2016年09月28日

(21)「松岡はいるか、香山はどこだ」

 秋のリーグ戦3試合目。龍谷大との戦いは、ファイターズの現状をあぶり出す絶好の試験紙となった。
 その試験紙は何をあぶり出したのか。
 その答えは、試合終了後の鳥内監督の談話に現れている。「今のチームの状況は」との記者団からの問いに「チームの力が4年前とは全然違う。まだまだ精神面のレベルの低さが出ている。こんなんでは、日本1になるのは無理やと思う」。僕も、現場で耳を傾けていたが、その言葉には本音が現れていたように思う。
 実際の試合も、最初からピリッとしなかった。ファイターズのレシーブで始まった最初のシリーズ。RB山口のナイスリターンで自陣48ヤードの好位置から始まったが、第3ダウン残り4ヤードでこの日の先発QB西野がファンブルして攻守交代。
 ここはDLの藤木、安田が素早い出足で相手を押し込み3&アウト。自陣27ヤードから再びファイターズの攻撃が始まる。ここはRB野々垣、橋本のランプレーで確実に陣地を稼ぎ、RB加藤が右オープンを駆け上がって残り8ヤード。橋本の中央突破と西野のドローキープでTD。K西岡のキックも決まって7−0。
 これで落ち着くかと思ったが、オフェンス陣の歯車はなかなかかみ合わない。いいパスが通ったと思えば、不要な反則があり、がら空きのレシーバーにパスが投じられたと思ったら、それをレシーバーが落とす。ようやく2Qの半ば、西野に代わって出場したQB伊豆から1年生WR阿部に44ヤードのTDパスがヒットし、西岡のキックも決まって14−0。残り1分少々で西岡が40ヤードのFGを決め、17−0で前半を折り返した。
 振り返ると、先発メンバーを揃えた守備陣こそ鋭い出足で相手オフェンスを完封したが、積極的に下級生を登用したオフェンスはどこかちぐはぐ。トントンとリズムに乗って攻め込むファイターズらしい攻撃がなかなかつながらず、逆にファンブルや反則で自ら墓穴を掘ってしまう。せっかく相手をパントに追い込みながら、リターナーは陣地を回復するためのチャレンジをためらう。
 そんな場面の繰り返してている内に、後半は相手が勢いに乗ってくる。ファイトの固まりのようなQBがぎりぎりまで粘ってパスを投げ、突破力のあるRBが真っ向から走ってくる。後半になってファイターズが投入した交代メンバーでは、それを止めきれず、何度もダウンを更新される。
 最終的には31−3でファイターズが勝ったが、後半の戦い振りは5分と5分。攻守ともラインの圧力とスピードでは、ファイターズに分があったが、相手にはそれを補って余りあるファイティング・スピリットがある。QBもRBもWRも「ファイト・ハード」。激しい気持ちで立ち向かってきているのが、スタンドからでもひしひしと感じられた。
 同じような場面は、この試合の前に行われた京大と甲南大の試合の後半にも見受けられた。その試合、第4Q半ばまでは京大が17−6でリードしていたが、甲南大は背番号12のQBが龍谷大のQBと同様、激しい闘志で相手守備陣を突破、急所で2本のTDパスを決めて20−17の逆転勝利を収めた。
 そのQBが試合終了後、人目もはばからず号泣しているのを見た。自分が試合をリードし「ファイト・ハード」で何度も危機を突破した結果としてつかんだ勝利。その実感を体が覚えているから、全身で号泣できたのだろう。何度も何度もファイターズの守備陣に跳ね返され、サックを浴びながら、一歩もひるまずに立ち向かってきた龍谷のQBやRBも同様だ。そのひたむきさに、ファイターズの交代メンバーが圧倒されたといってもよい。
 そういう現実を目の前に突きつけられて、冒頭の鳥内監督の「チームの力が4年前とは全然違う」「精神面のレベルの低さが出ている」という言葉になったのだろう。
 監督のいう4年前が、どの年代のことを指しているのかは確認していないが、僕にも思い当たることがある。RB松岡君が主将でDLに副将の長島君、DBにハードタックルが持ち味の香山君がいた年代である。彼らが最終学年の時、チームは3年連続で甲子園ボウルに出場できておらず、その年に勝てなければ、甲子園ボウルを経験しないまま卒業することを余儀なくされていた。
 それだけに、4年生はみな、春から殺気だった練習をしていた。練習中、相手に隙が見えれば激しく言い合い、時には互いに殴りかかる。絶対に立命を倒す、という気持ちが上ヶ原のグラウンドにほとぼしっていた。
 そういう闘志をむき出しにした練習を日々重ねてきた結果が立命戦での香山君のハードタックルである。突貫小僧のような相手のエースQBを一発で倒したタックルは偶然ではない。日々の練習から「ファイト・ハード」を体現してきたからこそ、ここぞというときに完璧なタイミングで、魂のこもったタックルができたのである。
 そういう練習をやろうではないか。立命に勝つ、というだけでなく、勝つために集中しようではないか。そのための「Fight Hard」であろう。
 幸いなことに「残りの数試合で変われるチャンスがある」(鳥内監督)。先発メンバーも交代メンバーも、試合に出る以上はファイターズの戦士である。ひたむきさやファイティングスピリットで、自分に負けているようでは話にならない。
 「松岡はいるか。香山はどこだ」。今こそファイターズの全員にそう問い掛けたい。
posted by コラム「スタンドから」 at 11:48| Comment(3) | in 2016 season

