
一つのこと
いま終わる一つのこと
いま越える一つの山
風わたる草原
響きわたる心の歌
桑の海光る雲
人は続き道は続く
遠い道はるかな道
明日のぼる山もみさだめ
いま終わる一つのこと
この詩の後に、先生自身の説明がある。
「この詩は、いま自分たちは、みんなと力をあわせて一つの仕事(学習)をやり終わった。それはちょうど一つの山にのぼったようなものである。山の上に立ってみると草原にはすずしい風が吹いている。そこに立つと、いっしょにのぼってきた人たちとしみじみ心が通い合うのを感じる。そこから見ると、はるか遠くに桑畑が海のように見え、雲が美しく光っている。そしていまのぼって来た道を、人が続いて登ってくるのが見える。自分たちはいま、一つの山を登り終わったが、目の前にはさらに高い山が見えている。こんどはあの山を登るのだ、という意味である」
「学校の学習は、こういうことを、みんなと力をあわせてつぎつぎとやっていくのである。(中略)そういうことがおもしろくて楽しくてならないように、クラス全体、学校全体で力を合わせて学習をしていくのである。学校での学習、クラスでの学習とはこういうものである。ひとりがよいものを出すことによって、それが他のみんなに影響し、より高いものになって自分のところへ返ってくるのである」
先生は群馬県伊勢崎市近郊の小規模な小学校(島小学校、境小学校)で校長を務め、その教育実践で教育界に知られた教育者である。小学校長を定年で退職された後、宮城教育大学から招かれ、教育学の教授としても活躍された。その教育実践の成果を数多くの著作にまとめ、全集も出版されている。土屋文明に師事した歌人としても知られている。
僕は1970年12月、信濃毎日新聞から朝日新聞に移って前橋支局に勤務。前橋市政と文化欄を担当した時に「上毛歌壇」の選者をされていた先生とのご縁が生まれた。ほんの半年ほどの間だったが、その間、10回近くご自宅を訪問し、先生が主宰される教授学の勉強会に参加したり、個人的に指導を受けたりしてきた。
そうしたこともあって、この詩の意味することは十分に理解できたし、新聞記者としても、この詩にあるように、一つの山を登るごとに、新たな山にチャレンジしていこうと胸に刻んで生きてきた。
長い前書きとなったが、いま、ファイターズの諸君が日々取り組んでいることも全く同様であろう。日々、自らに課題を与え、それを一つ一つクリアしていく。階段を一つ上がったら、また異なる景色が見え、そこから新たな目標が生まれる。それを一つ一つクリアしていくことで、気がつけば当初は想像も付かなかった景色が見えてくる。それを仲間と励まし合い、競いながら達成していく。
その繰り返し。日々の練習ではその成果が見えなくても、いざ、ライバルと対峙したときに、その間の努力と頑張りが生きてくる。
ファイターズでの活動とは、いわば、その景色を見るための活動と断定してもよいのではないか。両親から頂いた才能、身体能力だけではなく、自らが意図して成長し、仲間もまた成長させる。
毎年、力のある4年生が卒業しても、新しい年には新たな戦士を育て、育って行く。常に新たな目標に向かって、全員が努力を重ねる。その積み重ねにこそファイターズの魅力がある。
関西大、立命館大という力のあるチームを相手に、新鮮なメンバーで戦い抜いた今季のファイターズに接して、僕はそんな思いを深くしている。
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2024年06月11日
(5)またも「がっぷり四つ」
9日は、立命館大学びわこ・くさつキャンパスでパンサーズとの交流戦。びわこ・くさつキャンパス開学30周年記念試合と名付けられ、立命館の総長や地元市長が来賓席に並ぶ厳粛な雰囲気の中での戦いだった。けれども、いざ試合が始まると、記念試合というよりも、この戦いがそのまま関西の覇権に直結するような厳しい戦いとなった。
先手を取ったのはファイターズ。コイントスでレシーブを選択。自陣25ヤード始まった第1プレーは、1年生QBの星野弟から同じく1年生WR片桐へのパス。8ヤードを進めて気持ちを落ち着ける。2つ目のプレーはQB星野のキープ。右のライン際を鋭く駆け上がる。3つめはRB伊丹へのサイドパス。伊丹ならではの華麗な身のこなしで縦に切れ上がり、相手陣26ヤード付近まで前進。そこからランプレーを続けて陣地を進め、仕上げはリンスコットへの短いパスでTD。K大西のキックも決まって7−0。
このように書けば、何もかもが計算通りと思われるかもしれないが、その主役を担ったのが今春入学したばかりの1年生。1軍の練習に加わってから、まだ1カ月ほどというWRとQBのコンビだから恐れ入る。
