2019年08月14日

(16)東鉢伏から

 先週末、仕事の隙間を縫って東鉢伏に車を走らせた。8日から始まったファイターズの合宿を見学するのが目的である。
 午前4時半過ぎに仁川の自宅を出発。辺りは薄暗いが、その分、行き交う車は少なく、普段は混雑している宝塚西トンネル付近も快調に走れる。赤松峠付近から舞鶴道に入ればさらに車が少なくなり、快適なドライブが続く。高速道路を降りると、コンビニに立ち寄ってサンドイッチと野菜ジュースを購入。ファイターズが合宿している「かねいちや」から1kmほど行き過ぎた場所にある県指定天然記念物「別宮の大カツラ」の駐車場で食べる。ここには高さ27mにも達するカツラの木が密集して生育し、その付近からこんこんと清流が流れている。その水で顔を洗い、口をすすいで見学の臨戦態勢を整える。
 しばらく時間を調整し、7時前には「かねいちや」に到着。宿舎のロビーで監督に挨拶した後、すぐに人工芝のグラウンドに向かう。すでにJVメンバーの練習が始まっている。
 毎年のことだが、夏合宿の朝は早い。まずはJVのメンバーが約1時間、パートごとの練習に取り組み、それが終わると朝食に向かう。入れ替わって、今度は準備運動を終えたVのメンバーが練習を始める。
 驚くのは、その取り組みの密度が年々濃くなっていること。初めてこの合宿を見学にきた十数年前も、さすが夏合宿、密度が濃いと感心したが、いまはそれに強度が上積みされている。以前は意識的に「寸止め」にするプレーが主体だったが、いまはオフェンスとディフェンスのメンバーが対抗心をむき出しにして渡り合う。
 しかし、練習密度が濃くなれば、その分、負傷する選手も増える。ホテルのロビーに立てかけられた練習メニュー表の隣には、日々、その日の練習に加わるメンバーが書き込まれるが、その中には「練習不可」とされている選手名が何人も見える。
 練習の密度を上げれば、負傷者も増える。しかし、間延びした練習では、実戦で使える動きは身につかない。双方の利害、得失を計算し、選手の疲労度を考慮したうえで、日々の練習メニューを決めていくのがチームの方針であろう。
 そんなあれこれを考えている間にも、グラウンドでは練習が続いている。けれども、時間を決めて休憩時間をとり、水分や栄養補給ゼリーを規則的に摂取させる時間は必ず設けている。グラウンドの両側にはチームの持ち込んだテントが何張も立てられ、休憩タイムの選手に日陰を提供する。
 合宿地は、冬場はスキー客で賑わう高原にあるが、下界と同様、日が昇れば強い日差しが照りつける。朝、車で走っているときは、高速道路脇の表示に「22.5度」とあったので、これは涼しいぞ、と思っていたが、太陽が照りつける時間になれば、気温はぐんぐん上がる。午前9時ごろには、木陰のない場所ではもう30度近くまで上昇しており、過去十数年の見学時には記憶がないほどの暑さである。
 しかし、そこは合理的な思考をするファイターズである。一番暑い時間帯には、グラウンドのチーム練習はすべてストップし、食事と昼寝、そして簡単なミーティングの時間に充てる。練習が再開されるのは午後3時。湿気の少ない高原なので、この時間になると、太陽が照りつけていても、風さえ通れば幾分暑さも緩和される。
 まずはJVのメンバーから始まり、より強度の上がるVチームの練習は4時から6時までと決めている。さらに合宿中には合計2日間、全員にグラウンドでの練習を休ませ、体力の回復に充てる日も設けている。
 体力を養い、新たなプレーを習得し、チームの士気を上げるための合宿だが、フルに練習プログラムを組むのではなく、途中に休憩時間や休息日を設けて、より安全に、より効率的にと心掛けているのがファイターズである。その発想は上ヶ原でも東鉢伏でも変わらない。
 変わりつつあると見えたのは、合宿に参加しているメンバーの気持ちの持ち方である。この日、僕が声を掛けたりその行動に接したりしたメンバーの名前や行動を具体的に挙げて、彼らがこの合宿にかける思いの強さを紹介したいところだが、いまは個々の名前を挙げる場面ではない。いつか別の機会にでも紹介したいと考えている。
 ただし、この合宿でチームの何かが変わりつつあるという印象を持ったことだけは伝えておきたい。僕はいま、その変化の行き着く場所に、大きな期待を持っている。
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2019年08月04日

