2018年05月30日

(7)感動。そしてそれから。

 26日午後5時半、ファイターズが学内で開いた記者会見が終了した後、僕はしばらく放心状態になっていた。会場を後にして時計台の前に立ち、ぼんやりと中央芝生を眺めていたが、頭が全く働かない。ある種の酩酊状態とでもいうのだろうか。それとも、さきほどまでの会見における感動の余韻が尾を引き、次の行動を起こす気にならなかったのか。そのまま家に帰るのももったいないような気分になった。
 芝生に座ったまま、ぼんやりと2時間半に及ぶ記者会見の様子を回顧していた。思いは5月6日の日大との定期戦で今回の問題が発生して以降のファイターズの取り組みに移っていく。
 10日の記者会見でファイターズが撮ったビデオを見せられたときの衝撃がよみがえる。「こんなプレーはあり得ない。一体何が起きたのか」「これは確信犯。当の選手は、なぜ、こんなプレーをしなければならなかったのか」「誰が指示したのか」。疑問が次々と浮かんできたことを思い出す。
 続いて17日の会見。関学会館に100人以上の記者が詰めかけ、20台前後のテレビカメラが並んだ。その席で、疑問点を整理し、理路整然と相手チームに真相の究明を求める小野ディレクターの姿を思い返し、鳥内監督の短いがポイントを突いた発言を振り返る。双方の役割を明確に分担し、新聞やテレビの影響力の大きさを十分に理解したうえで説明される二人の姿に接して「危機管理はかくあるべし」と感動しながら聞いたことが昨日のように思い浮かぶ。
 26日。キャンパス内の大教室で開かれた3度目の記者会見には、事態の広がりを証明するかのように、前回をはるかに上回る報道陣とカメラが詰めかけた。質問者が次々に立ち、被害者のお父さんからの説明もあったことから、会見は2時間半近くに及んだ。それでも会見は終始、冷静に進められた。冒頭、これまでの経過と、2度に及ぶファイターズから日大への質問状とそれに対する相手からの回答を基に、それでも残る疑問点や矛盾点を10箇条にわたって列挙し、その上でまとめたファイターズの見解を資料として記者全員に配付。その資料に沿って小野ディレクターが概要を説明したうえで「現段階では日大(部)の見解には強い疑念を抱かざるを得ず、これ以上の問答は平行線をたどる可能性が高いと考えます」と言い切った。その瞬間、僕は涙が出るほど感動した。
 この結論を導き出すまでにチームが費やした時間、監督やコーチとも十分に打ち合わせたうえで一つ一つの文言を精査してきたディレクターとそれを支える3人のディレクター補佐の協力、学内の意思統一に費やされたであろう多大な労力。そうしたことを想像するだけでも頭が下がる。
 一方で、アメリカに留学中の部長、池埜教授とは、何度もメールを交わし、負傷した選手とチームに対する精神的なケアについて、専門家としての立場から貴重な助言をいただいたとも聞いている。
 さらには、会場で配布された資料からは、チームのOBでもある二人の弁護士(寺川拓氏と三村茂太氏)から被害者とその家族、さらにはチームの対応に対する適切な助言があり、法律の専門家ならでは協力があったこともうかがえる。
 このようにファイターズの総力を結集して取り組んだ成果がこの日の記者会見である。延々と続く記者の質問から一切逃げることなく、的確な回答をされる鳥内監督と小野さんの言葉と堂々とした姿勢に、表現する言葉が見つからないほどの感銘を受けた。
 これがファイターズの底力だ、こうした素晴らしい危機管理ができるチームの端っこに、僕も連なっている。そう思っただけで、涙が出てきた。
 チームの底力という点からいえば、OBたちのチームを思う熱い気持ちにも触れなくてはならない。
 今でこそ、今回の問題が広く話題になり、連日のように新聞やテレビ、週刊誌が大々的に取り上げているが、チームが1回目の記者会見を開いた10日の時点では、そこまでの広がりはなかった。中には、どうしてそんなことを聞くのかと首をかしげたくなるような質問さえあった。
 そういう状況に変化を持ち込んだのが、アメフットに詳しい各紙の専門記者であり、専門誌の記者である。アメフット界の現状に警鐘を乱打し、未来に向けての提言を懸命に記事にしてくれた。朝日新聞でいえば、問題のタックルの場面を連続写真で紹介し、相手側ベンチがボールの行方ではなく、当該のタックルに目をやっている「不自然な視線」に読者の注目を呼び込んだ榊原一生記者。日大の内田監督の伊丹空港での会見で、ポイントを突いた質問を投げかけ、矛盾に満ちた回答を引き出して、問題のありかを明白にした大西史恭記者。そして、ファイターズのOBでもある二人の先輩である篠原大輔記者。彼は京大のアメフット部出身だが、あの試合で退場になった後、テントの中に入って泣いている相手守備選手の写真を撮り、そのシーンを中心にコラムを書いて、問題のありかを明確にしてくれた。
 公正中立であるべき記者の立場を考えれば、彼らがフットボール選手であった経歴は、プラスになると同時に制約も多かったと想像する。けれどもフットボールを愛し、その未来を危ぶむ気持ちから、思い切って問題の核心をえぐり出してくれた記者魂に頭が下がる。それは上記の3人に限らず、フットボールを愛する専門記者すべてに共通する思いであったろう。
 こうしたことの総和ともいえるのが26日の記者会見。監督、コーチからスタッフ、部長に至るまで、大人の叡智のすべてを結集して問題の所在を明らかにし、主張すべきは主張し、守るべきは守ってきたファイターズの総合力を存分に見せつけられて、僕はしばし、キャンパスから去り難かったのである。
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2018年05月26日

