2018年10月30日

(24)ファイターズの窓

 窓という言葉を『広辞苑』は次のように説明している。
 @採光または通風の目的で、壁または屋根にあけた開口部A比喩的に外と内をつなぐものB(山言葉)山稜がV字形に切れ込んで低下したところ。
 僕が毎週のように書き連ねているこのコラムも、いわば広辞苑の言う「外と内をつなぐもの」である。「ファイターズの窓」と呼んでも差し支えはないのではないか。
 ところが、シーズンも深まってくるこの季節には、この窓の機能が衰えてくる。採光も風通しも悪くなってくるのだ。
 練習は毎週末、よほどのことがない限り、見学させてもらっている。部員やコーチの方々と会話する機会も減っていない。情報は目から、耳から、いくつも入ってくる。
 けれども、それをそのまま外部に提供すればいいということではない。
 フットボールは情報戦であり、知能の戦いである。相手に応じた戦術とその徹底が勝敗を左右する。戦いに勝つためには選手一人一人の努力と精進、チーム挙げての士気の向上といった要素に加えて、より多く、より質のよい情報を入手し、分析し、自分たちの有利なように生かしていかなければならない。
 逆にいえば、相手に利用される情報が流出する機会は最小限にしなければならない。たとえ兄弟、親子の関係であっても、チームの事情については保秘を徹底するのは常識であり、ファイターズは常にそのことを部員に指導している。
 そんな事情を知っている以上、たとえ「ファイターズの窓」であっても、部内で仕入れた情報をストレートに紹介することにはためらいがある。これは大丈夫だろうと思ったことでも、見る人が見、聞く人が聞けば、即座に有用な情報になり得る。その情報を生かせる者が勝者になり、情報を失った者は敗退する。
 だから、この時季になると、読者の皆さんにとって興味深いこと、面白いことがあっても、慎重に選別してからでないと紹介できないのだ。大げさに言えば、両手両足を縛られ、口でペンをくわえながら書いているといった状態がこの時季のコラムであり、なんとも不自由な話である。
 けれども、僕も新聞記者の端くれ。取材した話、見聞したことは、ほんの一部でも伝えていきたいという気持ちはある。さてどうしよう。
 考えた末に出てきたのが「ファイターズ自慢」である。
 関西リーグが終盤にさしかかり、この週末は関大、そしてその次の節は立命との戦いが控えているこの状況で、何をいまさらと思われるかもしれない。批判は甘受し、以下、最近思うことを箇条書きにして綴ってみたい。
 @練習環境
 ファイターズには放課後は事実上、ファイターズが専用で利用できる人工芝グラウンドが大学に隣接している。だから4時限、5時限の授業が終了後に駆け込んで来ても、それなりの練習時間が確保できる。授業と練習の両立も工夫次第で可能になる。硬式野球部の隣で土のグラウンドを使い、4年生が水を撒き、トンボを使って整備していた2005年までのことを思うと隔世の感がある。
 学内にはトレーニングルームやミーティングルームも完備しており、授業の空きコマを利用して筋力トレーニングやミーティングにも取り組める。グラウンドのすぐ近くには、OB会がファイターズホールを建設してくださったから、そこで深夜にわたる会議もできるし、練習中に怪我した部員の治療もできる。
 現役の諸君は、この環境を天与のものと思っているかもしれないが、グラウンドとキャンパスが離れている大学や占有で使用できるグラウンドがない大学から見れば、うらやましい限りであろう。こうした環境で課外活動ができることのメリットは計り知れない。
 Aチームの一体感
 創部間もないころから、ファイターズには「俺たちは家族や。仲良くやろう」という不文律がある。上級生は下級生に助けてもらうことを徳として練習の準備をすべて担当し、下級生は上級生へのあこがれを胸に練習に励む。シーズンが押し詰まり、練習の緊迫度が増していくこの時期でさえ、上級生が思い通りに動けない下級生を罵倒したりすることは一切ない。
 いまの時代、そんなことは当たり前だと思われるかも知れないが、決してそうではない。国内の大学のクラブでは、未だに下級生に練習着を洗濯させるのが当然と振る舞う4年生がいると聞くし、グラウンドでの練習さえさせてもらえないこともあるという話も、当の部員から聞いたこともある。
 B工夫のある練習
 練習のやり方に、さまざまな工夫を取り入れているのもファイターズの特色だ。その詳細は書けないが、たまに訪れたOBがあっと驚く工夫がしばしば見られる。先日、グラウンドで見掛けたチーム練習でもそういう場面に遭遇。「誰が考えたか知らないが、恐ろしく頭がいいな」と驚いたことがある。
 練習のスケジュールが秒単位で管理され、運用されているのも特筆されることだろう。20年近く前、縁あって、社会人チームの練習を注視していた時期があったが、時間が限られている社会人チームのタイム管理より、はるかにきめ細かい運用の仕方には、見るたびに舌を巻く。とりわけ、この季節になると、全体の集散がスピードアップする。幹部からの指示も簡単明瞭で、無駄が一切ない。
 毎年、卒業生を送り出し、新しい戦力を育てていかなければならない学生チームには、無駄な時間はない。そういう考え方が、選手にもスタッフにも浸透しているからだろう。
 もちろん、僕が知らないだけで、どのチームにもそれぞれの自慢があり、チーム運営の秘訣があるはずだ。ファイターズだけが特別というのは言い過ぎであり、傲慢であろう。
 だから、今回は他チームとの比較で述べたことではなく「僕の見たファイターズ」という限定を付けて読んでもらいたい。ほんの小さな窓ではあるが、いま、この時期の緊迫したチームのたたたずまいの一端を感じとってもらえれば幸いである。
posted by コラム「スタンドから」 at 20:34| Comment(1) | in 2018 Season
この記事へのコメント
 後半年で元号も変わります。平成最後のシーズンも、まずは関西、西日本王者になるべく、弛まぬ努力は続いているでしょう。関西学生リーグも終盤戦に入って、(おそらく)2度倒す(必要のある)相手も絞られてきました。 
 甲子園、ライス…は少し気が早いですね(笑)一戦必勝、春には第4Qまでもつれた難敵関大が相手です。聞けば、好パッサーの率いるO♯とのこと。こちらもパスD#が機能し始めた感があって真っ向勝負でシャットアウトできますよう。4年生中心にまとまって完成度をあげていって下さい。
Posted by Blue Blood at 2018年10月31日 15:32
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