もちろん、彼らを支えるOLやRBの適切な動きがあってこその活躍だが、同じくこの日も守備の1年生として唯一、先発メンバーに名前を連ねたDL田中志門を合わせ、それぞれ全く物怖じしないプレーが頼もしい。
新しい守備のメンバーと言えば、今春から試合に出るようになった2年生DBの伊東や永井、油谷といった面々の動きも素晴らしかった。身体能力の高い立命のQBをはじめ、RBやWR陣の素早い動きに懸命に食らいつき、簡単には陣地を進めさせない。この日は守備陣のエースともいえる東田が欠場したが、その穴を全く感じさせないような動きで、能力の高い相手RBやWRの動きをカバーし続けた。
その結果としての24−24。両軍が互いのプライドを分け合ったような結果で試合が終了した。
先日の関大、そしてこの日の立命。春のシーズンを全く五分の戦いで終えた相手の力量は素晴らしい。それだけに、従来は「春の試合はオープン戦」というような感覚で受け止めていた私にとっては、驚天動地という二つの試合だった。
もちろん、選手にとっては「全ての試合が本番」である。ライバルが本気で向かってきてくれたからこそ、そこから得られるもは大きい。100日の練習より1日の実戦という言葉があるのも、その辺の呼吸を表現しているのだろう。
その言葉通りの試合を2戦連続で戦ったのが、今春のファイターズである。幸い、そこにはチームの未来を担う2年生や1年生が数多く含まれている。「春はオープン戦、本番は秋」という従来のような感覚ではなく、「練習の全てが本番につながる」という覚悟で練習に励み、自分を高め、仲間と高めあってもらいたい。
新しいメンバーが数多く出場し、それぞれがキラリと光ったこの日の立命戦。試合は引き分けに終わり、チームとしては満足出来ない試合だったかもしれない。けれども、この試合から学べることは数多くある。それを見つけ、学び、自分の糧として秋に備えてもらいたい。
現場に学び、仲間と共に明日への糧としていけるのが、チームスポーツの素晴らしいところである。先日の関大戦後に抱いた感想と全く同じような結論になってしまったが、ライバルに学び、その存在を自分を高めるための力にすることが出来るのが、学生スポーツの魅力である。
先手を取ったのはファイターズ。コイントスでレシーブを選択。自陣25ヤード始まった第1プレーは、1年生QBの星野弟から同じく1年生WR片桐へのパス。8ヤードを進めて気持ちを落ち着ける。2つ目のプレーはQB星野のキープ。右のライン際を鋭く駆け上がる。3つめはRB伊丹へのサイドパス。伊丹ならではの華麗な身のこなしで縦に切れ上がり、相手陣26ヤード付近まで前進。そこからランプレーを続けて陣地を進め、仕上げはリンスコットへの短いパスでTD。K大西のキックも決まって7−0。
このように書けば、何もかもが計算通りと思われるかもしれないが、その主役を担ったのが今春入学したばかりの1年生。1軍の練習に加わってから、まだ1カ月ほどというWRとQBのコンビだから恐れ入る。
もちろん、彼らを支えるOLやRBの適切な動きがあってこその活躍だが、同じくこの日も守備の1年生として唯一、先発メンバーに名前を連ねたDL田中志門を合わせ、それぞれ全く物怖じしないプレーが頼もしい。
新しい守備のメンバーと言えば、今春から試合に出るようになった2年生DBの伊東や永井、油谷といった面々の動きも素晴らしかった。身体能力の高い立命のQBをはじめ、RBやWR陣の素早い動きに懸命に食らいつき、簡単には陣地を進めさせない。この日は守備陣のエースともいえる東田が欠場したが、その穴を全く感じさせないような動きで、能力の高い相手RBやWRの動きをカバーし続けた。
その結果としての24−24。両軍が互いのプライドを分け合ったような結果で試合が終了した。
先日の関大、そしてこの日の立命。春のシーズンを全く五分の戦いで終えた相手の力量は素晴らしい。それだけに、従来は「春の試合はオープン戦」というような感覚で受け止めていた私にとっては、驚天動地という二つの試合だった。
もちろん、選手にとっては「全ての試合が本番」である。ライバルが本気で向かってきてくれたからこそ、そこから得られるもは大きい。100日の練習より1日の実戦という言葉があるのも、その辺の呼吸を表現しているのだろう。
その言葉通りの試合を2戦連続で戦ったのが、今春のファイターズである。幸い、そこにはチームの未来を担う2年生や1年生が数多く含まれている。「春はオープン戦、本番は秋」という従来のような感覚ではなく、「練習の全てが本番につながる」という覚悟で練習に励み、自分を高め、仲間と高めあってもらいたい。
