2007年08月27日

(19)君は川流を汲め……

 炎暑、猛暑、酷暑……という言葉を全部まとめて進呈したいような今年の夏。還暦を過ぎた僕には、耐え難い暑さだったけれども、ファイターズの諸君にとっては、鍛える夏。鉢伏山での1次合宿、上ケ原での2次合宿と、暑さを吹っ飛ばして鍛錬を続け、秋に備えていることと思う。
 この時季はまた、来春、ファイターズを目指す高校生にとっても、鍛える夏である。しっかり勉強して、まずは合格を勝ち取らなければならない。とりわけ、スポーツ推薦で試験を受ける生徒にとっては、試験日が目の前に迫っている。夏の合宿、秋のシーズンに備えた練習の合間を縫って、勉強にも取り組まなければならない。
 ご承知の通り、関西学院大学のスポーツ推薦制度は、あくまで入試である。しっかり小論文を書き、面接試験を受けて合格しなければならない。いま話題になっている多くの私立高校のスポーツ特待生や一部の大学のスポーツ推薦とは違って、当該のクラブや監督が推薦すれば、それで合格が決まるというような仕組みにはなっていない。当然、小論文が書けなければならないし、面接試験でもしっかり自分をアピールし、担当の先生とコミュニケーションがとれなければならない。
 そのためには、準備がいる。たとえ短期間でも、小論文を書く勉強をしておけば自信がつくし、時事問題に関心を高めておけば、ゆとりを持って試験を受けられるだろう。そのためには、まず鍛錬である。
 そのように考えて、ファイターズは毎年、この時期にスポーツ推薦入試に挑む高校生を集めて小論文の勉強会をしている。その講師を僕が担当しているのである。
 それが面白い。通っている高校も住まいも異なるメンバーだから、最初のうちは互いに緊張しているけれども、何度か勉強会を重ね、一緒に食事をしているうちに打ち解け、同じチームのメンバーのように、にぎやかに盛り上がる。勉強会がチームのミーティングのような雰囲気になってくる。
 そういうメンバーを見ていると、中学3年の時、小柄でしわくちゃな顔をした、ちょっと近寄りがたい雰囲気を持った漢文の先生に習った漢詩が思い浮かぶ。19世紀の初頭、いまの大分県日田市で塾を開いていた漢学者、広瀬淡窓の「休道詩」である。

 休道他郷多苦辛 同胞有友自相親
 柴扉暁出霜雪如 君汲川流我拾薪

 どこかで聞いた覚えのある詩だ、という人も多いだろうが、読み下せば、「道(い)うことを休(や)めよ他郷苦辛(くしん)多しと。同胞友有り自ずから相親しむ。柴扉(さいひ)暁(あかつき)に出(い)ずれば、霜雪の如し。君は川流(せんりゅう)を汲め、我は薪(たきぎ)を拾わん。」となる。諸国から勉学に集まった青年たちの、家郷を遠く離れた寂しさと、お互い同士、慰め合い、励まし合い、助け合って生活していく状況を詠み込んだ詩である。
 昼間、それぞれの高校で練習が終わった後、夜間、西宮に集まり、そこで慣れない小論文に取り組み、先生(僕のことです)に気合を入れられながら、それでも仲間同士励まし合って、1日もサボらず、勉強に励む。そういう勉強を続けて入試にチャレンジし、そして合格する。
 大学も高校も勉強する場所である。たとえスポーツ推薦といえども、しっかり勉強し、しっかり試験を受けてもらいたい。優れた競技能力があるというだけで進学が保証されるのではなく、きちんと努力をして関門をくぐり抜けることが、本人にとって人生の重要な節目となるのだ。そうしてこそ、一般入試を受けて進学してきた級友たちと、対等な学校生活が送れるし、実りある学校生活につながるはずだ。
 僕はそう信じて、アメフットは大好きだが、小論文は不得手であるという高校生に、懸命に文章の書き方を教えているのである。それに汗を流して食いついてくる高校生が可愛くてならない。
posted by コラム「スタンドから」 at 20:41| Comment(1) | in 2007 Season
この記事へのコメント
 フットボールシーズン、いよいよ到来。熱くなってきます。石井さんのコラムもノッテきたみたいで。
 昨年の「青い」ハンカチ王子以上に、今年の高校野球全国大会では、文武両道のチームが見事栄冠を手にしました。「努力」のチームが出場し、優勝するのを見て、快い空気が甲子園に戻ってきたなと感じ、嬉しい限りです。
 決して奢らず、謙虚に、そして着実に階段を昇っていって下さい。気が遠くなるほど待ったライスボウル出場に向けて。Let's go,KG!!!
Posted by Blue Blood at 2007年08月29日 01:36
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