2015年06月24日

(12)「言霊」が宿る卒業文集

 先週のJV戦、大阪大学との試合は、どうしても外せない用事があって観戦できず。ファイターズのホームページで速報をチェックし、試合結果の数字を一通り眺めただけ。当然、報告できることはない。
 そこで今週は、かねてからどうしても書きたかったことを書かせていただく。昨年度卒業生が書いた卒業文集のことである。
 鷺野聡主将をはじめ41人の部員がそれぞれこの4年間を振り返り、読み応えのある文章を綴っている。さすがは日本1を目標に4年間、フットボール漬けの生活を送ってきた人間ばかりである。反省と後悔、自負とこだわり。そして後に続く者への伝言。どの部分から切り取っても、生涯にわたって座右に置いて読み返すに値する文章である。
 本当は、毎回、この文集から材料を見つけて紹介していきたいくらいだが、これは部内限定の冊子。同期の卒業生だけが読むことを想定して、互いに胸襟(きょうきん)を開き、煮えたぎる胸の内を文字にした作品である。同じ釜の飯を食い、喜怒哀楽をともにした同期の、いわば宝物である。余人が勝手に外部に公開することは慎まなければならない。
 そうはいっても、ファイターズという組織の一端、活動の真実を知るためには、どうしても紹介させていただきたい文章もある。そこで、筆者に連絡を取り、僕の気持ちを伝えた。電話に出た彼は、僕の小論文講座を2度も受講してくれた教え子でもあり、「先生のコラムに取り上げてもらえるならうれしい。ぜひお願いします」と快く了解してくれた。
 以下、原文を適宜引用しながら紹介する。
 タイトルは「ストーク」。筆者はワイドレシーバーの樋之本彬君である。文章はこんな風に始まる。[ ]内は本文の引用である。
 [WRがするブロックだが、これほど難しいものはない。相手に即内を行かせない、かつRBのコースとの距離感を背中で感じながらセットアップをかける。外手を強調しつつ、相手の外ナンバー目指してパンチする。そのときの外足のふところには瞬時に力を込め、半足分しか出せない踏み込み足に自分のすべてのパワーを乗せ、相手を止め、前にドライブする。相手はヘルメットを使ってヒットしてくることもあれば、前掛かりになると見るや手を狩りかわしてくる。ストークこそまさに駆け引きだ]
 まずはこんな風に、自分がWRとして求められる役割を明確にし、その役割を果たすためにどのように取り組んできたかを綴る。
 [コーチのいう理論を頭で理解していても、実践できない。相手は自分より小さく、力もないのに負ける。未経験者にやられたこともあった。よけられまいと相手の動きを見れば、体重があっても簡単に押し込まれることもあった]
 [そんな矢先の5月末、池田雄紀さんに相手してもらっているときだった。このタイミングで打てば勝てる。いわゆる1万1回目の感覚が得られた気がした。今日はなぜか英語がやたらよく解けるな、受験勉強でいえばそんな感覚だ]
 [しかし、それを自分の物にすることはできなかった。やがて春が終わり、夏合宿、秋のシーズンとしょうもないストークを続けていた]
 [それでもやるしかなかった。自分がWRである意味、一度やると決めたことを曲げるわけにはいかなかった]
 [そして迎えたライスボウルウイーク。雄紀さんとストークをしていると、再びあの感覚が現れた。その日は雄紀さん、次の日には香山さんと夢中でストークをし続けた。その感覚を忘れないためにライスボウルまで毎日フルで当たり続けた。みんながハーフスタイルでも一人フルスタイルでストークをし続けた]
 [そして迎えたライスボウル。自分には変な自信があった。あれだけやったのだから大丈夫、そう思えてならなかった。前日の4年生ミーティングでも、明日は自分から攻め、信じてやってきたストークでゲインさせると言い切ることができた]
 [結果、試合は負けたが、一対一のストークでは負けた気がしなかった。ある意味、自分の信じてやってきたことが通用したと分かって、むしろ誇らしかった]
 4年間、学生相手には負けを知らず、4年連続で甲子園ボウルを制覇した学年。しかし、ライスボウルではついに勝てず、悔しい思いを抱いて卒業していった選手の中に、ここまで自分を燃焼させた男がいた。「負けた気はしなかった、自分の信じてやってきたことが通用したと分かって、むしろ誇らしかった」と言い切って卒業した選手が存在した。そのことを知って、僕は異様な感動を覚えた。それは感動という言葉よりも、カタルシスと表現した方が適切かも知れない。
 4年連続の敗戦で、気分はずっと落ち込んでいたが、その黒い雲が一気に取り払われたような爽快感に包まれた。「雲外蒼天」である。
 「自分の信じてやってきたことが通用したと分かって、むしろ誇らしかった」。そんな言葉を残して卒業していける選手や部員がどれだけ存在するか。そこで勝敗は決まる。つまりは、試合の結果はすべて上ヶ原の第3フィールド、鉢伏山のグラウンドに帰すということであろう。
 秋から冬へ。大勢のファンが見守る中で華やかな試合が展開される。それを見守り、応援するのは楽しい。ワクワクどきどきする。しかし、ファイターズの戦いは試合会場だけではない。冬から春、春から夏、そして秋から冬へと、人の目に触れないところで続けられる地味な練習にこそ意味がある。1万回の工夫と失敗を積み重ねた末、1万1回目にほほえんでくれるフットボールの神様。
 樋之本君の文章には、その機微が見事に綴られていた。これこそ後に続く者を励まし、奮い立たせてくれる文章である。それは「言葉」ではなく「言霊」と言っても言い過ぎではないだろう。
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2015年06月16日