(15)いきなり学内合宿

 雨続きの梅雨が明けた瞬間、連日、熱射病になりそうな天気が続いている。体調維持のために、毎日、1万歩以上の速歩を自分に義務付けている僕にとっては、この暑さはけっこう厳しい。
 幸い、僕の働いている和歌山県田辺市の海沿いは、海からの風が通り、朝夕はそれなりに涼しく、夜の散歩も支障なくできる。しかし、週末、西宮に帰ると、そうはいかない。日中はもちろん、朝夕もとんでもなく暑い。ほんの15分も歩けば、汗が噴き出すし、のども渇く。太陽のある方向を常に確認し、日陰から日陰を伝うようなコースを選ばなければならない。それも、日陰があればオーケーとはならない。場所によっては風が通らず、蒸し風呂のような道路もあるから注意が必要だ。もちろん、歩道を走る自転車にも、常に注意しなければならない。
 たかが年寄りの散歩コースでさえ、ここまで考えなければならない。同じ西宮で夏季練習に励んでいるファイターズの諸君は、この時季の練習をどんな風に工夫しているのか。どのように熱中症から身を守っているのか。
 今回は、7月31日から本格的に始まった夏季練習の一端を報告しよう。ファイターズの合理的な発想を知るための一助としていただければ幸いである。
・夏季練習は前期試験が終わり、大学が夏季休暇に入った7月31日から始まる学内合宿からスタートする。この合宿は、途中に設けた1日の休養日を挟んで、2泊3日の日程で2度行われる。合宿では朝食前にグラウンドに集合し、午前7時から8時過ぎまで練習に取り組む。練習前には、アスリートパンとフルーツジュースを摂り、練習中には2度の休憩時間を設ける。
・8時過ぎに朝練を切り上げ、8時半ごろから朝食。その後、いくつかの班に分かれて交互にミーティングと仮眠。昼食を摂った後も、仮眠班と筋トレ班、ミーティング班に分かれてそれぞれの課題に取り組む。
・夕方はグラウンドの気温と湿度を計測した上で、その数値が基準内に下がっておれば午後5時から、そうでなければ午後6時からグラウンドで練習。夕方もまた1時間少々で練習(途中短い休憩時間を2度設けている)を切り上げ、その後は夕食とミーティング。
 こんな日程で2度に渡る2泊3日の合宿を続け、その後1日、休養日を設けた後、今度は鉢伏山の長い合宿に向かう。
 どうしてこのような短い練習時間しか設けないのに2度も学内での合宿をするのか。高校でも、夏休みには朝の9時過ぎに登校し(途中、筋力トレーニングなどの時間は設けていても)、夕方の8時過ぎまではグラウンドで練習というチームが少なくないというのに、大学のてっぺんを目指し、社会人とも渡り合おうとするチームがこんなに短い練習で成果が上がるのだろうか。そうした疑問を持つ人も少なくないはずだ。
 けれども、ここにファイターズの合理性というか工夫があるのだ。
 具体的にいえば、自宅通学者の往復に要する時間を省き、その時間をミーティングや筋トレ、仮眠の時間に充てる。炎天下の練習を避け、代わりに適度な睡眠・休養をとらせる。栄養バランスのとれた食事を全員に摂らせ、それが体に吸収される時間を確保する。グラウンドでの練習時間を短くしているのは、練習のための練習をだらだらと続けるのではなく、実戦を想定し、一つ一つのプレーに集中して取り組むためともいう。
 多少、プログラムに違いはあっても、近年、この時季にこうした取り組みを続けているのがファイターズである。全員が高い目的意識を持ち、短時間であっても、密度の濃い練習に集中的に取り組む。そのビデオを即座にチェックし、一つ一つのプレーについて問題点、反省点を明らかにし、プレーの精度を上げていく。そうした取り組みのために十分な時間を注ぎ込む。これはというプレーは夏合宿で完成させて実戦での武器とする。そのためには、この時期、時間はいくらあっても足りない。とりあえず大学と自宅を往復する時間だけでも有効に使いたいというのが、この時期、2度も連続して行われる学内合宿の目的となるのである。
 なんだか、理屈っぽい話になったが、要は「根性出せ」「死ぬ気で頑張れ」と気合いを入れるだけではなく、選手として、チームとして最高のパフォーマンスができるようにするためには何が必要か、それを身に付けるためにどうするか。そういったことを、コーチはもちろん、上級生もスタッフもトコトン突き詰めて考え、実戦に生かすための工夫をしているのが、この時期のファイターズである。大いなる成果を期待したい。
posted by コラム「スタンドから」 at 22:13| Comment(1) | in 2019 Season

2019年07月20日

(14)苦労は買ってでも

 日本の高度成長期に働き始めた人間は、おおむね働き中毒の症状がある。この秋75歳、堂々の「後期高齢者」にカウントされる僕もその一人である。
 雨が降っても風が吹いても体を動かし、頭に刺激を与えておかないと落ち着きが悪い。一日ゆっくり寝転んで、といった暮らしは、考えたこともない。いまも週に4日は現役の新聞記者、編集局長として働き、後の3日はファイターズの活動に費やしたり、近場の山を歩いたりしている。
 ファイターズの諸君はいま、前期試験まっただ中で、みんな揃って練習という日程は組まれていない。だから、第3フィールドまで足を運ぶことは少ないが、代わりに今秋、スポーツ選抜の入試に挑む高校生を対象にした勉強会を週末ごとに続けている。チームのマネジャーに西宮市の学生交流センターに場所を確保してもらい、授業や練習を終えた高校生にチャーミングな文章の書き方を指導し、最後には志望理由書を書く時のアドバイスや面接試験の心得までを伝授するのである。
 もう20年も続けている仕事だから、指導する側はすっかりその段取りが身についている。しかし、試験に挑む側のメンバーは毎年、新しくなる。いきなり1時間以内に800字の文章を書きなさいといわれて戸惑う生徒もいるし、周囲の雰囲気に押されて書き始めても、途中で手が止まってしまう子もいる。
 そこを数回の指導で、余裕で800字を書ききれるようにするのが僕の役割。幸い、大抵の生徒は書けば書くほど上達するから、そんなに心配することはない。いかに気持ちよく原稿用紙に向かい、過去に出題された問題に取り組めるかという点にだけ注意を払えば、間違いなく上達する。それを体験的に知っているから、焦ることはない。
 ただし、この夏はほかのクラブのコーチからも指導の依頼があり、そちらもいそいそと引き受けたから、仕事量は倍増し、金曜日も土曜日も予定が詰まってしまった。春休みの頃からは、就職活動に挑む新4年生や5年生の希望者を対象に「必ず勝ち残れる」エントリーシートの書き方を伝授したり、これまた面接の心得を指導したりしてきたから、シーズンはオフでも、折々の仕事はしっかり天から降ってくるのである。
 いま流行の「働き方改革」という言葉になじめず、職場でも、若い記者諸君に「自分を鍛え、自身の能力が上がっていく実感を持ったとき、仕事にやりがいが生まれる。その手応えが生きがいに通じる」といった言葉を、折あるごとに口にしているのが、ほかならぬ新聞記者最長老の僕である。
 それをパワハラと呼びたい人は、どうぞご随意に。自らを鍛え、向上させずに何が楽しい。苦あれば楽あり。逆に言えば、楽あれば苦あり。少々苦しい時期があっても、その先にお花畑が待っている、頂上からの絶景が待っていると思えば、一歩一歩を踏みしめる山登りも楽しくなる。
 人生も同様である。若い頃の苦労は買ってでも、と先人が言い伝えてきたのには、理由があるのだ。ファイターズを志願する高校生にも、ファイターズでてっぺんを目指す選手やスタッフにもこの言葉を贈りたい。
posted by コラム「スタンドから」 at 12:44| Comment(1) | in 2019 Season

