2017年04月17日

(3)「想定の範囲内。こんなもんや」

 今季の初戦は、慶応大学との対戦。15日、神戸市の王子スタジアムに満員の観衆を集めて開かれた。空は曇っているが、暖かい。ときおり、散り始めた桜の花びらが風に乗って飛んでくる。
 大学の新入生歓迎プログラムの一つに組み込まれた関係か、今春入学したばかりと見受けられる新入生や啓明学院の高校生など、若い女性ファンも多い。この女性らに今後、ファイターズの熱烈なファンになってもらうためにも、グラウンドの選手がどんな妙技を見せてくれるか。期待が高まる。
 慶応のキック、ファイターズのレシーブで試合開始。しかし、最初のランプレーが進まず、QB光藤からWR松井への長いパスも通らず、簡単に攻撃権を失ってしまう。
 対して慶応の攻撃陣はアグレッシブ。春の初戦というのに、いきなりノーハドルの攻撃でぐいぐいと攻め込んでくる。ランとパスを巧妙に組合わせた攻撃に目先を狂わせられたのか、守備陣も対応仕切れない。テンポよく3度のダウンを更新され、あっという間にタッチダウン(TD)。キックも決まって0−7。
 ファイターズ2度目のシリーズは、自陣25ヤードから。光藤からWR長谷川へのパス、RB山口のラン、TE三木へのパスなどで陣地を進め、敵陣に入ったが、ここで痛恨のターンオーバー。光藤からWR小田に投じたパスは、小田の胸に入ったが、それをレシーバーがお手玉した瞬間に相手DBにボールを奪い取られてしまった。
 思わぬ好機に慶応の選手達が勢い付く。即座に長いパスを通してゴール前25ヤード。ここはファイターズの守備陣が踏ん張ってなんとかフィールドゴールの3点でしのいだが、得点は0−10。2月から3月は体を鍛え、基礎的なスキルを高める練習が中心で、チーム練習はほとんどできていなかったから、苦しい戦いになるとは予測していたけれども、ここまで一方的な展開になるとは思いもしなかった。やはり昨年のチームを支えた4年生がごっそり抜けた影響は大きいことを思い知らされる。
 さて、今季新しく試合に出るようになったメンバーがどこまで奮起するか。彼らの奮起を促すために、昨年から試合に出ていたメンバーがどんなお手本を見せるか。そこに注目していると、やってくれました。まずはRB高松が67ヤードのキックオフリターン。右サイドでボールを受け、一端、右に走ると見せかけて即座に左にカット。そのまま左サイドを駆け上がった。試合経験が豊富な4年生ならではの走りだった。
 相手陣29ヤードからの攻撃。ファイターズはRB山口、WR亀山、RB山本と試合経験の豊富なメンバーに次々とボールを集めて陣地を進める。第2Qに入ってすぐのプレーで山本がゴール中央に飛び込んでTD。K小川のキックも決まって7−10と追い上げる。
 これでなんとか落ち着いた攻撃陣。次に見せたのもやはり亀山と山口。まずは亀山が相手パントを判断よくキャッチし、12ヤードのリターン。相手陣38ヤードからの次の攻撃シリーズでは、山口がドロープレーで中央を突破し、そのままゴールまで走り込んでTD。腰を落としたバランスのよい走りで相手タックルを、2人、3人と交わしていく。まるでウナギのような走り方。最近のファイターズには見掛けないタイプの選手だが、相手にとってはやっかいな選手だろう。
 これで14−10と逆転したが、慶応の戦意は衰えない。相変わらずのノーハドルオフェンスでぐいぐいと陣地を進め、仕上げは見事なTDパス。14−17と慶応がリードしたまま前半は終了。
 後半に入っても互いに攻撃が続かず、3Qは0−0。
 4Qに入ると、ファイターズのレシーバー陣が奮起する。まずは光藤からWR安在への短いパスをとってダウンを更新。次は松井へのロングパス。センターライン付近からゴール前1ヤードまで45ヤードを一気に進める。相手DBと競り合ってキャッチした松井も素晴らしかったが、そこへ正確に投げ込んだ光藤もすごい。二人はともに3年生。今季の攻撃陣で必殺のホットラインとして機能しそうな予感がする。
 残り1ヤードをこれも3年生のRB中村が中央に飛び込んでTD。21−17とファイターズが逆転する。勢いに乗った光道は次のシリーズでもWR小田に23ヤードのタッチダウンパスを決め、終わって見れば、31−17でファイターズの勝利。攻守ともに課題は多かったが、司令塔の光藤が期待通りに活躍し、同じ3年生のレシーバー陣(松井、小田、長谷川)とRB陣(山口、中村)の成長という収穫もあった。
 しかし、双方の力の差は、得点差ほどにはなかった。春の初戦だというのに、終始ノーハドルの攻撃を押し通したオフェンス、関学のOL陣を簡単に突破してQBやボールキャリアに襲いかかったディフェンス。そしてこの試合にかける意気込み。そうした点では慶応がはるかに勝っていたようにも思える。
 試合後、鳥内監督が記者団の質問に「見ての通り。こんなもんや。いいのも悪いのも想定の範囲内。いいのは伸ばせばいいし、悪いとこはなおさなアカン。悪いとこが分かったのが収穫」と答えていたが、まさにその通り。すべては、この日の「収穫」を糧に、今後どのようにチームを作っていくかにかかっている。この日は出場できなかった4年生を含め、チーム全体の底上げに課題を突きつけたという意味では、ありがたい試合だった。
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2017年04月11日