(11)待ちかねたJV戦

 14日、上ヶ原の第3フィールドで開かれたJV戦、西南学院大学との試合は、見所が満載だった。
 @期待の新入生がその素晴らしい能力の片鱗を見せたAやっとチームの雰囲気に馴染んできた2年生が試合で躍動したBすでに上の試合にも出場している選手だけでなく、けがなどで出遅れていた3年生がようやく試合で実力の片鱗を見せた、というのがその理由である。
 順番にその活躍ぶりを紹介しよう。
 1年生でこの日の試合に出場したのは、背番号の若い順にDB山田(池田)、QB光藤(同志社国際)、QB西野(箕面自由)、RB山口(横浜栄)、DL川合(関西学院)、DL国安(足立学園)、DL松田(同)、OL森本(啓明学院)、OL光岡(箕面自由)、DL三笠(追手門学院)。スナッパー鈴木(関西学院)の名前もメンバー表にあったが、出場機会があったかどうか、僕は確認できていない。
 このうち山口と光岡は先日のエレコム戦にも出場、1年生とは思えないほどの活躍を見せてくれたが、ほかのメンバーは事実上、この試合が初出場。それでも全員、さすがはこの時季にメンバー表に名前が掲載されるだけのことはある。それぞれ、将来に期待が持てる動きを披露してくれた。
 中でも、ひときわ目立ったのがQB光藤と西野。ともに身長は172センチほどだが、動きが俊敏で、パスも上手に投げる。この日は第3Qの終盤から二人が交互に登場。攻撃シリーズが代わるたびに交代でチームを率いた。
 最初に登場したのは西野。自陣20ヤードからの攻撃だったが、RB木村の独走とWR安西と水野へのパスで、あっという間に相手陣に入る。残り22ヤードからの攻撃は木村のラン2発で即座にTD。1年生とは思えない落ち着いたプレーを見せてくれた。
 交代で出た光藤はさらにすごい。この日が初登場のDB山田がインターセプトしてつかんだ相手陣32ヤードからの攻撃。第1プレーはRB木村へのハンドオフで14ヤードを獲得。続くプレーもRBへのハンドオフと見せかけたプレーだったが、そのまま自分がキープ。右に左にカットを切りながら一気に18ヤードを走り切ってTD。
 次のシリーズを西野が木村の独走でTDに結び付ければ、光藤も負けてはいない。任された2回のシリーズをそれぞれWR安西と渡辺への2本のTDパスで締めくくる。
 相手の主力選手が攻撃と守備の両面で出場し、体力を消耗して足が止まっていたという点を割り引いたとしても、二人の新人QBのデビューは鮮烈だった。これから卒業までの二人の長い競り合いを予感させるに十分な活躍ぶりに、胸がわくわくした。
 胸が躍るといえば、先輩主将の梶原君や池永君のデビューを彷彿させるような活躍を見せたのが91番を付けて登場したDL三笠。瞬間的に相手OLを割るスピード、ボールキャリアへの寄りの速さ。どちらもデビューした頃の梶原君や池永君に匹敵する動きの良さだった。秋には、二人の先輩の後を追うように、1年生であっても守備のフロントを背負ってくれるのではないかと期待が高まる。
 彼らに加えて、すでにVの試合で実績を残している山口や光岡は、いずれもスポーツ推薦でファイターズの門を叩いた期待の人材。だが、この日はスポーツ推薦以外で入部したDB山田が切れのよい動きを見せてくれた。瞬間的な動きの速さ、思い切りのよいヒット。DBに必要な資質を存分に持った彼には、しばらくは目が離せないと印象づけられた。
 2年生で目についたのは、つい先日、QBからWR経由でRBになったばかりの木村。10回のキャリーで126ヤードを走り切った。試合も終盤に入り、相手守備陣の足が止まっていたとはいえ、センスがなくてはそうそう走れるものではない。今後、RBとしての当たり方、身の交わし方を身に付けてくれば、秋には期待が持てそうだ。
 WR安西の動きもよかった。派手さはないが、いつもボールの落下地点に走り込み、確実なキャッチを見せてくれた。同じ2年生WRですでにVの試合にも出場して活躍している中西や前田、渡辺らと競争しながら腕を上げてくれることを期待したい。
 守備では、けがで出遅れていたLBの松本、鳥内、石川、それに高校時代は野球部だったDB田中の動きが目についた。つい先日、けがから復帰したばかりのDL三木も無難に回復しているようだ。
 そうそう、忘れてならないのはK泉山。距離は短かったとはいえ、2本のFGを決めたほかキックやパントも安定しており、今後に期待が持てる動きを見せた。
 さて、3年生である。一人一人を取り上げて論評していけば、字数が尽きてしまうが、あえて一人、この日の収穫としてWR水野の名前を挙げたい。とにかく足が速い。JVの試合ということも関係していたのかもしれないが、Vの試合とは見違えるような軽快な動きを見せた。とりわけ第3Q半ば、相手陣20ヤード付近からQB中根が投じた短いパスを受け、そのままサイドライン際を一気に走り切ってTDに持ち込んだプレーが光った。
 秋の本番でも、このスピードを生かすことができれば、十分に活躍できそうな予感を抱いた。
 そしてもう一人、密かに注目しているプレーヤーが顔を見せてくれた。交代のTEとして登場した西田である。1年生の時、動きのよいLBとして登場。同じポジションの山岸と競り合っていた選手と言えば、思い出して下さる方も多いだろう。けがなどで、長い雌伏の期間を過ごしていたが、久々に僕たちの前に姿を見せてくれた。
 動きはまだまだぎこちなく、19ヤードのパスを1本キャッチしただけだったが、TEとしてのプレーに習熟すれば、大いに活躍してくれるのではないかと期待できる内容ではあった。
 このように振り返って見るだけでも、JV戦は面白い。今週末には春シーズンの最後を締めくくる大阪大学との試合である。会場は上ヶ原の第3フィールド。ぜひとも足を運んで母校を応援していただきたい。新しい戦力を見つける楽しみ、フットボールの隠された魅力を探す楽しさを堪能していただけることを請け負います。
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2015年06月09日

