2018年10月30日

(24)ファイターズの窓

 窓という言葉を『広辞苑』は次のように説明している。
 @採光または通風の目的で、壁または屋根にあけた開口部A比喩的に外と内をつなぐものB(山言葉)山稜がV字形に切れ込んで低下したところ。
 僕が毎週のように書き連ねているこのコラムも、いわば広辞苑の言う「外と内をつなぐもの」である。「ファイターズの窓」と呼んでも差し支えはないのではないか。
 ところが、シーズンも深まってくるこの季節には、この窓の機能が衰えてくる。採光も風通しも悪くなってくるのだ。
 練習は毎週末、よほどのことがない限り、見学させてもらっている。部員やコーチの方々と会話する機会も減っていない。情報は目から、耳から、いくつも入ってくる。
 けれども、それをそのまま外部に提供すればいいということではない。
 フットボールは情報戦であり、知能の戦いである。相手に応じた戦術とその徹底が勝敗を左右する。戦いに勝つためには選手一人一人の努力と精進、チーム挙げての士気の向上といった要素に加えて、より多く、より質のよい情報を入手し、分析し、自分たちの有利なように生かしていかなければならない。
 逆にいえば、相手に利用される情報が流出する機会は最小限にしなければならない。たとえ兄弟、親子の関係であっても、チームの事情については保秘を徹底するのは常識であり、ファイターズは常にそのことを部員に指導している。
 そんな事情を知っている以上、たとえ「ファイターズの窓」であっても、部内で仕入れた情報をストレートに紹介することにはためらいがある。これは大丈夫だろうと思ったことでも、見る人が見、聞く人が聞けば、即座に有用な情報になり得る。その情報を生かせる者が勝者になり、情報を失った者は敗退する。
 だから、この時季になると、読者の皆さんにとって興味深いこと、面白いことがあっても、慎重に選別してからでないと紹介できないのだ。大げさに言えば、両手両足を縛られ、口でペンをくわえながら書いているといった状態がこの時季のコラムであり、なんとも不自由な話である。
 けれども、僕も新聞記者の端くれ。取材した話、見聞したことは、ほんの一部でも伝えていきたいという気持ちはある。さてどうしよう。
 考えた末に出てきたのが「ファイターズ自慢」である。
 関西リーグが終盤にさしかかり、この週末は関大、そしてその次の節は立命との戦いが控えているこの状況で、何をいまさらと思われるかもしれない。批判は甘受し、以下、最近思うことを箇条書きにして綴ってみたい。
 @練習環境
 ファイターズには放課後は事実上、ファイターズが専用で利用できる人工芝グラウンドが大学に隣接している。だから4時限、5時限の授業が終了後に駆け込んで来ても、それなりの練習時間が確保できる。授業と練習の両立も工夫次第で可能になる。硬式野球部の隣で土のグラウンドを使い、4年生が水を撒き、トンボを使って整備していた2005年までのことを思うと隔世の感がある。
 学内にはトレーニングルームやミーティングルームも完備しており、授業の空きコマを利用して筋力トレーニングやミーティングにも取り組める。グラウンドのすぐ近くには、OB会がファイターズホールを建設してくださったから、そこで深夜にわたる会議もできるし、練習中に怪我した部員の治療もできる。
 現役の諸君は、この環境を天与のものと思っているかもしれないが、グラウンドとキャンパスが離れている大学や占有で使用できるグラウンドがない大学から見れば、うらやましい限りであろう。こうした環境で課外活動ができることのメリットは計り知れない。
 Aチームの一体感
 創部間もないころから、ファイターズには「俺たちは家族や。仲良くやろう」という不文律がある。上級生は下級生に助けてもらうことを徳として練習の準備をすべて担当し、下級生は上級生へのあこがれを胸に練習に励む。シーズンが押し詰まり、練習の緊迫度が増していくこの時期でさえ、上級生が思い通りに動けない下級生を罵倒したりすることは一切ない。
 いまの時代、そんなことは当たり前だと思われるかも知れないが、決してそうではない。国内の大学のクラブでは、未だに下級生に練習着を洗濯させるのが当然と振る舞う4年生がいると聞くし、グラウンドでの練習さえさせてもらえないこともあるという話も、当の部員から聞いたこともある。
 B工夫のある練習
 練習のやり方に、さまざまな工夫を取り入れているのもファイターズの特色だ。その詳細は書けないが、たまに訪れたOBがあっと驚く工夫がしばしば見られる。先日、グラウンドで見掛けたチーム練習でもそういう場面に遭遇。「誰が考えたか知らないが、恐ろしく頭がいいな」と驚いたことがある。
 練習のスケジュールが秒単位で管理され、運用されているのも特筆されることだろう。20年近く前、縁あって、社会人チームの練習を注視していた時期があったが、時間が限られている社会人チームのタイム管理より、はるかにきめ細かい運用の仕方には、見るたびに舌を巻く。とりわけ、この季節になると、全体の集散がスピードアップする。幹部からの指示も簡単明瞭で、無駄が一切ない。
 毎年、卒業生を送り出し、新しい戦力を育てていかなければならない学生チームには、無駄な時間はない。そういう考え方が、選手にもスタッフにも浸透しているからだろう。
 もちろん、僕が知らないだけで、どのチームにもそれぞれの自慢があり、チーム運営の秘訣があるはずだ。ファイターズだけが特別というのは言い過ぎであり、傲慢であろう。
 だから、今回は他チームとの比較で述べたことではなく「僕の見たファイターズ」という限定を付けて読んでもらいたい。ほんの小さな窓ではあるが、いま、この時期の緊迫したチームのたたたずまいの一端を感じとってもらえれば幸いである。
posted by コラム「スタンドから」 at 20:34| Comment(1) | in 2018 Season

