2019年12月03日

(30)会心の勝利

 会心の勝利、といえば言い過ぎかもしれない。けれども、強豪・立命館に立ち向かう直前に、ファイターズの練習を見せてもらう機会のあった僕にとっては、十分に予測できた勝利であり、会心の勝利であった。
 予測は当然、外れることもある。身内をひいきするあまり、眼鏡が曇ることもあるだろう。しかし、間近でファイターズの練習を見てきた目で見ると、そこには1ヵ月前の練習とは明らかに異なる空気が流れていた。
 例えば、選手一人一人の練習に取り組む姿勢が敗戦前と、敗戦後では明らかに変わった。仲間同士で知恵を出し合い、一つ一つのプレーに惜しみなくアドバイスを交わす場面も増えてきた。逆に、不用意な落球や不注意から起きたミスについては、選手の中から厳しい言葉が飛ぶようになった。ハドルの中心にいる寺岡主将の声の調子、勢いも変わった。
 リーグ戦で立命館に敗れるまでは、正直に言って、どこかに緩い空気が漂っていた。緩いというと語弊があるかもしれないが、練習でプレーが失敗しても、当該の選手が本気で悔しがっている姿はほとんど見られず、仲間の明らかな失敗を本気で叱っている場面も見たことがない。チームを率いる4年生の言葉も、ありきたりで上滑りしている。もちろん主将と副将が怒鳴りあい、殴り合いになる寸前、というような場面にも遭遇したことがない。
 そんな空気が前回の敗戦で一変したように僕には思えた。練習の時間は同じでも、テンポは早くなり、より正確性を追求する。立命館の強くて素早いプレーヤーの動きを想定し、それを逆手にとる仕組みを一つ一つ周到に準備する。勝負すべきところでは大胆な作戦を仕掛け、相手の意図を外す仕掛けにも工夫を凝らす。
 立ち上がりから矢継ぎ早に展開し、相手守備陣を混乱させたノーハドルオフェンスは、そうした工夫の総仕上げといってもよい。
 RB三宅の立て続けの独走タッチダウンも、QB奥野の持つ高いポテンシャルとチームで一番のスピードを持つ三宅の能力を生かすために練り上げてきた作戦の成果である。もっといえば、攻撃のキーとなるOLやTEのメンバーを個人指導で徹底的に鍛えてきたコーチの指導のたまものといってもよい。
 前半を14−3で折り返し、後半戦が始まると同時に仕掛けたオンサイドキックも、チームにとっては必然であり、キッキングチームのリーダー、安藤君を中心に周到に練り上げてきたプレーである。
 立命館の強さは、前回の試合で骨身に染みて知った。個々の選手の反応の速さもただごとではない。それを理解しているからこそ、相手の意表を突く場面で、意表を突くプレーが求められる。それを具体化し、勝負をかけたのが、立ち上がりからのテンポの速いノーハドルオフェンスであり、ワイルドキャット隊形からの三宅のランである。そして、その仕上げが後半開始早々のオンサイドキックとその成功である。
 こうした仕掛けで、ファイターズが先手をとり、チームは終始、落ち着いてプレーを展開することができた。逆に先手をとられた相手には「こんなはずじゃない」という焦りが生まれる。その焦りがプレーのリズムを微妙に狂わせ、イージーなパスを落とすような場面が出てくる。それがまた焦りを増幅し、チームから余裕が失われる。
 そこにつけ込んだのがファイターズの守備陣である。DLは鋭い出足で相手のボールキャリアに襲いかかり、QBにパスを投げる余裕を与えない。あわやTDという場面ではファイターズのDBが懸命にパスに飛びつく。ここ一番の場面で必殺のパスをもぎ取ったDB宮城をはじめLB海崎、DB松本が各1本のインターセプトを記録。QBサックに至ってはDL板敷が4本、LB海崎、DB三村、DL寺岡がそれぞれ1本という「大豊作」だった。
 それもこれも、試合開始々、2本のTDを立て続けに奪ったノーハドルオフェンスの成果である。それを仕掛けたベンチの果敢な決断であり、その期待に応えた選手たちの勇気である。
 試合の2日前、大村コーチに話しかけると「結果は神のみぞ知るです」と、冗談めかしていいながら、「でも、プレーの準備では、どこにも負けていない自信があります」という返事があった。その言葉を鮮やかに証明したような試合内容と結果に、僕はまたフットボールという競技の持つ奥の深さと魅力を知ったのである。
posted by コラム「スタンドから」 at 09:20| Comment(7) | in 2019 Season