新しいメンバーが数多く出場し、それぞれがキラリと光ったこの日の立命戦。試合は引き分けに終わり、チームとしては満足出来ない試合だったかもしれない。けれども、この試合から学べることは数多くある。それを見つけ、学び、自分の糧として秋に備えてもらいたい。
現場に学び、仲間と共に明日への糧としていけるのが、チームスポーツの素晴らしいところである。先日の関大戦後に抱いた感想と全く同じような結論になってしまったが、ライバルに学び、その存在を自分を高めるための力にすることが出来るのが、学生スポーツの魅力である。
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2024年05月29日
(4)がっぷり四つの真剣勝負
春のシーズンとは思えないような真剣勝負。26日、吹田市のMKタクシーフィールドエキスポで行われた関大との戦いは、互いに準備してきたプレーを次々と披露し、魂と魂をぶつけ合って、春のシーズンとは思えないような激戦になった。
なんせ相手は昨秋、関西リーグ最終戦でファイターズを破りながら、それぞれ6勝1敗となった立命、関大、関学による抽選で甲子園ボウルの出場権を逃し、悔しい思いをしているチームである。春の試合といっても、その悔しさを晴らしたい、ライバルを叩きのめしたい、という強い気持ちでこの試合に臨んでいるのは間違いない。
ファイターズのメンバーにとっても同様だだろう。昨秋の関西リーグは全勝で最終の関大戦を迎えながら16−13で敗れ、6勝1敗。同じく1敗の立命を加えた3校で抽選した結果、ファイターズが出場権を手にして甲子園ボウルに出場した。そこで関東代表を圧倒して史上初の6連覇を達成したが、その前史には、そういう悔しい敗戦が刻まれているのである。
そんな因縁のある相手である。春の試合とはいえ、互いに今度は譲れないとの気持ちを前面に出し、激しく戦った。
先攻はファイターズ。いきなり反則で5ヤードの罰退を受けて始まった。その第1プレーはQBリンスコットからWR片桐へのパス。それが通って16ヤード前進。続くプレーも同じ片桐へのサイドスクリーンパス。キャッチした片桐がセンターラインを超えて相手陣に進む。さらに相手のパーソナルファールで陣地を進め、相手ゴールまで38ヤード。
パスに次ぐパスで攻め込んだ後、最初のランプレーはエースRB伊丹。相手を交わして走ろうとした瞬間、グラウンドに足をとられて転倒し、ノーゲイン。リンスコットがスクランブルで前進したが、ダウン更新には至らず、フィールドゴールを狙ったが、これも風に流されて得点ならず。
0−0で迎えた第2Q。関大は絶妙のパスプレーで陣地を進め、仕上げはFGゴール。次の攻撃シリーズでもFGを決めて6−0とリードを広げる。関大はQBとレシーバーの呼吸がぴったり合って、ぐいぐいと陣地を進める。それに対抗するファイターズの守備陣も、それを食い止めようと身体を張って守るが、能力の高いQBとWRが相手では、なかなか思い通りにいかないようだ。
それでも、なんとかTDを阻止してきた守備陣の頑張りで前半は0−6。
その我慢が後半になって生きてくる。
きっかけは第3Qの半ば。相手が自陣最深部から蹴ったパントがうまく当たらず、関大陣15ヤード付近からファイターズの攻撃。QBは1年生の星野太吾。エースQB星野秀太の弟で、兄と同じ足立学園から今春、ファイターズに入部したばかりである。
最初のパスは相手にはじかれたが、次は伊丹のラン。3プレー目は同じく伊丹にスクリーンパス。それを受けた伊丹が素早い身のこなしでゴールまで駆け込んでTD。キックも決まって7−6。1年生とは思えないQBの細かいプレーと、伊丹の鋭い動きが逆転劇を呼び込んだ。
しかし、相手の能力は高い。次のシリーズでは思い切ったパスプレーで陣地を進め、第4Qに入った最初のプレーにもFGを決めて逆転。得点は7−9。再び関大がリードを奪い、残り時間は12分弱。
さて、ファイターズはどう攻めるか。目を凝らせたが、ファイターズの攻撃は基本に忠実。RB伊丹、澤井のランとWR片桐、百田らへの短いパスで陣地を稼ぎ、FGを決めて10−9。
攻撃陣が点を取れるようになると、守備陣も落ち着いて相手の動きを注視できる。関大陣29ヤード付近から相手QBが投じたパスをDB酒井が「待ってました」というようなタイミングでインターセプト。あっという間に攻撃権を取り戻す。相手の動きに目が慣れてきたのか、それとも、残り時間から考えてここは勝負所という感覚が働くのか。ともかく経験を積んだ4年生ならではのプレーで、相手の反撃に手がかりを与えない。
守備陣が頑張れば、オフェンスも呼応する。センターライン付近から始まったファイターズの次の攻撃。まずはRB伊丹が中央を走ってダウンを更新。次はQB星野の短いパス。続けてRB伊丹、澤井のランで時間と陣地を稼ぎ、仕上げは澤井のランでTD。キックも決まって17−9。