2018年10月22日

(23)難解な試合

 18日の京都大学戦は、極めて評価の難しい試合だった。見る者の視点、立場によって正反対の採点がなされても、僕にはなんら不思議でないと思えた。
 僕自身は「さすが京大。強かった」と思ったが、京大を応援する立場で考えると「せっかくあそこまで押し込んでいるのに、なぜ、TDが取れないんだ。もったいない」と不満が出るかもしれない。
 逆に、ファイターズの関係者やファンの中には、今後、関大や立命と戦い、勝利するためには「あんな試合ではどうにもならん。もっともっと練習し、力をつけなくては」と奮起を促す声も多いはずだ。
 結果は23−3。この数字だけを見れば、ファイターズが順当に勝利したと評価しても間違いではない。だが、現場で一つ一つのプレーに汗を握り、一瞬たりとも目を離さなかった僕からいえば「薄氷を踏む思い」という言葉がぴったりだった。
 まずは得点経過から振り返ってみよう。ファイターズのレシーブで開始された第1シリーズ。いきなりQB奥野からWR松井への11ヤードパスがヒットしてダウンを更新。「さすが松井、今季初めてのスタメンなのに、エエ感じや」と喜んだが、喜びはそこまで。京大の強力な守備ラインに阻まれて、ランプレーが進まず、第3ダウンの短いパスも通らず、あっという間に攻守交代。
 自陣35ヤード付近から始まった2度目のシリーズは、奥野からWR小田への20ヤードほどのパスが決まり、そこからRB山口、中村の粘り強い走りで陣地を進めた。しかし、相手ゴール前9ヤードからの攻撃が続かず、K安藤のFGによる3点にとどまった。
 次の攻撃シリーズも、相手の反則などで陣地を進めながら攻撃がかみ合わず、またもやパント。4度目の攻撃シリーズも、RB渡邊のラン、WR阿部への長いパスで陣地を進めたものの、結局は安藤のFGによって3点を追加しただけ。京大に1本TDを決められただけで、即、逆転もというしんどい試合展開が続く。
 逆に、京大守備陣は苦しい場面を2度、3度と跳ね返すことで徐々に調子を上げてくる。それに呼応して攻撃陣も奮起する。ライン同士のせめぎ合いで主導権を握り、RBがひたむきに陣地を稼ぐ。これはやばい、一本パスが通れば逆転されるぞ、と思っていたところでなんとか前半終了。
 後半は京大のレシーブから。それを守備陣が3アンドアウトにしとめ、ファイターズの攻撃は自陣11ヤードから。今度も山口のランや松井へのパスで陣地を進めるが、結局はTDに持ち込めない。なんとかゴール前15ヤードから安藤が3本目のFGを決めて9−0。依然として油断できない状況が続く。
 逆に、3度に渡ってゴール前まで攻め込まれながら、一度もTDを許さなかったことで京大の士気が上がる。案の定、次のシリーズは完全に京大ペース。ラインが押し込み、バックが走る。スタンドから見ていると、同じ画面の繰り返しのようなランプレーでひたすら攻め込み、4Qが始まったときには関学ゴール前3ヤード。そこから3度の攻撃は何とか守備陣が踏ん張って食い止めたが、それでもFGで3点を返し、再びTD1本で逆転という状況に持ち込む。
