ファイターズは今季も甲子園ボウルで勝ち、4年連続32度目の大学日本1に輝いた。相手は東日本代表の法政。選手個々の力では多分、ファイターズに勝るとも劣らない強力なメンバーをそろえたチームだったが、終わってみれば47−7。得点差だけを見れば、ファイターズの圧勝だった。
しかし、現場で観戦していると、到底、点差ほどの実力差は感じられなかった。というより、個々の力量では法政の方に分があると思わされる場面が何度も訪れた。
なのに、なぜ、一方的な試合展開になったのか。その原因を一つ一つ見ていくことがファイターズというチームを知ることになり、「勝つべくして勝てるチーム」の素顔を明らかにすることにつながるのではないか。そのように考え、この試合で印象に残った場面を順を追って回顧してみた。
1、先制のTD
立ち上がり、キックを選択した法政がいきなり2度のキックミスで計10ヤードの罰退。リターナーに入ったWR河原林の好リターンもあって、ファイターズは相手陣46ヤードからの攻撃となる。その第1プレー。QBからの短いパスを受けたRB斎藤が俊敏な動きで約30ヤード前進。2プレー目、今度はRB前田のランでダウンを更新し、続く3プレー目も斎藤。鎌田からピッチを受け、ラインの開けた穴をスピードで突き抜けてTD。K永田のキックも決まって7ー0とリードする。
このように書くと、いかにも簡単なようだが、そこには短いパスは必ず通すQBと、その期待に応え、確実にパスをキャッチするRB、ラインの開けたわずかな隙間を一気に走り抜けるRBのスピードとパワー、それを支えるOLやWRの確実なブロック。グラウンドに出ている11人全員がそれぞれの役割を完璧に果たしたからこその先制点であり、キッカーが確実にTFPを決めたからこその7点であることがよく分かる。
2、貴重な追加点
ファイターズに待望の追加点が入ったのは、自陣20ヤードから始まった3度目の攻撃シリーズ。まずはWR鳩谷がQB鎌田からのパスをキャッチして24ヤードの前進。斎藤のランを挟んで次はWR糸川が20ヤードを稼ぐ。さらに斎藤のラン、WR戸田のパスキャッチなどで相手ゴール前12ヤードに迫る。しかし、相手ディフェンスも強く、そこからの攻撃が続かない。結局、永田のFGで3点を追加しただけだったが、この3点と2Q終了間際に得たFGによる3点が無形の圧力を相手陣に与える。
3、相手の反撃
第3Qに入ると、状況は一転する。それまで不発だった法政のパス攻撃が決まり始め、それと呼応するようにエースRBの動きも鋭くなる。わずか5プレー目にRBが42ヤードを独走し、TD。キックも決めて13−7。この得点をきっかけに、一気に相手の動きが良くなってくる。
逆にファイターズはWR河原林への42ヤードパスで陣地を進めたものの、次のプレーで手痛いインターセプトを食らう。勢いに乗った相手は立て続けに3度、ダウンを更新し、関学陣18ヤードまで攻め込んで来る。
ここで奮起したのが守備陣。LB都賀を中心に2列目、3列目が必死になって反撃を食い止める。第4ダウン、残り20ヤードとなったところで相手はFGトライ。しかし、そのキックが外れてようやく窮地を脱する。
4、一瞬の隙
次のファイターズの攻撃は自陣20ヤードから。窮地は脱したものの、相手の士気は高い。守備陣はボールキャリアに的を絞ってアグレッシブな動きを見せる。しかし、ファイターズオフェンスもは負けてはいない。相手の逆をついてRB斎藤が6ヤード、同じく池田が6ヤードと陣地を進めてダウンを更新。相手の意識がランプレーに移ったのを見計らったようなタイミングで、今度はQB鎌田がレシーバーの位置で待ち構える前島に短いパス。それをキャッチした前島が左サイドライン際を駆け上がる。WR河原林が一人で2度、続けさまに相手デフェンス陣をブロックする美技もあって、見事68ヤードのTDに結びつける。走る方も素晴らしかったが、ブロックする方も見事なファインプレー。QBとしてもRB、WRとしても非凡な能力を持つ前島の走力を生かし、身体が大きくブロッカーとしても力のある河原林の長所を生かす見事なプレー選択。サインを出したベンチの面々もしてやったりというところだろう。
