2025年4月19日、ファイターズの春シーズンが開幕した。相手は立教大学。古くから縁のあるチームである。会場は神戸市の王子スタジアム。待ちに待った初戦とあって、試合が始まる1時間以上前からファイターズの応援席はほぼ満席。私もまた、今季はどんなメンバーが出ているのかと、ワクワクしながら、チームが用意してくれたメンバー表に目を通す。
攻守ともに、新しい名前が並んでいる。昨年の秋に先発メンバーとして出場していたのは、ほんの数人しかいない。けれども、昨季はともにけがに苦しんだQB星野(兄)君やWR小段君が試合開始直後から活躍。オフェンスの牽引者としての役割を果たしてくれた。
一方、昨季はLBとして注目された2年生の永井君が今季はRBに転向。立ち上がりから鋭い動きで陣地を稼ぎ、RBとしても高い能力があることを見せてくれた。
守備で目を引いたのは、今季の主務を兼任するLBの大竹君。相手の最初の攻撃シリーズ3プレー目で相手パスを奪い取った。場所は相手ゴールまで26ヤードの地点。このプレーがファイターズのFGに結びつき、3点を先制。主務の仕事とプレーヤーを両立させるのは大変だろうが、このようなプレーを見せつけられると、守備の要としての役割にも期待が高まる。
逆に、こうした試合展開に浮足立ったのか、相手にミスが出てファイターズが敵陣25ヤードからの攻撃権を手にした。この好機をRB井上君の5ヤードラン、WR百田君への11ヤードパスなどでつなぎ、仕上げはQB星野君からWR五十嵐君への8ヤードパスでTD。PATも決めて10−0とリードを広げる。
これで、試合は落ち着き、ファイターズは次々とメンバーを入れ替える。QBは後半、星野君の弟に交代し、攻守ともに次々と新しいメンバーが登場する。開幕戦ということで、一人でも多く試合経験を積ませたい、練習時と同じパフォーマンスができるのか確認したい、というベンチの配慮もあったのだろう。
終わって見れば10−0。第4Q終了まで点差の開かないままに終わった緊張感の中で進んだ試合で、その目的は十分に達せられたのではないか。
この日、初めて対外試合の経験を積んだメンバーを含め、チームの全員がこの日の経験を糧に、更なる高みを目指してもらいたい。
2025年04月21日
(1)新しいシーズン
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2024年12月02日
(16)悔しい結末
甲子園ボウルへの出場権を目指す大学選手権準決勝の相手は法政大学。舞台は東京・江戸川区のスピアーズえどりくフィールド。恥ずかしながら初めて聞く競技場である。試合の前々日、上ケ原のグラウンドで、ファイターズの練習を見学している時、K.G.FIGHTERS CLUB(OB/OG会)前会長の竹田さんから「法政戦には当日の出発ですか」と聞かれ、「知らない場所だし、東京まで出掛けるのは、高齢者にはつらい。当日はネットの中継を見ながら応援させていただきます」と答えた。
ところが、ネットの中継を一人で見るというのも、なんか物寂しい。そんな時に、自宅から自転車で10分ほどの場所に住む友人から、ネットの中継をテレビで観戦しながら応援しないか、と声をかけてくれた。
早速、彼の自宅に押し掛け、テレビの画面に集中する。しかし、試合の状況は厳しい。立ち上がり、ファイターズはRB伊丹と澤井、それにQB星野弟による徹底したラン攻撃。途中に1本、WR小段へのパスを通して立て続けにダウンを更新する。これはいい感じ、と思った途端に相手がインターセプト。せっかくの勢いに水を差される。