最終盤。関大も懸命に追い上げた。交代メンバーが増えたファイターズはなかなか対応出来ず、TDを奪われたが、2ポイントコンバージョンを阻止し、最終的なスコアは17−15。
薄氷を踏むような勝利だったが、それでも数多くのメンバー、とりわけ2年生で先発メンバーに名を連ねたWR百田、塚本、QBリンスコット、DL八木、DB永井、伊東、1年生のWR片桐、DL田中。そして交代メンバーとして司令塔を任されたQB星野たちにとっては、貴重な経験になったに違いない。
今後、何度も立ち向かわなければならないこの相手と「真剣勝負」したこの日の経験を糧に、さらなる高みを目指して努力を続けてもらいたい。
なんせ相手は昨秋、関西リーグ最終戦でファイターズを破りながら、それぞれ6勝1敗となった立命、関大、関学による抽選で甲子園ボウルの出場権を逃し、悔しい思いをしているチームである。春の試合といっても、その悔しさを晴らしたい、ライバルを叩きのめしたい、という強い気持ちでこの試合に臨んでいるのは間違いない。
ファイターズのメンバーにとっても同様だだろう。昨秋の関西リーグは全勝で最終の関大戦を迎えながら16−13で敗れ、6勝1敗。同じく1敗の立命を加えた3校で抽選した結果、ファイターズが出場権を手にして甲子園ボウルに出場した。そこで関東代表を圧倒して史上初の6連覇を達成したが、その前史には、そういう悔しい敗戦が刻まれているのである。
そんな因縁のある相手である。春の試合とはいえ、互いに今度は譲れないとの気持ちを前面に出し、激しく戦った。
先攻はファイターズ。いきなり反則で5ヤードの罰退を受けて始まった。その第1プレーはQBリンスコットからWR片桐へのパス。それが通って16ヤード前進。続くプレーも同じ片桐へのサイドスクリーンパス。キャッチした片桐がセンターラインを超えて相手陣に進む。さらに相手のパーソナルファールで陣地を進め、相手ゴールまで38ヤード。
パスに次ぐパスで攻め込んだ後、最初のランプレーはエースRB伊丹。相手を交わして走ろうとした瞬間、グラウンドに足をとられて転倒し、ノーゲイン。リンスコットがスクランブルで前進したが、ダウン更新には至らず、フィールドゴールを狙ったが、これも風に流されて得点ならず。
0−0で迎えた第2Q。関大は絶妙のパスプレーで陣地を進め、仕上げはFGゴール。次の攻撃シリーズでもFGを決めて6−0とリードを広げる。関大はQBとレシーバーの呼吸がぴったり合って、ぐいぐいと陣地を進める。それに対抗するファイターズの守備陣も、それを食い止めようと身体を張って守るが、能力の高いQBとWRが相手では、なかなか思い通りにいかないようだ。
それでも、なんとかTDを阻止してきた守備陣の頑張りで前半は0−6。
その我慢が後半になって生きてくる。
きっかけは第3Qの半ば。相手が自陣最深部から蹴ったパントがうまく当たらず、関大陣15ヤード付近からファイターズの攻撃。QBは1年生の星野太吾。エースQB星野秀太の弟で、兄と同じ足立学園から今春、ファイターズに入部したばかりである。
最初のパスは相手にはじかれたが、次は伊丹のラン。3プレー目は同じく伊丹にスクリーンパス。それを受けた伊丹が素早い身のこなしでゴールまで駆け込んでTD。キックも決まって7−6。1年生とは思えないQBの細かいプレーと、伊丹の鋭い動きが逆転劇を呼び込んだ。
しかし、相手の能力は高い。次のシリーズでは思い切ったパスプレーで陣地を進め、第4Qに入った最初のプレーにもFGを決めて逆転。得点は7−9。再び関大がリードを奪い、残り時間は12分弱。
さて、ファイターズはどう攻めるか。目を凝らせたが、ファイターズの攻撃は基本に忠実。RB伊丹、澤井のランとWR片桐、百田らへの短いパスで陣地を稼ぎ、FGを決めて10−9。
攻撃陣が点を取れるようになると、守備陣も落ち着いて相手の動きを注視できる。関大陣29ヤード付近から相手QBが投じたパスをDB酒井が「待ってました」というようなタイミングでインターセプト。あっという間に攻撃権を取り戻す。相手の動きに目が慣れてきたのか、それとも、残り時間から考えてここは勝負所という感覚が働くのか。ともかく経験を積んだ4年生ならではのプレーで、相手の反撃に手がかりを与えない。
守備陣が頑張れば、オフェンスも呼応する。センターライン付近から始まったファイターズの次の攻撃。まずはRB伊丹が中央を走ってダウンを更新。次はQB星野の短いパス。続けてRB伊丹、澤井のランで時間と陣地を稼ぎ、仕上げは澤井のランでTD。キックも決まって17−9。