5、もう一つのドラマ
この得点が大きかったのだろう。点差が開いてからは相手の攻撃が雑になり、淡泊になっていく。逆にファイターズの守備も攻撃陣もより勢い付く。第4Q早々には、K永田が西からの強風を突いてこの日4本目のFGを決めて26−7。好守共に勢いに乗るファイターズは攻撃の手を緩めない。鎌田からショベルパスを受けた斎藤が28ヤードを走りきってTD。さらには鎌田からWR鈴木へという2年生コンビのTDパスも決まって40ー7。あっという間に勝敗は決した。
しかし、ファイターズファンにとっては見逃せないドラマがこの後に待っていた。残り時間は3分6秒。ボールの位置は相手ゴール前17ヤードという場面で、4年生QB平尾が登場。普段、試合に出ることの少ない4年生もこぞって顔を並べたのである。まずはRB安西が5ヤードのラン。続くWR戸田へのパスがインターフェアとなり、ゴール前2ヤードまで前進。その距離を平尾が走りきってTD。3塁側アルプス席のファイターズファンから大声援が上がる。
下級生の頃から期待されてきた平尾だったが、最終学年の今季は2年生QBに追い越され、ずっとJVチームの司令塔としての役割に徹してきた。練習時間の多くをVチームの仮想敵の役割に費やし、余った時間はフレッシュマンの指導に全力を注いできた。今季はたまにしかグラウンドに顔を見せることはできなかったが、下級生を相手に懸命にパスを投げ、後輩の育成に本気で尽くしてる彼の姿を見るたびに、僕は「こういう4年生がいるからこそ、チームが強くなる。これこそ縁の下の力持ち。甲子園で出番が来たら、たとえ1プレーでもよい。思いっきりプレーをしてくれ」と密かに願っていた。
その願いが通じたような見事なTD。それも自ら中央を割ってゴールに飛び込む素晴らしいプレーだった。
日の当たらないところでも、彼のように献身的にチームに尽くすメンバーがいるからこそ、ファイターズは勝てる。常々、そのように思い続けてきた僕の信頼に応えるプレーを目の前で見て、本当にうれしかった。
その気持ちは、普段から彼の行動を熟知しているチームメートも同じだったようだ。試合終了後、表彰式の壇上には、彼がただ一人控えのメンバーから選ばれ、主将の青木やチャック・ミルズ杯受賞者の前田、甲子園ボウル最優秀選手賞受賞者の斎藤らと並んで勝利したチームに贈られるトロフィーを掲げていた。
6、結び
関西リーグで死闘を繰り広げた関大戦、立命館との2度の決戦、そして甲子園ボウルでの法政大戦。いつも相手の強さ、たくましさを目の当たりにするたびに、なぜ、こんな強敵を相手にファイターズが勝ち続けられるのだろうかと、僕は自分に問い掛けてきた。
その答えがこの日の甲子園では、次々に解き明かされた。仲間を信じて黙々とブロッカーの役割を展開するWR、前日までは練習にも加われず、松葉杖をついて歩いていたのに、芝生の上に立ち、ボールを持つと果敢に相手陣に突っ込むRB、最前線で身体を張り続ける攻守のラインメン。自身は先発メンバーから外れているのにVチームや後輩のために黙々とパスを投げ続ける4年生QB。そして、どんな強風にも負けず、正確なパントやキックを決め続けるキッカー。さらにはチームの兵站部門を黙々と担う男女のマネジャーやトレーナー。
そうしたメンバーすべてに、分け隔てなく活躍する場所を与えるチーム。そこにファイターズというチームの真実があり、だからこそ強力な陣容を備えたライバルたちを凌駕できたのではないか。
そう考えると、このチームを応援する気持ちがまた一段と強くなった。来季もまた、頑張ろう!