しかし、その2プレー後、今度は1年生DL田中がインターセプトのお返し。素早い身のこなしで相手レシーバーの前に入ってジャンプ。見事にパスを捕らえる。さすがは高校時代、DLとTEの両面でスタメンに起用され、チームの攻守の要となっていた選手である。その力をこの舞台で発揮した度胸も満点だ。
次の攻撃シリーズもファイターズはランプレーが中心。途中、短いパスを1本盛り込んでダウンを更新し続け、K楯がFGを決めて3点を先制する。
だが、相手もスピードがあって身のこなしも軽やかなRBを駆使して一気に攻め込んでくる。途中、第4ダウンショートという場面でも果敢にプレーを選択。しっかりダウンを更新して、仕上げはFG。即座に同点に追いつく。
しかし、ファイターズの士気は高い。OL近藤が強烈なブロックで走路を開き、RBが陣地を稼ぐ。QB星野弟がWR五十嵐へ短いパスを通して陣地を稼ぎ、相手がパスを警戒すると今度は澤井や伊丹を走らせる。RB陣に警戒の目が集まると、再びパスアタック。ランとパスをうまく噛み合わせて陣地を稼ぎ、仕上げはWR坂口への短いパスでTD。キックも決めて10−3とリードする。
相手も負けてはいない。次の攻撃シリーズで即座にやり返す。それもファイターズと同様、パスとランをうまく使い分けた攻撃だから、守備陣が対応しきれない。あっという間にTD。キックも決めて即座に同点に追いつく。
前半が終了し、第3Qが終わっても、両者の均衡が保たれたまま。
均衡を破ったのは法政。身のこなしの軽快なRBを駆使して陣地を進め、4Qに入ってすぐに短いパスでTD。キックも決めて17−10と引き離す。
「これはやばいぞ」という気持ちと、「いや、この試合は1Qが15分。時間はたっぷりある。じっくり自分たちのペースで攻めてくれ」という気持ちが交錯する中で試合は進む。そうした中で反撃のチャンスを切り開いたのがファイターズ守備陣。第4Qが始まって間もなくの自軍の攻撃が不発に終わった後の相手の攻撃をしっかり食い止め、再び攻撃陣にボールを渡す。
その最初のプレーで、星野が同じ1年生のWR立花に8ヤードのパスを決め、「うちはランばかりではない、パスもあるぞ」と相手を警戒させたうえで、伊丹と澤井を走らせる。相手の目がランプレーに向いたと見極めると再び立花へのパス。そういう形で陣地を進める。一度、攻撃権が相手に移ったが、守備陣がしっかり押さえ、再びファイターズの攻撃。そこからもパスとランを絶妙に使い分けて陣地を進めて相手に追いつき、17−17で延長戦に入った。
迎えたタイブレーク。守備陣は法政の攻撃をFGによる3点に抑えたが、後攻のファイターズのキックは外れ、勝敗が分かれた。
選手や関係者の無念を思うと、言葉もない。チームの柱と期待されながら、けがで出場がかなわなかったメンバーの胸中を想像するだけでもつらくなる。このコラムを書くこと自体を遠慮したい気持ちになる。
このコラムを書かせていただくようになったのは、たしか2006年。朝日新聞社を退職して間もないころだった。以来、関西で開かれる公式戦はすべて試合会場に出向いて応援し、プレーヤーとしても、スタッフとしても活動したことのない素人の目に映る場面を記録し、文章にしてきたが、横着した報いだろうか。試合は17−17で延長戦に入り、最後は先攻の法政がFGを決め、それに失敗したファイターズが敗れた。関西リーグでの立命戦の敗北を加えると悔しさはさらに募る。
攻守の中心になる選手が何人もけがや特別な事情で戦列を離れざるを得なかったことを勘案すれば、ここまで勝ち進んできたことをもっと高く評価する人がいてもおかしくないし、逆に、つまらん言い訳はするな、今ある力で勝ち切るのがファイターズだ、これまで勝ち続けてきたチームもそれぞれに事情をかかえていたが、それを克服して勝ち続けてきた。だからこそ称賛されているのだ、という人もいるだろう。