2016年09月14日

(20)失敗は天からの贈り物

 関西リーグ第2戦は、今季からT部リーグに復帰した甲南大との対戦。相手にはどんなメンバーがいて、どんな戦い方をするのか、手持ちのデータは少ない。当然、戦術以前に個々の選手のファンダメンタルが問われる試合になりそうだ。ファイターズの選手が持っている基礎的な力が未知の相手にどこまで通用するのか。とりわけ試合経験の少ないメンバーの動向に注目して観戦した。
 結果は「うれしい便りと、悔しい便りをお届けします」。
 ファイターズのレシーブで試合開始。RB野々垣が27ヤードをリターンし、自陣29ヤードから攻撃が始まる。まずはQB伊豆からWR前田泰へのパスで22ヤード前進。相手陣に入ると野々垣とRB橋本のラン、WR松井へのパスで敵陣35ヤード。そこで再び前田泰への短いパスがヒットしてゴール前18ヤード。野々垣の切れのよいランでゴール前7ヤードに進むと、橋本が中央を突破してTD。西岡のキックも決まって7−0。わずか9プレーで、試合の主導権を握った。
 守備も踏ん張る。相手の攻撃を完封してパントに追いやり、センターライン近くからファイターズの攻撃。しかし、ここで伊豆が投じた長いパスが相手DBに確保され、痛恨のインターセプト。だが、ここでも守備陣が相手のランをことごとく止め、再び、自陣41ヤードからファイターズの攻撃。今度は伊豆からWR萩原、松井へのパスがヒットし、わずか4プレーでゴール前7ヤードに迫る。RB山口のランの後、仕上げは再び橋本の中央ダイブ。西岡のキックも決まって14−0。
 ここで第1Q終了。第2Qに入っても守備陣はDL安田のロスタックルなどで確実に相手の攻撃を防ぐ。1度もダウンの更新を許さず、ファイターズ4度目の攻撃シリーズは自陣49ヤードから。ここでも野々垣と橋本のランで確実にダウンを更新。山口が12ヤードを走った後、今度は伊豆からWR亀山への28ヤードのパスが通ってTD。攻めては4回の攻撃シリーズで3本のTDを決め、守っては相手に一度もダウン更新を許さない。
 ここまでは、攻守とも完全なファイターズペース。とりわけ、腕のけがで長いリハビリ生活を続けてきたエースランナー橋本が復帰第1戦で、パワフルな走りを見せつけたのが頼もしかった。RB陣には、橋本以外にもスピード系の野々垣、加藤、高松、パワー系の山本、山口と、それぞれ違った持ち味と一発TDの威力を秘めたメンバーが揃っており、橋本の復帰で、プレー選択の幅がさらに広がるに違いない。
 しかし、得点差がつき、攻守とも交代メンバーが少しずつ入って来るようになると、状況は一転する。オフェンスの反則が相次ぎ、長いパスは2度3度と奪い取られる。最終的なスコアは41−0となったが、気分は快勝というにはほど遠い。反則回数は5回、罰退は30ヤード。インターセプトも4本。そのうち3本も同じDBに喫したというのがつらい。過去に見たこともない屈辱的な試合といってもよいだろう。