(6)3度目の記者会見

 日本大学との定期戦で起きた相手選手による反則行為に関して、ファイターズは26日午後、学内で記者会見を開いた。10日、17日に続く3度目の会見である。僕も前2回に引き続いて出席し、しっかりとチームの主張を聞かせていただいた。
 これまでの2回については、チームが自制に自制を重ね、慎重に言葉を選びながら進めておられることもあり、僕がホームページにうかつなことを書いて迷惑を及ぼしては申し訳ないという気持ちから、この件に関してはあえて触れないようにしてきた。
 しかし、3度目となる今回の会見では「現段階では日大(部)の見解には強い疑念を抱かざるを得ず、これ以上の問答は平行線をたどる可能性が高いと考えます」として、今後の方針を明確にされた。
 具体的には@日大(部)との試合については、選手の安心・安全を担保することができないと判断し、定期戦は十分な信頼関係を取り戻すまで中止としますA学校法人日本大学による第三者委員会、関東学生アメリカンフットボール連盟による客観的な真相究明を強く要望します。真相究明にあたっては全面的に協力いたしますB最終的には捜査機関の捜査によって真相が究明されることを強く希望いたします。捜査には全面的に協力いたしますC被害を受けた選手及びそのご家族の支援を継続していきますD日大の当該選手およびそのご家族に対しても可能な限り支援の可能性を模索していきます……という5項目の宣言である。
 ここまで言い切るまでに、チームとして相当深い考えを巡らされたことは想像に難くない。もちろん、あの3度の反則場面を記録した録画を何度も何度もチェックし、相手監督やコーチの記者会見などでの発言と、ファイターズからの2度にわたる書面での申し入れに対する相手チームの回答との食い違いも解明されたはずだ。反則行為に手を染めた選手から直接聞いた謝罪の言葉と、そのときの真摯な姿勢も、チームの心証を形成する上で大きな役割を果たしたに違いない。弁護士の同席があったとはいえ、彼が独力で行った記者会見での発言も同様である。あの確信を持った発言と、次の日に相手チームの監督やコーチが口にされた言葉のどちらが信用できるのか。ファイターズの担当者でなくても、テレビを見ていたすべての人が直ちに正解を出したは
ずだ。
 そうした諸々のことを縦、横、斜めからチェックし、「これ以上の問答は平行線をたどる可能性が高い」との結論を導き出したうえで決定された5項目の方針である。その方針に、僕は全面的に賛同する。
 一連の問題がメディアで広く報じられて以降、遠く離れた友人たちから次々と連絡があった。それもメールではなく、携帯電話である。直接、僕と話したかったのだろう。チームや被害を受けた選手を激励してもらいたいという人がいれば、記者会見の進行を中心にチームの対応の素晴らしさを称賛する人もいた。相手チームの無責任な対応ぶりについて、ぜひ一言述べたい、といって内部情報を提供してくれた人もいた。
 朝日新聞社の元同僚は「関学の主張には裏付けがあることを私たちも確認した。記者会見を開いて、冷静に問題点を指摘し、相手に明確な回答を求める姿勢も素晴らしい」とファイターズの対応を褒めてくれた。
 「問題の場面を写し出したビデオがすべてを物語っている。どんなに言葉で言いつくろっても、このビデオがある限り言い訳にもならない。もはやビデオがなかった時代の感覚では通用しないんです」と口を開き、自身がこれまでに見聞した「暴力によって人を支配しようとする指導者」を批判し続けた人もいる。
 もちろん、今回の問題を深刻に捉えている人も多かった。「このままではアメフットの未来が危うい」「ここはファイターズだけでなく、アメフット界のリーダーたちが問題を直視し、リーダーに課せられた責任を果たすべきときだ」といった話を、延々と述べてくれた友人もいる。
 同感である。ことは日大と関学の争いにとどまらず、日本におけるアメフットの未来に関係するのである。
 そのためにはファイターズが3度の記者会見で強調している通り、真相を究明することが欠かせない。真相の究明こそが、アメフット再生への最初の一歩になる。
 そのうえでいま、注目しているのは大学アメリカンフットボール界の動きである。今回の問題をきっかけに東大や法政、立教など今後日大との試合を企画していた6校すべてが「安全が担保されていないこと」などを理由に対戦を辞退した。
 日大と同じリーグに加盟している15大学は、連盟に第三者委員会を設立して、ことの真相を究明するよう求めている。
 スポーツ庁の長官も動き始めた。日本アメリカンフットボール協会の会長と日本社会人アメリカンフットボール連盟の理事長も18日、相次いで声明を発表し「今回の問題は、絶対に許されるべきものではなく、極めて重く受け止めています」「このような事象が繰り返されないよう真相究明を断固要請していくとともに、アメリカンフットボール界への信頼回復に努めてまいります」などと述べている。
 この機運を生かしたい。いや、生かさなければならない。アメフットの未来を切り開くためには、大学アメフット界が自ら立ち上がり、課外活動、課外教育としてのフットボールの普及、発展のために、組織の在り方から審判の技術向上まで、さまざまな分野に潜んでいるであろう問題点をあぶり出さなければならない。
 問題点を直視し、改善・改革していくことによって、初めてアメフットの未来が担保される。僕はそれを信じている。
posted by コラム「スタンドから」 at 23:55| Comment(1) | in 2018 Season