最終盤。関大も懸命に追い上げた。交代メンバーが増えたファイターズはなかなか対応出来ず、TDを奪われたが、2ポイントコンバージョンを阻止し、最終的なスコアは17−15。
薄氷を踏むような勝利だったが、それでも数多くのメンバー、とりわけ2年生で先発メンバーに名を連ねたWR百田、塚本、QBリンスコット、DL八木、DB永井、伊東、1年生のWR片桐、DL田中。そして交代メンバーとして司令塔を任されたQB星野たちにとっては、貴重な経験になったに違いない。
今後、何度も立ち向かわなければならないこの相手と「真剣勝負」したこの日の経験を糧に、さらなる高みを目指して努力を続けてもらいたい。
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2024年05月21日
(3)期待高まるニューカマー
19日の日曜日。今季、国内第2戦となる立教大学との試合がある日である。
しかし、私の住む仁川の辺りは、朝から小雨が降ったり止んだりの空模様。「今日は午後からファイターズの試合がある。降るなら降るで結構。さっさと降って、午後からは晴れてくれ」と天の神様にお願いしながら、朝の散歩を続けたが、そんな勝手なお願いは届くはずもない。試合は、終始小雨が降り続ける中で行われた。
空模様はいまひとつだったが、グラウンドには期待の下級生が続々登場。先発メンバーには2年生のWR塚本凉太(高等部)、QBリンスコット・トバヤス(箕面自由)、DL八木駿太焉i花巻東)、DB永井慎太郎(佼成学園)が名を連ね、今春、入部したばかりの1年生も交代メンバーとして次々に起用された。背番号の若い順に並べて行くと、QB星野太吾(足立学園)、WR片桐太陽(大産大附)、RB平野日々輝(啓明学院)、LB永井秀(関西学院)、DL田中志門(追手門学院)。
まだ5月。ようやく上級生との練習に加われるだけの体力が整ってきたばかりのこの季節に、選手層の厚い1軍の試合に出場させてもらえるだけでも特筆されるが、起用されたメンバーがそれぞれ見せ場を作った。
まずはWR片桐。第1Q、ファイターズがFGで3点を先制した後、互いの守備陣が踏ん張り、迎えたファイターズの攻撃は自陣49ヤードから。その第1プレー。QBリンスコットからの長いパスを受けた片桐がそれをキャッチ、相手守備陣を振り切ってゴールに駆け込みTD。投げる方も素晴らしかったが、捕る方もさらに凄い。キャッチした瞬間にトップスピードに乗り、一気にゴールまで突っ走った。昨年のファイターズWR陣を牽引した鈴木の捕球力と衣笠のスピードを合わせ持った1年生の姿は、自軍の士気を奮い立たせた。
自軍を奮い立たせるといえば、3Qの半ばから登場したQB星野弟も同様だ。1軍の練習に加わったのはつい先日。チームがアメリカ遠征から帰国してから。もちろん試合に出るのも初めてというのに、チームの司令塔の役割を果たした。パスも投げられるし、素早い動きで相手を交わし、一気に走る姿も兄貴とそっくりだ。1軍でのチーム練習の機会が増えれば増えるほど、切れ味が鋭くなるのではと期待が持てる。
一方、守備で途中出場した1年生の動きは、スタンドからでは十分に見えなかったので、香山コーチに取材した。
一番に名前が挙がったのが、DLの田中志門。「期待通りの出来映え。初めての試合というのに、相手に当たり勝っていた。後半、相手がバテていた点を割り引いても素晴らしい」という。「ほかには」と聞くと「LBとして起用した永井弟も、さすがという活躍」「二人とも、今後、大学生の当たりや動きに慣れてくれば、十分な戦力になるでしょう」などの言葉が返ってきた。
終始、小雨の降る中での試合だったが、収穫は少なくなかったようだ。
ここで紹介したのは、1年生が中心だが、もちろん昨年から試合に出て活躍しているメンバーは数多い。彼らの様子は、来週以降に予定されている関大や立命との戦いで見ていこう。相手はともに、昨年は同率優勝となりながら、抽選で甲子園ボウルへの出場権を逃がしたチームである。春とはいえ、厳しい戦いになるのは目に見えている。
けれども、そういうライバルがいてこそ、チームとしての力量が付いてくる。新しい力も本物になってくる。大学構内の樹木が風雪に耐え、日に日に緑を濃くし、成長しているのと同様である。
しかし、私の住む仁川の辺りは、朝から小雨が降ったり止んだりの空模様。「今日は午後からファイターズの試合がある。降るなら降るで結構。さっさと降って、午後からは晴れてくれ」と天の神様にお願いしながら、朝の散歩を続けたが、そんな勝手なお願いは届くはずもない。試合は、終始小雨が降り続ける中で行われた。
