2017年06月20日

(11)リクルートの力

 先週のJV戦、北海道大学との試合では、スポーツ選抜入試で関西学院の門を叩き、ファイターズに入部したばかりの1年生が大いに存在感を発揮した。
 先発メンバーにはRB田窪(追手門)とDL春口(浪速)が名を連ね、交代メンバーとして同じ選抜組のRB鈴木(横浜南陵)、WR亀井(報徳)、OL石川(足立学園)、羽土(浪速)、LB松永(箕面自由)、DB井上(浪速)が出場。それぞれきらりと光るところを見せた。前回、京都産業大学とのJV戦で活躍したLBの海崎(追手門)はすでにVのメンバーとして練習しているため、この日は出番がなかったが、出場したメンバーは、終始、全力で立ち向かってくれた北海道大学の選手達を相手に、これまた全力で立ち向かった。
 これに、今季はけがなどで出遅れていた2年生のDL今井、OLの川部、パング、RB斎藤らの活躍振りを挙げていくと、ファイターズのリクルート力のすごさが見えてくる。
 もちろん、新戦力の供給源として、昔も今も存在感があるのは高等部の出身者。質量ともにファイターズの屋台骨を支えているのは誰もが認めるところだ。加えて近年は、啓明学院出身者の活躍振りも目立ってきた。この日、出番があるたびに相手守備陣を切り裂いたRB三宅や鶴留、足の速さが魅力のWR大村はそれぞれ高等部と啓明の卒業生だ。
 それでも、スポーツ選抜入試やAO入試、指定校推薦など多彩な選抜形態で入部してくる選手を抜きにしては、ファイターズは語れない。昨年のチームを引っ張った主将山岸、QB伊豆、WR池永、RB橋本、DB小池。今季のチームをリードする主将井若、副将松本、WR前田泰一、DB小椋、RB山本、高松らの名前を列挙していくだけで、そのことは理解できるだろう。
 そうしたメンバーを誰が、どのようにして見つけ、チームに勧誘するのか。もちろん、高校時代から華々しい活躍をし、各チームから声のかかる選手もいる。そうしたメンバーは専門誌でも大きく取り上げられ、ライバル校と争奪戦になることもある。けれども、府県大会で早々に敗退するチームの中にも、非凡な才能が埋もれていることが少なくない。他競技からの転身者にも、フットボールで成功しそうな選手もいる。
 ファイターズを例にとれば、さきの伊豆や橋本がそうだし、井若も高校時代はここまで活躍する選手とは思われていなかった。いまやチームに欠かせぬ選手となった3年生のWR松井、DL三笠も、高校時代はごく少数の人が絶賛しているだけだったし、さきのJV戦で別次元の活躍振りを披露した2年生のDL今井も、全国的には無名の選手だった。
 そうした選手をどのようにして発掘するのか。まずは公式試合を中心に高校の試合をビデオに収録する。注目選手を中心に、そのビデオをコーチに見せる。コーチが高校の試合に足を運んで直接、注目している選手の動きを見ることもある。勧誘すると決まれば、高校の責任教師や相手の家族に挨拶にうかがい、本人とも面談する。小論文対策の勉強会もするし、志望理由書など提出書類を整えるためのアドバイスもする。入試当日の世話もするし、入学が決まれば下宿の手配もする。