 苦しいせめぎ合いの中で、突破口を開いたのがリターナーに入ったWR尾崎。自陣奥深くにけり込まれたパントを確保すると、一気に34ヤードをリターンし、絶好ポジションから攻撃陣にボールを託す。
 奥野から交代していたQB西野がここで走り、小田への長いパスを決めてゴール前5ヤードに迫る。まずは突破力のある山口にボールを託して4ヤード。残る1ヤードを山口のダイブでTDに仕上げる。
 この場面、一発で決まったと見えたが、相手DLも強力だ。空中で山口のダイブを止め、態勢を建て直して再度、右側から駆け込もうとする山口を止めにかかる。その瞬間、西野が山口の背後を押して無理矢理ゴールラインに押し込む。攻める方も守る方も一歩も譲らず、これぞ関京戦というプレーの応酬だ。わずかにファイターズ攻撃陣の意地が勝り、TDにつながったといってもよいだろう。
 ここで16−3。残り時間も少なく、勝負の帰趨は見えた。こうなると、さすがの京大も緊張の糸が切れる。相手がファンブルしたボールをFS畑中が確保して攻守交代。渡邊が17ヤードのTDランを決めて勝負あった。
 この結果をどう見るか。関学サイドに立てば、徹底したランプレーで攻め込む京大の攻撃を必死に食い止めた守備陣の健闘に注目する人もあるだろう。相手守備ラインに押し込まれ、思い通りにプレーできなかった攻撃陣に注文を付ける人もいるだろう。それでも死にものぐるいでTDを奪った攻撃陣の気力を称賛する声もあるはずだ。さらに、監督やコーチの立場に立てば、これから予定される関大や立命との戦いには、攻守とももう1段レベルアップを図る必要があると叱咤する声が挙がってもおかしくない。
 京大サイドから見れば、ライン戦で一歩も引かなかった攻守のラインに「よくやった」という声が上がってもおかしくないし、RB陣の奮闘に注目する人も多いはずだ。大学に進学してからフットボールを始めたメンバーが多いのに、これだけのチームを創り上げた指導者を称える人もあれば、ラン一辺倒の攻撃に「もう少しパス攻撃で変化を付けられなかったのか」と残念がる人がいるかもしれない。
 久々に手に汗握った伝統の一戦。それはスタンドから見れば、かくも難解な試合だった。
 けれども、グラウンドで戦う選手諸君にはもうそれぞれの答が出ているはずだ。自分の力の及ばなかった点も、ここは通用するという手応えも、十分に実感したはずだ。それを徹底的に突き詰め、もう一段のレベルアップを図ろう。
 手本になるのは、この日、けがから回復したばかりで出場。随所にさすがというプレーを見せた松井や山口、横澤らの闘魂である。その攻撃的な姿勢から学び、成長の糧にしてもらいたい。ピンチはチャンス。今が脱皮の時である。
posted by コラム「スタンドから」 at 23:29| Comment(5) | in 2018 Season