そういう環境にあって、ここまで頑張ってきた今季のチームを僕は高く評価したい。関西リーグの立命戦で悔しい思いをし、東京での法政戦でまたも涙を飲む。それもまた人生の一里塚、勝ち続けてきたからこそ味わえる貴重な体験であると受け止め、明日への扉を開いてもらいたい。悔しい体験があってこそ、人は頑張れる。僕はその言葉をかみしめて生きてきた。
ところが、ネットの中継を一人で見るというのも、なんか物寂しい。そんな時に、自宅から自転車で10分ほどの場所に住む友人から、ネットの中継をテレビで観戦しながら応援しないか、と声をかけてくれた。
早速、彼の自宅に押し掛け、テレビの画面に集中する。しかし、試合の状況は厳しい。立ち上がり、ファイターズはRB伊丹と澤井、それにQB星野弟による徹底したラン攻撃。途中に1本、WR小段へのパスを通して立て続けにダウンを更新する。これはいい感じ、と思った途端に相手がインターセプト。せっかくの勢いに水を差される。
しかし、その2プレー後、今度は1年生DL田中がインターセプトのお返し。素早い身のこなしで相手レシーバーの前に入ってジャンプ。見事にパスを捕らえる。さすがは高校時代、DLとTEの両面でスタメンに起用され、チームの攻守の要となっていた選手である。その力をこの舞台で発揮した度胸も満点だ。
次の攻撃シリーズもファイターズはランプレーが中心。途中、短いパスを1本盛り込んでダウンを更新し続け、K楯がFGを決めて3点を先制する。
だが、相手もスピードがあって身のこなしも軽やかなRBを駆使して一気に攻め込んでくる。途中、第4ダウンショートという場面でも果敢にプレーを選択。しっかりダウンを更新して、仕上げはFG。即座に同点に追いつく。
しかし、ファイターズの士気は高い。OL近藤が強烈なブロックで走路を開き、RBが陣地を稼ぐ。QB星野弟がWR五十嵐へ短いパスを通して陣地を稼ぎ、相手がパスを警戒すると今度は澤井や伊丹を走らせる。RB陣に警戒の目が集まると、再びパスアタック。ランとパスをうまく噛み合わせて陣地を稼ぎ、仕上げはWR坂口への短いパスでTD。キックも決めて10−3とリードする。
相手も負けてはいない。次の攻撃シリーズで即座にやり返す。それもファイターズと同様、パスとランをうまく使い分けた攻撃だから、守備陣が対応しきれない。あっという間にTD。キックも決めて即座に同点に追いつく。
前半が終了し、第3Qが終わっても、両者の均衡が保たれたまま。
均衡を破ったのは法政。身のこなしの軽快なRBを駆使して陣地を進め、4Qに入ってすぐに短いパスでTD。キックも決めて17−10と引き離す。
「これはやばいぞ」という気持ちと、「いや、この試合は1Qが15分。時間はたっぷりある。じっくり自分たちのペースで攻めてくれ」という気持ちが交錯する中で試合は進む。そうした中で反撃のチャンスを切り開いたのがファイターズ守備陣。第4Qが始まって間もなくの自軍の攻撃が不発に終わった後の相手の攻撃をしっかり食い止め、再び攻撃陣にボールを渡す。
その最初のプレーで、星野が同じ1年生のWR立花に8ヤードのパスを決め、「うちはランばかりではない、パスもあるぞ」と相手を警戒させたうえで、伊丹と澤井を走らせる。相手の目がランプレーに向いたと見極めると再び立花へのパス。そういう形で陣地を進める。一度、攻撃権が相手に移ったが、守備陣がしっかり押さえ、再びファイターズの攻撃。そこからもパスとランを絶妙に使い分けて陣地を進めて相手に追いつき、17−17で延長戦に入った。
迎えたタイブレーク。守備陣は法政の攻撃をFGによる3点に抑えたが、後攻のファイターズのキックは外れ、勝敗が分かれた。
選手や関係者の無念を思うと、言葉もない。チームの柱と期待されながら、けがで出場がかなわなかったメンバーの胸中を想像するだけでもつらくなる。このコラムを書くこと自体を遠慮したい気持ちになる。
