2016年05月18日

(7)這い上がる者

 15日は、上ヶ原の第3フィールドで、JV戦。相手は昨年まで関西学生リーグの1部で頑張っていた近大。今季は2部に降格しているが、能力の高い選手を揃えた実力校である。3週間前に手を合わせた京産大以上に手強いチームであり、ファイターズの選手にとっては、自分たちの力を試す格好の相手といえよう。
 メンバー表を手にして登録選手の名前と背番号を確認する。先発メンバーには期待の2、3年生に混じってこれまでVの試合でも活躍していた上級生の顔が何人か見える。4年生ではDLの大野、堀川、LBの岩田、OLの清村、3年生ではDLの藤木、RBの山本らである。それぞれにVのメンバーとして経験を積んだ選手だが、けがなどで長く戦列を離れていただけに、彼らがどの程度まで回復しているのか。それを確認することが第一の興味である。
 二つ目は、この試合から初めてメンバー表に登録されたフレッシュマンの動向。2週間ほど前から、体力的な数値がチームの基準をクリアした選手がチーム練習に合流し、ヘルメットに赤いバツ印を付けて「ならし運転」をしているが、この日はその中から「大学の試合に出しても大丈夫」と判断された5人が登録されている。
 WR阿部(池田)、DB小川(高槻)、RB斎藤(富士)、LB大竹(高等部)、OL松永(箕面自由)。大竹以外はスポーツ選抜入試でファイターズの門を叩いた選手であり、昨年の夏、一緒に小論文の勉強会をやったメンバーである。いち早くチームに合流した彼らがどんなプレーを見せてくれるか。まるでわが子の活躍に期待しつつ、大学のデビュー戦をけがなく乗り切ってくれと願う保護者のような気持ちで彼らに注目した。
 試合はファイターズのレシーブで始まり、自陣20ヤードからの攻撃。だが、QB百田からのパスが通らず、簡単に攻撃権を渡してしまう。しかし、ファイターズのディフェンスは強い。ハーフライン付近から始まった近大の攻撃を藤木や岩田のタックルで完封し、近大もまたパントを蹴る。
 そのボールがゴールライン間際まで転がり、ファイターズの攻撃は自陣1ヤードから。ここで百田が投じたパスをレシーバーがはじき、浮いたボールを相手ディフェンス陣が抑え、痛恨のターンオーバー。ゴール前1ヤードから近大の攻撃に代わる。それを一発でTDに結び付け近大が7−0とリードする。
 思わぬ失点で気合いを入れ直したのか、次のファイターズの攻撃はテンポよく進む。百田からWR清水へのパス、RB山口の中央突破、RB北村のドロープレーでハーフライン近くまで進出。そこから今度は山口が40ヤード近くを独走してゴール前13ヤード。北村と富永のランプレーでTDに結び付けた。
 次の攻撃シリーズも、百田が短いパスを立て続けに通して陣地を進め、相手陣32ヤードから北村が独走してTD。K西岡のキックも決まって14−7と逆転。第4QにもRB富永が相手守備陣を交わしてTD。23−10で勝利を手にした。
 こうした得点経過を紹介すれば、個人の能力が高い近大を相手に、JVのメンバーもよく頑張ったという印象を持たれるかもしれない。しかし、スタンドで目の前のプレーに集中していると、そういうお気楽な内容ではなかった。試合後、隣で観戦していた友人は「あんまり収穫はなかったな。今日のメンバーでは、Vのメンバーとやるにはシンドイんと違うか」というし、僕もまた「現状では、Vに這い上がっていくメンバーは限られてるな」と相づちを打つしかなかった。
 試合後、関学スポーツの記者が集めてくれた監督や主将の談話もみな辛口だった。鳥内監督は「今日分かったのは、交代メンバーの力はまだ厳しいということ。まだまだダメ」。山岸主将は「試合に出る出ないに関わらず、本当に勝ちたいと思ってやっている選手が少ない」「このまま気持ちがゆるんだ状態で秋を迎えるとおそらく負ける」と厳しいコメントを寄せている。
 実際その通りだろう。相手が必死に声を出して仲間を鼓舞し、一歩でも半歩でも前に進もうと気迫を体中から発散してプレーしているのに、ファイターズの諸君はどこか冷めたようなプレーが多かった。必死懸命さが伝わってこなかった。例えばパントリターンにしても、相手はすべてキャッチして密集の中に突っ込んでくるのに、わが方は安全第一。スタンドからは捕ってリターンができそうな状況に見えても簡単に見送ってしまう。ファンブルすることを恐れたのかもしれないが、あまりにも消極的に見えた。
 そんな中、4年生RB北村の動きだけは期待を裏切らなかった。先日来、彼の言動を身近に見て、今日は絶対に彼が活躍する、とひそかに期待していたので、彼の闘志あふれるプレーが特別にうれしかった。
 正直にいうと、ほんの1カ月前までは、彼のことを数多くいるRBの中の一人、野球部からきた選手、という程度にしか認識していなかった。何よりファイターズのRB陣はメンバーが揃っている。突破力のある橋本、山口、山本。俊敏なカットバックランナーには高松、加藤、野々垣がいる。大きな試合の出場経験も積んでいる彼らを押しのけて、高校まではフットボールと無縁だった彼がVチームに這い上がるのは容易ではない。
 それでも彼に注目していたのは、彼の向上心、ファイターズの4年生としての強い意志が今季の練習が始まって以来、常に際立っていたからだ。
 例えば、先日、武術家の甲野善紀さんが第3フィールドにお見えになったときも、彼が誰よりも熱心に先生の技を体験し、質問もしていた。日ごろの練習時にも、下級生に何かと声を掛けて鼓舞し、いろいろアドバイスしている姿をよく見掛ける。選手としての序列、試合に出してもらえる順番では下かも知れないが、練習時の行動では常に率先垂範。その姿を目にしていたから、彼が1ヤードでも前へと密集に飛び込んだり、ラインの外に押し出されそうになりながら、最後まで足を止めずTDに結び付けたりしたプレーを間近に見て「よっしゃー、Vに這い上がるのはこいつだ!」と確信した。
 こういうプレーを身近に見られるから、JV戦は面白い。だが、期待の1年生のことを書くスペースがなくなった。それは次回以降のお楽しみとしておこう。
posted by コラム「スタンドから」 at 09:04| Comment(0) | in 2016 season
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