2018年11月12日

(26)4年生の覚醒

 シーズンが押し詰まってくると、古い友人たちから電話やメールが届く。
 「先日の関大戦、なんであんなに苦しんだんや。あれが今季の実力か」「振り返ってみれば、京大戦ももう一つしっくりいってなかったな」。大体がこんな風に、連絡をしてきた人が自分の見解を披露し、あれやこれやと話して落ち着く先は「立命戦、大丈夫ですかね」。
 これがファン心理というのか、ひいきのチームに寄せる愛情なのか。僕自身も似たようなことを考えているけれども、もっぱら熱心な友人たちの聞き役に回っている。多少はチームの内情にも通じ、選手やスタッフと話すことはあるけれども、チームのことを部外者があれこれいうのは好みではない。せいぜい紀州・田辺の篤農家が栽培した美味しいミカンを差し入れ、練習後の疲労回復に役立ててもらうことぐらいしかできない。
 それでも時には、これだけは読者の方々にもお伝えしたい、ということがある。例えば、先週末の練習で見掛けたこんな光景である。
 木曜日の夕方、練習前恒例の自主練をパートごとにやっていた時のことである。4年生のスタッフが一人、にこにこして僕に話しかけてきた。
 「明日は防具を着けて練習に参加します。背番号はもちろん42です」
 「ええっ。体は動くんか。張り切ってけがしたらしゃれにならんぞ」
 「大丈夫です。いまはスタッフに転向していますが、元はOL。体は鍛えているので、何とかやれるでしょう。相手のエースになりきって、うちのDBに思いっきり当たります」
 その言葉は嘘ではなかった。翌日の練習前の自主練では、彼が立命館カラーのジャージ姿で練習台を務めた。背番号はもちろん相手エースの42番。よく見れば、その場には大柄な2年生スタッフも防具を着けて参加し、二人とも一切の手抜きなしで練習台を務めていた。
 がつんとぶつかる音、それに勢いよくタックルする守備選手。その姿を見ながら、こういう部員が出てくると本物だ。こういう場面が自発的に生まれることからファイターズの魂が鍛えられる。そう思うと、その練習が終わるまで、その場を離れることはできなかった。
 練習後、思わず声を掛けた。「けがはせんかったか」。「大丈夫です。でも、明日の朝はあちこちが痛いでしょうね」。彼はそういって日焼けした顔をほころばせた。
 プレーの話は書けなくても、こういう話ならいくらでも書きたい。
 例えば練習中、ここ1、2週間で急に存在感が大きくなった4年生が何人かいる。よく見れば、それぞれ長い間、けがで苦しんできた選手たちである。
 例えば、攻撃の中心を担う二人の選手。けがで練習もままならない時期は、遠慮があったのか、練習もままならない体をもてあましていたように見えたが、いまは違う。自分にできることをひたすら続けていた春先からシーズン序盤にかけてとは打って変わって、いまは100%の力で練習に取り組み、超人的なプレーを見せている。もちろんハドルの中でも常に声を張り上げ「全員、オレについてこい」とばかりに周囲を鼓舞している。
 守備の最前列にいる二人の4年生も同様だ。二人とも長い間けがで戦列を離れていたが、いまは常に練習の先頭に立ち、体を張って下級生に見本を見せている。この二人はどちらかと言えば口数は少ない方だが、その分、ともに自らのスピード、体のこなし方を身をもって下級生に体感させている。
 これまで、どちらかと言えば、物静かな紳士が多かった今年の4年生だが、ここまでくると変わらざるを得ないということだろう。選手にもスタッフにも、彼らのように自らが先頭に立ち、実践で見せるメンバーが少しでも多く出てほしい。そしてそれがファイターズのスタンダードになれば、結果は自ずからついてくるはずだ。
 決戦は日曜日。その日までチームの全員が高いモラルを持って練習に取り組み、悔いなく戦ってもらいたい。
posted by コラム「スタンドから」 at 08:44| Comment(3) | in 2018 Season
この記事へのコメント
 アストライド・ポジションで一気呵成。攻守が全く機能せず、QB#10光藤君の個人技で1本返しただけのリーグ戦からタフなスケジュールを経て、全く生まれ変わった西日本決勝の、今以て謎が多い昨季を、下手な喩えで表しました。何故ランが怒濤のように進んで、パスプロも持って、守備は要所で止めて、Kも無難に決まったか、不思議な光景でした。
 気合いだ根性だ激しいタックルだ、要は強い気持ちだと言うのも、高次元の戦術だと言うのも当たっているかどうか分かりません。実は誰にでも出来る事を最も丁寧に積み重ねてきたのが強さの秘訣かも知れません。
 切るカードは沢山用意していて、最終節モードで濃密な鍛錬に励んでいることでしょう。関関戦は1つの契機となっているはずです。フットボールに魔法はありません。地道に蓄積してきたものをいつも通りに披露して下さい。去年と一昨年の第6節終了時点のスタッツと今季のそれを照らし合わせてみると、興味深い面が幾つもありますが、長くなりますので…今は春に主将が誓った目標を頭に置いて、応援のテンションをあげています。
 
Posted by Blue Blood at 2018年11月13日 21:49
余計な雑音に心痛めております。
#3君、皆様のメンタルを勝手に心配しております。

周りが支えてあげてください。
こんなことに心乱されることなく
自分たちの目指すフットボールができるよう
目標に向かって努力を続けてください。
そして好きなことができる喜びを享受してください。

企業戦士も応援しています。
Posted by Blue_Sky_Blue at 2018年11月14日 14:49
我々の学年にも素晴らしいマネトレがいてくれてました。結果、当時圧倒的な日大と甲子園で引き分け。コーチ、幹部、そしてマネトレには今もなお感謝につきません。
Posted by IchiroSakeguy at 2018年11月15日 19:31
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