このコラムを書かせていただくようになったのは、たしか2006年。朝日新聞社を退職して間もないころだった。以来、関西で開かれる公式戦はすべて試合会場に出向いて応援し、プレーヤーとしても、スタッフとしても活動したことのない素人の目に映る場面を記録し、文章にしてきたが、横着した報いだろうか。試合は17−17で延長戦に入り、最後は先攻の法政がFGを決め、それに失敗したファイターズが敗れた。関西リーグでの立命戦の敗北を加えると悔しさはさらに募る。
攻守の中心になる選手が何人もけがや特別な事情で戦列を離れざるを得なかったことを勘案すれば、ここまで勝ち進んできたことをもっと高く評価する人がいてもおかしくないし、逆に、つまらん言い訳はするな、今ある力で勝ち切るのがファイターズだ、これまで勝ち続けてきたチームもそれぞれに事情をかかえていたが、それを克服して勝ち続けてきた。だからこそ称賛されているのだ、という人もいるだろう。
そういう環境にあって、ここまで頑張ってきた今季のチームを僕は高く評価したい。関西リーグの立命戦で悔しい思いをし、東京での法政戦でまたも涙を飲む。それもまた人生の一里塚、勝ち続けてきたからこそ味わえる貴重な体験であると受け止め、明日への扉を開いてもらいたい。悔しい体験があってこそ、人は頑張れる。僕はその言葉をかみしめて生きてきた。
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2024年11月24日
(15)4年生の頑張りと1年生の奮闘
23日は、甲子園ボウルの出場権をかけて東西の上位チームが競う一日。関西代表の関大は早稲田と、ファイターズは慶応との試合が組まれた。
試合会場は神戸ユニバー記念競技場。神戸市の西端に近い山地を切り開いて建設された素晴らしい施設である。しかしながら、私の住んでいる西宮市からは距離があり、電車の乗り換えなどに戸惑うことも予想されるので、キックオフ(13時)のはるか前から自宅を出た。関東代表との戦いに気持ちが弾んでいたせいかもしれない。
ファイターズのレシーブで試合開始。リターナーとして起用されたのは1年生WRの立花。今春入部したばかりだが、レシーバーとして随時起用され、その才能の一端を披露している。どんな走りをしてくれるかと期待したが、相手の蹴ったボールがそこまで届かず、その前に構えていた伊丹がキャッチ。RBのエースでもある彼が相手陣48ヤードまでリターンした。そこから伊丹の時間が始まる。まずは左の密集を突いて5ヤードのラン。QB星野弟がWR小段に短いパスを通してダウンを更新すると、そこからは伊丹のワンマンショー。途中、WR五十嵐に短いパスを一つ通しただけで、あとはひたすら伊丹が走り続けてTDまでもっていく。大西のキックも決まって7ー0。
対する相手は徹底したパス攻撃。能力の高いQBが10ヤード前後のパスを投げ続けてダウンを2度更新。ぐいぐいと陣地を進めてくる。その攻勢を受け止めるのがファイターズの守備陣。けがから復帰したばかりの1年生DE田中志門の奮闘もあって、決定的なチャンスは与えない。1Qの終盤から2Qに移っても、パス中心の慶応、伊丹のランを中心とした関学という状況は変わらない。その流れを切ったのがDB杉本。相手が投じたハーフライン近くのパスを奪って攻守交代。ファイターズはそこから伊丹のラン、星野からWR百田へのパス、再び伊丹のラン、さらには再度WR百田へのパスなどで着実に陣地を進め、伊丹のランでTD。13ー0とリードを広げる。
後半になってもパスの慶応、ランとパスの関学という構図は変わらない。