2019年07月03日

(13)それぞれの可能性

 春シーズン最終戦は中京大学とのJV戦。今春は例年以上にJV戦が多く組まれており、この試合は神戸、甲南、名古屋戦に続く4戦目である。
 より多くの選手に実戦の経験を積ませ、選手層の底上げを図る。同時に、けがから復帰したメンバーにも試合の感覚を取り戻させたいというチームの配慮であろう。Vの試合で交代メンバーとして出場している上級生から今春入部したばかりの1年生まで、それぞれのメンバーの置かれた状況に合わせて出場機会をつくり、その可能性を拓いていきたいという思惑が例年以上に感じ取れる。
 とりわけ今回の試合は、春シーズンの総決算とあって、上級生から新入生まで多彩なメンバーが登場した。今春、入部したばかりの1年生をはじめ、けがなどで長期間、実戦から離れていたメンバー、フットボールは未経験で、昨年1年間はもっぱら体力づくりとフットボールのルールや仕組みを覚えることに専念してきたメンバーも数多く出場した。
 その中で、一番に目に付いたのが2年生WR戸田。1年生の時から熱心にVのメンバーと練習に取り組み、レシーバー陣の主力だった松井君や小田君にも負けないようなセンスのよい動きを見せていた選手だ。常に穏やかな表情をしているし、体も小さい。知らない人が見たら、とてもフットボール選手とは思えないだろう。
 ところが、その動きは1年生とは思えないほどすばしこく、必ずボールの飛んでくるコースに走り込む。手に触れたボールは確実にキャッチする。こんな1年生見たことがないと思って注目していたが、いつの間にかグラウンドで姿を見ることが減ってしまった。聞けば、けがで練習することさえままならない状態だったという。チームにとっても残念だが、本人が一番つらい思いをしていたに違いない。
 そんな雌伏の時間を経て、ついに春期シーズン最後の試合にユニフォームを着てサイドラインに立った。よしっ、今日は戸田君を注視し続けよう。そう思って観戦していると、見せ場は次々とやってくる。簡単にDBを振り切り、少々、QBのパスが悪くても、長いパス、短いパス関係なく、こともなげにキャッチし、次々に陣地を進める。久々の実戦であり、後半から登場したQBはこの日が初出場の1年生だったにも関わらず、31ヤードのTDパスを含め、5回のキャッチで138ヤードを獲得した。苦しい時期にもくじけず、復活を期して自らを鍛えてきた成果だろう。
 彼のような選手がいる一方で、この日は、大学に入ってからフットボールに取り組んでいるメンバーの活躍も目立った。順不同で目に付いた選手の名前と高校時代の経験スポーツを挙げてみたい。
 まずはディフェンスから。一番目立ったのはDLの3年生、野村(野球部)。体はDLとしては小柄な方だが、瞬発力があり、この日は3本のQBサックを決めた。2年生の頃からキッキングチームで活躍している選手だが、この日はDLとしても出場。相手の動きが見やすくなったのか、後半に入ると立て続けに相手ラインを割ってQBに襲いかかった。昨年秋、LBからDLに移って素晴らしい活躍をしている板敷選手のような存在になるのではと期待がかかる。
 2年生LBの都賀と細辻は、ともに野球部出身。相手を怖がらず、小気味良い動きでボールキャリアに立ち向かう。物怖じしない動きは、並のフットボール経験者より小気味よい。
 2年生DB宮城はラグビー部出身。この日も思い切りの良いパスカバーを見せ、自らの反応の良さでインターセプトを奪った。たまたま隣で見ていた守備担当の堀口コーチも「あの動きはよかった。思い切りが良いから決まった」と褒めていたから、本物だろう。
 1年生でもフットボールは未経験のDL亀井弟が出場した。高校時代はバスケットボールの国体選手。彼も今春からアメフットに転向したばかりとは思えないほどスムーズな動きに驚いた。何よりも未経験者とは思えないほど下半身が鍛えられているのが素晴らしい。今後の成長に期待が持てる。
 オフェンスでは、以前にも紹介したが、TE3人組が注目される。報徳学園バスケットボール部出身の3年生、亀井兄はVのメンバーとして活躍しているし、1年後輩の2年生、TE辰巳も成長著しい。同じTEには、高校時代はラグビー部だった3年生尾関もおり、長身を生かしたブロックが身に着いてきた。
 さらに言えば、この日、キッカーとして先発、2本のFGと5本PATを確実に決めた永田もサッカー部の出身。すでにVの試合に出場しているメンバーにもラグビー部や野球部出身者が何人もいる。大学に入って初めてフットボールに取り組んだメンバーであっても、高校時代、他競技で活躍したメンバーには大いなる可能性が広がっているということだろう。
 それは昨年、俊足のWRとして存分に活躍した小田君の例でも証明されている。1年生の時から、足の速さと俊敏性は突出していたが、入部当初はアメフットの仕組みが理解できおらず、パスルートの取り方さえ手探りだった。それが4年生になると、学生界を代表するWRとして活躍。昨季の大学日本一にも大いに貢献した。
 そういう可能性を持った未経験者が今後、どんな風に成長していくか。けがから復帰したメンバーが夏に鍛えて、さらなる活躍をしてくれるか。今後もじっくり見ていきたい。
posted by コラム「スタンドから」 at 19:49| Comment(2) | in 2019 Season

