2009年11月18日

(29)決戦の月曜日

 いよいよ決戦の日がきた。ときは2009年11月23日。舞台は長居陸上競技場。昨年は圧倒された立命館に、雪辱を期してファイターズの面々が立ちふさがる。
 いつもの年なら、最高に盛り上がる試合である。しかし今年は、両軍とも関大に苦杯を喫し、自力優勝の目は絶たれている。関大が残る甲南戦に敗れない限り、この10年間、関西のいや日本学生フットボール界の覇権を争ってきた両軍の宿命の戦いが、2位争いになってしまうのである。
 それを寂しいと思われるファンは少なくないだろう。打ち明ければ、僕もそのひとりである。
 けれども、戦うチームにとっては、そんなことはまったく関係ない。「立命に勝って日本1」を目標に掲げ、この1年間、懸命に努力してきた選手たちから見れば、ようやく目標のチームと戦える機会が巡ってきたということである。全力を尽くし、完全燃焼して、自らの選手生活に刻印を刻んでほしい。
 先週末は、木曜日から日曜日まで、それぞれ短い時間ではあるが、上ケ原の第3フィールドに出掛け、練習を見ることができた。さすがに空気は張りつめている。
 例年のことだが、入口には「部外者の見学お断り」の張り紙があり、1年生部員が来場者をチェックしている。練習の進行を仕切るマネジャーの声は枯れているし、トレーナーの走るスピードも上がっている。攻守とも、立命館チームを想定した選手は、マルーン色のユニフォームを着けてプレーをしている。ハドルの集散も目に見えて早くなってきた。
 素人目に見ても、攻撃に立命戦用の新しいプレーが含まれていることが見て取れる。その一つひとつのプレーを1年がかりで練習し、精度を上げてきたチームの努力に思いを馳せる。
 いくらとっておきのプレーでも、使える状況が出現しなければ宝の持ち腐れ。試合で使って経験値を上げようと思っても、ベールを脱いでしまったら、戦術としての価値は落ちてしまう。一方では、ベーシックなプレーや体力づくりも同時並行で進めなければならない。
 ライバルチームも、そういう難しい条件を克服しながら、それぞれのチームの特徴を生かしたプレーを磨いているはずだ。たとえ、試合で使えるのは一部であっても、それぞれのチームが彼我の力関係を想定して、いくつもの特別のプレーを作り上げてくるから、アメフットは楽しい。奥が深い。
 もちろん、基本は真っ向からのぶつかり合いだ。火花の散るようなタックルを浴びせ、相手を圧倒する魅力に勝るものはない。それがあるから、ピンポイントのパスも、相手の守りをギリギリでかわして突っ走るランプレーも、さらに光ってくる。そういうプレーの応酬があって初めて、特別なプレーの出番が回ってくるのである。
 言い換えれば、ファイターズが開発してきたプレーも、それを披露できる条件ができあがってこそ、威力を発揮する。そのためにこそ、日ごろからベーシックなプレーを繰り返し繰り返し練習し、精度を上げてきたのである。
 そういう努力を全開でぶつけられるのが立命戦である。そういうギリギリの戦いを毎年毎年、営々と繰り広げてきたからこそ、ライバルがライバルとして存在してきたのである。相手に敬意を持って戦うことができたのである。
 少なくとも、この10年余、ファイターズにとって、立命館は特別のチームである。ただ目の前に立ちふさがる壁というだけではなく、全知全能を駆使して戦うにふさわしい相手である。それは、毎年のように1プレーで勝敗が左右されるという試合内容が表し、得点差が示している。
 自力優勝の目がなくなったという悔しい状況ではあるが、選手にとっては、特別の思いを持って臨むべき試合である。存分に戦ってほしい。思い残すことなく諸君のすべてをぶつけてほしい。その果てにアメフットの神様が見えてくるだろう。
posted by コラム「スタンドから」 at 12:06| Comment(8) | in 2009 season
この記事へのコメント
>>この10年間、関西のいや日本学生フットボール界の覇権を争ってきた両軍の宿命の戦いが、2位争いになってしまうのである。
 それを寂しいと思われるファンは少なくないだろう。


私はそうは思いません。
関大の台頭で、これからは3強になってくれれば、もっと面白いリーグ戦になるはずです。
石井さんは、立命以外のチームにはボロ勝ちして立命との全勝対決だけが魅力的とお考えですか?
本場のカレッジは、2強なんて構図はありえません。
これから京大や神戸大など公立校も台頭してもっと面白くなることに期待します。
その中でファイターズも輝く存在であってほしいと思います。
この間、スタンドにいた心無いOBが
「関大なんぞに負けやがって」
と言った言葉を浴びせました。
昔では考えられないことでも、今は関大は立命をも凌駕する強いチームなのです。
そういった意識をOBはじめファンの方々の間にも定着させるべきだと思います。