2018年10月16日

(22)ファイターズと校訓

 先週末、チームの練習を見せてもらって、素人目にも、何かが変わったという印象を受けた。どういうことか。思いつくままに書いてみよう。
 一つは、ゲーム前の練習の密度が濃くなったように見えたことである。それは僕が見学した日だけかも知れないが、例えばQBとレシーバーの練習前の自主練では、QB3人が実戦を想定したパスを次々と投げ込み、それをレシーバーが全力でキャッチする。そのテンポとパスの精度が甲南戦の前よりもはるかによくなっていた。
 二つめは、練習開始となってからの動きの強度が一段と上がったように見えたこと。例えばレシーバーがダミーを持った選手を跳ね上げる場面。味方同士の練習であり、通常なら当たった瞬間に力を抜き、受け手のダメージを少なくするのだが、この日の4年生は全く力を抜かない。基本に忠実に、実戦通りのスピードで受け手にぶつかり、全力で押し上げる。
 受けた方はあまりにも強い当たりを受けきれず、仰向けに倒れ、信じられないという表情をしている。これぞ、実戦を想定した練習である。その場面を目のあたりにした選手全員がその一瞬、凍りつき、グラウンドの空気がピーンと張り詰めた。サイドラインから見ていても分かるほどだから、当の選手たちは全員、練習のギアが一段と上がったことを身にしみて感じたに違いない。
 三つめは、試合に出るメンバーとJVのメンバーが敵味方に分かれて進めるチーム練習である。それぞれの担当コーチやアシスタントコーチが一つ一つのプレーに口を出し、アドバイスを送る場面が一気に増えた。リーグ戦がスタートして4戦目までは、そこまでの緊迫感は見られなかっただけに、いよいよ決戦の時だとぞくぞくした。
 もう一つある。これはチームの練習内容とは直結しないが、グラウンドに通じる階段が練習前に美しく掃き清められていることだ。知る人ぞ知る話だが、この階段は練習が終わった時にはいつも、恐ろしく汚くなる。グラウンドに敷き詰められている人工芝のピッチが選手のスパイクに付着し、それが階段に落ちるからだ。
 それを練習前、丁寧に掃き清めているのが主務の安西君。先日、たまたま、練習開始の1時間半ほど前に出掛けたら、一人、黙々と掃除している姿を見掛けた。聞けば、みんなが気持ちよく練習に参加できるようにと思って、毎日、練習前の掃除を心掛けているそうだ。「幸い、単位も取れているので、授業に出る必要がない。主務の仕事をやりくりすれば、掃除の時間は捻出できますから」という話だった。
 そういえば、先日、僕はこのコラムに「試合前の練習後には決まって部員全員がグラウンドのごみを拾う。グラウンドを美しくした上で試合に臨む」と書いた。その中に、溝の掃除を除いて、と書いているのを見つけた光藤主将が安西君を誘って、二人で溝掃除をしたそうだ。これもまた、日々、当たり前のようにグラウンドを使用できることに感謝している部員たちの気持ちの表れだろう。そういうことを下級生ではなく、チームのリーダーである4年生が率先して実行するところにファイターズの真実がある。
 話は飛ぶが、関西学院のスクールモットーは「Mastery for Service」である。その言葉は通常「奉仕のための練達」と訳されるが、1915年、ベーツ先生(後に4代目院長に就任)は学生たちに向かって演説する中でその意味について「人は富や財産のためではなく、広く社会に奉仕するために生きている。そのためには自らを鍛え、強くあらねばならない。弱虫はいらない」といった説明をされている。
 いま、ファイターズの諸君が日々、ストイックに取り組んでいることは、その校訓の実践に他ならない。そう僕は考えている。
 主将が率先してグラウンドを周る溝を掃除し、主務が毎日のように箒を手にグラウンドへの階段を清掃する。試合に出る4年生のメンバーは、たとえ仲間内であっても本気の練習を普段から心掛ける。レシーバーもクォターバックも、練習開始のずっと前からグラウンドに出て営々と実戦練習に励む。
 これらはすべて弱虫はいらない、強くあらねばならない、有能であらねばならない、という強い覚悟があるからこそではないか。その意味ではファイターズの諸君は日々、ベーツ先生の校訓を実践している面々であると言い切ってもよいだろう。
 こういうストイックな取り組みを、当然のように実践できるところがファイターズの魅力であり、だからこそグラウンドでも躍動できるのだと僕は信じている。今週、金曜日の京大との戦い、それに続く関大、立命との戦いで、その成果を見せてもらいたい。健闘を期待する。
posted by コラム「スタンドから」 at 08:36| Comment(3) | in 2018 Season