空模様はいまひとつだったが、グラウンドには期待の下級生が続々登場。先発メンバーには2年生のWR塚本凉太(高等部)、QBリンスコット・トバヤス(箕面自由)、DL八木駿太焉i花巻東)、DB永井慎太郎(佼成学園)が名を連ね、今春、入部したばかりの1年生も交代メンバーとして次々に起用された。背番号の若い順に並べて行くと、QB星野太吾(足立学園)、WR片桐太陽(大産大附)、RB平野日々輝(啓明学院)、LB永井秀(関西学院)、DL田中志門(追手門学院)。
まだ5月。ようやく上級生との練習に加われるだけの体力が整ってきたばかりのこの季節に、選手層の厚い1軍の試合に出場させてもらえるだけでも特筆されるが、起用されたメンバーがそれぞれ見せ場を作った。
まずはWR片桐。第1Q、ファイターズがFGで3点を先制した後、互いの守備陣が踏ん張り、迎えたファイターズの攻撃は自陣49ヤードから。その第1プレー。QBリンスコットからの長いパスを受けた片桐がそれをキャッチ、相手守備陣を振り切ってゴールに駆け込みTD。投げる方も素晴らしかったが、捕る方もさらに凄い。キャッチした瞬間にトップスピードに乗り、一気にゴールまで突っ走った。昨年のファイターズWR陣を牽引した鈴木の捕球力と衣笠のスピードを合わせ持った1年生の姿は、自軍の士気を奮い立たせた。
自軍を奮い立たせるといえば、3Qの半ばから登場したQB星野弟も同様だ。1軍の練習に加わったのはつい先日。チームがアメリカ遠征から帰国してから。もちろん試合に出るのも初めてというのに、チームの司令塔の役割を果たした。パスも投げられるし、素早い動きで相手を交わし、一気に走る姿も兄貴とそっくりだ。1軍でのチーム練習の機会が増えれば増えるほど、切れ味が鋭くなるのではと期待が持てる。
一方、守備で途中出場した1年生の動きは、スタンドからでは十分に見えなかったので、香山コーチに取材した。
一番に名前が挙がったのが、DLの田中志門。「期待通りの出来映え。初めての試合というのに、相手に当たり勝っていた。後半、相手がバテていた点を割り引いても素晴らしい」という。「ほかには」と聞くと「LBとして起用した永井弟も、さすがという活躍」「二人とも、今後、大学生の当たりや動きに慣れてくれば、十分な戦力になるでしょう」などの言葉が返ってきた。
終始、小雨の降る中での試合だったが、収穫は少なくなかったようだ。
ここで紹介したのは、1年生が中心だが、もちろん昨年から試合に出て活躍しているメンバーは数多い。彼らの様子は、来週以降に予定されている関大や立命との戦いで見ていこう。相手はともに、昨年は同率優勝となりながら、抽選で甲子園ボウルへの出場権を逃がしたチームである。春とはいえ、厳しい戦いになるのは目に見えている。
けれども、そういうライバルがいてこそ、チームとしての力量が付いてくる。新しい力も本物になってくる。大学構内の樹木が風雪に耐え、日に日に緑を濃くし、成長しているのと同様である。
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2024年05月16日
(2)爽やかな風、新しい顔
季節は5月。上ヶ原のグラウンドには爽やかな風が吹いている。周囲の木々は日に日に緑が濃くなり、グラウンドを走り回るメンバーにも、今春入学した許りの新しい顔が増えてきた。
今季はスポーツ選抜入試で入部したメンバーを除くと、高等部や啓明学院から新しく加入した部員が少なく、厄介なことにならなければと思っていたが、いつの間にか入部者が増え、上級生との練習に加わっているメンバーも日に日に増えている。
春の初戦、慶應義塾大学との試合で登録されたのは、鮮烈なデビューを飾ったWR片桐太陽君だけだったが、今は基礎体力作りを終えた新入生が何人も上級生との練習メンバーに加わっている。主にスポーツ選抜入試で入部したメンバーだが、高等部や啓明学院で活躍した期待のメンバーもいる。
練習を見学させていただき、そうしたメンバーの動きを追うのが、この季節では一番の楽しみだ。彼らの多くは練習に参加する際、ヘルメットに赤いテープを貼るなどして「新入生」であることを明示しているので、名前は知らなくても、動きのよい選手のことは頭に刻まれる。
私用でコーチと話している時に、そんなメンバーのことを話題にすると「彼らはいいですよ。片桐に続いて春の試合に出て活躍する機会もありそうです」との返事があった。
もちろん、楽しみは新入生だけではない。昨年、全く試合に出る機会のなかった2年生にも、動きのよい選手はいるし、他競技から転向して1年。ようやくアメフットの動きに慣れてきた期待の2年生も少なくない。
そうした面々が今後、実戦でどんな活躍をしてくれるか。春の交流戦、19日の立教大学戦には、そんなメンバーも起用されるのではないか。試合当日、メンバー表で彼らの名前をチェックし、グラウンドでの動きを応援するのが楽しみでならない。