2019年06月24日

(12)「僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう」

 しばらく前に『僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう』(文春新書)という本を読んだ。朝日歌壇の選者なども務める歌人で、京都大学名誉教授でもある永田和宏さんが、勤務先の京都産業大学に4人の知識人を招いて講演してもらい、その講演内容と、その後の対談を記録した本である。難しい内容をやさしく語り合った刺激的な本であり、大いに触発された。
 永田さんが対談相手に選んだのはノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥さん、将棋の羽生善治さん、映画監督の是枝裕和さん、そして京大総長の山極壽一さん。それぞれの専門分野で頂点を極めた人である。その4人が永田さんの招きで京産大を訪れ、学生の前で講演し、永田さんと対談した記録を採録しているのだから、面白くないはずがない。興味のある学生は本屋に走れ! 本を読まない学生は、今回、僕がその中でも印象に残ったフレーズを引用して説明するので、それをきっかけに何かをつかめ!
 という次第で、今回はフットボールやファイターズの活動から少し距離を置き、学生とは何者か、学生時代の4年間がいかに大切かということを書いてみたい。文武両道を目指すファイアターズの諸君に、少しでも参考になるることがあれば幸いである。
 例えば山中さんは、永田さんとの対談でこんなことをいっている。「20歳前後の5年間というのは、何にも代えられない宝物みたいな時間だ」「この時間に何をやったら正解というのは全然ないと思います。でも何もしないのだけはやめてほしい。どんなことでもいいから、あのときはこんなことに夢中になっていたな、というのがあったら、それがうまく行こうが行くまいが、絶対自分自身の成長につながっていきます」。いま、諸君がファイターズの活動に夢中になっていること、それがうまく行こうが行くまいが、それが絶対に諸君の成長につながっているということに直結する言葉ではないか。
 続く羽生さんの言葉にも、印象的なフレーズがある。「人間は誰でもミスをする。ですから挑戦していくときに大切なのは、ミスをしないこと以上に、ミスを重ねて傷を深くしない、挽回できない状況にしないことだと思っています」「ところが、実際にはミスの後にミスを重ねてしまうことが多い。どうしてそうなってしまうかというと、動揺して冷静さや客観性、中立的な視点を失ってしまうこと」「もう一つ、ミスにミスを重ねてしまうのは、その時点からみる、という視点が欠けてしまうことがあると思います」といっている。
 つまり「将棋でいえば、先の手を考えていくときには、過去から現在、未来に向かって一つの流れに乗っていることが大切」「ところがミスをすると、それまで積み重ねてきたプランや方針が、全て崩れた状態になり、それまでの方針は一切通用しない」「そのときにしなければならないのは、今、初めてその局面に出会ったのだとしたらという視点で、どう対応すればよいかを考えること。それがその時点から見る、ということです」と解説している。
 これもまた勝負師ならではの味わい深い言葉であり、フットボールの試合にも即座に応用できる考え方だろう。ミスはしない方がいい。それでも起きてしまったら、それを受け入れた上で次なる最善手を考える。そのように心掛けることで気持ちも鎮まる、新たな対応策も生まれてくるに違いない。
 羽生さんの言葉でもう一つ印象に残った部分がある。「将棋では、いい形、悪い形、美しい形、醜い形という識別がより深くなってくることが、イコール強くなる、上達したといえるのだと思います」。フットボールで言えば、美しい形でパスを通せる、いい形でタックルが出来るといったことを感覚的に理解できるようになったときに、その選手のステージが一つ上がったことになるという意味でもあろう。これもまた深い言葉である。
 「万引き家族」で一気に世界の「コレエダ」となった映画監督の是枝裕和さんにも、胸に刻みたい言葉がある。「演出って、何を面白いと思うかということが常に問われている。どこにカメラを向けて、何を発見して、今起きているうちの何が頭の中に最初からあったものではなく、今ここで生まれたものなのか。それを発見し続けて行く動体視力とか反射神経というものを、自分の中ではなく自分と目の前で広がっている世界とのやりとりの中で見つけていく作業が、映像作家として一番おもしろいところで、一番難しいところで、いまだにはっきりとはつかめていないところです」。これもまた、DBやLB、あるいはRBやWR、何よりもQBの感覚に通じることではないか。
 こんな風に、書いていたら切りがない。興味のある人は即座に本屋に走って下さい。
 対談を仕切った永田さんも、対談に応じた4人の方も、どちらかといえばフットボールとは縁の遠い場所で仕事をし、業績を上げて来られた方々だが、その人たちの言葉の中にも、フットボール選手にも即座に適用できる言葉がこんなにたくさんある。
 ファイターズの諸君にも、オフの日にはこうした本を読んで、新たな挑戦を始めるエネルギーにしてもらいたい。ファイターズが掲げる文武両道は、こうしたことの積み重ねから開けていくと、僕は確信している。
posted by コラム「スタンドから」 at 23:09| Comment(1) | in 2019 Season