この記事へのコメント
見事でした。後半開始直後のリスクをとってのオンサイド、ここが勝負と見るや畳み掛ける怒涛の攻撃、特に前戦悔しい思いをしたであろう鶴留君の名誉挽回のパスキャッチとカウンターのラン。もう泣けてきました。これだからファイターズファンはやめられませんね。言うまでもありませんが甲子園も慢心せず、悔いの無い闘いをされることを祈ります。
Posted by うえちゃん at 2019年12月03日 11:20
あのオンサイドキックは 2007年の立命館とのリーグ戦 での 大西、磯野のオンサイドキック、その後 三原の秋山へのロングパスを 思いだしました。関学の伝統が受け継がれています。
Posted by 治さん at 2019年12月03日 18:37
3TD目、私は'01.フラッシュボウルを思い出します。主将LB石田(兄)君をTEに配し、左に厚いパワープレイの準備を整えて、RB足立君へのプレイアクション。今回はTE亀井君へのパスでした。その後ライスボウルを制した当時も先日も、そのまま中央の、例えばダイヴでも取れそうでしたが、より確率が高い選択をしたのでしょう。脱帽です。
Posted by Blue Blood at 2019年12月03日 20:29
お見事なゲーム展開。立命館戦は、リードしていても、逆転されるかもとヒヤヒヤして観戦していましたが、今回のゲームは、三宅選手が2本連続してTDした時点で、勝利を確信しました。それはoffenceもdefenceも対戦相手を圧倒していたからです。甲子園まで準備期間は短いですが、鳥内監督をRICEへ連れてってください。
Posted by kg7803 at 2019年12月04日 05:13
ファイターズの皆さんは立命館とのリーグ戦の敗戦後、心身共に疲れてたと思います。只、いつも逆境に強いファイターズの勇姿から元気を頂く者としては、ファイターズ戦をネット中継(神奈川在住)で、4週連続観戦できてワクワクでした。こんな事は今までなかったですから。そして12月1日は全員で勝ち取ったゲーム展開に大興奮でした。次の甲子園ボウルは2年前にならないように油断せず勝ちきって下さい。そして監督の胴上げを!!Fight On!
Posted by フジッケ at 2019年12月04日 20:58
また今年も甲子園に行けます。これで4年連続の甲子園ボウルであります。4年連続なんて、ありがたくて選手及びスタッフの皆さんに感謝の思いが募ってきます。それにしても立命館のチームは本当に強い!一人一人の力と速さ、そのトータルの能力はずば抜けているとしか言いようがありません。そのチームに勝利するのは至難の業ですね。毎年思うのですが、KGファイターズのフットボウルはまさに「魂のフットボウル」ですね。心から感謝と共に甲子園での活躍を祈っております。心配なことが1つだけあります。甲子園までのこの2週間に激しい練習のため中心選手がに大けがをしないように気を付けてください。甲子園の当日に「えー!嘘や〜!」と背筋がこごり付いたことが2回もありましたので、くれぐれも注意をお願いいたします。
Posted by saka49 at 2019年12月05日 05:55
いよいよ甲子園ボウルまで1週間になりました。今年も対戦相手は「都の西北・・・」と歌う早稲田大学です。昨年は1塁側に陣取って堂々と歌われていました。流石に迫力がありました。「来年はあの席でファイターズの応援をしたいものだ!」と思っていましたが、今年はその思いがかなえられます。きっと前日から寒空の下で毛布にくるまって開門を待つファンが今年も出るのでしょうね。「選手の思いを知っていますので、こんなことくらいしかできませんが、これが僕たちの戦いです」なんて涙がでそうなことを言ってくれるのですよね。私ももっと若ければ「私もテントを張って頑張ろう!」となるでしょうが、朝早く行くくらいにしておきます。
その人その人で応援の仕方は違います。熱く熱くの方、あくまでも冷静に冷静にの方もいらっしゃいます。いずれもファイターズのファンですね。選手とスタッフの皆さんに感謝を込めて応援させていただきますね。
Posted by saka49 at 2019年12月08日 08:23
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