慶応の攻撃で始まった第3Q最初のシリーズ。相手のパスが思い通りに通らず、わずか4プレーで攻守交代。ハーフライン近くから始まったファイターズの攻撃は星野弟からWR五十嵐へのパス、RB伊丹のラン、TE安藤へのパスなどで陣地を進める。相手ゴール前20ヤード付近まで到達すると、そこから7回連続でボールを伊丹に託す。その期待に応えた伊丹が残り2ヤードをジャンプして相手ゴールにボールを運びTD。大西のキックも決まって20ー0。
その後、第4Qに相手のパスで7点を返されたが、20ー7で試合は終了。ファイターズの堅い守りと、思い切った攻めが功を奏した。
チームの柱となる4年生が力を発揮し、今春入学したばかりの1年生がそれに張り合って力を発揮し始める。この日は1年生のQB星野弟、WR立花、DB小暮が先発で起用され期待に応えた。春のシーズンにいち早くデビューしたDL田中志門もけがから回復、元気に戻ってきた。LBの永井弟も、試合の立ち上がりで素晴らしいタックルを決めている。
1年生の彼らが大学フットボールの経験を積み、さらに成長してくれれば、関西リーグで立命に敗れ、悔しい思いをしたチームの雰囲気にも影響するだろう。その悔しさをかみしめ、それを起爆剤にして奮闘している4年生と、大学生の試合に出られること、チームに貢献できることを励みにして日々成長を続けるフレッシュマン。双方の努力がかみ合えば、チームはさらに成長する。そこから甲子園ボウルへの道が開ける。
上級生、下級生関係なく力を発揮できる環境が整っているのがファイターズの最大の強みである。その強みを生かすべく更なる鍛錬を続け、残る2試合を勝ち続けてもらいたい。
試合会場は神戸ユニバー記念競技場。神戸市の西端に近い山地を切り開いて建設された素晴らしい施設である。しかしながら、私の住んでいる西宮市からは距離があり、電車の乗り換えなどに戸惑うことも予想されるので、キックオフ(13時)のはるか前から自宅を出た。関東代表との戦いに気持ちが弾んでいたせいかもしれない。
ファイターズのレシーブで試合開始。リターナーとして起用されたのは1年生WRの立花。今春入部したばかりだが、レシーバーとして随時起用され、その才能の一端を披露している。どんな走りをしてくれるかと期待したが、相手の蹴ったボールがそこまで届かず、その前に構えていた伊丹がキャッチ。RBのエースでもある彼が相手陣48ヤードまでリターンした。そこから伊丹の時間が始まる。まずは左の密集を突いて5ヤードのラン。QB星野弟がWR小段に短いパスを通してダウンを更新すると、そこからは伊丹のワンマンショー。途中、WR五十嵐に短いパスを一つ通しただけで、あとはひたすら伊丹が走り続けてTDまでもっていく。大西のキックも決まって7ー0。
対する相手は徹底したパス攻撃。能力の高いQBが10ヤード前後のパスを投げ続けてダウンを2度更新。ぐいぐいと陣地を進めてくる。その攻勢を受け止めるのがファイターズの守備陣。けがから復帰したばかりの1年生DE田中志門の奮闘もあって、決定的なチャンスは与えない。1Qの終盤から2Qに移っても、パス中心の慶応、伊丹のランを中心とした関学という状況は変わらない。その流れを切ったのがDB杉本。相手が投じたハーフライン近くのパスを奪って攻守交代。ファイターズはそこから伊丹のラン、星野からWR百田へのパス、再び伊丹のラン、さらには再度WR百田へのパスなどで着実に陣地を進め、伊丹のランでTD。13ー0とリードを広げる。
後半になってもパスの慶応、ランとパスの関学という構図は変わらない。
慶応の攻撃で始まった第3Q最初のシリーズ。相手のパスが思い通りに通らず、わずか4プレーで攻守交代。ハーフライン近くから始まったファイターズの攻撃は星野弟からWR五十嵐へのパス、RB伊丹のラン、TE安藤へのパスなどで陣地を進める。相手ゴール前20ヤード付近まで到達すると、そこから7回連続でボールを伊丹に託す。その期待に応えた伊丹が残り2ヤードをジャンプして相手ゴールにボールを運びTD。大西のキックも決まって20ー0。