(2)まずは紅白戦

 9日の日曜日はファイターズ・デー。桜が満開の大学構内を抜け、上ヶ原の第3フィールドに足を運ぶと、朝早くから選手がウオーミングアップに余念がない。午前10時から大学の公開練習と紅白戦、午後にはシニアファイターズや小学生たちも参加してフラッグフットボールの試合があるとあって、幅広い年代のファンが詰めかけている。
 僕はあいにく、郷里の小学校の同窓生が集まる会とバッティングしたため、公開練習と紅白試合を観戦しただけ。早々に引き上げてしまったが、それでも見るべきものは見せてもらった。一つは、昨年の4年生が卒業した後を担う選手たちの成長具合。もう一つは、昨シーズンはほとんど出場機会がなかった下級生たちの中からどんな選手が頭角を表しそうかという現状。
 紅白試合といっても、例年と違って、チームの編成はオフェンスとディフェンスに分けただけ。試合時間も45分程度と短い。そのうえ、無意味なけがを防ぐため、ちょっとでもコンタクトがあると即座に笛を鳴らすルールで進められたから、ライバル校相手との試合とは、雰囲気がまるで異なる。
 それでも、出場した選手たちは真剣だ。その一部始終がビデオに収められているし、監督やコーチたちも、新戦力の動向を懸命に見つめている。昨年は、スカウトチームに甘んじた選手たちにとっては成長ぶりをアピールする絶好の機会だし、立命や早稲田、そして富士通を相手にした厳しい試合に、たとえ交代要員であっても出場経験のある選手にとっては、その経験をどのように生かしているかが問われる試合である。
 なにしろ、先発メンバーをみても、昨年の最後の3試合に先発か主な交代メンバーとして出場した選手はほとんどいない。攻撃ではTEの三木、WRの前田、亀山、松井、守備ではDLの柴田。ほかはすべて、交代要員としてちょこっと試合に出ていればいい方。大半は、全く未知数な選手であり、顔と名前が一致しな選手も少なくなかった。逆にいうと、そういうメンバーが今季、1月から3月までの厳しい鍛錬を経てどれだけ成長したか、それを確認するには格好の舞台だった。
 オフェンスラインは左から松永、森田、光岡、西村、池田。昨秋は全員が交代要員だっただけに、これでQBの光藤を守りきれるかどうかが第一の見どころ。二つ目は、昨年の秋はけがで出場機会のなかった光藤がどこまで動けるか、WRやRBとの呼吸は合うかどうか。そして三つ目が昨季、最後の厳しい試合ではほとんど出場経験のなかった守備陣から、どんな有望株が出てくるか。この3点にしぼって、メンバー表片手に、背番号と名前を確認しながら、懸命に見守った。
 結論からいえば「晴れ時々曇り、ところによりにわか雨」という感想だった。
 晴れは、昨年の1年間を棒に振った光藤に使えるめどがついたこと。とりわけパスプレーの安定度が目についた。それを引き出したWR小田の活躍も特筆される。出場機会は限られていたが、光藤からゴールライン近くに投じられたロングパスをことごとくキャッチして、3本のTDに結び付けた。さすがは甲子園の舞台を踏んだ高校球児。野球で鍛えた俊敏な動きはフットボールでも通用するところを見せつけた。同じ3年生WRでは、長身の松井が昨季から活躍しており、今年はこの二人が4年生の前田、亀山とともにファンをわかせてくれそうだ。
 守備では、これも昨季、交代要員としてシーズン後半から出場機会のあったDL今井、DB吉野の鋭いラッシュが目を引いた。逆に、光藤からWR陣へのパスを次々と通された守備陣には課題が多い。ランプレーで相手守備陣を押し切れなかったOL陣とともに、まだまだレベルアップが必要なことが明らかになった。
 さて、今度の週末、土曜日には早くもシーズンの初戦が予定されている。相手は慶応。近年、めきめきと力を付けているチームであり、2年前に戦った時も、素晴らしい試合を見せてくれた。そういうチームを相手に、2月から3月にかけては、体幹訓練や筋力トレーニングが中心で、ほとんど試合に向けた練習をしてこなかったファイターズがどんな戦いを見せてくれるのか。この日の紅白戦には登場しなかったメンバーも含めたチームの骨格が見えてくるのか。見どころは多い。今度は丁寧にメモを取りながら観戦しよう。
posted by コラム「スタンドから」 at 13:22| Comment(0) | in 2017 Season

