2018年10月22日

(23)難解な試合

 18日の京都大学戦は、極めて評価の難しい試合だった。見る者の視点、立場によって正反対の採点がなされても、僕にはなんら不思議でないと思えた。
 僕自身は「さすが京大。強かった」と思ったが、京大を応援する立場で考えると「せっかくあそこまで押し込んでいるのに、なぜ、TDが取れないんだ。もったいない」と不満が出るかもしれない。
 逆に、ファイターズの関係者やファンの中には、今後、関大や立命と戦い、勝利するためには「あんな試合ではどうにもならん。もっともっと練習し、力をつけなくては」と奮起を促す声も多いはずだ。
 結果は23−3。この数字だけを見れば、ファイターズが順当に勝利したと評価しても間違いではない。だが、現場で一つ一つのプレーに汗を握り、一瞬たりとも目を離さなかった僕からいえば「薄氷を踏む思い」という言葉がぴったりだった。
 まずは得点経過から振り返ってみよう。ファイターズのレシーブで開始された第1シリーズ。いきなりQB奥野からWR松井への11ヤードパスがヒットしてダウンを更新。「さすが松井、今季初めてのスタメンなのに、エエ感じや」と喜んだが、喜びはそこまで。京大の強力な守備ラインに阻まれて、ランプレーが進まず、第3ダウンの短いパスも通らず、あっという間に攻守交代。
 自陣35ヤード付近から始まった2度目のシリーズは、奥野からWR小田への20ヤードほどのパスが決まり、そこからRB山口、中村の粘り強い走りで陣地を進めた。しかし、相手ゴール前9ヤードからの攻撃が続かず、K安藤のFGによる3点にとどまった。
 次の攻撃シリーズも、相手の反則などで陣地を進めながら攻撃がかみ合わず、またもやパント。4度目の攻撃シリーズも、RB渡邊のラン、WR阿部への長いパスで陣地を進めたものの、結局は安藤のFGによって3点を追加しただけ。京大に1本TDを決められただけで、即、逆転もというしんどい試合展開が続く。
 逆に、京大守備陣は苦しい場面を2度、3度と跳ね返すことで徐々に調子を上げてくる。それに呼応して攻撃陣も奮起する。ライン同士のせめぎ合いで主導権を握り、RBがひたむきに陣地を稼ぐ。これはやばい、一本パスが通れば逆転されるぞ、と思っていたところでなんとか前半終了。
 後半は京大のレシーブから。それを守備陣が3アンドアウトにしとめ、ファイターズの攻撃は自陣11ヤードから。今度も山口のランや松井へのパスで陣地を進めるが、結局はTDに持ち込めない。なんとかゴール前15ヤードから安藤が3本目のFGを決めて9−0。依然として油断できない状況が続く。
 逆に、3度に渡ってゴール前まで攻め込まれながら、一度もTDを許さなかったことで京大の士気が上がる。案の定、次のシリーズは完全に京大ペース。ラインが押し込み、バックが走る。スタンドから見ていると、同じ画面の繰り返しのようなランプレーでひたすら攻め込み、4Qが始まったときには関学ゴール前3ヤード。そこから3度の攻撃は何とか守備陣が踏ん張って食い止めたが、それでもFGで3点を返し、再びTD1本で逆転という状況に持ち込む。
 苦しいせめぎ合いの中で、突破口を開いたのがリターナーに入ったWR尾崎。自陣奥深くにけり込まれたパントを確保すると、一気に34ヤードをリターンし、絶好ポジションから攻撃陣にボールを託す。
 奥野から交代していたQB西野がここで走り、小田への長いパスを決めてゴール前5ヤードに迫る。まずは突破力のある山口にボールを託して4ヤード。残る1ヤードを山口のダイブでTDに仕上げる。
 この場面、一発で決まったと見えたが、相手DLも強力だ。空中で山口のダイブを止め、態勢を建て直して再度、右側から駆け込もうとする山口を止めにかかる。その瞬間、西野が山口の背後を押して無理矢理ゴールラインに押し込む。攻める方も守る方も一歩も譲らず、これぞ関京戦というプレーの応酬だ。わずかにファイターズ攻撃陣の意地が勝り、TDにつながったといってもよいだろう。
 ここで16−3。残り時間も少なく、勝負の帰趨は見えた。こうなると、さすがの京大も緊張の糸が切れる。相手がファンブルしたボールをFS畑中が確保して攻守交代。渡邊が17ヤードのTDランを決めて勝負あった。
 この結果をどう見るか。関学サイドに立てば、徹底したランプレーで攻め込む京大の攻撃を必死に食い止めた守備陣の健闘に注目する人もあるだろう。相手守備ラインに押し込まれ、思い通りにプレーできなかった攻撃陣に注文を付ける人もいるだろう。それでも死にものぐるいでTDを奪った攻撃陣の気力を称賛する声もあるはずだ。さらに、監督やコーチの立場に立てば、これから予定される関大や立命との戦いには、攻守とももう1段レベルアップを図る必要があると叱咤する声が挙がってもおかしくない。
 京大サイドから見れば、ライン戦で一歩も引かなかった攻守のラインに「よくやった」という声が上がってもおかしくないし、RB陣の奮闘に注目する人も多いはずだ。大学に進学してからフットボールを始めたメンバーが多いのに、これだけのチームを創り上げた指導者を称える人もあれば、ラン一辺倒の攻撃に「もう少しパス攻撃で変化を付けられなかったのか」と残念がる人がいるかもしれない。
 久々に手に汗握った伝統の一戦。それはスタンドから見れば、かくも難解な試合だった。
 けれども、グラウンドで戦う選手諸君にはもうそれぞれの答が出ているはずだ。自分の力の及ばなかった点も、ここは通用するという手応えも、十分に実感したはずだ。それを徹底的に突き詰め、もう一段のレベルアップを図ろう。
 手本になるのは、この日、けがから回復したばかりで出場。随所にさすがというプレーを見せた松井や山口、横澤らの闘魂である。その攻撃的な姿勢から学び、成長の糧にしてもらいたい。ピンチはチャンス。今が脱皮の時である。
posted by コラム「スタンドから」 at 23:29| Comment(5) | in 2018 Season
この記事へのコメント
私も西京極まで応援に行ってきました。車で行ったので、幸い電車の事故に巻き込まれないで済みました。
ところが私の後ろに陣取っていたグループの方々は大変な苦労をして会場に駆けつけておられました。その方々の友人は東京から新幹線で駆けつける途中で電車が止まって、結局試合には間に合いませんでした。でもすごい気迫で関京戦を観戦に来られている方々がいることを改めて知りました。
試合は先生が書かれている通りでしたが、私は#85の松井選手と#34の山口選手が帰ってきてくれたことで満足してしまいました。特に松井選手は今年初めての試合で、涙が出るほどうれしかったです。これから関大、立命館戦に向かっていくのですが、けがをしないことを祈っております。
Posted by saka49 at 2018年10月23日 22:38
まあ京大、関大、立命には勝てばいいとは思います。かなりプレーは隠してると思うので
京大には強くなって欲しいな。心の中ではこの試合展開でも余裕でしたね
立命館は再建ムードと思ったがめちゃめちゃ強いわ。四年があんなに抜けても戦力ダウンせんなあ
あのデフェンスを攻略するのは大変やけど経験はあまりないので関学のスペシャルは効きそうやが
リーグ戦では使わんでほしいな
Posted by 日大王朝 at 2018年10月24日 14:24
 日頃、練習もよくご覧になっている石井さんが難解と仰るくらいなので、偉そうなことは言えませんが…何となく思った事を綴ります。
 関京戦はやっぱり関京戦でした。いついつ以来十何年勝っていると言われても、その間に相当危うい一戦もありました。関大に惜敗した09年は他の5つは楽勝だったのに京大に限って、たった15秒でどうすればなんて肝を冷やす展開を強いられたものです。今季は最終Q半ば過ぎでも1ポゼ差で、よもやと感じました。
 春に(練習)スケジュールが大幅に狂ったんじゃないかとか、エース級はいつお目見えかとか、あれこれと気を揉みリーグ戦も終盤に差し掛かる中、兎に角勝ちを納めてくれました。思いの外、柔軟性に満ちたKGです。
 おかげで新戦力が台頭し、競った為にスターターの智力体力精神力が十二分に持つのを確認できました。平日の闘いだったので、いつもより少しだけ長めに休息する時間が確保できたと思います。1点差勝利、何となれば引き分けでもと覚悟していたので、安堵した次第です。
 新年までの長い目で見ると、丁度折り返し。これからも成長を続けて下さい。
Posted by Blue Blood at 2018年10月24日 15:11
はじめまして
いつもはただ見守っているだけですが
初めてコメントします。