 そうした一連の作業を担当するのがリクルート班。いまはディレクター補佐の宮本さんが責任者を務め、担当のマネジャー(今季は2年生の安在君)が手足となってビデオ撮影などに奔走する。高校のシーズン中は土曜、日曜に試合があるため、ほとんどの休日が吹っ飛ぶ。
 このリクルート体制は1990年代の後半から、当時の小野コーチが中心になって構築した。当時はスポーツ推薦が始まったばかりで、勧誘のノウハウもなければ、有望選手を発掘する仕組みも十分には整っていなかった。とにかく試合会場に足を運び、これはという選手を見つけると、試合直後に相手ベンチに駆け込み、監督に挨拶をするところから始めていたように記憶している。
 小野コーチの仕事が忙しくなり、その後を宮本さんが引き継いで約15年。その間、営々と高校の監督や部長と人脈を築いてきた。最近では、ファイターズの運営の仕方や選手の育て方に理解も深まってきたという。いまでは相手から「この選手は責任を持って送り出します。ぜひファイターズに育ててもらいたい」といわれることもあるし、彼らが対戦した相手チームの有力選手の情報をもらえることもあるそうだ。
 ファイターズのOBから推薦されることもあるし、監督やコーチの個人的なつながりから、他競技の有望選手の情報が入ることもある。高校の試合のビデオを必ずチェックする大村コーチがリクルーターの注目していた選手とは別の選手の動きに目を止め、当初に予定していたのとは別の選手を勧誘することもある。
 リクルートの現場を預かる人材と監督、コーチとの風通しがいいこと、長年積み重ねてきた高校の先生たちとの信頼関係、入部した選手の成長、そうしたことが積み重なって、現在のファイターズのリクルート力を支えているのだろう。その辺のことを宮本さんに聞くと二つの答えが返ってきた。
 一つはファイターズの「育成力」が高校の監督や先生たちに信頼されるようになったこと。だから、昔はこちらから声を掛けていたが、近年はこれはという選手がいると相手から声を掛けてもらえるようになってきたという。もう一つは現場を預かる大村コーチの目が確かなこと。「彼はよく『こいつはええ目をしている』というような言い方をするのですが、それがことごとく当たっている。ビデオを見るときも、僕らの気付かない所に目を向けていることがよく分かる」と宮本さんはいう。
 そうした努力と信頼によって支えられているのがファイターズのリクルート力である。今季も、そうして選ればれ、入部してきた選手たちの動向から目が離せない。ここでは名前を挙げていないが、ラグビーや野球など他競技からの転出組にも、将来が期待される選手が少なくない。
posted by コラム「スタンドから」 at 21:51| Comment(1) | in 2017 Season