2018年05月20日

(5)渦中から離れて

 今朝は5時半に起床。顔を洗ってすぐにこのコラムを書き始めた。テーマはもちろん、あの反則タックルから始まる日本大学の指導者の対応を巡る問題である。
 書きたいことはいっぱいある。情報もあちこちから寄せられている。チームに迷惑がかかるかもしれないが、とにかく書いてみようと、2000字近い文章を一気に書き上げた。
 いったんコーヒーを飲み、もう一度読み返した上で、いつも掲載前にコラムをチェックしてもらっている小野ディレクターと石割ディレクター補佐に送信。さて、微妙な問題だから、お二人からどんな反応があるかと注目していたら、間もなく小野ディレクターからメールが届いた。「いまは非常にセンシティブな状況なので、このコラムは預からせて下さい。別のテーマで書いていただけると助かります」という内容だった。ある意味では予想通りの反応である。チームを運営する責任者としては、当然の対応と言ってもよい。
 当方も、潔く、この申し出に同意し、このホームページでの掲載を見送ることにした。
 もちろん、自分が気合いを入れて書いた文章である。それなりに愛着はある。けれども、書くことによって、今回の件に対する自分の考えの整理はできた。それを少なくともお二人には目を通していただいた。それだけで満足という気持ちも強い。その満足感の中から、新たなテーマで、別のコラムを書いてみようという意欲も湧いてきた。
 そんな次第で書いたのが以下の文章である。タイトルは「赤坂ダッシュ」。読者のみなさまの気分転換の一助になれば幸いである。
     ◇    ◇
 ファイターズは今季も50人近い新入部員を迎えた。スポーツ選抜入試や指定校推薦で大学の門をくぐったメンバーがいれば、高等部や啓明学院のアメフット部で活躍したメンバーもいる。アメフット経験者だけでなく、野球やバスケットなど他競技の経験者も多い。そんなメンバーが左腕の上部に自身の名前を書いた腕章を巻いて、4月の初めから基礎体力づくりに励んでいる。
 顔を知っているのは昨年の夏、推薦入試に備えて一緒に小論文を勉強したメンバーだけだが、彼らの状態はそれぞれに異なる。推薦入試を突破し、昨秋から体力づくりに励んだメンバーは筋肉質な体型を造り上げているし、ある種の開放感から高校生活をエンジョイしてきたメンバーは何となくだぶついた体型になっている。
 体型だけではない。新入部員合同の練習の後、いくつかの班に分かれてグラウンドと周辺の坂道を全力で走る時の様子でも、彼らがこの半年間、どんな生活をしてきたかの想像はつく。ある部員は颯爽と先頭を走り、別の部員は必ず途中で遅れ始める。ラインの選手の多くは自分の大きな体を持て余し、いつも最後部を走っている。
 コースはざっと600メートル。途中、行きと帰りに短い坂道があり、それが結構きつい。新入生は基本的に毎日これを3本、全力で走り、都合60本を走り終えると、とりあえず基礎的な体力が付いたとトレーナーに認めてもらえる。
 歴代の部員が「赤坂ダッシュ」と呼んで苦闘してきたこのダッシュを見ているのが楽しい。誰が将来、このチームを担っていくのかということが、その走る姿から、ある程度想像が付くからである。いつも先頭グループで気持ちよく走っている選手は、必ずプレーヤーとして頭角を現す。走るのが苦手でいつも最後尾の集団にいても、一歩でも前にという気持ちを前面に出して走るメンバーもまた、必ず成長し、気がつけばラインの主力選手になっている。
 このことは、卒業生も含めて、各学年で常に先頭グループを引っ張っていた選手の名前を挙げると分かりやすい。第三フィールドに移ってきた最初の年、スタート直後には必ず先頭に立っているが、50ヤードほど走ったところで必ずといってよいほど失速していた選手がいた。後にWRとして活躍した萬代晃平君である。ペース配分を考えれば600メートルくらいは余裕で走れたはずなのに、とにかく最初のダッシュに全力を挙げ、あとは失速しても仕方がないという割り切った走り方が印象に残っている。鳥内監督の次男坊、将希君は常に後続をぶっちぎっていたし、WRからDBに転向して活躍した田中雄大君のスピードも記憶に残っている。
 現役で言えばRBの山口君がいつも先頭で、それを追うのがWR小田君とQB西野君。それぞれがいま、4年生としてチームを引っ張っている。トレーナーの澤田君に聞くと、山口君はこの赤坂ダッシュの記録保持者だという。
 こうした努力で体力を養い、筋力を付けてきたフレッシュマンが連休明けから、続々と上級生の練習に合流している。いまはまだまだ大学生の練習に慣れない様子も見受けられるが、すでに「あれは誰?」「どこから来たん?」と上級生から注目されているメンバーもいる。
 大村コーチによると「今年の1年生はいい。期待できますよ」ということだった。僕もすでに、何人かの名前をチェックして手帳に記し、その練習振りを見守っている。
posted by コラム「スタンドから」 at 06:22| Comment(1) | in 2018 Season