2017年04月04日

(1)新しい年

 2017年度のファイターズは4月1日、上ヶ原の第3フィールドでのお祈りで始まった。午後1時半、練習前の練習を切り上げた選手とスタッフがグラウンド中央でハドルを組み、顧問の前島先生が聖書を読まれる。
 今年、選ばれた言葉は「ローマの信徒への手紙」の一節である。
 「私たちは知っているのです。苦難は忍耐を、忍耐は練達を、練達は希望を生むということを」
 そう、これは第3フィールド入口のロータリーにある石造りのモニュメントに彫り込まれた言葉であり、ファイターズの部員ならば、一度は耳にし、また練習の行き帰りにこのモニュメントで目にしたはずの章句である。
 先生はこの言葉を読み上げ、祈りとは思うこと、その思いの深さが勝敗を分けるという話をされた。
 続いて、鳥内監督から「君らがどこまで本気の取り組みをするか。神様はみてはんねん。形だけ、口だけの取り組みではアカン。以上」と短い言葉があり、即座にハドルが解かれる。1年生は入学式のために欠席だったが、4年生から2年生までの部員がいつも通りにスキルを身に付ける練習に黙々と取り組み、17年度のチームがスタートした。
 もちろん、ファイターズの新しいシーズンは1月3日にライスボウルで敗れた翌日からスタートしている。期末試験が終わるのを待ちかねたように、体力づくりのトレーニングが始まり、2月には地獄の千刈合宿で足腰を鍛えた。3月には、学内で合宿し、相撲部屋のような取り組みで筋力を養い、体幹を鍛えてきた。
 途中、中学、高校、啓明学院との合同壮行会や甲子園ボウル祝勝会、そして昨年のチームを支えた4年生を送り出して、あっという間に4月。学年が改まり、井若主将を中心にした新チームのスタートである。それにあわせてこの3カ月間、ライスボウルで敗れた悔しさを抱えて一人、悶々としていたこのコラムも新しいスタートを切る。
 さて、大量の4年生を卒業で失ったこのチームが今年、どんな戦い方をしてくれるのか。まずは失われたメンバーの穴を埋め、昨年を上回る陣容を整えなければならない。毎年毎年、卒業生を送り出し、新たな陣容での再スタートを余儀なくされるのが学生スポーツの宿命ではあるが、逆にいえば、どんなメンバーが新しい戦力として登場してくるのか、という楽しみがあるのも、学生スポーツならではの魅力である。
 お祈りに引用された聖書の言葉に即していえば「卒業生を失うという苦難が忍耐を生み、その忍耐が練達を、練達が希望を生むのです」ということだろう。聖書はこの言葉のすぐ後に「希望は私たちを欺くことがありません」と続けているが、まさにその通り。苦難と忍耐、そして練達を通じて見つけた希望は、決して裏切らない。もし、裏切ることがあるとすれば、それは忍耐が口先だけで、練達が本物ではなかったということではないか。
 監督の「神様はみてはんねん」という言葉も同様である。苦難を真っ向から受け止め、ファイターズの一員としていかに生きるべきかを突き詰める。耐え忍び、本気の努力を続けることで練達が生まれる。その練達が明日への突破口を開くということだろう。
 節目の日にこういうお祈りの時間を持ち、気持ちも新たに新しいシーズンに挑む。もう10数年も続いている行事だが、こういう時間を持つたびに、気持ちが改まる。グラウンドの選手たちにとっては、なおのことであろう。
 もちろん関西リーグのライバルたちをはじめ、全国のチームが「打倒!ファイターズ」を合い言葉に立ち向かってくる。彼らは昨年、ファイターズに敗れたその翌日から「捲土重来」を期して、懸命の努力を続けているはずだ。その思いは、僕らが想像するよりはるかに強かろう。それこそ「死にものぐるい」で冬に鍛え、春の浅い時期から努力を重ねているはずだ。
 そういう相手にいかに立ち向かうか。数えて見れば、秋のリーグ戦の開幕まで5カ月もない。途中、前期の試験で練習ができない期間があることを考えに入れれば、まともに練習できる期間は4カ月少々である。1日、1時間、1分、1秒を大切に本気の練達に取り組んでもらいたい。今季も大いに期待している。
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 お知らせがひとつあります。昨シーズンのコラムを「2016年 ファイターズ 栄光への軌跡」という冊子にまとめ、発行しました。選手やスタッフには贈呈しましたが、予備が少々ございます。4月から試合会場でファンのみなさまにお求めできるようにします。1冊500円。例年通り、売り上げはすべてファイターズに寄付させていただきます。ご協力をお願いいたします。
posted by コラム「スタンドから」 at 09:08| Comment(0) | in 2017 Season