2021年12月21日
(10)負けないチーム
posted by コラム「スタンドから」 at 08:44| Comment(2)
| in 2021 Season
2021年12月13日
(9)特別な時間
ファイターズの諸兄姉はいま、関西の学生アメフット界で唯一、特別な時間を過ごしている。目の前に甲子園ボウルを控え、日々、日本一を達成するという目的を持っているからだ。
この週末、3日連続で、上ヶ原の第3フィールドを訪れ、練習を見学させていただく機会を得た。いつもの練習に比べても、なお一層、密度が濃い。時間の管理も厳格だ。
上級生は早くからグラウンドに出て、パートごとに自主練をやっているが、4時限、5時限まで授業がある下級生は大変だ。午後の5時半、あるいは6時からの練習開始時間に間に合わせようと必死に走ってグラウンドに駆けつける。準備運動で体を温め、主将の声がかかるとダッシュでグラウンドの中央に集まる。
すぐにハドルを解き、パートごとにVチームと準Vチームに分かれて練習開始。いま、この時期だから、試合に向けた実戦的な練習が中心と思われるかもしれないが、必ずしもそうではない。どのパートもファンダメンタルと呼んでいる基本的な体の動かし方から始め、パートごとに決めた基本的な練習メニューに取り組む。マネジャーが秒単位で全体の練習時間を管理し、合間、合間に手指の消毒をするためのクリーンタイムも確保する。
攻守二つのチーム練習が2カ所で始まると、1年生を中心にしたそれ以外のメンバーは、サイドラインの外に出て捕球や当たりの練習に取り組む。広いグラウンドをいっぱいに使って約200人の選手が全員、それぞれの目的を持って走り回る姿は圧巻だ。
12月も半ばになって、こういう密度の濃い練習が続けられるのも、目の前に甲子園ボウルを控え、大学日本1になるという確かな目標があるからだ。
大学のアメフット部は各地にあり、それぞれの地区でしのぎを削っている。しかしいま、この時期に目の前に大きな目標を持って活動できるのは東西の代表校だけである。この時期の活動量と質の高さが、実はファイターズの強さに繋がっているのではないか。
ライバルの強豪チームが早々にシーズンを終了し、新たな体勢でスタートしようとしているこの時期に、日本1という高い目標を持って日々精進する。それも惰性的にこなす練習ではなくVメンバーにとっては勝利のための練習であり、控えのメンバーにとっては明日のVメンバー、明日のスタメン入りを目指す練習である。練習に取り組む意欲の高さも、自ずから異なってくる。
チームによっては12月を待たずにシーズンが終了するのに、ファイターズだけはこの6年間、ずっと甲子園ボウルに出場してきた。その間、高いモチベーションを持ち、意欲的な練習を続けてきた。そのトータルとして逆境に強いチームが仕上がっていたのではないか。僕がこの期間をファイターズにとっての「特別な時間」と呼ぶゆえんである。
大学生活の4年間は短い。練習に取り組める時間はさらに限られている。だからこそ、この「特別な時間」には大きな価値がある。チームの全員が大きな目標を共有し、個々を鍛え、チーム力の向上に尽くす。他のチームにが持ち合わせていないその濃密な時間を生かすも殺すもチームの諸兄姉の双肩にかかっている。
決戦の日曜日はもう目の前だ。残された時間をこれまで以上に濃密に過ごし、悔いのない戦いを繰り広げてもらいたい。心からの応援を捧げる。GO!FIGHTERS!
