2008年06月21日

(10)アメフト探検会

 ファイターズに関することなら、たいていは知っているつもりでいたが、それがとんでもない勘違いであることを知らされた。僕の知らないところで、ファイターズを秘かに、しかし熱烈に応援する「秘密結社」があったのである。
 その名前は「アメフト探検会」。ファイターズに熱狂する関西学院大学の先生方の集まりである。「秘密結社」だから、正式な構成員も事務局もつまびらかではない。7年ほど前に結成されたと聞いたが、普段、どのような活動をされているかも不詳である。
 しかし、それぞれのファイターズに寄せる思いはただごとではない。狂の字が付くくらいの熱烈なファンばかりである。
 商学部の先生からは「甲子園ボウルのビデオを年間50回は見ています」と聞いた。その先生は、ゼミでアメフットのビデオを見せ、それを具体例として授業を進めておられるそうだ。ファイターズの部員を積極的にゼミに受け入れ、特別に力を入れて勉強させている先生もおられるし、ゼミ生を引率して応援に出掛ける先生もいる。漏れ聞くところでは、学長も有力な構成員の一人だというし、ファイターズのビデオ分析システムの開発にかかわってくくださった先生もおられる。
 普段は秘密のベールに包まれているが、年に1度だけ、その活動が公然化することがある。監督とコーチを招いて食事の会を持ち、ファイターズをテーマに大いに語り、かつ飲む集まりである。このコラムを愛読して下さっている先生から声がかかり、今年初めて、結社の集まりに参加することができた。
 「2年前の春、あなたがこのコラムを連載されるようになってから、ファイターズの快進撃が始まりました。特別ゲストとしてお招きします。会員の先生方とぜひお話し下さい」と声をかけられたのである。
 僕は平日、和歌山県田辺市の新聞社で働いている。けれども、秘密結社の年に一度の集まりとあっては、何が何でも参加しなくてはならない。午後早くに仕事を切り上げ、西宮まで懸命に車を飛ばして駆けつけた。
 想像以上に熱い集まりだった。開会の挨拶もそこそこに、いきなり鳥内監督に「今年もぜひ甲子園ボウルで勝ってください」と注文が飛ぶ。酒のピッチが上がるにつれて、自分たちのゼミに所属するファイターズの部員の自慢話が始まる。過去の卒業生の隠されたエピソードが固有名詞入りで暴露される。監督や小野コーチには、ファンならではの細かい注文が飛ぶ。
 先生方も大半が関学の卒業生。監督やコーチとは先輩、後輩の間柄だから、話に遠慮がない。なによりファイターズを愛する気持ちで結ばれているから、少々話が脱線しても、結局はファイターズに話が戻る。
 座が盛り上がる中で、若手コーチ育成の話が出た。
 「コーチに登用したい若手を、2年ほどアメリカに留学させたいと思っているんですけど……」と鳥内監督。
 「いいですね。長期的な視点に立って、ぜひ行かせてください」。ある教授が賛同の声を挙げる。
 「でも、そのお金がないんですわ」と監督。
 僕が調子に乗って「今日、ここに集まっているメンバーから寄付を募ったらどうですか。行けるでしょう。僕は乗りますよ」と提案する。
 「いいですね。先生方は現役ですから、(定年退職した)石井さんの10倍は出してほしいですね」と監督も悪のりする。
 なんせ、お互いアルコールが入っているから、気が大きくなる。話もデカくなる。どこまでが本気でどこまでが座興か、境界線もあいまいになる。最後は再び「今年も甲子園ボウルで勝って、ライスボウルに連れて行ってください。いい夢、見せてくださいよ」ということで、ようやくお開きになった。
 「秘密結社」とわざわざ強調しなくても、ファイターズを熱心に応援する人たちのこうした集まりは、実はあちこちで持たれているに違いない。ファイターズを肴に友情を確かめ合い、往事を懐かしむOBやファンの会合も機会あるごとに開かれているだろう。
 それだけ、ファイターズというチームに存在感があるということだ。チームが優勝したから、勝っているからというだけでなく、時代を超えて、ファイターズを構成してきたそれぞれのメンバーに、存在感があるから、応援する方も熱が入るのである。その証拠が、先生方の口から懐かしそうに、また誇らしげに飛び出す選手たちの名前である。それぞれがファイターズの部員というだけでなく、それぞれのゼミの学生として存在感を示してきたから、先生方もここまで熱を入れてくれるのだ。わがこととして応援してくださるのだ。うれしい話ではないか。
posted by コラム「スタンドから」 at 08:05| Comment(1) | in 2008 season
この記事へのコメント
さすがファイターズ,様々な方々に様々に愛されているようで。愛し方はファンそれぞれでも,思いは一つ「今年もライスボウルに連れて行ってね」でしょう。
Posted by ドロップゴール at 2008年06月24日 12:50
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