2018年05月13日

(4)ファイターズの道

 今日、関西学院大学で開かれたファイターズの記者会見に出席。5月6日の日本大学との定期戦における「日大選手による反則行為」に関するファイターズの見解と主張をじっくりと聞かせていただいた。
 すでに新聞やテレビの報道、それにネット上の多様な書き込みによって、問題の発端となった日大選手の反則行為についてはご承知の読者も多いとは思いますが、あえて私見を述べさせていただきます。フットボールを愛し、ファイターズのチーム作りに全幅の信頼を置いている老人の繰り言になるかもしれませんが、おつきあいいただければ幸いです。
 まず、記者会見でファイターズから配布された資料の要旨を箇条書きで紹介します。
@当該の反則行為について、試合後にビデオ映像で確認したところ、関学のQBがボールを投げ終わって約2秒後に、相手DLが背後からタックルをしているA当の選手はボールには一切反応せず、QBだけをめがけて突進し、プレーが終わって力を抜いている状態の選手に全力で突き当たったうえ、倒れた選手の足をねじっているBこれはプレーとはまったく関係なく、当該選手を傷付けることだけを目的とした意図的で極めて危険、かつ悪質な行為であるCこのDLはその2プレー後、及び4プレー後にもそれぞれパーソナルファールの反則を犯し、3回目の反則で資格没収となったが、試合後の日大監督のコメントは、これらの反則行為を容認するとも受け取れる内容だったDファイターズは10日付けで日大アメリカンフットボール部の部長及び監督に対して厳重に抗議する文書を送ったEその内容は・日大DLの関学QBへの1回目のパーソナルファールに対するチームとしての見解を求めると同時に、関学QB及び保護者へのチームからの正式な謝罪を求める・日大の監督が試合後にメディアに対して出したコメントに対する見解とコメントの撤回及び前項の行為が発生したことについての指導者としての正式な謝罪を求める……といった内容です。
 これとは別にファイターズは、11日付けで関東学生連盟にも「連盟が規律委員会を設けて詳細を調査するとのことでありますが、その調査の過程で弊部へのヒアリングを強く要望します」という内容の要望書を提出したことも明らかにしています。
 文章にすれば、長々とした説明になりますが、以上の件の大半は、ファイターズが記者会見で提供したビデオ映像を見れば一目で理解できます。
 すでにSNSやネット上では、問題の場面が何度も再生されていますので、機会があれば見ていただきたいのですが、僕は今日の会見で記者のために繰り返し再生されたビデオを見て「これはアウト。ネットで『殺人タックル』という言葉が飛び交っている理由がよく分かる」と思いました。
 同時に、この記者会見が開かれる何日か前に書いた僕のコラムは、一字一句修正する必要がないとも確信しました。
 このコラムを書いているのは12日の夜ですが、実はこの週の半ばにこの問題に関して自分なりの考えをまとめ、デスクとして原稿をチェックしていただいている小野ディレクターに送信していました。しかし小野さんからは「この問題に関しては、チームとして見解をまとめ、対処しようとしているところです。土曜日に記者会見を開きますので、それまでは原稿を預からせて下さい」という話があり、僕もそれを了解して一端はボツにしていたのです。
