2017年07月18日

(14)フットボールの本当の魅力

 先週末は、小野宏ディレクターの公開講座「アメリカンフットボールの本当の魅力」。年に一度、朝日カルチャーセンターで続けられているファンに向けた「勉強会」である。今年は「西日本代表決定戦の後半に何が起きたか」という副題で2時間、170人の参加者を前に内容の濃い解説が続いた。
 講座の内容は、準備されたレジュメの目次に示されている。@代表決定戦までの状況Aリーグ戦(立命戦)の振り返りB代表決定戦前半の“完勝”C後半の思わぬ展開D絶体絶命のピンチE起死回生のロングパスF1プレーを巡る戦術の攻防G復活のドライブHモメンタムの不思議さ。この目次に沿って、ビデオを再生し、試合がどのように進行したか、その裏に両軍ベンチがどういう決断をし、その決断の背景にどういう思考が働いたか、選手たちがその役割を果たすために、どのように準備したか、というようなことを微に入り細にわたって解説されたのである。
 具体的には前半、ファイターズが2本のFGと2本のTDで20−0と引き離し、余裕で進めた試合が、後半にがらりと様相を変え、一気に20−17と追い上げられ、逆転は必至という状況に追い詰められたのはなぜか。試合の流れが立命に傾き、大逆転劇が完成しつつあるときに、ファイターズが自陣2ヤードから放った起死回生のロングパスは、どうして意図され、成功したのか。そこにはどんな決断が秘められていたのか。そのプレーに関わるQBやWRはそのプレーを成功させるためにどんな動きをしたのか。それに続く70ヤードのドライブは、どのようにしてTDに結び付けられたのか。そうしたことを一つ一つのプレーを再現しながら、フットボールというスポーツの怖さと魅力、決断と実行の背景を説明していく。
 同じチーム、同じプレーヤーが戦っているのに、なぜ前半と後半では天地が逆になったような試合になったのか。立命側から言えば、前半、全く進まなかったラン(4回でマイナス2ヤード)とパス(8回で成功は4回10ヤード、逆に2本のインターセプトを喫している)が後半には一気に進む(ランは13回で106ヤード、パスは18回で150ヤード)ようになったのか。一つ一つのプレー選択から見える両軍ベンチの駆け引きと騙し合い。近年、ずっと大学王者の座を競ってきた両チームの高度な戦いの背景が次々と説き明かされていく。
 そうした試合の流れを振り返りながら、小野さんをして「2016年のベストプレー」と言わしめた自陣2ヤードからの攻撃でファイターズが選択したQB伊豆からWR松井へのロングパスの解説に入る。
 一つ間違えばセーフティーを奪われる危険があり、パントを蹴るにも不自由なゾーンで、なぜベンチはパスを選択したのか。そのプレーが成功するとコーチが確信した根拠は何か。その選択を選手たちはどのようにして成功につなげたのか。相手ディフェンス、とくにベストアスリートを配置しているコーナーバックとセーフティーの動きをどのように封じたのか。伊豆の動きと松井の動きを克明に説明し、ベンチからの指示を受け取った二人の心の動きにまで分け入っての解説が続く。
 そこに見られるベンチと選手の信頼関係。昨年の試合で手痛いインターセプトを喫した悔しい思いを糧に技量を向上させ、相手CBを振り払った松井の動き。絶対に成功させなければならない30ヤードのパスに挑んだ伊豆の決意と、成功の伏線となったちょっとした仕草。そうした細かな所まで目を配った解説者の観察眼と取材力。長年、プレーヤー、コーチとしてチームを率い、ファイターズの頭脳とまで言われた小野さんならではの解説は、期待に違わぬ素晴らしさだった。
 同時に、この解説はベンチの意図を確実に実現する細かなデザインの重要性を指摘し、そのデザインを実現する選手の強い意志と高い技量の大切さも語りかけてくれた。
 そうした意志と技量を体現したのが続く70ヤード、13回のドライブである。オフェンスの11人が互いに協力し、絶対にTDに結び付ける、このシリーズで決着を付けると確信し、ひたすらランプレーで陣地を進めた「魂のフットボール」である。伊豆から松井への起死回生のパスから始まったこのシリーズは、何度見ても感動する。それに今回のような適切な解説があれば、フットボールの「本当の魅力」が堪能出来る。
 幸い、この日の講演会の模様は、マネジャーが一部始終をビデオで録画してくれている。これを今春入部した1年生にはぜひ見てもらいたい。フットボールの底知れぬ魅力を知り、一つのプレーが持つ意味の重さを知ることで、必ず成長のきっかけがつかめるはずだ。
 さらに、関西学院の学生諸君にも、学内限定の「フットボール講座」としてビデオ鑑賞会を開けばどうだろう。このビデオを通じて、フットボールの魅力にふれた学生がどんどんスタジアムに足を運んでくれれば、選手たちの励みにもなるに違いない。
posted by コラム「スタンドから」 at 09:22| Comment(2) | in 2017 Season
この記事へのコメント
7月15日の小野宏氏の講演会、出席の予定だったのが、急用のため欠席でした。残念。ぜひ次の機会があれば・・・。
甲子園ボウルが好きで、その昔、QB芝川とWR堀古のプレーを甲子園で観戦した。


昭和37年 法学部卒。関西学院加古川支部 元支部長 十倉茂明
Posted by 十倉茂明 at 2017年07月19日 17:20
 正直な話、西日本決勝には、なんとなくシラケた気持ちで観戦に赴きました。
 それでも4Q残り10分余、自陣Gを背にした攻撃で少しは熱が入りました。追いあげが必要な場面ではなく、寧ろ時間消費後敵陣深くに押し込んでおけば無難に終わると考えていた矢先にミドルパスコンプリート。大先輩に依ると、昔は絶対にやったらアカンプレイ、今はノーマルだとのこと。確か、2Q終盤に相手もやってました。QBの視野と精度、何よりも胆力が問われるコールが遂行され、後はランベースに着実なドライヴを完了しました。タイム・ボールコントロールでフィールドを支配し、ゲームそのものを確実にモノにした訳です。突然オフからオンに入ったのは今以て不思議です。
 冒頭で「シラケた気持ちで」と述べました。従来のプレイオフならまだしも、リーグ戦でケリをつけた相手と再戦する理由はたぶん、今後も見出せないでしょう。この制度の下、仮に2位になってしまったとして、優勝を逃した尻から「リベンジや」「次が本番や」なんてワッショイワッショイした気分になど到底なれそうもありません。同率1位の場合、直接対戦の結果や得失点差ではなくプレイオフを行う、そんな関西学生の潔さも今は昔です。
 今年はどのチームと2度戦うのかは分かりませんが、7(チーム)×2分のゲームプランを構築していくのは大変だと思います。なかなかの労力を要しますが、スタッフの皆さん、頑張って下さい。
Posted by Blue Blood at 2017年07月20日 23:24
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