2017年06月13日

(10)収穫多いJV戦

 先週の木曜と金曜の夕方、いつも通りに第3フィールドに顔を出すと、普段の週とは全く違った光景に出合った。いつもならチームの練習が開始される1時間半も前からグラウンド中央でパスキャッチの練習をしているはずの3、4年生レシーバーやランニングバックの姿がないのだ。いや、メンバーはそこかしこにいるし、練習を見守って下さる武田建先生の姿もある。しかし、彼らはどこかゆったり構えたままで、表情も和やかだ。
 そうこうするうちに4時限の授業が終わった下級生が続々グラウンドに降り、入念な準備運動をすませて、やる気満々でパートごとの練習に取り組む。それを待ちかねたように、それまで手持ちぶさたにしていた上級生が間近で練習を見守り、1プレーごとに声を掛ける。褒めるべき点は褒め、注意すべき点は即座に注意する。
 そう、この週は普段、後方にいることが多いJVのメンバーが土曜日の北海道大学とのJV戦に備えて、練習の主役を張っていたのだ。
 JVメンバーは普段、1プレーごとにVのメンバーにチェックを入れらることはない。VのメンバーはVのメンバー同士で声を掛け合い、励まし合って練習。JVのメンバーはスカウトチームとしてそれを支えたり、自分たちに課せられた別メニューに取り組んだりしている。それが春のシーズンを締めくくる北海道大学との試合に備え、この週ばかりはどのパートもJVメンバーが主役となり、Vの上級生たちがそれを支援する役割に回っていたのである。
 その光景を眺めながら、ここまで上級生が下級生に丁寧に教えてくれるチームはそうそうないのではないか、こうした上下の垣根のない練習によってチームの総合力が高められ、歴史が受け継がれていくのだろうと、ある種の感慨にふけった。
 開けて土曜日。夕方の5時から始まった試合では、1、2年生を中心に、期待の新戦力が次々に登場した。先発メンバーを見れば、TEを含めてOLはLBから移ってきた木下を除くと全員が2年生。1年生RBの田窪(追手門)もスタメンに名を連ねている。ディフェンスでも、まだパート練習に加わって間もない1年生の春口(浪速)が先発、故障で今季はVの試合に出ていなかった期待の2年生DL今井も久々にフル出場した。
 交代メンバーに目をやると、RBは田窪とともに期待される鈴木(横浜南陵)、三宅(高等部)、鶴留(啓明学院)の3人が代わるがわる出場。1年生4人で約200ヤードを稼ぎ、TD6本を記録する活躍を見せた。後半に出場した2年生の斎藤も、久々にパワフルな走りを披露した。
 1年生のWRも多士済々。前川、高木(ともに高等部)、亀井(報徳)らがメンバー表に名を連ね、大村(啓明学院)はパントのリターナーとしても非凡な所を見せた。OLの羽土(浪速)、石川(足立学園)も出場していたが、残念ながらボールキャリアに目を奪われて、二人の動きはよく見ていない。
 一方、ディフェンスではDLの岡(高等部)、LB松永(箕面自由、彼は2年生OL、松永大誠君の弟である)、DBの中村、繁治(ともに高等部)、井上(浪速)がメンバー表に登録された。それぞれが高校時代から活躍してきた面々であり、期待されてチームに加わった選手である。終始、交代で出場し、派手な活躍を見せつけたRB4人組に比べると、地味な役回りだったが、それでも入学してまだ2カ月にしかならないこの時期に、上級生に混じって遜色のないプレーができたのだから、立派なものだ。
 鳥内監督に試合後、1年生RBの活躍に話題を振ると「田窪、鈴木、三宅は秋には出てきますよ。鶴留もパワーはある」とご機嫌だった。
 ところが、試合については「反則が多すぎる」と口調が一変。「4年生の責任や。普段から試合を想定して、厳しく注意してないから、こういうことが起きる」「こういうことをやってはいかん、ということを練習の時から意識し、4年生が注意せなあかんのに、それができていない」と続けた。
 この日の反則は12回100ヤード。その多くがスタートに関係する反則とホールディング。普段、試合に出ているメンバーならあり得ないことだが、あまり試合経験がない上級生と、チームに加わってまだ2カ月ほどの選手たちが呼吸を合わせるのに苦労した結果だろう。
 どんなにメンバーを揃えても、試合は思い通りには進行しない。不用意な反則も起きるし、思わぬ失敗も起きる。それを一つ一つつぶしていくための上級生のリーダーシップと下級生の努力。その大切さ、重要性をこの日の試合は教えてくれた。普段、試合に出る機会の少ないメンバーが主役になるJV戦は、その意味でも貴重な機会である。
 欠けた点を補い、長所を伸ばす。いうは易く行うは難しい問題だが、この日の試合は、長所とともに、欠けたところも存分に浮き彫りにしてくれた。初めてまみえる北海道大学が得点差が開いた(最終的には47−0)にも関わらず、最後まで闘志を失わず、懸命に戦ってくれたおかげだろう。
 秋のリーグ開幕まで2カ月半。途中に前期試験があり、その準備期間も含めると、グラウンドでの練習ができる日は限られている。だからこそ1日1時間が大切になる。常在戦場。上級生、下級生に関係なく、一人一人が体力を養い、考えを巡らせて、本番に備えてもらいたい。
posted by コラム「スタンドから」 at 08:40| Comment(1) | in 2017 Season

