2019年01月05日

(33)課外活動と興行

 くそったれ!
 ライスボウルが終了したとき、思わずこんな言葉が口から飛び出した。あまりにも品のない言葉であり、それを文章にするなんてもってのほかだ。
 けれども、試合が終わって3日目の今朝、なんとかパソコンに向かって今季の最終回となるコラムを書こうとしても、この汚い言葉が頭の中を走り回っている。とても原稿を書く気分ではない。いっそ、前回のコラムのままで、光藤ファイターズの今季を締めくくってしまおうかとも考えた。
 けれども、いかに苦しくても、戦いを最期まで見届けるのが「従軍記者」の務めである。顔を洗い、口をすすいで、あらためてパソコンと向き合っている。
 試合そのものについては、主催者の一員でもある朝日新聞がしっかり書いてくれている。その筆者のリーダー格がファイターズOBの榊原一生君(2001年度卒)と大西史恭君(2007年度卒)。ともにファイターズの内部情報にも通じており、専門記者ならではの冷静、公平な記事を仕上げている。
 だから、僕はあえて試合の進行状況とは離れ、ライスボウルの位置付けと大学スポーツが目指す方向の2点から、僕なりの感想を綴ってみる。見苦しい言葉があるかもしれないが、ご寛恕を賜りたい。
 1、ライスボウルとは
 いうまでもなく、社会人王者と大学王者がフットボール日本1を決める戦いとして位置づけられている。以前は学生チームの東西対抗戦として開催されていたが、1984年以降は社会人トップと学生トップが日本1の座を競う日本選手権となった。当時は、社会人の選手層も薄く、加盟チームの力量も学生側と大差はなかった。逆に大学側には、その前の甲子園ボウルに勝つことを最終目標としているチームが多く、ライスボウルはその勝者に対するご褒美という程度の位置づけをしていたような印象がある。
 少なくともファイターズにとっては、甲子園ボウルに勝つことが至上命題であり、その前に、80年代は京大に勝って甲子園ボウルに、そして90年代は京大、立命に勝って甲子園ボウルに出ること、甲子園ボウルで関東代表を倒して、名実ともに日本1となることが最大の目標とされていたように僕は理解している。だから関西リーグは盛り上がり、互いが互いを意識して切磋琢磨し、全体のレベルも上がった。京大と関学の戦いには3万人の観衆が詰めかけることも珍しくなく、甲子園ボウルで関西リーグの代表が勝っても「当たり前」というような状況が生まれた。
 課外活動としてのフットボールに情熱を傾ける学生と学生が、互いに4年間という対等の時間の中で錬磨し、知恵を巡らせて戦い、純粋に勝つことに誇りを持てた時代といってもよい。
 90年代に入ると、社会人チームの取り組みが本格化し、学生チームもまたライスボウルで勝つことを最終目標にするようになった。とりわけ社会人チームは、大学のスター選手を次々確保するようになり、2000年代に入ると、それがさらに加速された。専任のプロコーチを置いたり、アメリカから選手を呼び込んでチームを強化したりするチームが増え、その実力も年々アップしている。
 さらにいえば、アメリカからの選手が増えるにつれて、試合そのものも「興行・イベント」としての色彩が濃くなり、チアリーダーの応援もショウアップされた。スポーツイベントだから、観客動員が重要視され、それに伴って大音響のクラウドノイズも当たり前になった。
 逆に学生チームは4年間という年限があることに加え、近年はフットボール選手である前に大学生であれ、という流れが定着してきた。ファイターズのように、授業優先の練習時間を設定し、所定の単位を取得しなければ、試合には出場させないとか、練習も制限するとかのルールを決めて取り組んでいるチームもある。
 「興行」である以上、強くあらねばならない。その目的を達成するために人材の補強、指導者の招請、スタッフの強化などチームマネジメントに取り組む社会人チームと、4年限りの短い時間で学生を育て、手持ちの資源だけで勝負する学生チーム。双方のフットボール哲学、目的の乖離は年々大きくなり、それに応じてチーム力の差も開き続けている。その集大成が今年のライスボウルであったといっても過言ではなかろう。
 2、大学スポーツとは
 では、大学スポーツも社会人と同じ方向を目指せばいいのか。日本選手権(ライスボウル)の在り方が現行通りなら、そこで勝つためには、大学側も社会人チームと同等の取り組みをしなければならない。しかし、大学生が取り組む課外活動として位置づける限り、野放図なことは許されない。