この週末、3日連続で、上ヶ原の第3フィールドを訪れ、練習を見学させていただく機会を得た。いつもの練習に比べても、なお一層、密度が濃い。時間の管理も厳格だ。
上級生は早くからグラウンドに出て、パートごとに自主練をやっているが、4時限、5時限まで授業がある下級生は大変だ。午後の5時半、あるいは6時からの練習開始時間に間に合わせようと必死に走ってグラウンドに駆けつける。準備運動で体を温め、主将の声がかかるとダッシュでグラウンドの中央に集まる。
すぐにハドルを解き、パートごとにVチームと準Vチームに分かれて練習開始。いま、この時期だから、試合に向けた実戦的な練習が中心と思われるかもしれないが、必ずしもそうではない。どのパートもファンダメンタルと呼んでいる基本的な体の動かし方から始め、パートごとに決めた基本的な練習メニューに取り組む。マネジャーが秒単位で全体の練習時間を管理し、合間、合間に手指の消毒をするためのクリーンタイムも確保する。
攻守二つのチーム練習が2カ所で始まると、1年生を中心にしたそれ以外のメンバーは、サイドラインの外に出て捕球や当たりの練習に取り組む。広いグラウンドをいっぱいに使って約200人の選手が全員、それぞれの目的を持って走り回る姿は圧巻だ。
12月も半ばになって、こういう密度の濃い練習が続けられるのも、目の前に甲子園ボウルを控え、大学日本1になるという確かな目標があるからだ。
大学のアメフット部は各地にあり、それぞれの地区でしのぎを削っている。しかしいま、この時期に目の前に大きな目標を持って活動できるのは東西の代表校だけである。この時期の活動量と質の高さが、実はファイターズの強さに繋がっているのではないか。
ライバルの強豪チームが早々にシーズンを終了し、新たな体勢でスタートしようとしているこの時期に、日本1という高い目標を持って日々精進する。それも惰性的にこなす練習ではなくVメンバーにとっては勝利のための練習であり、控えのメンバーにとっては明日のVメンバー、明日のスタメン入りを目指す練習である。練習に取り組む意欲の高さも、自ずから異なってくる。
チームによっては12月を待たずにシーズンが終了するのに、ファイターズだけはこの6年間、ずっと甲子園ボウルに出場してきた。その間、高いモチベーションを持ち、意欲的な練習を続けてきた。そのトータルとして逆境に強いチームが仕上がっていたのではないか。僕がこの期間をファイターズにとっての「特別な時間」と呼ぶゆえんである。
大学生活の4年間は短い。練習に取り組める時間はさらに限られている。だからこそ、この「特別な時間」には大きな価値がある。チームの全員が大きな目標を共有し、個々を鍛え、チーム力の向上に尽くす。他のチームにが持ち合わせていないその濃密な時間を生かすも殺すもチームの諸兄姉の双肩にかかっている。
決戦の日曜日はもう目の前だ。残された時間をこれまで以上に濃密に過ごし、悔いのない戦いを繰り広げてもらいたい。心からの応援を捧げる。GO!FIGHTERS!
posted by コラム「スタンドから」 at 07:55| Comment(2)
| in 2021 Season
2021年12月06日
(8)「勝つべくして勝つ」
「勝つべくして勝つ」「勝つべくして勝てるチーム」。この言葉を今季、大村監督や4年生の幹部からよく聞かされてきた。
5日、大阪・ヨドコウ桜スタジアムで行われた西日本代表校決定戦でのファイターズの戦いを応援している時、何度もこの言葉が浮かんできた。
それほどファイターズの戦い方は愚直であり、攻守ともに全員が一致団結していた。
ファイターズのキックで始まった立ち上がり。自陣24ヤードから始まった立命の攻撃を簡単に抑え込んだファイターズの攻撃は自陣48ヤードから。
RB前田が立て続けにラッシュして第3ダウン。残り5ヤードをどう進めるかという場面でベンチが選択したのは、QB鎌田からWR鈴木への長いパス。ゴール前1ヤードで鈴木がキャッチし、一気に先制点のチャンス。60ヤード近い距離をドンピシャのタイミングで投げ込んだ鎌田もすごいが、それを鮮やかに確保した鈴木も素晴らしい。ともに2年生だが、今季は二人ともシーズン開幕時から先発メンバーとして出場しているだけに、呼吸はぴったり。立命相手の大舞台でも臆さず、ひるまず「投げるべくして投げ」「捕るべきして捕った」見事なプレーだった。