2018年10月10日

(21)強いチームと並のチーム

 関西リーグ第4戦。甲南大との試合は、ファイターズの二つの側面を浮き彫りにした。攻守ともに勢いのあるメンバーを並べた前半のチームと、交代メンバーが次々と登場した後半のチームでは、その試合振りがまるで別のチームのように見えた。名付けてみれば、強いチームと並のチームである。
 試合経過を見れば、このことは即座に理解できる。
 ファイターズのレシーブで試合開始。自陣25ヤードから始まった第1プレーでは、RB中村が中央をついて4ヤード前進。続いてQB奥野からWR阿部へのパスでダウンを更新。続く第3プレーでRB渡邊が中央を突破。そのまま61ヤードを独走してタッチダウン。K安藤のキックも決まって7−0とリード。キックオフからわずか3プレー、消費時間でいえば1分ほどで試合の主導権を握った。
 守備陣もこのリズムを崩さない。わずか3プレーで相手をパントに追いやり、相手陣33ヤードから再び攻撃権を手にする。
 これに呼応して攻撃陣も勢いよく攻め込む。奥野から阿部やWR鈴木へのミドルパスが続けさまにヒット。ゴール前3ヤードに迫ると、今度はRB三宅が左サイドを駆け上がってタッチダウン。
 続く相手の攻撃では、相手がファンブルしたボールをファイターズ守備陣が素早くカバーし、相手陣48ヤード付近で攻守交代。即座に奥野からWR小田へ45ヤードのパスがヒットしてゴール前5ヤード。今度はRB中村が中央を抜けてTD。思わぬターンオーバーで相手守備陣が混乱している隙をついたリズミカルな攻撃でリードを広げる。
 ファイターズ4度目の攻撃も、奥野から阿部へのパスから始まり、RB陣のパワープレー、奥野のキープなどで簡単に陣地を進める。ラインがしっかり相手を押し込んでいるからこそであろう。仕上げはWR鈴木へのパスで4本目のTD。第2クオーターが始まったばかりというのに28−0とリードを広げた。
 この間、守備陣は相手の攻撃をことごとく押さえ、即座に攻撃権を奪回。オフェンスもまた4回の攻撃シリーズをすべてTDで締めくくった。理想の展開であり、強いファイターズという形容がぴったりだった。
 ところが第2Qの途中から、徐々に交代メンバーが出場し、QBも西野に交代したあたりから様子が一変する。パスは通らず、ランも進まない。守備陣も、二人のQBを交互に入れて攻め込んでくる相手に振り回されるようになる。強いチームが並のチームになってしまったのである。
 結局、後半のTDは第4Qに渡邊とRB富永のランで挙げた2本だけ。立ち上がりの勢いのある攻撃はどこへ行ったのか。パスの成功率が一気に下落してしまったのはどうしてか。僕の頭の中には、消化不良のままの疑問がいまも残っている。同時に、こうした並のチームで、無敗で前半戦を切り抜けてきた立命や関大のタレント軍団に対抗出来るのか。そんな疑問が次々と噴出してきた。
 そこで試合後、新聞記者のインタビューの隙を見て鳥内監督に質問。試合の感想と、今後の練習への取り組みなどについて聞いた。
 次のような断片的な言葉が返ってきた。
 「攻守とも、4年生にどれだけの危機意識があるかとうことですね。もっと危機感を持って練習せなあきません」「練習はしているようだけど、それが勝つための練習になっているのかどうか。4年生はいつもそう問い掛け、工夫をしていかなあきません」
 毎年、新たな人材を発掘し、その人材が大事な試合を任せられるかどうかを常に気にかけている監督ならではの言葉だった。
 光藤主将が率いる今季のファイターズは強いチームなのか、それとも本当に強い相手から見たら並のチームなのか。
 僕にはまだ、答えは出せない。分かっているのは、アメフットは先発メンバーだけでは戦いきれないということ。まずは交代メンバーの底上げを図らなければならないこと。そのためには、グラウンドに立つ全員が高い意識と目的を持った練習を徹底すること。日々の練習から本番を想定し、それに向かって全力を出し切ること。そうした点に注目するしかない。
 そう考えた上で、今週末は上ヶ原のグラウンドでの部員の動きをしっかり目に焼き付けてみたい。けがから回復途上にあるメンバーを励ますことも忘れないようにしよう。
 次節から始まる3試合は、チームに属するすべての人間の本気度をあぶり出す戦いである。言い訳は通用しない。やるか、やられるか。そういう戦いである。それに向かって、部員全員がどこまで集中できるか。
 先発メンバーはもちろん、交代メンバーたちの動向から目が離せない。
posted by コラム「スタンドから」 at 09:03| Comment(2) | in 2018 Season