その後、第4Qに相手のパスで7点を返されたが、20ー7で試合は終了。ファイターズの堅い守りと、思い切った攻めが功を奏した。
チームの柱となる4年生が力を発揮し、今春入学したばかりの1年生がそれに張り合って力を発揮し始める。この日は1年生のQB星野弟、WR立花、DB小暮が先発で起用され期待に応えた。春のシーズンにいち早くデビューしたDL田中志門もけがから回復、元気に戻ってきた。LBの永井弟も、試合の立ち上がりで素晴らしいタックルを決めている。
1年生の彼らが大学フットボールの経験を積み、さらに成長してくれれば、関西リーグで立命に敗れ、悔しい思いをしたチームの雰囲気にも影響するだろう。その悔しさをかみしめ、それを起爆剤にして奮闘している4年生と、大学生の試合に出られること、チームに貢献できることを励みにして日々成長を続けるフレッシュマン。双方の努力がかみ合えば、チームはさらに成長する。そこから甲子園ボウルへの道が開ける。
上級生、下級生関係なく力を発揮できる環境が整っているのがファイターズの最大の強みである。その強みを生かすべく更なる鍛錬を続け、残る2試合を勝ち続けてもらいたい。
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2024年11月12日
(14)悔しい戦いを糧に
今年度の関西学生リーグ最終戦、立命館大学との試合中、僕の胸中にはずっと「我慢や」「耐えろ」「踏ん張れ」という言葉が交錯していた。
それほど厳しい戦いだった。力強いラインと能力の高いQB、RBを擁する相手は、攻撃に絶対の自信を持っているようで、真っ向からの戦を挑んでくる。QBは長いパスを次々と投じてくるし、時には自らボールを保持して密集を突き抜け、ダウンを更新する。主将・永井兄が率いるファイターズの守備陣もそれに対応。肝心なところはピタリと抑え、なかなか得点を許さない。それでも先手を取ったのは立命。立命陣25ヤードから始まった攻撃シリーズ。相手QBは長いパスを投じ、自らボールをもって突進する。18ヤードを走り、次は長いパス。一気にゴール前に攻め込むと、残り2ヤードを2年生RBがTDに仕上げる。これは手強いぞ、と感心しながら次なるファイターズの攻撃に目をやる。QBは1年生の星野弟。まずはWR百田へのパスで6ヤード、次はRB伊丹が走って9ヤード。相手の目がランプレーに集まったところで1年生WR立花へのミドルパス。22ヤードを稼いでハーフラインを越える。そこからWR小段への短いパスを通したところで第1Qが終了。 攻める方向が変わっても、RB伊丹がランで陣地を進め、仕上げも伊丹。その動きを予知して備える相手守備陣を押し切ってTD。7ー6と迫る。
しかし、相手も手強い。ファイターズのキックで始まった次のプレー。守備陣のカバーに一瞬のスキができたのに乗じて相手の主将RBが65ヤードを独走。あっという間に14−6と引き離される。長年、ファイターズを応援してきたが、こんな場面に遭遇したのは久しぶりだ。一瞬、呆然としたが、それでも試合は続く。今度は自陣35ヤード付近からの攻撃だ。我慢のしどころであり、気持ちを奮い立たせる場面だ。その期待に応えて星野が百田や五十嵐に次々とミドルパスを通し、あっというまに相手陣に入る。間にランプレー二つを挟んで再び百田へのミドルへパス。しっかり陣地を進めた後はRB陣の出番。TE安藤へのパスを一つ挟んだ後、伊丹が中央突破でTD。2点を狙った伊丹のランも決まって14−14と追いつく。続く相手の攻撃は時間との闘い。第2Qも残り2分を切っていたが、巧みにパスを織り交ぜ、時計を止めながら攻め続け、しっかりFGに仕上げて17−14で前半終了。