この好機にRB前田が中央を突いてTD。K永田のキックも決まり、わずか4プレーで7ー0とリードした。
逆に立命は、先発した2年生QBのパスが不安定で、思うように陣地が進まない。一方、相手守備陣はさすがである。次のファイターズの攻撃シリーズで、FGをブロックする好守を見せた。だが、ファイターズ守備陣も即座にやり返す。相手QBが自陣20ヤードから投じた短いパスをLB海崎が鋭い反応で奪取。攻撃権を奪い返し、相手ゴール前10ヤードまで走り込む。
こうなると、ファイターズは勢いに乗る。小柄なRB斎藤がピッチを受け、俊敏な動きでゴールラインに駆け込みTD。永田のキックも決まって14−0と主導権を握る。
ふと気がつけば、ここまで書いた中で固有名詞を挙げたのは6人。そのうち4年生は前田と斎藤、そして永田。いずれもエースランナーであり、エースキッカーだから、名前が挙がって当然だ。けれども、そこに2年生の3人、固有名詞を挙げればQB鎌田、WR鈴木、LB海崎が割り込んでいる。3人とも3年前の夏、スポーツ選抜入試に備えて僕が共に勉強したメンバーである。この日、先発に名を連ねたDB高橋もそうだし、1年生で先発したDB永井もその1年後のメンバーだ。高校時代、多少とも縁のあったメンバーがこの大舞台で先輩たちに負けず劣らず活躍しているのを、僕は感慨を持って見つめていた。
余談は置いて試合に戻ろう。
前半は17ー3、ファイターズがリードして折り返したが、相手には地力がある。第3Q立ち上がり早々、相手にパスをインターセプトされ、あっという間にTDを返される。キックも決まって17-10。
これはやばいぞ、逆転の目が出てきたと思ったのは僕だけではなかろう。しかし、グラウンドでプレーするメンバーはそんな感情とは一切無縁。勝つべくして勝つ、とばかりにRB斎藤と前田が競うようにランプレーで陣地を進め、わずか5プレー目で前田がTD。永田のキックも決まって24ー10と引き離す。
こうなれば、互いに乱打戦。相手も途中から出場したエースQB、野沢の的確なパスで陣地を進め、わずか1分半ほどの攻撃でTD。再び7点差に追いすがる。そのすさまじい攻撃力を目の当たりにして、ここが救世主の出番だ、守備も攻撃も、もう一歩踏み込んで頑張れと手に汗握りながら祈る。
その祈りに応えてくれたのが、またしてもRBの二人。まずは斎藤がナイスリターンで自陣43ヤードまで挽回。ここから前田が大きく逆サイドに切り返して相手ゴール前17ヤードまで進む。ここでボールを抱いて走ったのがまたも斎藤。浮き足立つ相手守備陣を翻弄するような走りで一気にゴールまで駆け込みTD。
相手のパスにはランで真っ向から立ち向かう。相手の対策には関係なく、自軍のラインとRB、レシーバーが総力を挙げてこじ開けたルートを一気に駆け抜ける。「勝つべくして勝つ」という気持ちのこもったプレーの連続で、再びリードを広げる。
逆に、リードされている側には焦りが出る。ミドルパスを立て続けに決め、パント隊形からのギャンブルで陣地を進めるが、ファイターズは動じない。逆に相手がファンブルしたボールをDL山本が素早い動きで奪取し、攻守交代。
それでも、ひるまないのが立命の立命たるところ。ファイターズを切りくずのはパス、と腹をくくったのか、ビシバシと長いパスを投じてくる。第3Q終了間際には40ヤード近いパスが決まってTD。31ー24と追い上げる。
差は7点。相手の勢い、威力のあるパス攻撃。この状況をどう突破するか、というところで飛び出したのがDB永嶋のインターセプト。相手陣33ヤードから投じられたパスを見事に奪い取り、チームをに落ち着かせる。
こうなると攻撃陣も奮起する。鎌田からの短いパスを受けたRB斎藤が相手陣に切れ込み、ダウン更新。TDこそ奪えなかったが、K永田が43ヤードのキックを決めて再び差を10点に広げる。