(10)君の可能性

 斎藤喜博先生は、僕が心から尊敬する師匠の一人である。群馬県の小さな小学校で校長を務め、そこでの実践は1960年代の日本教育界に旋風をもたらせた。定年退職後は宮城教育大学の教授を務められた教育学者でもある。その教育論や実践の足跡をまとめた「斎藤喜博全集18巻」で、第25回毎日出版文化賞を受賞されている。
 1981年に70歳で亡くなられたが、僕が朝日新聞の前橋支局で働いていたとき、縁あって先生のお宅に何度もお邪魔した。親しく話を聞かせてもらうだけでなく、近くの河原に出掛けて石を投げて遊んだりもした。駆け出し記者は、先生の言葉と行動をすべて、スポンジが水を吸い込むように吸収し、今も胸に刻んでいる。
 先生に「君の可能性」(筑摩書房)という本があり、そこに「一つのこと」という詩が掲載されている。
 ずっと前、QB三原君が4年生の時代、甲子園ボウルで勝ってライスボウルに向かう直前にこのコラムでも紹介したことがあるが、今回はまた違った意味で紹介したい。全文を紹介する。

   一つのこと
 いま終わる一つのこと
 いま越える一つの山
 風わたる草原
 ひびきあう心の歌
 桑の海光る雲
 人は続き道は続く
 遠い道はるかな道
 明日のぼる山もみさだめ
 いま終わる一つのこと