 大学生活は20歳前後の4年間。その限られた時間で、学業に取り組みながら課外活動にも力を注ぐ。そこで人格を養い、忍耐力や協調性、思考力や発想力を身に付ける。「どんな男(人間)になんねん」と問い続けて自ら奮起し、明日を信じて身を処していく。
 それが人間としての成長につながり、その成長を担保する仕組みが大学における課外活動であり正課外教育である。
 ファイターズの活動もそうした活動の一つであり、だからこそ、学生たちはその活動に4年間集中して取り組み、涙を流し、喜びを爆発させる。仲間との絆を深め、生涯の友人に巡り会う。
 それはこの1年間、光藤ファイターズが歩んできた道のりそのものである。5月、雨の中での日体大との試合で敗れたところから再スタートしたチームは、何度も奈落の底に落ちそうになりながら踏みとどまった。苦しい関大戦を残り2分からの逆襲でなんとか引き分けに持ち込んだ。2度にわたる立命との決戦も、チームが一体となって乗り切った。手の内が分からないままの甲子園ボウル、早稲田との戦いも、ファイターズならではの戦術を駆使して乗り切った。コーチ陣を含めたチームの総合力でつかんだ勝利といってもよいだろう。
 そうしてたどり着いたライスボウル。試合は大差がついたが、学生代表の戦いとして堂々と胸を張れる試合だったと僕は思っている。大差の中でも必死に走り、パスを投げ、捕り続けたQB、RB、WR陣。それを支えたOLの面々。三笠を中心とする守備陣も頑張った。立ち上がりから強力なタックルで相手エースを止め続けたDLとLB。とりわけ2年生の海崎、繁治の懸命のプレーには涙が出そうだった。DBの横澤、西原、木村、畑中らも終始、相手のレシーバーに食らいついた。
 その結果としての52−17。興行ではなく、大学生が課外活動として取り組んだフットボールの試合として、胸が張れる結果だと僕は思っている。
 ありがとう。光藤ファイターズ。シーズン半ばから急激に成長し、ライスボウルで懸命に戦って散った諸君の姿を僕は忘れない。
posted by コラム「スタンドから」 at 22:26| Comment(5) | in 2018 Season
この記事へのコメント
ライスボウルの現場にいたものとして、確かに「くそったれ!」という気持ちになりました。富士通にとっては社会人として負けるわけにはいかない。だから社会人同士で戦うつもりで外国人2人を攻撃でも守備でも常時出してくる。圧倒的なパワーでゴリゴリ進む。見ている方はとにかく「怪我だけはしないように!」とばかり思っていて気が気ではない。しかし、願いとは反対に次から次に負傷していく。何回担架で運ばれたことか。内心「早く終わってくれ」とばかり願っている自分がいる。致命的な怪我を負わされたらたまったものではない。甲子園ボウルに勝ったらライスボウルに出場するのは義務なのか?辞退するという選択はないのか?あれほどたくさんの負傷者が出るのが予想される現実があるのに参加させることはいかがなのもかと思ってしまう。
勝つ負ける以前に指導者はこのことを考えなければならない時期に来ているのではないかとさえ思う。
Posted by saka49 at 2019年01月06日 20:47
 残り1分を切って、主将QB#10光藤君がチーム2本のTDラン、直後にオンサイドKを成功させ、最後は#18西野君がヘイルメリー…最後の最後まで、全力を尽くしました。第2・4Qだけ見ると互角です(これは負け惜しみ(笑))
 巷ではライス存亡論が喧しく、周りでもああだこうだと鬱陶しい限りですが、元より私はどうこう言える立場ではありません。関学は学生以上社会人王者未満なのかなあと少し感じただけです。
 「負けていい試合など1つとしてない」。鳥内監督が何年も前に言われた言葉を胸に、春になれば新たに声援を送り始めます。
 4年生の皆様はお疲れ様でした。ゆっくり翼を休め、社会へ羽ばたいて下さい。単位の危ない部員は慌てて下さい(笑)甲子園ボウル優勝2回、準優勝1回、ライスボウル準優勝2回の戦績と、他大では得られない有形無形の財産は既にあなた達の中にしっかり根付きました。OB/OGとして、我々と共にFIGHTERSを支えましょう。ありがとうございました。
Posted by Blue Blood at 2019年01月06日 21:25
ファイターズの皆さん、本当によく頑張りました。お疲れ様です。4年生の方は、残り少ない学生時代をエンジョイしてください。
いろいろな意見があるかと思えますが、もう
ライスボウルとういうシステムを根本的に
見直す時期ではないでしょうか?