残り時間は9分少々。相手のパス攻撃の鋭さを考えると、まだまだ安心できない状況だったが、ここでファイターズDBが奮起。相手レシーバーがはじいたパスをDB宮城が奪い取り、インターセプト。残り時間は9分を切っており、ここからは時間との勝負になる。ファイターズはランプレーで時計を進め、立命はタイムアウトで時計を止める。虚々実々の駆け引きだが、それでも時計は進む。途中、焦る相手がスナップをファンブルし、これをDL山本が確保して攻撃権を取り戻す場面もあり、最後はファイターズが2回続けて「ボールイート」。34ー24のまま試合は終了した。
まさに好守が互いに助け合い、補い合って作り出した「我慢の勝利」だった。こういう我慢ができたのも、好守共に4年生を中心にして「勝つべくして勝つ」意識が浸透していたからだろう。有言実行。多分、潜在力では上回っていると思える強敵を相手に、それを成し遂げたファイターズの諸君に心からおめでとう、よく頑張った、と伝えたい。
以下は余録。
伝えたいことがもう一つある。それは試合の終盤、相手レシーバーがパスをキャッチしようとして崩れ落ち、動けなくなった場面である。プレーの直後に、その選手のカバーに入っていたDBの波田君が駆け寄り、選手のつった足を持ち上げて手当てをする場面があった。目の前で苦しんでいる選手を放置できなかったのだろう。とっさの行動であり、ルール上は許される行為かどうかは知らないが、審判が黙認していたから、特段のことはなかったのだろう。
目の前で苦しんでいる相手チームの選手に即座に手を貸し、痛みを和らげる手伝いをしようという行為そのものに、僕はある種の感動を覚えた。激戦のさなか、負傷した相手選手にまで気を配れる2年生。こういう選手を育てているのがファイターズであり、彼もまた、3年前の夏、僕と一緒に勉強した仲間である。
5日、大阪・ヨドコウ桜スタジアムで行われた西日本代表校決定戦でのファイターズの戦いを応援している時、何度もこの言葉が浮かんできた。
それほどファイターズの戦い方は愚直であり、攻守ともに全員が一致団結していた。
ファイターズのキックで始まった立ち上がり。自陣24ヤードから始まった立命の攻撃を簡単に抑え込んだファイターズの攻撃は自陣48ヤードから。
RB前田が立て続けにラッシュして第3ダウン。残り5ヤードをどう進めるかという場面でベンチが選択したのは、QB鎌田からWR鈴木への長いパス。ゴール前1ヤードで鈴木がキャッチし、一気に先制点のチャンス。60ヤード近い距離をドンピシャのタイミングで投げ込んだ鎌田もすごいが、それを鮮やかに確保した鈴木も素晴らしい。ともに2年生だが、今季は二人ともシーズン開幕時から先発メンバーとして出場しているだけに、呼吸はぴったり。立命相手の大舞台でも臆さず、ひるまず「投げるべくして投げ」「捕るべきして捕った」見事なプレーだった。
この好機にRB前田が中央を突いてTD。K永田のキックも決まり、わずか4プレーで7ー0とリードした。
逆に立命は、先発した2年生QBのパスが不安定で、思うように陣地が進まない。一方、相手守備陣はさすがである。次のファイターズの攻撃シリーズで、FGをブロックする好守を見せた。だが、ファイターズ守備陣も即座にやり返す。相手QBが自陣20ヤードから投じた短いパスをLB海崎が鋭い反応で奪取。攻撃権を奪い返し、相手ゴール前10ヤードまで走り込む。
こうなると、ファイターズは勢いに乗る。小柄なRB斎藤がピッチを受け、俊敏な動きでゴールラインに駆け込みTD。永田のキックも決まって14−0と主導権を握る。
ふと気がつけば、ここまで書いた中で固有名詞を挙げたのは6人。そのうち4年生は前田と斎藤、そして永田。いずれもエースランナーであり、エースキッカーだから、名前が挙がって当然だ。けれども、そこに2年生の3人、固有名詞を挙げればQB鎌田、WR鈴木、LB海崎が割り込んでいる。3人とも3年前の夏、スポーツ選抜入試に備えて僕が共に勉強したメンバーである。この日、先発に名を連ねたDB高橋もそうだし、1年生で先発したDB永井もその1年後のメンバーだ。高校時代、多少とも縁のあったメンバーがこの大舞台で先輩たちに負けず劣らず活躍しているのを、僕は感慨を持って見つめていた。
余談は置いて試合に戻ろう。
前半は17ー3、ファイターズがリードして折り返したが、相手には地力がある。第3Q立ち上がり早々、相手にパスをインターセプトされ、あっという間にTDを返される。キックも決まって17-10。