 その試合を見ながら「こうした未熟な場面も含めて、学生スポーツの魅力というのではないか」と考えた。
 経験豊富なメンバーを中心に臨めば、確かに安定した試合はできる。実力相応の得点を重ねると、ファンは満足だろう。個々の選手もまたパスキャッチやランプレーの数字を大幅に積み重ねていける可能性がある。
 しかし、大学生活は4年間。最初の半年間は基礎的なトレーニングが中心だから、どんなに才能にあふれた選手でも、プレーできるのは3年半しかない。その間に試合経験を積み、成功体験と悔しい経験を互い違いに重ねて成長していくことで、常に優勝争いのできるチーム作りが可能になる。
 試合の登録メンバーが限定され、一度ベンチに下がった選手は、再び出場できない野球やサッカーと違って、フットボールは交代が自由。状況に応じて何度でも選手を出し入れできる。振り返れば1試合に50人、60人の選手が出場していることも珍しくはない。
 その特徴を生かして、どのチームも盛んに交代メンバーを繰り出し、下級生や故障明けの選手に試合経験を積ませ、成長の芽を伸ばそうとする。いつの試合でも最後までベストメンバーで臨む、ということになると、一握りの選手を除いて、その失敗も成功も味わうことができない。
 それでは年々、選手が卒業していく大学スポーツ、課外活動としてのスポーツは成り立たない。200人の選手がいれば、それぞれの選手に成長の機会を保証し、チャンスを与え、それを戦力にしていくノウハウを構築したチームが勝つのが大学スポーツである。例え育成組織が十分に機能しなくても、有望な選手をトレードで獲得したり、金にあかせて外国からの助っ人を集めたりすることで成り立っているプロスポーツとはここが決定的に異なる。
 それを十分に承知し、試合が人を成長させるという確信を持っているからこそ、監督やコーチは「負けたら終わり」のリーグ戦であっても、新しい交代メンバーを次々と投入し、成長のきっかけをつかませようとしているのである。
 もちろん、不要な反則も、度重なるインターセプトもない方がいいに決まっている。けれども、その失敗、その悔しさを胸に刻んで、選手が成長してくれたら、それはそれで教育の場としての部活動では意義がある。
 4年生の幹部が「立命に負けた悔しさを忘れるな」「ライスボウルで負けた悔しさを下級生に伝える」と必死で言うことも大切だ。けれども個々の選手が一つの失敗、一つの判断ミスを「わがこと」として胸に抱え、2度と同じミスはしないと誓って練習に励み、試合に臨むことの方が、より話は具体的だ。
 そういう失敗の機会が与えられたことに感謝して練習に励めるのも、課外活動としてのスポーツの意義であり、魅力だろう。
 失敗は負けではない。それを再度の精進と挑戦の機会と捉えて全力を尽くす人間にとっては、天からの贈り物である。がんばろう。
posted by コラム「スタンドから」 at 13:24| Comment(1) | in 2016 season