2018年10月03日

(20)報告を一つ

 先日、自宅に送られてきた関西学院同窓会の「母校通信」と2018年の「ファイターズイヤーブック」に、それぞれ興味深い数字が紹介されていた。
 母校通信では、副学長、小菅正伸副学長と小野宏総合企画部長(ファイターズのディレクターという方が分かりやすいかもしれない)との対談の中で紹介されている「2017年度有名企業400社の就職率」(サンデー毎日調べ)にある関西学院大28.4%という数字である。大学通信の調べでは「トップは一橋大の58.9%で、関学は
全国20位。関西では阪大、京大、同志社に次いで4位」とランクされている。
 これだけでも、鼻が高いのに、ファイターズのイヤーブックでは、東洋経済が調べた2018年度「人気企業300社」に就職したファイターズの卒業生は71%に達していることが紹介されている。同じ調査ではないから、単純に比較することはできないが、大学全体では日本で一番の実績を誇る一橋大よりも、ファイターズの諸君の方が人気企業への就職率が高いというのだ。
 すごい!と驚かれる方も多いだろう。もっと驚くのは、こうした実績を1年や2年ではなく、毎年のように積み重ねていることである。ここ数年はずっと人気企業300社への就職率は7割前後で推移しているというから、就活に四苦八苦している一般の学生にとっては驚愕(きょうがく)という言葉しかないだろう。
 今季、練習と試合の合間を縫って就活を続けてきた4年生の実績(一部、留年中の5年生を含む)の実績も素晴らしい。僕が知るところでは三井物産、東京海上日動火災、三井住友銀行、富士通にそれぞれ3人。三菱UFJ銀行、野村證券、ファーストリテーリング、ニトリに各2人。ほかにも三井住友海上、旭化成ホームズ、帝人フロンティア、三菱電機、富士フイルム、コクヨ、ソフトバンク、池田泉州銀行、キャノン、サッポロビール、第一三共、日本航空、本田技研工業、日立製作所、長瀬産業、住友電工、博報堂DYデジタル、伊藤忠、日本生命、川重商事、新日鐵住金、メタルワン、第一生命、リンクアンドモチベーションなどの人気企業から続々と内定をもらっている。
 来春卒業予定の4年生は45人。うち10余人は留年し、来年の就活に挑むという。その結果、「来春に卒業を予定している全員が内定をもらっています」というから、さすがファイターズというしかない。
 驚くのは、こうした実績をたたき出したのが有名選手だけでなく、マネジャーやアナライジングスタッフ、トレーナー、中高の学生コーチまでを含めた部員全員であること。選手もスタッフも関係なく、全員がファイターズの構成員として練習に励み、自覚を持って就職活動に取り組んできた成果であることが誇らしい。
 一部のスター選手だけに光が当たるのではない。それぞれの部署に分かれ、責任を持ってその任務を果たす中で人間的に成長し、その姿を企業の採用担当から評価されたからこその実績である。ここにファイターズの真価がある。
 もちろん、ファイターズというチームに対する高い評価が大きな力になっていることは間違いない。人気企業に勤めている先輩たちの活躍振りを通じて、ファイターズという組織の底力が評価されたという側面もあるだろうし、後輩のために何かと相談に乗って下さった先輩諸氏のご協力も大きかったに違いない。
 僕も今春、新4年生が就活の準備を始める春休みに、就職希望者全員を対象に「チャーミングなエントリーシートの書き方」というテーマで、勉強会の講師を担当した。希望する部員には、エントリーシートの作成について具体的な指導や添削作業もした。
 その昔、朝日新聞社で入社試験の小論文の採点委員や面接担当を何年も続けた経験と、この10数年、関西学院大学で非常勤講師を務め、「文章表現論」を担当している経験を生かして、懇切丁寧に「内定に直結するエントリーシート」の作成に協力したのである。手間のかかる仕事だが、多少は時間にゆとりのある年寄りならではの仕事でもある。その結果、僕が相談に乗った全員が希望する企業から内定を勝ち取り、僕自身も大きな喜びを手にした。
 そうした時間を通じて、ファイターズの諸君が練習や試合だけでなく、就職活動にも懸命に努力する場面を何度も見せてもらった。これもまた学生スポーツ、課外活動の大事な姿であろう。
 目の前の部活だけに集中するのではない。学業にも、就職活動にも全力で取り組む。今日、一つの山の頂きを極めたら、明日登る山の頂上を見定め、また一歩ずつ歩を進めていく。そうした努力を重ねることで目標の「日本1」という頂上が見えてくる。
 今季、残された時間は短い。その頂上を見定め、さらなる努力、精進を期待する。
posted by コラム「スタンドから」 at 06:46| Comment(1) | in 2018 Season