2024年11月24日

(15)4年生の頑張りと1年生の奮闘

 23日は、甲子園ボウルの出場権をかけて東西の上位チームが競う一日。関西代表の関大は早稲田と、ファイターズは慶応との試合が組まれた。
 試合会場は神戸ユニバー記念競技場。神戸市の西端に近い山地を切り開いて建設された素晴らしい施設である。しかしながら、私の住んでいる西宮市からは距離があり、電車の乗り換えなどに戸惑うことも予想されるので、キックオフ(13時)のはるか前から自宅を出た。関東代表との戦いに気持ちが弾んでいたせいかもしれない。
 ファイターズのレシーブで試合開始。リターナーとして起用されたのは1年生WRの立花。今春入部したばかりだが、レシーバーとして随時起用され、その才能の一端を披露している。どんな走りをしてくれるかと期待したが、相手の蹴ったボールがそこまで届かず、その前に構えていた伊丹がキャッチ。RBのエースでもある彼が相手陣48ヤードまでリターンした。そこから伊丹の時間が始まる。まずは左の密集を突いて5ヤードのラン。QB星野弟がWR小段に短いパスを通してダウンを更新すると、そこからは伊丹のワンマンショー。途中、WR五十嵐に短いパスを一つ通しただけで、あとはひたすら伊丹が走り続けてTDまでもっていく。大西のキックも決まって7ー0。
 対する相手は徹底したパス攻撃。能力の高いQBが10ヤード前後のパスを投げ続けてダウンを2度更新。ぐいぐいと陣地を進めてくる。その攻勢を受け止めるのがファイターズの守備陣。けがから復帰したばかりの1年生DE田中志門の奮闘もあって、決定的なチャンスは与えない。1Qの終盤から2Qに移っても、パス中心の慶応、伊丹のランを中心とした関学という状況は変わらない。その流れを切ったのがDB杉本。相手が投じたハーフライン近くのパスを奪って攻守交代。ファイターズはそこから伊丹のラン、星野からWR百田へのパス、再び伊丹のラン、さらには再度WR百田へのパスなどで着実に陣地を進め、伊丹のランでTD。13ー0とリードを広げる。
 後半になってもパスの慶応、ランとパスの関学という構図は変わらない。
 慶応の攻撃で始まった第3Q最初のシリーズ。相手のパスが思い通りに通らず、わずか4プレーで攻守交代。ハーフライン近くから始まったファイターズの攻撃は星野弟からWR五十嵐へのパス、RB伊丹のラン、TE安藤へのパスなどで陣地を進める。相手ゴール前20ヤード付近まで到達すると、そこから7回連続でボールを伊丹に託す。その期待に応えた伊丹が残り2ヤードをジャンプして相手ゴールにボールを運びTD。大西のキックも決まって20ー0。
 その後、第4Qに相手のパスで7点を返されたが、20ー7で試合は終了。ファイターズの堅い守りと、思い切った攻めが功を奏した。
 チームの柱となる4年生が力を発揮し、今春入学したばかりの1年生がそれに張り合って力を発揮し始める。この日は1年生のQB星野弟、WR立花、DB小暮が先発で起用され期待に応えた。春のシーズンにいち早くデビューしたDL田中志門もけがから回復、元気に戻ってきた。LBの永井弟も、試合の立ち上がりで素晴らしいタックルを決めている。
 1年生の彼らが大学フットボールの経験を積み、さらに成長してくれれば、関西リーグで立命に敗れ、悔しい思いをしたチームの雰囲気にも影響するだろう。その悔しさをかみしめ、それを起爆剤にして奮闘している4年生と、大学生の試合に出られること、チームに貢献できることを励みにして日々成長を続けるフレッシュマン。双方の努力がかみ合えば、チームはさらに成長する。そこから甲子園ボウルへの道が開ける。
 上級生、下級生関係なく力を発揮できる環境が整っているのがファイターズの最大の強みである。その強みを生かすべく更なる鍛錬を続け、残る2試合を勝ち続けてもらいたい。
posted by コラム「スタンドから」 at 22:17| Comment(0) | in 2024 Season