乱文失礼しました。
Posted by アメフト親父 at 2009年11月18日 20:26
石井氏の文面にはいつも感銘を受けます。が、今年のファイターズの面々には深い意味での「覚悟」があるのか疑問です。最終戦、思い残すことなく戦って欲しいとは切に願います。選手達に「死中活有」にある「今日この場所で11人が死ぬ」覚悟があるのかどうか・・・
残念ながら非常に不安な最終立命大学戦です。もし中途半端な試合になれば来季から「立命を倒し日本一に。」というスローガンは色褪せるのではと本当に心配しています。
Posted by KGファン at 2009年11月19日 16:32
FIGHTERS2009には、大きな山をつくって、記憶に残して欲しい。それだけです。強く、応援します。
Posted by KGを応援する者 at 2009年11月19日 21:10
最終の立命戦、精神論も、技術論も、もう何もいらない!
ただ一つ必要な事は、4回生全員がもっと大きな声を出し、体から、周りに見えるぐらいの元気良さを出してもらいたい。
今年のファイターズにかけていた物、、、、それは、元気良さであり、それが見られないので、見ている者も熱さが伝わってこないと思う。
長居は大きい!
声がかれて、声を出しすぎて倒れるぐらい、全員が熱くなってもらいたい。

Posted by 喝 at 2009年11月20日 09:45
 石井さんが仰る通り、ある種泥臭い鍛練がartisticなまでにstylishなプレイを産むんだなあとつくづく感じます。
 FIGHTERSを語る際演繹法ではなく帰納法だと極めて理解し易く、優勝したから・強い[強くなった]から何か哲学が出来あがったのではなく、チームカラーを遡って辿るとプライドや品性に行き着きます。
 モーティベーションコントロールが困難な中、よくぞここまで来てくれました。リーグ最終戦では武士道精神の一つの完成型を拝めれば最高です。
Posted by Blue Blood at 2009年11月20日 21:54
見ているファンには、ドキドキしたりハラハラしている人がたくさんいるということが
こういった場や、特にスタジアムでの歓声を聞くとよくわかります。
そんな観客の声の一粒一粒が選手にどんな風に聞こえているのかを
知ることはできません。影響を与えているのかもわかりません。
でも、観客がどう思っていても実際に頑張って来たのは選手で
1番気持ちが入っているのも彼らですから
私は大きな歓声と共に見守ってあげることに徹したいと思います。
この声がせめて聞こえていることを信じて。
計り知れない辛さの中で私たちは魅せられているのですから。

頑張れ。KG FIGHTERS!たくさんの躍動感と感動をまた分けてもらいに行きます*゚
Posted by サカモトハッチ at 2009年11月20日 23:11
初めて投稿させていただきます。

石井さんのコラム毎回楽しく読まさせてもらってます。
ただ失礼を承知で書かせていただけるなら、関大が立命に勝ってからのコラムは少し?と思いながら読ませていただいてます。

今日、関大が全勝でリーグ優勝決めました。私は関学OBですが、関大の優勝は嬉しかったです。学生フットボール界の為に優勝するチームがたくさん出てくるのは喜ばしいと思います。今日の試合を見ましたが、関大は優勝にふさわしいチームです。攻撃ライン、RBの残る来年もきっと強いです。「アメフト親父」さんの言われるよう、来年以降も混沌としたリーグ戦を期待してます。関東では法政・早稲田・日大・明治・慶應が激しく覇権争いしてます。地方リーグも同様です。関西だけが2強は関学・立命にとっても望ましい状態ではないはずです。

長文になり失礼いたしました。関学と立命の試合はこれぞフットボールだという試合期待してます。
Posted by 学生フットボールファン at 2009年11月22日 00:20
石井さんのおっしゃった通り、確かにアメフットの神様は微笑んでいました。23日の試合、改めて「ファイターズ」というチームの素晴らしさと誇り高さを現役が堂々と見せてくれて、感動しています。

10月に関大が立命を下して、優勝の可能性が限りなくゼロに近づき、後悔やさまざまな葛藤、悩みが襲い来る中、打倒立命という目標に主将以下チームをまとめるのは、並大抵の苦労ではなかったと思います。頭では「打倒立命」とわかっていても、同じ目標にチーム全員が一体となって向かっていくのは相当苦労があったでしょう。

しかし優勝の可能性が本当に消え失せた中、23日のゲームはまさに「関学の誇り」を体現した素晴らしいものでした。
確かに戦術的には、優勝争いがないという事情でしかあり得ないものもあったでしょう。しかし、そこはこの日に限っては問題ではありませんし、相対した立命の試合への取り組みの比較も意味はありません。グラウンドで自らを表現し切った選手、ベンチ、そしてスタッフ、コーチが、まさに「ファイターズ」でした。

京大戦で苦戦してからの期間、4年生は立命を倒すのみに集中し切り、練習と試合でその「生き様」「DNA」を敵に見せつけ、観客と後輩に伝えることができました。それは史上これまでのどの代のファイターズ4年も成しえなかった「偉業」です。

4年生はどうかそのことを誇りに卒業し、そして来季以降もさらに激戦となるであろうリーグを戦うファイターズ=後輩を支えていって欲しいと願っています。そして、そのDNAを受け継いだ3年生以下が、来季にリベンジを果たしてくれることを祈っています。
Posted by 40代のOB at 2009年11月24日 23:21
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