2016年09月08日

(19)見守る人

 折に触れて読み返す、藤沢周平の「蝉しぐれ」に、次のような一節がある。剣術の道場主がいまが伸び盛りの主人公に向かっていう台詞である。
 「兵法を学んでいると、にわかに鬼神に魅入られたかのように技が切れて、強くなることがある。剣が埋もれていた才に出会うときだ。わしが精進しろ、はげめと口を酸くして言うのは、怠けていては己が真の才にめぐり会うことができぬからだ」
 「しかし、精進すれば、みんながみんな上達するかといえば必ずしもそうではない。真に才のある者は限られている。そういう者があるときから急に強くなるのだ」
 こういう台詞に出会うと、ついついファイターズで活動する諸君の精進、努力にその言葉が重なる。監督やコーチが「わしが精進しろ、はげめと口を酸っぱくして言うのは、怠けていては己が真の才にめぐり会うことができぬからだ」と、部員を叱咤激励されている場面を連想してしまう。
 もちろん、小説に取り上げられた剣術と、いま現実の世界で取り組んでいるフットボールでは、舞台も条件も全く異なる。剣術では個人の力量が直接反映されるが、フットボールはチームスポーツであり、チームとしての力量が試される。一人の選手が鬼神に魅入られたかのように「技が切れ、強くなっても」、ほかのメンバーが昨日のままでは、勝負には勝てない。
 だからこそ、チームとしての力量を上げるための精進がすべての選手に求められるのである。監督やコーチが毎日のようにグラウンドで練習をチェックし、繰り返しビデオを見ているのは、そこである。この部員は100%、あるいは120%の力を出して練習に取り組んでいるか。練習が終わった時には、練習前よりたとえ半歩でも上達しているか。選手もまた、自分のことだけではなく、ゆるみの見える仲間に厳しく要求しているか。けがや体調不良を言い訳に、手を抜いた練習をしている部員はいないか。
 このように書くと、200人以上のメンバーの動きを一人の人間が見られるはずがないという疑問が出るかもしれない。自身が全力で取り組んでいるときに、仲間の動きにまで目が届くはずがないという疑問を持たれる方もおいでになるかもしれない。
 しかし、実際にグラウンドに立ってみると、なぜか選手の動きがよく見える。全くプレーヤーとしての経験がない僕のような人間でも、手を抜いている部員、体のどこかに異常を抱えた選手はすぐに分かる。ほんの些細な仕草であっても、全体の流れとは異なる動きをするからだ。
 百戦錬磨、経験豊富な監督やコーチのセンサーは僕よりもはるかに感度がいい。プレーごとにチームの動きをチェックしつつ、常に一人一人の選手の動きを視野に入れている。だから、少しでもおかしな動き、緩慢な仕草があれば、その部分がクローズアップしたように浮かんでくるのだろう。
 そういう選手には、現場で注意されることもあるし、別の形で奮起を促されることもある。「精進しろ、はげめ」というわけだ。
 その証拠は、上ヶ原のグラウンドの片隅に置かれているホワイトボードに見つけることができる。そこには毎日、オフェンスとディフェンスに分けて、ポジションごとに選手の名前が張り出されている。選手にはV、準V、JV、ファームと4段階(練習から除外されているリハビリメンバーを加えれば5段階)の格付けがあり、コーチが前日までの練習内容を参考に、格付けを上げたり下げたりされるのである。
 みんなの前で大声で怒鳴りつけなくても、この格付けの変動を見ただけで、監督やコーチが誰に注目し、どの選手に期待を寄せているかは一目で分かる。時には次の試合の先発メンバーや主な交代メンバーまでが推測できるようになる。
 成果が出れば格付けは上がる。期待外れな練習ぶりだと、ランクが落ちる。それをチェックする監督、コーチの目が揺るぎないから、チーム内の競争が激しくなり、必然的に質の高い練習につながる。日々、質の高い練習に100%の力で取り組んでいる中で、ある日「鬼神に魅入られたように技が切れて、強くなることがある」のである。
 今秋土曜日、京セラドームで行われる甲南大学との試合で、そうした選手が何人出てくるか。刮目して待っている。
posted by コラム「スタンドから」 at 12:34| Comment(0) | in 2016 season