2024年11月12日

(14)悔しい戦いを糧に

 今年度の関西学生リーグ最終戦、立命館大学との試合中、僕の胸中にはずっと「我慢や」「耐えろ」「踏ん張れ」という言葉が交錯していた。
 それほど厳しい戦いだった。力強いラインと能力の高いQB、RBを擁する相手は、攻撃に絶対の自信を持っているようで、真っ向からの戦を挑んでくる。QBは長いパスを次々と投じてくるし、時には自らボールを保持して密集を突き抜け、ダウンを更新する。主将・永井兄が率いるファイターズの守備陣もそれに対応。肝心なところはピタリと抑え、なかなか得点を許さない。それでも先手を取ったのは立命。立命陣25ヤードから始まった攻撃シリーズ。相手QBは長いパスを投じ、自らボールをもって突進する。18ヤードを走り、次は長いパス。一気にゴール前に攻め込むと、残り2ヤードを2年生RBがTDに仕上げる。これは手強いぞ、と感心しながら次なるファイターズの攻撃に目をやる。QBは1年生の星野弟。まずはWR百田へのパスで6ヤード、次はRB伊丹が走って9ヤード。相手の目がランプレーに集まったところで1年生WR立花へのミドルパス。22ヤードを稼いでハーフラインを越える。そこからWR小段への短いパスを通したところで第1Qが終了。 攻める方向が変わっても、RB伊丹がランで陣地を進め、仕上げも伊丹。その動きを予知して備える相手守備陣を押し切ってTD。7ー6と迫る。
 しかし、相手も手強い。ファイターズのキックで始まった次のプレー。守備陣のカバーに一瞬のスキができたのに乗じて相手の主将RBが65ヤードを独走。あっという間に14−6と引き離される。長年、ファイターズを応援してきたが、こんな場面に遭遇したのは久しぶりだ。一瞬、呆然としたが、それでも試合は続く。今度は自陣35ヤード付近からの攻撃だ。我慢のしどころであり、気持ちを奮い立たせる場面だ。その期待に応えて星野が百田や五十嵐に次々とミドルパスを通し、あっというまに相手陣に入る。間にランプレー二つを挟んで再び百田へのミドルへパス。しっかり陣地を進めた後はRB陣の出番。TE安藤へのパスを一つ挟んだ後、伊丹が中央突破でTD。2点を狙った伊丹のランも決まって14−14と追いつく。続く相手の攻撃は時間との闘い。第2Qも残り2分を切っていたが、巧みにパスを織り交ぜ、時計を止めながら攻め続け、しっかりFGに仕上げて17−14で前半終了。
 後半に入っても立命の攻撃、ファイターズの守備という構図は変わらない。互いにがっぷり組み合って譲らず、第3Qは双方ともに無得点。第4Q終盤に立命がランプレーでTDを挙げ、24―14で勝利。双方ともに6勝1敗で今季関西リーグを終えた。しかし、当事者同士の対戦で立命が勝利していることから、甲子園ボウル出場権をめぐる扱いは立命が1位相当。ファイターズが2番手となった。
 ファイターズはこの後、全日本大学選手権のトーナメント準々決勝でまず関東3位の慶應大と対戦し、勝てば準決勝でおそらく関東1位の法政大と対戦する。それにも勝利することができれば、決勝の甲子園ボウルに出場できる。
 ファイターズにはまだ挽回の機会はある。主力に負傷者が多く、最後まで不本意な戦いを強いられた今季の関西リーグだが、いまは我慢の時である。 全員が心を結び、火の玉となって甲子園ボウル出場に向かって戦おうではないか。
posted by コラム「スタンドから」 at 21:33| Comment(1) | in 2024 Season

2024年11月08日

(13)関西学院の脈動

 本箱を整理していたら、興味深い冊子が見つかった。2011年10月に朝日新聞出版が発行したアエラの「関西学院大学」特集号である。「世界市民になる」というサブタイトルにある通り、世界に羽ばたく関西学院大学の魅力を様々な角度からアピールした冊子である。
 その中で「関西学院の脈動」というタイトルでに大学が誇るクラブ活動を二つ取り上げ、その魅力を現場から報告している。体育会系では「アメリカンフットボール部」、文化系では「グリークラブ」。アメフット部の紹介は8ページにわたり、そのトップには、見開き2ページを使って黄色い三日月が抱える「KG」の文字が輝く青いヘルメットが据えられている。
 筆者は、グリークラブがプロのルポライター、そしてアメフット部は小生。その筆者紹介欄には1968年、文学部日本文学科卒、朝日新聞社会部記者、論説委員、編集委員を経て2006年度から紀伊民報編集局長などとあり、親切なことにファイターズの公式HPでコラム「スタンドから」を連載中とも記されている。
 僕はそこで、戦後の草創期から開拓されたファイターズのアメフット人脈を紹介するとともに、指導者としても大きな足跡を残された米田満さん、古川明さん、武田建さんたちの業績を取り上げつつ、その下で育ったコーチや監督が引き継いだ「よき社会人を育てる」チーム作りと、ファイターズというチームの根底を流れる取り組みの一端を紹介している。
 例えば、長く監督を務められた鳥内監督は、毎年新しいシーズンが始まる前に、新4年生と個別面談。「どのようにチームに貢献するのか、どのようなチームを作りたいのか」「フットボールを通じてどんな人間になりたいのか」と問いかけ、「上に立つ者ほど重い責任を負い、規範を守る取り組みが求められる」と強調されている。
 選手に負けないくらいの気概を持って取り組んでいるマネジャーやトレーナー、分析スタッフのことにも触れ、毎年、納会で表彰される「アンサングヒーロー賞」、つまり「地味な働きであっても、身を挺してチームのために貢献した部員」に光を当てる賞についても説明。これがファイターズというチームの根っこにある考え方だと強調している。
 大雑把に言えば、歴代のメンバーがライバルとの戦いの中で培い、醸成してきたファイターズの歴史、その特徴について記した文章である。
 こんな記事を書き、印税を頂いたことなど、すっかり忘れていたが、今季、関西リーグの最終戦、立命大との戦いの直前に、ひょっこりと本棚から見つかったのも何かの縁だろう。チームに届け、現役の諸君を応援するささやかなツールになれば、と考えている。
posted by コラム「スタンドから」 at 08:05| Comment(1) | in 2024 Season