2019年06月19日

(11)新しい芽

 世の中には2種類の人間がいる。
 例えば、半分近くになった一升瓶を前において酒を飲んでいるときに「もう半分しかない。大変だ」と思う人間と、「まだ半分あるじゃないか。じっくりやろう」と考える人間だ。物事を考える時、常に最悪の事態を想定して考えを進める人間と、なんとか明るい面を見て、それを明日への活力にしようと考える人間と言ってもよい。
 僕は間違いなく後者である。小心者のくせに、目の前に問題が山積していても「まずは寝よう。ややこしい事はまた明日」と考えてしまうし、職場で嫌なことがあっても、「しゃーない。今日のことは今日のこと。明日はきっといい風が吹く」と根拠もなく思ってしまえる人間だ。大学を卒業してから52年目の記者生活。それは波瀾万丈であり、他人さまから見たら、なんという不条理な世界と思われるかも知れないが、そんな仕事をいまだに機嫌良く続けていられるのも、生まれつきその性格を持っているからだろう。
 そういう人間だから、フットボールではJV戦が大好きだ。公式戦で手に汗を握るような場面に遭遇すると、思わず立ち上がったり、くそったれと悪態をついたりもするが、まだまだ未熟なメンバーが必死懸命にプレーするJV戦の魅力もまた別の意味で捨てがたい。ファイターズの明日を担う新星が次々に登場し、力いっぱいのプレーを見せてくれるからだ。
 16日、上ヶ原の第3フィールドであった名古屋大との試合も存分に楽しませてもらった。
 まずは、秋のシーズンが楽しみな1年生から紹介しよう。この日の出場メンバーで一番目についたのはWR河原林(高等部)。絶妙のコース取りで長短取り混ぜて5本のパスをキャッチし、85ヤードを稼いだ。先週末の練習を見学したときも、難しいパスをこともなげにキャッチしていたから注目していたのだが、期待は裏切られなかった。どんなパスでもゆとりを持って確保し、TDパスもキャッチした。身長179センチ、76キロと体格的にも恵まれており、一足先にデビューしたWR糸川(箕面自由)とともに、秋シーズンには先発争いに加わってくるのでは、という期待さえ抱かせてくれた。
 この日、TEに入った小林陸(大産大高)の動きも素晴らしかった。身長185センチ、体重96キロと公表されているが、筋肉の付き方から考えたら、すでに100キロは超えているのではないか。ライン並みの体型だが、走るスピードはWRにもひけをとらず、球際にも強い。同じポジションには、今季急成長した3年生の亀井兄がいるので、二人を同時に起用すれば、プレーの選択肢も破壊力も一気に増加する。大いに期待したい。
 期待したいと言えば、すでに前の試合でも起用されているDL山本大地(大阪学芸)、DB小林龍斗(日大三高)の才能にも注目したい。山本は1年生とは思えないほどのパワーがあり、小林龍斗のプレーセンスの良さは、スタンドからでもよく分かる。今後、試合に出場する時間に比例して、活躍する場面が増えると期待できる。
 ほかにこの日、メンバー表に登録された1年生には、WRの福田彦馬(池田)と高野一馬(佼成学園)がいる。福田は体格に恵まれており、高野にはキャッチングに非凡なところがある。この日は終盤から登場し、TDを1本決めた。
 2年生に目をやると、この日もQBは山中と平尾が務め、ともに活躍した。平尾には高いパス能力、山中には素早く状況を俯瞰し、決断できる能力がある。現状ではどちらが先行しているかは流動的だろうが、双方が刺激しあってプレーの精度を高めていくと、コーチ陣にとってはどちらを優先して起用するのか悩ましいことにもなるだろう。
 けがでしばらく練習を見合わせていたWR戸田も元気に復帰し、パスキャッチのうまさを何度も披露した。同じくけがから戻ってきたWR鳩谷も独走TDを決めた。
 独走と言えば、すでにVのメンバーに混じって活躍している2年生RB斎藤の走りにも注目が必要だ。この日も中盤、鮮やかに独走TDを決めた(ように見えた)場面があったが、残念なことにラインの反則で取り消し。ファンにとっては悔しい一幕だった。
 このように「新しい芽」を数えあげていくだけで、予定していた分量を超えてしまう。でも幸いなことに、春学期の終了までにまだもう1試合、JV戦が予定されている。29日の中京大戦だ。この試合を楽しみに、今回のコラムは終わりにしたい。
posted by コラム「スタンドから」 at 20:33| Comment(1) | in 2019 Season