 大学生の諸君、あるいはこれをお読みの皆さんには、特段の解説は不要だろう。「一つのこと」という言葉をファイターズでの活動、学習、鍛錬という言葉に置き換えて読めばそのまま意味は通じる。
 まだ春のシーズンが一区切りついただけの時期ではあるが、それでも神戸ボウル、エレコムとの試合で一つのことが終わり、一つの山を越えたことに間違いはない。
 この春はけが人が多く、メンバーも揃えられないほど厳しい試合が続いた。日大との試合は東京まで出掛けて敗れた。日体大との試合も、終始押されっぱなし。登山路は厳しかったが、それでも、なんとか山の上にたどり着いた。心地よい風が吹いている。遠くに桑畑が海のように見え、雲が美しく光っている。振り返ればいま登って来た道を人が次々と登って来る。
 ようし、もう一丁。明日、登る山は見定めた。さらに高い頂き目指して登っていくぞ。
 ざっとこんな意味だろう。
 ポイントは二つある。一つは「ひびきあう心の歌」という言葉が象徴する「みんなと心を合わせ、力を合わせて」目標に挑むということ。もう一つは、必死の思いで頂上に到達しても、さらなる高い山がある。それを目標に、互いがよいものを出し合い、影響し合って、一人ではとうてい到達不能と見えるこの高い山にチャレンジすること。ファイターズで活動する意味は、そこにあると僕は考えている。
 エレコムとの試合を振り返りながら、もう少し説明してみよう。
 あの試合、相手チームには現役時代、練習ではとうてい歯が立たないと仰ぎ見ていた先輩たちが何人も出場、胸を貸してくれた。ファイターズの最初の攻撃。最初にQB伊豆が投じたパスをあわやインターセプト、という形ではじき出したDB重田。終始、ファイターズのボールキャリアに絡み、後輩たちに思い通りにプレーさせてくれなかったLB池田。攻撃ではTE松島が強烈なブロックと確実な捕球を見せていた。
 そうした先輩たちのいるチームを相手に、結局は1本のTDを与えることもなく、45−3の圧勝。攻撃では伊豆がWR中西、亀山へのTDパスをピンポイントでヒット。RB野々垣と1年生RB山口も代わる代わる中央を突破し、チャンスを確実にTDに結び付けた。
 守備陣も、踏ん張った。怪力松本を中心に柴田、大野という動きのよいメンバーで固めたDL。作道、山岸、奥田という経験豊富なメンバーが揃ったLB。そしてDBも岡本、田中、小池、山本泰、小椋という、どこに出しても通用する布陣。これだけのメンバーが揃えば、いかに社会人といえども、そうそう負けるものではない。
 試合後、鳥内監督に聞くと、ハーフタイムで「社会人に勝つ、ライスボウルで勝って日本1というのなら、それらしい試合を。先日、パナソニックはエレコムを相手に42点を取っている。それを上回る得点を」と発破を掛けたそうだ。
 終わって見れば、田中、小椋の両CBとLB高がそれぞれインターセプト。DB山本泰も相手のファンブルをカバーしてターンオーバーを記録した。
 攻撃陣も6本のTDとK西岡の47ヤードFGで都合45点。鳥内監督の檄に応えた。
 こうした展開を見ると「いま終わる一つのこと いま越える一つの山」という表現も過言ではない。実際、精度の上がった伊豆のパスやこの日はRBで出場した池永を含めた2年生WRの活躍ぶりを見ると、やっと次の視界が広がったと実感する。
 しかし、目指すべき頂上はまだまだ高い。これから夏、そして秋と厳しく鍛えて初めて登るべき頂上が見えてくる。「それぞれの可能性」を求めて、やっと出発点に立ったというのが現状ではないか。神戸ボウルが終わって一区切りついたとはいえ、ゆっくり休んでいる場合ではない。
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2015年06月01日

