2014年05月21日

(8)時計台とフットボール

 関西学院は今年9月、創立125周年を迎える。節目の年に向けて、大学ではいま中央講堂の建て替え工事などが進み、募金活動も佳境に入っている。
 上ヶ原キャンパスの正門を入った正面には、記念式典までの日付を日々更新する「カウントダウン・モニュメント」が設置され、道の両側には125周年と書いた青い旗が何本もはためいている。
 125周年をアピールするそんな事業の一つとして、学院広報室が生協の書籍販売部で書籍購入者に「記念ブックカバー」を無料配布している。デザインは、1回目がKGブルーを基調とした時計台と正面のヒマラヤスギ。2回目が有名な版画家、川西英さんの作品を思わせるような色合いの時計台と甲山。
 そして現在配布中の3回目が学院の創設者、ランバス先生の肖像と時計台である。そこにはヤシの木やカルガモの親子など、キャンパスに彩りを添えるあしらいもある。注意して見れば、ランバス先生の肖像の左下にアメフットのボールが描かれ、その隣にAmerican footballの文字がある。
 関西学院と聞いた時、卒業生や在校生の誰もが思い浮かべるを時計台や甲山、ランバス先生やヒマラヤスギに混じって、なぜアメリカンフットボールのボールが描かれているのか。それがなぜ全体のデザインのなかで、しっくり収まっているのか。
 関西学院には、全国に知られた競技団体がいくつもあるし、文化団体もある。けれども、このブックカバーをデザインした作者は、迷うことなく学生の課外活動を代表するイメージとしてアメフットのボールを描いた。そしてそのボールが全体の構図にしっくり収まって、何の違和感もない。なぜだろう。
 関西学院の課外活動を象徴する団体がアメリカンフットボール部であり、そう呼ばれるのにふさわしい実績を積み上げてきたからだと、僕は決めつけている。念のために広報室に取材し、カバーの真ん中にアメフットのボールをデザインしたことに、ほかの団体から苦情めいたものはきていませんかと聞いて見た。答えは「そんな質問をしてきたのは石井さんが初めて。関学といえばアメフットと、大抵の人は思っているから、別に違和感はないのでしょう」ということだった。
 つまり「関学といえばアメフット」という考え方がキャンパス内で定着しているから、このカバーをデザインした作者も「当然のように」ボールをその構図の中にあしらったのである。
 広報室に居合わせた職員は全員、それが当然でしょう、という雰囲気だったが、よく考えればこれは大変なことである。
 学生はもちろん、世間には多様な考え方がある。スポーツの好きな人がいれば、文化活動に熱中する人もいる。自らはクラブ活動に参加せず、学業やボランティア活動に集中している学生もいる。大学の職員や先生も同様である。みんながみんな、アメフット部を応援しているわけではない。自分の関心事を追うことに忙しく、部活のことなんて知ったことか、と思う人も多いはずだ。
 けれども、そんな人たちを含めて、関西学院といえばアメリカンフットボール、ということに何の違和感も持っていない。すごいことではないか。
 これは1941年の創部以来、営々として築いてきたチームの歴史が学院関係者に高く評価されてきた証しである。清く戦い、勝利者の名を誇りに思い、その名に恥じない品性を持ったチームを営々として築いてきた歴代の選手、部員、指導者がいたからこそ、甲子園ボウル出場48回、優勝26回(引き分け、両校優勝を含む)、関西リーグ優勝53回(複数校優勝を含む)という他に類を見ない成績が残せたのである。
 もちろん、数字だけが評価されているのではない。以下の数行は3年前、アエラの「関西学院特集号」にも書いたことだが、ファイターズというチームの本質を表現していると思うのであらためて引用したい。
 「たとえ戦力的に劣っている時でも、戦術を工夫し、知恵をしぼり、精神性を高めて、いつも力を最大限に発揮するチームを作ってきたのがファイターズであり、戦後、一貫してアメフット界の頂点を争い続けて来た唯一のチームとしての矜持である。関西学院のスクールスポーツとして敬意を払われ、部員たちもそのことに特別の思いを持つ基盤はここにある」
 こういうことである。
 だから、関西学院をアピールする素材にアメリカンフットボールが取り上げられても、誰も違和感を持たず、それが当然と思ってくれるのである。
 現役の諸君は全員、こういう歴史を背負って日々戦っているのだ。そのことを心に刻んで努力し、さらなる高みを目指していただきたい。

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posted by コラム「スタンドから」 at 09:39| Comment(2) | in 2014 season
この記事へのコメント
ファイターズを卒業し、日本全国、否、世界の中で頑張っている社会人達にとり、改めて自己や仲間を思い起こさずにはおられない石井先生からのコラム。何よりの励まし、心より感謝です。
Posted by 頑張れ、ファイターズ! at 2014年05月21日 16:01
 時計台とFIGHTERS.何世代にも亘るKGitesが共通して持つ青春の原風景の2つですね。
 時代が移ろい行こうが今後も変わることはないでしょう。
Posted by Blue Blood at 2014年05月21日 17:50
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