関京戦は仕事帰りにライブ中継でチェックしておりました。
スマホとともに手に汗握り、心配しつつも応援しておりました。
内容はどうあれ、選手たちにとって良い経験となったでしょう。
勝利に導いたのは4年生同士の意地というか、勝利にかけた執念のようなものだったように思えました。
もちろん下級生もその4年生をよく支えました。
よくぞあの猛攻を止め、すり抜け、FG可能な位置まで導きました。
下級生たちに何かが足りないのではなく、4年生たちの勝利への思いの強さが勝っていたように見えました。
スコアの差ほどは実力差はないなど、色んな見方があるようですが、スコアは嘘をついていないように思います。自信を持ってください。
甲子園ボウルやライスボウルは別として、4年生はもう残りのリーグ戦の数しかフィールドに立てません。
フィールドで校歌を歌えるのも試合の数だけです。
見ているこっちがいたたまれなくなる日が近づきますが、それはまだ先のこと。
自分たちで決めた目標に向けてこれからも自分を信じて一生懸命で行きましょう。
Posted by Blue Sky Blue at 2018年10月24日 23:07
いつも楽しみに拝見しています。
ひとつおねがいがあります。
フォントがあまりにも小さくて読むのに苦労しています。
拡大鏡を使うとボケます。
高齢ファンもいることにご配慮いただいてもう少し大きく表示していただきますようお願いします。
Posted by Tiger Ota at 2018年10月26日 02:06
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