これはやばいぞ、逆転の目が出てきたと思ったのは僕だけではなかろう。しかし、グラウンドでプレーするメンバーはそんな感情とは一切無縁。勝つべくして勝つ、とばかりにRB斎藤と前田が競うようにランプレーで陣地を進め、わずか5プレー目で前田がTD。永田のキックも決まって24ー10と引き離す。
こうなれば、互いに乱打戦。相手も途中から出場したエースQB、野沢の的確なパスで陣地を進め、わずか1分半ほどの攻撃でTD。再び7点差に追いすがる。そのすさまじい攻撃力を目の当たりにして、ここが救世主の出番だ、守備も攻撃も、もう一歩踏み込んで頑張れと手に汗握りながら祈る。
その祈りに応えてくれたのが、またしてもRBの二人。まずは斎藤がナイスリターンで自陣43ヤードまで挽回。ここから前田が大きく逆サイドに切り返して相手ゴール前17ヤードまで進む。ここでボールを抱いて走ったのがまたも斎藤。浮き足立つ相手守備陣を翻弄するような走りで一気にゴールまで駆け込みTD。
相手のパスにはランで真っ向から立ち向かう。相手の対策には関係なく、自軍のラインとRB、レシーバーが総力を挙げてこじ開けたルートを一気に駆け抜ける。「勝つべくして勝つ」という気持ちのこもったプレーの連続で、再びリードを広げる。
逆に、リードされている側には焦りが出る。ミドルパスを立て続けに決め、パント隊形からのギャンブルで陣地を進めるが、ファイターズは動じない。逆に相手がファンブルしたボールをDL山本が素早い動きで奪取し、攻守交代。
それでも、ひるまないのが立命の立命たるところ。ファイターズを切りくずのはパス、と腹をくくったのか、ビシバシと長いパスを投じてくる。第3Q終了間際には40ヤード近いパスが決まってTD。31ー24と追い上げる。
差は7点。相手の勢い、威力のあるパス攻撃。この状況をどう突破するか、というところで飛び出したのがDB永嶋のインターセプト。相手陣33ヤードから投じられたパスを見事に奪い取り、チームをに落ち着かせる。
こうなると攻撃陣も奮起する。鎌田からの短いパスを受けたRB斎藤が相手陣に切れ込み、ダウン更新。TDこそ奪えなかったが、K永田が43ヤードのキックを決めて再び差を10点に広げる。
残り時間は9分少々。相手のパス攻撃の鋭さを考えると、まだまだ安心できない状況だったが、ここでファイターズDBが奮起。相手レシーバーがはじいたパスをDB宮城が奪い取り、インターセプト。残り時間は9分を切っており、ここからは時間との勝負になる。ファイターズはランプレーで時計を進め、立命はタイムアウトで時計を止める。虚々実々の駆け引きだが、それでも時計は進む。途中、焦る相手がスナップをファンブルし、これをDL山本が確保して攻撃権を取り戻す場面もあり、最後はファイターズが2回続けて「ボールイート」。34ー24のまま試合は終了した。
まさに好守が互いに助け合い、補い合って作り出した「我慢の勝利」だった。こういう我慢ができたのも、好守共に4年生を中心にして「勝つべくして勝つ」意識が浸透していたからだろう。有言実行。多分、潜在力では上回っていると思える強敵を相手に、それを成し遂げたファイターズの諸君に心からおめでとう、よく頑張った、と伝えたい。
以下は余録。
伝えたいことがもう一つある。それは試合の終盤、相手レシーバーがパスをキャッチしようとして崩れ落ち、動けなくなった場面である。プレーの直後に、その選手のカバーに入っていたDBの波田君が駆け寄り、選手のつった足を持ち上げて手当てをする場面があった。目の前で苦しんでいる選手を放置できなかったのだろう。とっさの行動であり、ルール上は許される行為かどうかは知らないが、審判が黙認していたから、特段のことはなかったのだろう。
目の前で苦しんでいる相手チームの選手に即座に手を貸し、痛みを和らげる手伝いをしようという行為そのものに、僕はある種の感動を覚えた。激戦のさなか、負傷した相手選手にまで気を配れる2年生。こういう選手を育てているのがファイターズであり、彼もまた、3年前の夏、僕と一緒に勉強した仲間である。
posted by コラム「スタンドから」 at 22:03| Comment(2)
| in 2021 Season