本場のアメリカのNFLでも活躍しそうな本格派の
超人のような外国人の選手が縦横無尽に暴れまわるような今の社会人チームに、学生チームの選手が、根本的に太刀打ちできるものなのでしょうか?たとえ、皆さんの最強の敵である立命館パンサーズが、今年ライスボウルに出場していたとしても、同じような結果になったのではないのでしょうか?もう、ライスボウルに出場する学生チームには、全米学生チームのチャンピオンチームのメンバーを何人か加えてもらい、合同で社会人に太刀打ちするという、改革でもしない限り
来年以降も、同じ結果の繰り返しと思われます。
Posted by ファイターズの皆さんへ、 at 2019年01月10日 18:37
遅くなりましたが新年明けましておめでとうございます。
大変な年明けだったかも知れませんが得たものも大きかった戦いでしたね…少なくとも完敗ではないですスコアの分だけは勝ったのですから…
と思いたいです。見ていたこちらも悔しいのを通り越して怒り涙で頭痛とめまいがしました。選手の皆さんの気持ちはいかばかりか…
悔しい思いをしたのはFIGHTERSの皆さんだけではないと思います。ライスボウル不要論や色んな思いや考えもあふれんばかりだと思われますが…
こんな言い方はどうかとも思いますが、とにかくもう終わったことです。一旦は時間をおいて頭の中を整理しましょう。
まずはゆっくり落ち着いてから新たなスタートに備えていろんなものを蓄えてくださいね。
つま先立ちしてまでパスターゲットを探し続けて前進し、プレッシャーの中で倒されてもボールを手放さなかったQB#3君、その3君を勇気付けるように前進した18君、正確なスナップを出し続け重圧に耐え続けたOL71君73君59君79君65君、ヤケを起こさず社会人よりよっぽど真面目に最後まで基本に忠実なタックルで止めに行ったLB44君40君50君51君DB25君27君36君42君43君45君、最前線で体を張り続け痛みと衝撃に耐えたDL90君78君69君、止められても諦めずに走り続けボールをキャリアした26君35君22君21君6君11君4君28君、あの速いパスのキャッチだけではなくブロックでも進路を開けた91君81君85君もちろんTDを決めたWR83君、そして主将としてQBとしての役割を見事にやってのけた#10君、キッキングチームパントチーム、笛が鳴るまで仲間たちを鼓舞し支え続けた#34君安西君スタッフの皆さんああ書ききれませんごめんなさいとにかくFIGHTERS FAMILY全員に心から敬意を表します。監督はじめ貴方達の勇気に賛辞を贈ります。
皆さん本当に素晴らし過ぎます本当によく頑張りました◎
今年もFIGHTERS FAMILYにとって素晴らしい年になりますように。

P.S.悪口ではないのですが社会人の応援チョッとダサかったですね…よう言うときますわ。
Posted by Blue_Sky_Blue at 2019年01月10日 20:10
追加で一言。
ライスボウルの良しあしは置いておいて・・・。
それにしても今年の(私の中ではまだ今年なのです)ファイターズにはハラハラドキドキさせられました。新喜劇とまで書かれておられましたが、それ以上に「えー!嘘やん!やーたー!」でした。敵も味方も涙を流しました。悔し涙、うれし涙、いずれにしろ感動の涙でした。結局、春の事件から始まって、「奇跡の万博」から甲子園で「大学日本一」そしてライスボウル準優勝でドラマが完結しました。私たちファンは怒ったり、悲しんだり、喜んだり、感激したりで十分楽しませていただきました。そんなことで私はファイターズの試合を観戦するのが一番の生きがいになってしまいました。それほどファイターズは魅力的なチームなのです。ファイターズの皆さん一年間本当にありがとうございました。
Posted by saka49 at 2019年01月10日 21:22
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