2016年09月01日

(18)「こんなもんちゃうか」

 シーズンの初戦といえば、毎年、特別の感慨がある。新しい戦力は出てきたか。昨年まで活躍した選手が一段と進化したプレーを披露してくれるか。けがでしばらく試合から遠ざかっていたメンバーの回復具合はどうか。交代メンバーの底上げは進んでいるか。スタッフの動きはどうか。チームとしての一体感は生まれているか……。
 スタンドから眺めているファンの一人として、チェックしたいことはいくらでもある。練習ではずいぶん成長していると思った選手が、公式戦でその力が発揮できるかどうかは、また別の問題だ。
 秋のリーグ戦、初戦の同志社との試合は、そういう意味で、見所がいっぱいだった。
 まずは先発メンバー。攻撃ではラインに左から3年生の井若、1年生の川部、2年生の光岡と、箕面自由学園出身の3人が並ぶ。右に4年生の清村と藏野、TEには3年生の三木という布陣だ。昨年まで中央をがっちりと固めていた左ガードの橋本は卒業し、センター松井と右のガード高橋はけがのために欠場している。左右のタックル井若と藏野以外は試合経験が少なく、鳥内監督の試合前の言葉を借りれば「相当いかれまっせ」という状況だ。
 守備に目をやると、DL松本、DB小池という二人のエースの名前がなく、代わって高槻高校出身の1年生、小川が先発に名を連ねている。DLのパングや藤木はこれまでからも交代メンバーで活躍していたから、そんなに違和感がないが、初めて公式戦のスタメンを任された小川がどんな働きをするか。OLの川部ととともに、特別なチェックが必要だ。
 関学のキック、同志社のレシーブで試合が始まる。なんとなんと、同志社が多彩なプレーを次々に繰り出す。最初のシリーズは自陣40ヤード付近で第4ダウン残り5ヤード。当然のようにパントを蹴ると思ったら、なんとフェイクパスでダウンを更新。ファイターズ守備陣が混乱するのを見澄ましたようにリバースプレーやQBキープで一気にに陣地を進める。
 ここはなんとかDB稲付やDL安田のロスタックルでなんとかパントに追いやったが、同志社の思い切った攻めにスタンドからは何度も感嘆の声が上がる。
 ようやく手にしたファイターズの最初の攻撃シリーズ。満を持して登場したQB伊豆がWR池永、前田泰、中西に10ヤードから15ヤードのパスを確実に決めて陣地を回復。相手陣に入ると、RB野々垣、山口、高松を使い分けながらゴール前に迫る。仕上げはオフタックルを突いた野々垣の1ヤードランでTD。K西岡のキックも決まって7−0と先制する。
 しかし、この日の同志社は元気がいい。攻撃陣はKG守備の反応の早さを逆手にとったようなプレ−を連発。右や左と目先を変えながらじっくり時間を使いながら攻め込む。攻撃がストップすると今度は守備陣が奮起する。攻守の歯車がかみ合い、とても2部から復帰したばかりとは思えないようなプレーが続く。
 ファイターズはようやく3度目の攻撃シリーズを高松の切れのよい走りでTDに結び付けて14−0。前半はこのスコアで終了したが、スタンドからは「同志社が思い通りに試合を動かしている。後半、何が起きるか心配だ」という声も出る。
 その懸念を払拭したのが後半最初のファイターズの攻撃。伊豆が自陣39ヤードから池永や高松に立て続けにパスを通し、加藤、山口、山本、加藤と豊富RB陣を走らせ、仕上げは再び野々垣のオフタックルランでTD。21−0として、ようやく主導権を手にする。
 こうなると、ファイターズは新しい戦力を次々と投入。QBも控えの2年生西野に交代する。西野は得意のキーププレーでリズムをつかみ、相手陣37ヤードからWR松井にロングパス。少しオーバースローに見えたが、松井が最後にスピードを上げ、ぎりぎりでキャッチしてTD。最後に一段ギアの上がる加速力と長身を利用した松井ならではのキャッチは、2007年のシーズン、QB三原と組んで活躍したWR秋山を彷彿させた。これでまだ2年生というのだから、鳥内監督が昨年「ファイターズ史上最高のレシーバーになりますよ」といった言葉に嘘はなさそうだ。
 ファイターズはこの辺りから、攻守蹴ともに下級生の交代メンバーを次々と起用。相手にキックオフリターンのTDを許すなど、不細工な場面もあったが、逆に4年生RB北村が一度は倒されそうになりながら、体を立て直してTDを決めるシーンもあって、終わって見れば35−7。
 鳥内監督は試合後、報道陣の質問に「こんなもんちゃうか」と答えておられたが、それが正直な感想だろう。
 試合経験の少ない下級生は失敗はあっても経験を積んだ。下級生の頃から試合に出ている選手は、肝心なところで踏ん張った。相手オフェンスがファイターズに一泡吹かせてやろうと準備したプレーを次々と繰り出しても、守備陣は何とか得点は許さなかった。けが人を抱えて不安なままにスタートした攻撃陣も、経験豊富な伊豆のリードで、なんとかぼろを出さずに乗り切った。
 そのトータルが「こんなもんちゃうか」という言葉だろう。
 シーズンは始まったばかりである。11月のリーグ最終戦まで必死の練習を重ね、個々の力を伸ばし、チームとしての力量を高めてもらいたい。それが実現すれば「今年のチームはよくまとまっている」とか「ようがんばった」とかいう言葉が監督の口から聞けるに違いない。「こんなもんちゃうか」に安住している場合ではない。
posted by コラム「スタンドから」 at 09:27| Comment(1) | in 2016 season