(9)ライバルの意味

 どこのどなたかは存じ上げないが、英語のライバルを「好敵手」という日本語に翻訳した人は、本当にエライと思う。それは戦うべき相手であり、同時に「よき相手」であれという意味を「好」の字に託したところがお手柄である。
 そんなことを思い浮かべたのは、ほかでもない。先日の関大との試合が、文字通りライバル、好敵手との一戦、と呼ぶにふさわしい戦いだったことによる。
 本当に見応えのある試合だった。
 五月晴れの夕方。午後4時20分のキックオフといいながら、まだまだ日暮れには遠い。風は穏やか。前日の予報では、雨が心配されたが、雨雲はどこにもない。絶好のフットボール日和である。
 関大がキックを選択。RB池永のリターンで試合開始。自陣17ヤードからファイターズの攻撃が始まる。QB伊豆がRB池永、野々垣、山崎のランを中心にWR渡辺、中根への短いパスを通して、じりじりと陣地を進める。ダウンを4回更新し、相手陣20ヤードまで進めたところで第4ダウン、残り3ヤード。ここはK西岡が確実にFGを決めてファイターズが3点を先制。
 自陣17ヤードから始まったファイターズ最初の攻撃シリーズは合計15プレー、要した時間は7分3秒。大きなミスもなく攻め続けたファイターズも強かったが、守った関大も強い。結局はFGで3点をリードしたが、ファイターズに先攻の利があることを考えると、全くの五分、どちらかといえば関大の守備陣に軍配を上げたくなるほどの内容だった。
 実際、ファイターズが3点を先行した後は、互いに守備陣が踏ん張り、パントの応酬。都合5回、パントを蹴り合った後、第2Q残り3分にファイターズのK西岡が再び45ヤードのFGを決めて6−0。
 しかし、そこから関大が反撃。それまで一度も試みていなかったパスを連続して決め、途中、何度もスパイクで時間を止めながら、ついに前半最後のプレーでFGを決める。消費時間、獲得ヤードでは圧倒的に押していたはずのファイターズだったが、前半が終わって見れば6−3。後半は関大から攻撃が始まることを考えると、全く互角の展開。というより、前半終了間際、立て続けにパスを決められたことを考慮すれば、後半は厳しい戦いになりそうな予感さえした。
 僕はこの試合を場内のFM放送で中継している小野ディレクターや解説を担当しているOBの片山さん、小川原さんと並んで観戦していたが、ハーフタイムの間、ずっと一人で「これがライバルの戦いというものか」と自問していた。
 攻撃陣は互いにこの試合に臨む「ポリシー」「哲学」を持って勝負をかける。守備陣は、どちらも相手の意図を予想し、最善の策を凝らして守り続ける。互いにちょっとした手違いはあっても、決定的なミスは犯さない。春の試合とはいえ、というか春の試合だからこそ許される「実験」を急所、急所にちりばめ、それでいて決定的な手の内は明かさない。秋の決戦に備えて、相手の情報は徹底的に収集する。そのために必要なプレーも随所にちりばめる。
 この前半、24分に限っても、見るべき人が見、考えるべき人が考えれば、宝の山と思えるほどの情報が隠されていたのに違いない。
 おそらくこの試合の後、両軍の選手もコーチも、この試合のビデオを徹底的に分析し、秋の試合に備えるはずだ。相手が強ければ、それ以上に自軍を鍛える。自軍の弱点は徹底的にカバーし、逆に相手のいやがるプレーを準備する。互いに互いを「強い相手」「好敵手」と認識し、敬意を持っているからこそ出来ることである。
 そういうことを想像しながら、僕は「これがライバルという言葉の本来の姿か」と考えた。「チームが本当に強くなるのは、ライバルがいてこそ」「あいつには負けたくない、という強い気持ち、具体的な目標があって初めて、それを凌駕(りょうが)するプレーヤーになる、なってみせるというモチベーションが本物になる」とも考えた。
 そう考えると、ファイターズは本当に恵まれたチームである。西には、この日戦った関大のほか、毎年のように死闘を繰り広げている立命、ファイターズには目の色を変えて立ち向かってくる京大がいる。東には日大、法政というタレント集団がいる。そして、社会人チームは、ライバルというより、どうしても勝ちたいチーム、勝たなければならない目標である。
 そういう強力な相手、敬意を表すことの出来る存在があって初めてチームは鍛えられる。この日の試合は後半、伊豆からWR亀山と池永に2本の長いTDパスがヒットし、最終的には23−3となったが、それでもなお「関大恐るべし」という印象が強かった。
 強いといえば、この日の試合、両チームとも一つの反則も犯さなかった。これもまた互いに敬意を持って戦う「ライバル」ならではの試合内容。ともに真っ向から存分に戦った証しのように、僕には思えた。
posted by コラム「スタンドから」 at 22:21| Comment(0) | in 2015 season