2019年06月11日

(10)勝ちきれない

 9日、炎天下の王子スタジアムで行われたエレコム神戸との戦いは、ファイターズのいいところと悪いところをともにさらけ出した。
 まずは、いいところから。一つは想定内のプレーにはしっかり対応できたこと。とりわけ現時点でのベストメンバーを組んだディフェンスは、1列目、2列目がきちんと役割を分担し、積極的に相手ラインを押し込むプレーを展開。スピードと思い切りの良さで、相手ランナーを思い通りに進ませなかった。
 社会人の実力チームと戦う経験を十分に積んだ相手も、自分よりずっと経験値の少ない「学生さん」に、あそこまで押し込まれるとは想定外だったのではないか。
 オフェンスも渡邊、三宅、前田、鶴留とそれぞれ特徴を持ったランナーが活躍。先発QB山中の判断の速いプレー、阿部、鈴木、糸川と揃えたレシーバー陣の奮起もあって、経験豊富な相手と対等以上に渡り合った。
 まずはスタッツを見てみよう。総獲得ヤードはエレコムが263ヤード、ファイターズが322ヤード。パスは相手が211ヤード、ファイターズは173ヤードで相手が上回っているが、ランでは相手の52ヤードに対してファイターズは149ヤードを獲得している。ランプレーが進むから、攻撃時間も相手の20分57秒に対し、ファイターズは27分3秒。この数字を見てもファイターズが優位に試合を進めていたことがよく分かる。
 それでいて、最終のスコアは14−14。ひいき目で見ると勝ち切れたはずの試合だったが、結果は引き分け。鳥内監督が試合後の囲み取材で開口一番「勝てとったな」といわれたのもよく分かる。寺岡主将が関学スポーツの取材に「勝てる試合を引き分けた」と残念がっていた気持ちもよく分かる。
 それでもスコアはスコア。たとえ途中までは「よく頑張っている」と評価できても、相手QBが一度ファンブルしたボールを拾い上げ、それを18ヤードのTDパスに仕上げた相手にとってはラッキー、ファイターズにとってはアンラッキーなプレーがあったとしても、さらにいえば、終了間際、安藤君なら確実に決められる距離と思えたFGが相手にブロックされる不運があったとしても、それらをすべて含めての14−14。引き分けである。
 現場で応援している僕が見ても「勝てる試合」であり「勝ちきらなければならない試合」だった。
 もちろん「想定外」のことはいくつもあった。相手がファンブルし、大きく後方にそらしたボールをQBが拾い上げ、それを18ヤードのTDパスに仕上げるという芸当は、フットボールを観戦して半世紀近くになる僕でも、初めて目にした。ファイターズのレシーバーが素早い動きでTDパスを捕球する態勢に入っているのに、それをはるか上空でカットしてしまう長身DBのプレーもそうそうお目にかかれる動きではない。
 それぞれが想定外、あるいは規格外れの動きであり、攻守ともに緻密に練り上げた作戦で勝負を挑むのが得意なファイターズの辞書には書き込まれていないプレーだった。
 そうした規格外のプレーに、チームとしてどう対応し、個人としてどのような動きをすればよいのか。そのヒントはこの日の試合の中に埋もれている。
 1枚目、2枚目関係なく、埋もれているヒントを掘り起こし、目の前のプレーヤーを圧倒するための力を身に付けよう。
 並行して、そうした相手にどう対処すればよいのかと考える。さらには、チームを勝たせるために一人一人のプレーヤーがどう動けばよいのか。試合展開や残り時間、ボールの位置から相手選手のほんのちょっとした仕草に至るまですべてを観察し、それを記憶し、対処法を磨いていこう。
 そういうことをチームの全員が考えていかなければならない。そのきっかけとしてこの日の「悔しい引き分け」試合があった。そう位置付けると、今後、ファイターズに身を置く部員たちの取り組まなければならない課題がいくつも見えて来るはずだ。
 その課題に、チームの全員が取り組もう。幹部だけ、4年生だけに任せるのではなく、ファイターズで活動する全員が「わがこと」として取り組もう。選手もスタッフも、上級生も未経験者も関係ない。最善を求め、最高のパフォーマンスをすることだけを目標に頑張ろう。その取り組みが勝利につながる。「学生圧倒」という言葉が嘘ではないことも証明されるだろう。
 春の試合は、今回のエレコム戦で終わり、後はJV戦が2試合残っているだけだ。考える時間もあるし、相手の動きや自分たちの動きを分析するための素材もある。しっかり自分たちのチーム、あるいはパート、はたまた個々の部員同士で本音を交わし、勝つための努力を続けてもらいたい。
posted by コラム「スタンドから」 at 08:34| Comment(2) | in 2019 Season