今季はスポーツ選抜入試で入部したメンバーを除くと、高等部や啓明学院から新しく加入した部員が少なく、厄介なことにならなければと思っていたが、いつの間にか入部者が増え、上級生との練習に加わっているメンバーも日に日に増えている。
春の初戦、慶應義塾大学との試合で登録されたのは、鮮烈なデビューを飾ったWR片桐太陽君だけだったが、今は基礎体力作りを終えた新入生が何人も上級生との練習メンバーに加わっている。主にスポーツ選抜入試で入部したメンバーだが、高等部や啓明学院で活躍した期待のメンバーもいる。
練習を見学させていただき、そうしたメンバーの動きを追うのが、この季節では一番の楽しみだ。彼らの多くは練習に参加する際、ヘルメットに赤いテープを貼るなどして「新入生」であることを明示しているので、名前は知らなくても、動きのよい選手のことは頭に刻まれる。
私用でコーチと話している時に、そんなメンバーのことを話題にすると「彼らはいいですよ。片桐に続いて春の試合に出て活躍する機会もありそうです」との返事があった。
もちろん、楽しみは新入生だけではない。昨年、全く試合に出る機会のなかった2年生にも、動きのよい選手はいるし、他競技から転向して1年。ようやくアメフットの動きに慣れてきた期待の2年生も少なくない。
そうした面々が今後、実戦でどんな活躍をしてくれるか。春の交流戦、19日の立教大学戦には、そんなメンバーも起用されるのではないか。試合当日、メンバー表で彼らの名前をチェックし、グラウンドでの動きを応援するのが楽しみでならない。
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2024年04月21日
(1)光が見えた
20日は、2024年度関西学院大学ファイターズの初戦。場所は神戸市の王子スタジアム。迎える相手は東の伝統校、慶応。戦後間もなくから、ファイターズとは縁の深かったチームである。
この日は、大学の新入生歓迎行事の一つとして、この春、関西学院大学に入学したばかりの1年生を無料で招待する仕組みが作られたため、ファイターズの応援席は満員。かつて見たことのないほど数のそろったチアリーダーが繰り広げる華やかな応援もあって、試合前からスタンドは盛り上がった。
慶応のキックで試合開始。自陣24ヤードから始まったファイターズの攻撃は、QB柴原が率い、WR辻や五十嵐へのパスとRB伊丹、澤井のランを組み合わせて確実に陣地を進める。あれよあれよという間に相手ゴール前に迫り、仕上げは伊丹が中央を走り抜けてTD。キックも決まって7−0と先行する。
攻撃のリズムがいいと、守備も呼応する。相手がパス攻撃でダウンを更新し、さあ、これから反撃と勢い込んで投じたパスをDB松島が鮮やかにインターセプト。そのまま25ヤードほどを走って相手陣41ヤード付近から再びファイターズの攻撃。思い切りのよいランプレーで攻め、FGで3点を追加して10−0。
得点の上ではファイターズが主導権を握ったように見えるが、相手の士気は全く衰えない。逆に、選手層の厚いファイターズの2度目の攻撃シリーズをFGによる3点に抑えたことで、オレたちも戦いようによっては対等に戦えるぞ、と自信を付けたようにも見える。
案の定、相手QBは、立て続けに長いパスを投げ込んでくる。たとえ通らなくても、3本に1本が通れば陣地は進む、と覚悟を決めたような思い切りのよいパスを連発。一気にTDにまで持ち込み、10−7と追い上げる。
この局面で、チームを落ち着かせたのが昨シーズンから実績のあるRB陣。まずは伊丹が相手の蹴ったボールをセンターライン付近までリターン。続けて澤井が立て続けに中央を突いて陣地を進め、伊丹のラン、棚田へのパスなどで相手ゴールに迫る。第4ダウン残りインチという場面で澤井がTD。16−7とリードを広げる。
後半に入っても、ファイターズ守備陣の防御は堅い。相手QBの思い切りのよいパス攻撃に悩まされながら、素早い動きでそれを防ぎ、陣地は進めさせない。
局面が動いたのは、ファイターズベンチが次々とフレッシュなメンバーを登用してから。その代表が2年生QBリンスコット・トバヤスと1年生WR片桐太陽。リンスコットは昨年、DBとして起用されたが、高校(箕面自由)時代はQBとして活躍した選手。今春、入学したばかりの片桐は大産大附属高校時代、QBやWRとして知られた選手である。昨年、1年生でありながらWR・リターナーとして大活躍した小段選手とコンビを組んでいた選手と言えば、分かりやすいだろう。
