2015年12月03日

(33)何を遺すか、何を引き継ぐか

 先週木曜日の夕方、紀州・田辺市の新聞社から西宮市に戻り、第3フィールドでチームの練習を見ていたときのことである。急に腹部がけいれんし、激痛が走った。グラウンドが恐ろしく寒かったから、腹が冷えたのかと思ったが、別段、下痢の症状も出てこない。どうしたことかと思っているうち、痛みはさらにひどくなり、背中にまで広がってくる。
 必死の思いで自宅に帰り、まずは風呂で体を温めたが、いっこうに症状は改善しない。脂汗は出る。痛みは広がる。耐え切れずに救急車を要請。生まれて初めて救急車で病院に搬送された。
 救急病院に到着。担当医の診察、腹部のCT撮影などがあり、尿管結石と診断される。そのまま入院し、栄養剤と痛み止めの点滴を受けたが、激痛は一晩中続く。夜明けを待って、泌尿器科のある西宮中央病院に転院、そこでさらなる検査を受け、病状の説明を受ける。幸い、結石は小さく「1週間ほどで、自然に排出されるでしょう」とのこと。鎮痛剤で痛みを抑えて退院した。
 週明けとともに職場に復帰。昨日(水曜日)の再診で「完治しています。何の問題もありません」という診断をいただいた。
 その言葉に安心し、その足でグラウンドに出掛け、ようやくチームの練習を見学することができた。
 不安、激痛、小康が交互に襲ってきたこの7日間。痛みが和らぐと、気にかかるのはチームのこと。関西リーグの最終決戦で立命に敗れたチームがどうなっているか。まだ1試合「東京ボウル」が残されているけど、モチベーションは保てているか。そんなことが気になって仕方なかった。
 なんせ、この4年間、公式戦で学生相手には敗れたことのないチームである。それが関大戦では、キッキングチームがボコボコにされ、立命戦では相手の思い通りの試合展開を許してしまった。
 もちろん、ファイターズも反撃して3点差まで追い上げ、見せ場は作った。さすがはファイターズと思ったが、内容的にみると「攻めきれない」「守りきれない」展開。加えて関大戦の後遺症か、キッキングチームは終始精彩を欠き、最後まで自分たちのペースに持ち込めないまま、試合が終わってしまった。
 「もっとやれたはずだ」「あそこでなぜ、もっとチャレンジしなかったのか」と後悔の残る試合。明らかに実力の差があっての敗戦ならまだしも、戦いようによっては活路が開けた内容だっただけに、選手もスタッフも気持ちの整理が付いていないに違いない。そんな状態で、もう1試合、といわれても、その気になれるかどうか。僕はそれが気になって仕方なかった。だから、グラウンドに出て、選手やスタッフの表情を見てみたい、というのが切なる希望だった。
 だが、病気がそれを許さない。痛みと闘いながら、悶々としていたとき、チームのスタッフが東京ボウルに寄せて、チームのホームページに次のような文言を書き込んでいるのを見つけた。
 「2015 FIGHTERS ラストゲーム。目標の頂にはたどり着けなかった。だが、これまでの想いをぶつける機会を与えられた。何を遺すか、何を受け継ぐか。FIGHTERSの誇りをかけて」
 誰が書き込んだのかは聞いていないけど、意味はよく分かる。ほっとした。チームは、敗戦という苦い汁を飲みながら、それでも戦おうとしている。「何を遺すか、何を受け継ぐか。誇りをかけて」という文言に、大いに勇気づけられた。
 加えて11月27日に行われた「TOKYO BOWL」の記者会見の模様が伝えられた。
 そこで鳥内監督は「ああいう形で立命に負けてしまった。4年生にとっては最後の試合になってしまうところだったが、ここにきてもう1試合やることができる。今年の集大成として臨みたい」と発言。橋本主将も「今年の関学がどんなチームだったかを見せるためにも、日大に勝って終わらなくてはアカン」と宣言している。
 モチベーションの上げ方について、監督は「立命館に負けたことで最初はへこんでいたが、4年生を勝たせて終わりたいということで心配はない。今年のチームは発展途上。完成させて終わろうという話をした」ともいっている。
 その通りである。発展途上のチームをしっかり仕上げて、ライバルとの試合に臨んでほしい。甲子園から東京ドームに続く道は絶たれたけれども、戦いを前に、モチベーションがどうの、敗戦のショックがどうの、なんていっている場合ではない。いまは目の前にいる相手に存分の戦いを見せるときだ。それが「何を遺すか、何を引き継ぐか」という問いに対する答えになる。
 後に続く者への「伝言となる試合」を期待する。
posted by コラム「スタンドから」 at 20:22| Comment(4) | in 2015 season
この記事へのコメント
石井先生、体気をつけて下さい。
2015年も師走になって、一年の計を問われる時季です。今年のチームがどうだったか?
横浜に住んでいるので、今年のチームは春の日大戦そして11月の関大戦の2試合しか観ていません。だから、何も言えませんが、唯一言える事は実に成長したチームだということです。
東京ボウルを迎えて、どう闘い、どう守るか。全力を尽くして下さい。
Posted by 三谷 卓 at 2015年12月03日 23:56
ファイターズが長年日本フットボール界の「伝統校」として君臨できている理由のひとつが、関西リーグが終了し、甲子園へ、ライスボウルへと練習をつづけていることにあると思います。日本中で最も長く、目標を持って練習を重ねているチームだからです。今までの練習とは明らかに違う空気の中で、精神面と技術面のスキルアップが出来る、非常に貴重な時間です。どんな終わり方をするのか、4年生はどれだけ後輩達に思いを引き継げるのか。相手がどこであれ、他校より長くチームとして戦える幸せとチャンスを大切に時間を過ごして欲しいと願っています。それが来年に繋がる大きな力になると信じています。
石井さん、お大事に。
Posted by 鹿せんべい at 2015年12月04日 08:49
石井様 勝負の非情さは身に沁みています。しかし、「負けたのは弱いから負けた」ことにどうして言及なされないのでしょうか?その甘さがある限り日本一を語るのは早計だと思料します。
Posted by フットボールファン at 2015年12月13日 21:49
 その後お体の方は如何でしょうか?今季結果も相俟って、例年のエネルギーが出ないこともあるかもしれません。くれぐれもお大事になさって下さい。
 昨年度幹部の皆様の気持ちを受け継いでスタートした今年度は精神的に相当きつかったことは想像に難くありません。ライスボウル準優勝から始まった自分達の代で関西制覇や甲子園ボウル優勝に目標を下げることは許されなかったでしょうから。数少ない4年生スターターは悉くベストプレイヤーに選出され、スタッフも出来得る限りの責務を果たして下さったように思います。全てを3年生以下部員に伝承し、共に新チームを応援してまいりましょう。
Posted by Blue Blood at 2015年12月21日 14:06
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