 記者会見も終わり、チームとしての見解が正式に公表されましたので、ボツにしていた原稿の一部を再生させていただきます。概要は以下の通りです。
 ……そもそも大学における課外活動とはどういう意味を持っているのでしょうか。大学、高校などでは通常、課外活動という言葉を使っていますが、もう一歩進めて、課外教育と捉えた方がより分かり易く、目的も明確になるのではないでしょうか。
 多くの学生はいま、大学での学びと並行して部活動に熱中しています。オリンピックに出場するような選手もいれば、常に大学のトップを競うファイターズのようなチームもあります。一方で、部員が揃わずに苦労しているクラブもあります。一口に部活といっても、その内実は千差万別です。けれども、それぞれ状況は異なっても、一つの競技に打ち込み、自分を鍛え、高めようと取り組んでいる点においては、体育会に所属するすべての部員が共通の土俵に立っているといってもよいでしょう。
 その共通の土俵とは何か。スポーツを通じて身体を鍛え、強い心を育むこと、仲間との友情を育み、生涯の友を得ること、ライバルに敬意を表し、互いに最高の状態で戦うことといってもいいのではないでしょうか。
 そこからは、相手を傷つけてもよい、再起不能にしてもかまわない。どんな手段をつかってもよいから勝て、といったような発想が出てくるはずはありません。
 その意味で、いま問題になっている日大の選手のプレーは、当該選手の問題だけでなく、指導者の問題、組織の問題と合わせて総合的に捉えなければ真実は見えてこないのではないでしょうか。
 今回の問題で僕の脳裏に浮かんだのは、プリンストン大学の選手やコーチ、体育局の指導者のことでした。彼らは2015年春、ファイターズの招きで来日し、親善試合やシンポジウムを通じて爽やかな交流をしてくれました。試合では圧倒されましたが、彼らが見せてくれた課外教育やボランティア活動に取り組む姿、勉学と両立させながらの練習や試合への取り組みなどを思いおこすと、今回の事例との距離は天と地ほどの開きがあります。
 今回のことは、思い返すだけでも腹立たしいことです。けれども日本の大学の課外活動の現実と限界を見せつけてくれたという意味では、一つのエポックになるはずです。
 それを信じて、学生たちの心身の成長、発達を促すための組織づくりに突き進んでいきましょう。関西学院の課外教育のよきモデルとしての道を歩みましょう。大学当局にも、大学スポーツ界にも、必ず目の見える人はいるはずです。もちろんファンの目も確かでしょう。
 いまは「一粒の麦」かもしれませんが、今日の記者会見で蒔かれたこの麦が日本の学生スポーツ界の現状に風穴を開けることを信じて疑いません。合い言葉は「どんな人間になんねん」(by鳥内監督)です。
posted by コラム「スタンドから」 at 07:45| Comment(3) | in 2018 Season