僕は今季、上ヶ原のグラウンドで彼の動きを見る機会が何度かあったが、そのたびに上級生が彼の「スーパーキャッチ」を目にして、思わず拍手している場面に遭遇した。この日、彼がグラウンドに姿を見せた瞬間、その時の情景がよみがえり、今日もあのプレーを見せてくれ、と思わず願った。
期待はかなえられた。リンスコットからの長いパスを2本、立て続けにキャッチし、一気に陣地を進めたのである。上ヶ原のグラウンドでの動きを、そのまま初戦で披露出来る度胸のよさにも感動した。
初めての試合で、堂々と振る舞い、自分の持ち味を存分に発揮する。それは、今春入部した同級生はもちろん、上級生にとっても大いに刺激になることだろう。
互いに刺激し、競争することでチームの力が上がっていく。
彼だけではない。今春、ファイターズの門を叩いた新入生には、フットボール未経験者を含め、将来が期待できるメンバーが何人もいる。彼らが片桐の活躍に刺激され、練習に励んで、生き生きと活動してくれる日が楽しみでならない。
この日は、大学の新入生歓迎行事の一つとして、この春、関西学院大学に入学したばかりの1年生を無料で招待する仕組みが作られたため、ファイターズの応援席は満員。かつて見たことのないほど数のそろったチアリーダーが繰り広げる華やかな応援もあって、試合前からスタンドは盛り上がった。
慶応のキックで試合開始。自陣24ヤードから始まったファイターズの攻撃は、QB柴原が率い、WR辻や五十嵐へのパスとRB伊丹、澤井のランを組み合わせて確実に陣地を進める。あれよあれよという間に相手ゴール前に迫り、仕上げは伊丹が中央を走り抜けてTD。キックも決まって7−0と先行する。
攻撃のリズムがいいと、守備も呼応する。相手がパス攻撃でダウンを更新し、さあ、これから反撃と勢い込んで投じたパスをDB松島が鮮やかにインターセプト。そのまま25ヤードほどを走って相手陣41ヤード付近から再びファイターズの攻撃。思い切りのよいランプレーで攻め、FGで3点を追加して10−0。
得点の上ではファイターズが主導権を握ったように見えるが、相手の士気は全く衰えない。逆に、選手層の厚いファイターズの2度目の攻撃シリーズをFGによる3点に抑えたことで、オレたちも戦いようによっては対等に戦えるぞ、と自信を付けたようにも見える。
案の定、相手QBは、立て続けに長いパスを投げ込んでくる。たとえ通らなくても、3本に1本が通れば陣地は進む、と覚悟を決めたような思い切りのよいパスを連発。一気にTDにまで持ち込み、10−7と追い上げる。
この局面で、チームを落ち着かせたのが昨シーズンから実績のあるRB陣。まずは伊丹が相手の蹴ったボールをセンターライン付近までリターン。続けて澤井が立て続けに中央を突いて陣地を進め、伊丹のラン、棚田へのパスなどで相手ゴールに迫る。第4ダウン残りインチという場面で澤井がTD。16−7とリードを広げる。
後半に入っても、ファイターズ守備陣の防御は堅い。相手QBの思い切りのよいパス攻撃に悩まされながら、素早い動きでそれを防ぎ、陣地は進めさせない。
局面が動いたのは、ファイターズベンチが次々とフレッシュなメンバーを登用してから。その代表が2年生QBリンスコット・トバヤスと1年生WR片桐太陽。リンスコットは昨年、DBとして起用されたが、高校(箕面自由)時代はQBとして活躍した選手。今春、入学したばかりの片桐は大産大附属高校時代、QBやWRとして知られた選手である。昨年、1年生でありながらWR・リターナーとして大活躍した小段選手とコンビを組んでいた選手と言えば、分かりやすいだろう。
僕は今季、上ヶ原のグラウンドで彼の動きを見る機会が何度かあったが、そのたびに上級生が彼の「スーパーキャッチ」を目にして、思わず拍手している場面に遭遇した。この日、彼がグラウンドに姿を見せた瞬間、その時の情景がよみがえり、今日もあのプレーを見せてくれ、と思わず願った。
期待はかなえられた。リンスコットからの長いパスを2本、立て続けにキャッチし、一気に陣地を進めたのである。上ヶ原のグラウンドでの動きを、そのまま初戦で披露出来る度胸のよさにも感動した。
初めての試合で、堂々と振る舞い、自分の持ち味を存分に発揮する。それは、今春入部した同級生はもちろん、上級生にとっても大いに刺激になることだろう。
互いに刺激し、競争することでチームの力が上がっていく。
彼だけではない。今春、ファイターズの門を叩いた新入生には、フットボール未経験者を含め、将来が期待できるメンバーが何人もいる。彼らが片桐の活躍に刺激され、練習に励んで、生き生きと活動してくれる日が楽しみでならない。
posted by コラム「スタンドから」 at 22:53| Comment(1)
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