2006年07月20日

(13)コマクサの知恵

 連休を利用して、久しぶりに山に登った。目的地は信州・八ケ岳。硫黄岳から赤岳あたりを巡り、天狗岳にも登ろうという欲張りな計画だった。
 そろそろ梅雨も明けるだろうし、頂上付近ではお花畑が美しいはずだと、自分にとって都合のよいことばかり考えて出掛けたが、何のことはない、3日間とも雨ばかり。初日こそ、降り始めたのは夕方からだったが、あとの2日は土砂降りだった。
 3日目はすべての予定を取りやめて、山小屋から下るだけにしたが、それが一苦労。登山路には周囲の山からの水が滝のようになって流れているし、道沿いの渓流は濁流になって暴れ回っている。足元の濁流を眺めながら木の橋を渡るのは怖いし、途中、池のように水の貯まった場所も突っ切らなければならなかった。
 さんざんな山行きだったが、だからこそ感動的な場面に遭遇できた。2日目、雨と強風の中、硫黄岳の山頂近くで見たコマクサの群落のことである。
 コマクサは数ある高山植物の中でも、ナンバーワンといってよいほど登山者に人気の高い花である。森林限界を抜け、標高2700メートルほどの稜線近くになって、初めてお目にかかれる希少性。ピンクの特徴ある花の形。およそほかの植物が生育できないような砂礫地(石ころだらけの土地)にしっかりと根を張って、けなげに咲いている気高さ。
 そんなコマクサの群落が嵐の中、硫黄岳の山頂近くにしっかりと咲き誇っていた。雨具で防御していても顔に当たると痛い雨、瞬間風速30メートルぐらいと思える強い風にもめげず、しっかりと石ころだらけの土地に根を張り、折れることも倒れることもせずに咲き続けていたのである。
 その気品のある、けなげな姿に感動しましたね。嵐でまったく眺望が利かなかったからこそ、足元の花に注意がいったということかもしれないけれど、これまでに見たコマクサの中でも、最高に美しく見えましたね。
 山小屋に戻って、早速、図鑑を調べた。以下はそこから仕入れた後知恵である。
 コマクサが養分にも水分にも不自由し、いつも強風が吹き荒れている劣悪な環境で生育できるのは、細くしなやかな根が地中に深くもぐり、地上部からは考えられないほど広く伸びているからだという。葉柄や花茎もかなりの部分が砂礫に埋まっているから、少々の風にも折れたり飛んだりすることがない。
 もう一つ。このような劣悪な環境ではほかの植物が生育できないから、コマクサが好き勝手に繁殖できるのだという。つまり、養分にも水分にも恵まれた土地だと、ほかの植物もよく生育するため、競争に負けてしまうが、石ころだらけで、いつも強風が吹き荒れているような場所だからこそ、その土地に適応する仕掛けを持ったコマクサだけが伸び伸びと生きていけるのだという。
 その記述を読みながら、ファイターズにも通じる話だと考えを巡らせた。
 つまり、コマクサは地中深く、地上部からは想像もつかないほど広く根を張っているからこそ、地上の強風にも、少ない養分にも耐えていける。ファイターズも同じである。普段、部外者からは見えない根っこの部分さえしっかり鍛えてあれば、試合という表面の部分で、どんなに強風にもまれても耐えきることができるのである。
 大型の草との生存競争に勝ち抜くために、独特の適応条件を発達させ、それを武器にあえて劣悪な環境に身を置くというコマクサの知恵も、ファイターズが今後、より条件的に恵まれたチームと対等以上に戦って行くための仕掛けを作り出していくためのヒントになるはずだ。
 一輪の花を見てもファイターズ。嵐に遭遇してもファイターズ。すっかりファイターズに中毒しているようではあるが、言いたいことはただ一つ。僕たちが教訓に出来ることはどこにでも転がっているし、考えるヒントは至る所にあるということである。
 選手といわず、スタッフといわず、チーム全員がしっかり考え、しっかり鍛えて秋に備えてほしい。
posted by コラム「スタンドから」 at 07:31| Comment(1) | TrackBack(0) | in 2006 Season
この記事へのコメント
何の準備もせんでも,いかなるチームにも勝てるのが本当に強いチーム,というのは,いささか乱暴な定義でしょうか?
イチロー,コマクサの話のどちらも,学生スポーツにはちょっと要求のレベルが高すぎるようにも思えるもので…。
それぐらいせんと学生日本一は無理だし,Figtersはそこまで求められるほど高みにあると言われれば,話は別ですが。
Posted by ドロップゴール at 2006年07月23日 06:39
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