2019年06月04日

(9)ガッツを求む

 2日は、関西学院の第3フィールドで甲南大学とのJV戦。途中、小雨の降る嫌な天気だったが、期待の新戦力が続々登場したので、そこに注目して観戦した。
 新戦力といっても、二つのコースがある。一つは今春入部したばかりだが、高校時代から非凡な才能を発揮してきたメンバーであり、もう一つは高校時代は他の競技に集中し、大学に入って初めてアメフットに取り組んでいるメンバーである。
 例年、この時期のJV戦にはそうしたフレッシュマンと、この1年、フットボールのできる体作りに励み、ルールを覚え、基本的なプレーの習得に務めてきた2年生が次々に登場してくる。
 甲南戦でいえば、1年生では背番号の若い順にWR糸川(箕面自由)、DB小林龍斗(日大三高)、DL山本大地(大阪学芸)、WR河原林佑太(高等部)、WR福田徳馬(豊中)、TE小林陸(大産大付)がメンバー表に登録され、それぞれ先輩にも負けないプレーを見せた。糸川は立ち上がりからQB山中からの長いパスをこともなげにキャッチし、先日の関大戦で鮮やかにTDを決めたプレーがフロックではないことを証明した。
 小林陸も185センチ96キロというラインも顔負けの体を生かして相手守備陣を圧倒し、短いパスを2本、確実にキャッチした。先日の神戸大戦では途中から出場し、相手OLを下から突き上げるように崩していた山本は、この日も堂々と相手のラインと渡り合っていた。LBとDBの二役を引き受ける小林龍斗の動きもいい。初めてのスタメンというのに、相手のボールキャリアに的確に反応。今後の成長が大いに期待できる動きを披露してくれた。
 さすがは、高校時代からそれぞれのチームを背負って活躍してきたメンバーである。先輩たちに混じっても、ひけをとらないほどの活躍振りであり、今後の期待値の高さがうかがえるデビューだった。
 一方、高校時代は野球部員で、フットボールは未経験だったLB都賀と細辻の動きも素晴らしかった。相手の動きに機敏に反応して的確なタックルを決め、パスプレーでも反応のよい動きを見せていた。同じく高校時代はラグビー部だったDB宮城はゴール前に投じられた相手のパスを奪い取り、反撃の目を摘んだ。高校時代、バスケットボール部でインターハイなどに出場をしているDBの前田も、まだまだ動きは初々しいが、さすがはアスリートという片鱗を見せていた。
 すでに一軍の試合で活躍しているDBの井澤や吉田、TE亀井、DL野村らの3年生を含め、こうした他競技経験者に共通するのは、ガッツがあること。入部したその日から1年間、試合に出ることはかなわず、ひたすらルールを覚え、体をつくり、基礎的な動きを身に付けることに専念してきた苦労はダテではない。ある部員はその俊足を生かし、ある選手は反射神経の良さや鍛えた体力を生かしてチームに貢献する。
 それを支えているのが中学、高校時代からフットボールに取り組んできたメンバーに追いつき、追い越したいという強い気持ちである。その気持ちが試合になればプラスに働く。その意味で、どちらかといえばスマートなタイプが多い高等部や啓明学院出身者とは、ひと味違う「雑草派」と表現してもいいだろう。
 今春入部し、いまは体力づくりに専念しているメンバーもまた、こうした「雑草派」のガッツと取り組みに学んでもらいたい。
 勝敗は、一人一人の部員が一人も欠けることなく「死にものぐるいになれるかどうか」にかかっている。
 その意味では、正直に言って甲南大とのJV戦も物足りないことが多かった。上級生が不用意な反則を犯して得点機を逃したこともあったし、スナップが悪くてFGをしっかり蹴ることができなかったこともある。それは今季、慶応大や神戸大との試合から続いていることであり、こうした点に改善の跡が見えないことが残念だ。「学生を圧倒する」というのなら、圧倒できるだけの練習とそれを貫徹するためのガッツが不可欠である。
posted by コラム「スタンドから」 at 08:13| Comment(2) | in 2019 Season

2019年05月28日

(8)うれしい予感

 その昔、竹内まりやが「うれしい予感は、いつでもあたるの」と歌っていた。
 どんな歌だったか、全く覚えていないが、このフレーズだけは、いいことがあるたびに浮かんでくる。26日、真夏のような王子スタジアムで関大と戦っている折りにも、何度も何度も僕の耳の奥では、あの甘ったるいまりやの歌声が聞こえていた。
 例えば立ち上がり。今季初めて先発した2年生QB山中がいとも簡単に1年生WR糸川にミドルパスを決めたとき。このプレーでダウンを更新した後、たたみかけるように次のプレーでも、WR阿部に長いパスを投じたとき。これは、運悪く阿部の足がもつれ、攻撃側の反則となって、ダウンは更新できなかったが、それでも臆さず、今度はWR鈴木に19ヤードのパスを通す。かと思えば、2度目の攻撃シリーズでは思い切りのよいスクランブルで21ヤードの前進。さらにRB三宅などのランでダウンを更新した後、相手ゴール前23ヤードからエースWR阿部に長いパスをヒット。一気に先制点を奪った。
 これが初めての先発、それもこの試合にQBとして出場することが決まってから4日ほどしか練習していないというのに、まったく試合の雰囲気に飲まれず、堂々とプレーを続けている。僕は先週の木、金、土の3日間、上ヶ原でチームの練習を見せていただいたが、そのときに、すらっとした長身のQBが中心になってパスを投げ、チーム練習に参加しているのを初めて見た。素人が見ても、投げ方に無理がないし、思い切りよく走ることもできる。その判断が的確だし、動きにも無駄がない。
 思わずコーチに「あの子いい動きをしてますね」と声を掛けると「いいですよ。今度は先発させます」との返事。それからは3日間、彼の姿ばかりを追い続けた。練習中、本人に話しかけるのは気が引けるので、休み時間にレシーバーの鈴木や糸川に話題を振ってみる。二人とも「受けやすいボールを投げてくれる」「初めてとは思えないほどやりやすい」と口を揃える。そのとき、関大戦ではきっと彼が活躍するに違いないという予感がした。そしてそれは当たった。
 あと二つ、3日間の練習を見ていて予感があった。一つは今度の試合では、阿部は警戒される、その分、糸川と鈴木の動きに注目しよう、この3人が役割を分担し、山中のパスで必ず見せ場を作ってくれるという予感である。それもぴたりと当たった。まずは第2シリーズ。糸川と鈴木にミドルパスを決め、仕上げ阿部君への先制TDパス。安藤君のキックも決まって予感通りに7−0とリード。
 次の攻撃シリーズも鈴木へのパスや三宅や前田のランでゴール前まで陣地を進めたが、反則などもあって、安藤のFGによる3点止まり。
 しかし、4度目の攻撃シリーズでは、センターライン付近から山中が投じた48ヤードのパスが糸川に通ってTD。投げる方も堂々としていたが、受ける方も相手ディフェンスを鮮やかに振り切り、ゴールポストの下で余裕を持ってキャッチする。これが今春入部したばかりの1年生かと驚くほどだったが、上ヶ原の練習で彼の動きを何度も見ていた僕は「予想通り。うれしい予感はいつでも当たる」と独り言を言っていた。
 もう一つの予感は、DBの北川の活躍。なぜかこの日も複数回、インターセプトを決めそうな予感があった。この前の慶応との試合中、彼がインターセプトできそうなボールをLB赤倉がいち早くカット。その瞬間、僕がインセプできたのに、と全身で悔しがっていた姿を見ていたからだ。試合後、思わず声を掛けて「次もチャンスはある、きっちり決めような」と声を掛けたが、そのときに、この集中力、この気持ちがある限り、きっと次の試合でも目を見張る活躍をするに違いないと、これは予感というより確信していた。
 案の定、第4Qの半ばから後半にかけて、立て続けに2本のインターセプト。ともに相手が8点を返し、必死に反撃している時間帯だっただけに値千金プレーだった。
 「うれしい予感は、いつでも当たる」といえば、もう一つ付け加えておきたい。K安藤の安定したキックのことである。週末の練習では「この子、昨シーズンより飛距離が伸びている」と思わされる場面が何度もあった。最初は風のせいか、とも思ったが、逆風でも苦にしない。「力が付いたんや」と思って、試合前から密かに彼の動きに注目していた。結果はキックもFGも完璧。この日の彼のプレーを見て「目的を持った練習は裏切らない」という言葉を実感した次第である。
posted by コラム「スタンドから」 at 06:50| Comment(3) | in 2019 Season