2017年06月06日

(9)「完敗」と「最高」

 日曜日の「神戸ボウル」、パナソニックとの試合は24−10。スコアだけでなく内容的にも完敗だった。当日、会場で応援していたファイターズファンに聞けば、10人が10人ともそのように答えられるだろう。
 関学スポーツが伝えてくれる「試合後のコメント」を見ても、鳥内監督は「レベルに差があった。ライスボウルで勝負しょうと思うんやったら今のままではあかん」と発言されている。
 実際に戦った選手の言葉はさらに厳しい。井若主将は「よい点も悪い点もあったが、全体的にめちゃくちゃ悪い。1対1でも負けている。レベルが低いと感じた」、松本副将は「実力の足りなさを痛感した」、QBの光藤君は「相手のスピードについて行けない。想定以上の速さに対応できなかった」といっている。それぞれが本音であろう。
 けれども、僕はへそ曲がりである。試合は完敗だったと認めることはやぶさかではないが、それでもあえて「最高の試合だった」と主張したい。賛同は得られないだろうし、そんな甘ったれたことを言っているからダメなんだ、と叱られるかもしれない。けれども、たとえ負けゲームであったとしても、そこに光明を見つけるのが僕の役割だと思っているから、あえて自説を書かせていただく。ただの強がりといわれるかもしれないが、お読みいただければ幸いである。
 1、随所に素晴らしいプレーがあった。
 例えば、0−0で迎えた1Qの終盤、自陣21ヤード付近からの攻撃である。まずは光藤がWR松井に20ヤードのパスをヒット、次はRB山口が見事なカットで相手DBを抜き去り、25ヤード前進。次は光藤がランニングバックにボールを渡すと見せかけながら、そのままボールをキープして16ヤード前進。わずか3プレーで相手ゴール前20ヤードまで迫った。
 残念ながら、この場面は最後の詰めが甘くFGの3点にとどまったが、社会人選抜といってよいほどの強力なメンバーを揃えた相手を驚かせるに値する攻撃だった。その主役がそれぞれ3年生。まだ大学では実質2年、けがなどで戦列を離れていた期間を考慮すれば、それ以下の経験しかない。そんなメンバーが経験豊富なスター軍団を相手に一歩もひけをとらないプレーを続けたことに、僕は大きな手応えを感じた。
 2、オフェンスの下級生が踏ん張った。
 この日の先発に名を連ねたOLは左から井若、森田、光岡、松永、村田。4年生は井若、3年生は光岡、残る3人は2年生である。これまた大学でプレーしたのは実質1年かそれ未満という顔ぶれだったが、それが強力な相手ディフェンスに立ち向かった。もちろんずたずたに切り裂かれ、QBがサックを受ける場面が何度もあったが、逆に味方のRBのために走路を空ける場面もあった。3Qの終盤、自陣23ヤードからRB高松が77ヤードを独走してTDに持ち込んだのがその一つである。真ん中のレーンがきれいに開いていたから高松のスピードが生かされ、独走TDに結びついた。いくら相手が強くても、ラインがやるべきことを完遂すれば、道は開けることを実証した場面であり、下級生は大きな手応えを掴んだはずだ。
 3、レシーバー陣のブロックが素晴らしかった。
 例えば、上記、高松が独走TDを決めた時のWR松井のブロック。独走する高松に左から追いすがろうとする相手DBを追いかけ、走路をふさいでいたが、もう一人のDBが右から俊足を飛ばして追いかけて来るのに気付いた瞬間、右にコースを変え、即座に横からの強力なブロックで相手を仕留めた。そのスピード、判断力、そして強力なブロック。その場面をrtvの画面で再確認したが、何度見てもしびれる。昨年の立命館との試合でWR池永君がTDを挙げた時にも、似たような場面があったが、今度は競り合う相手が信じられないようなスピードを持った外国人DBだっただけに、余計に彼のポテンシャルの高さが光った。ファイターズ史上、最高のレシーバーになると監督が期待している通りの活躍であり、このプレーを見ただけで溜飲が下がる思いをしたのは、僕だけではあるまい。
 以上、3つの例を見ただけでも、このチームが可能性に満ちていることが理解してもらえるだろう。さらにいえば、この日は主力をけがで欠き、どちらかといえば交代メンバーで揃えたDL陣の健闘も素晴らしかった。最後は相手の個人的な能力に対抗しきれなかったが、彼らが着実に力を付ければ選手層が厚くなる。秋のシーズンが深まるにつれて、選手層の厚さが勝敗を分けることを考えれば、これもまたうれしい知らせである。
 問題は、試合の所々で垣間見たそうした素晴らしいプレーを、一つ一つの点で終わらせず、線にし、面にしていくことである。1対1でも勝ち、チームとしても勝つ。それをどのように実現していくか。チームの現在位置を明らかにし、これから進むべき道を明らかにしてもらえたと考えれば、「完敗」にも大きな意味がある。
 何度もいうが、ファイターズは発展途上にある学生チームである。完成形に近い社会人チームに悔しい敗戦を喫したとしても、そこに光明が見つかれば、それは負けではない。その一筋、二筋の光明を手掛かりに、今後、チームをどのように鍛えて行くか、個人個人の能力をどう高めていくか。勝負はそこにかかっている。めげている余裕ない。
posted by コラム「スタンドから」 at 08:41| Comment(0) | in 2017 Season