2019年05月25日

(7)ニューカマーの群像

 先週、東京で行われた明治大学との試合は観戦できなかった。今年75歳になるいまも、現役の新聞記者として働いている身にとっては、東京までの往復に必要な時間を捻出するのが難しかったからである。
 チームのホームページでその経過をチェックし、今週末には監督やコーチから少しばかり話を聞いたが、結構、問題点の多い試合だったようだ。先日の慶応大学との試合や神戸大学とのJV戦などで見せつけられたチームの課題がいっこうに解消されず、前途の厳しさがいくつも浮き彫りになったのだろう。
 問題は、その課題を「ひとごと」ではなく「わがこと」として受け止め、それを自らの課題として立ち向かえる部員がどれほどいるか。とりわけスタッフを含めてチームを背負って行く立場の4年生がどのように覚醒するか。焦点はそこにある。今週末の関大戦は、その覚悟を問う格好の機会になるだろう。
 その辺のことは今後、じっくり見させていただこうと思っている。今回の主題は新しくファイターズに入部した1年生、ニューカマーのことである。
 チームのホームページにはいま、今年もスタッフ志望者を含めて42の1年生が入部したことを伝えている。当初、入部者が少なかった高等部や啓明学院からのメンバーも連休明けから少し増え、いまはグラウンドの端っこで体力づくりのトレーニングに励んでいる。4月初めからスタートしたメンバーの多くは体もできあがってきたようだ。すでに上級生の練習に組み入れられ、試合形式の練習に参加しているメンバーもいる。
 とりわけ、スポーツ選抜入試でファイターズの門を叩いたメンバーは意識が高い。先日の神戸大戦ではDLの山本大地(大阪学芸)が後半から出場し、低い姿勢から、相手を押し上げる場面を何度も見せてくれた。明治大との試合では、WRの糸川幹人(箕面自由)が先発で出場。評判通りのパスキャッチを披露してくれたそうだ。僕は先日来、上ヶ原の練習で彼の動きを見ているが、上級生に混じっても臆するところがない。このチームにずっといるような雰囲気で、難しいパスにも判断よく走り込む。キャッチするのが当たり前という表情をみていると、これが4月に入部したばかりの新入生かと驚くほどだ。
 まだ、出場機会には恵まれていないが、今春入部したメンバーには、末頼もしい選手が何人もいる。昨年夏、一緒に小論文の勉強会をしたメンバーに限っても、TE小林陸(大阪産大)、DB小林龍斗(日大三)、WRには高野一馬(佼成学園)、福田彦馬(池田)、大山将史(千葉日大)、DB長田穣(同)。フットボールは未経験だった亀井大智(報徳学園)、馬淵太誠(大垣日大)も入部前からトレーニングを積んできたようで、すっかりチームに溶け込んでいる。
 高等部や啓明学院からいち早く入部したメンバーにも、さすがと思える動きをする選手が何人かいる。物覚えの悪い僕が彼らの名前を覚えるようになった頃には、きっとチーム練習でも注目される存在になっているに違いなかろう。
 今季は今後、7月に前期試験が始まるまでの短い期間にJV戦が3度も組み込まれている。そういった機会には、是非ともこれらの選手に目を向けてもらいたい。4年間、応援したくなる名前が必ず見つかるはずだ。
 さて、ここで話題は一変。夏恒例の朝日カルチャーの講座案内である。今年は小野宏ディレクターによる「アメリカンフットボールの本当の魅力」に加えて、鳥内秀晃監督が縦横無尽に語る「ファイターズのすべて」が開かれる。聞き手は選手時代からコーチ、ディレクターとして苦楽をともにしてきた小野ディレクター。混迷する日本スポーツ界にあって独特の指導法を確立し、選手の成長を助けてきた監督と名参謀のコンビで、ファイターズの打ち明け話が大いに楽しめそうだ。
 小野ディレクターの講義は7月15日午後1時半から、鳥内監督の講義は7月27日午後6時半から。ともに阪急・川西能勢口駅前のアステホールで。料金など詳細は、朝日カルタ−センター川西教室(072・755・2381)へ。
posted by コラム「スタンドから」 at 10:10| Comment(2) | in 2019 Season