後半に入っても立命の攻撃、ファイターズの守備という構図は変わらない。互いにがっぷり組み合って譲らず、第3Qは双方ともに無得点。第4Q終盤に立命がランプレーでTDを挙げ、24―14で勝利。双方ともに6勝1敗で今季関西リーグを終えた。しかし、当事者同士の対戦で立命が勝利していることから、甲子園ボウル出場権をめぐる扱いは立命が1位相当。ファイターズが2番手となった。
ファイターズはこの後、全日本大学選手権のトーナメント準々決勝でまず関東3位の慶應大と対戦し、勝てば準決勝でおそらく関東1位の法政大と対戦する。それにも勝利することができれば、決勝の甲子園ボウルに出場できる。
ファイターズにはまだ挽回の機会はある。主力に負傷者が多く、最後まで不本意な戦いを強いられた今季の関西リーグだが、いまは我慢の時である。 全員が心を結び、火の玉となって甲子園ボウル出場に向かって戦おうではないか。
それほど厳しい戦いだった。力強いラインと能力の高いQB、RBを擁する相手は、攻撃に絶対の自信を持っているようで、真っ向からの戦を挑んでくる。QBは長いパスを次々と投じてくるし、時には自らボールを保持して密集を突き抜け、ダウンを更新する。主将・永井兄が率いるファイターズの守備陣もそれに対応。肝心なところはピタリと抑え、なかなか得点を許さない。それでも先手を取ったのは立命。立命陣25ヤードから始まった攻撃シリーズ。相手QBは長いパスを投じ、自らボールをもって突進する。18ヤードを走り、次は長いパス。一気にゴール前に攻め込むと、残り2ヤードを2年生RBがTDに仕上げる。これは手強いぞ、と感心しながら次なるファイターズの攻撃に目をやる。QBは1年生の星野弟。まずはWR百田へのパスで6ヤード、次はRB伊丹が走って9ヤード。相手の目がランプレーに集まったところで1年生WR立花へのミドルパス。22ヤードを稼いでハーフラインを越える。そこからWR小段への短いパスを通したところで第1Qが終了。 攻める方向が変わっても、RB伊丹がランで陣地を進め、仕上げも伊丹。その動きを予知して備える相手守備陣を押し切ってTD。7ー6と迫る。
しかし、相手も手強い。ファイターズのキックで始まった次のプレー。守備陣のカバーに一瞬のスキができたのに乗じて相手の主将RBが65ヤードを独走。あっという間に14−6と引き離される。長年、ファイターズを応援してきたが、こんな場面に遭遇したのは久しぶりだ。一瞬、呆然としたが、それでも試合は続く。今度は自陣35ヤード付近からの攻撃だ。我慢のしどころであり、気持ちを奮い立たせる場面だ。その期待に応えて星野が百田や五十嵐に次々とミドルパスを通し、あっというまに相手陣に入る。間にランプレー二つを挟んで再び百田へのミドルへパス。しっかり陣地を進めた後はRB陣の出番。TE安藤へのパスを一つ挟んだ後、伊丹が中央突破でTD。2点を狙った伊丹のランも決まって14−14と追いつく。続く相手の攻撃は時間との闘い。第2Qも残り2分を切っていたが、巧みにパスを織り交ぜ、時計を止めながら攻め続け、しっかりFGに仕上げて17−14で前半終了。
後半に入っても立命の攻撃、ファイターズの守備という構図は変わらない。互いにがっぷり組み合って譲らず、第3Qは双方ともに無得点。第4Q終盤に立命がランプレーでTDを挙げ、24―14で勝利。双方ともに6勝1敗で今季関西リーグを終えた。しかし、当事者同士の対戦で立命が勝利していることから、甲子園ボウル出場権をめぐる扱いは立命が1位相当。ファイターズが2番手となった。
ファイターズはこの後、全日本大学選手権のトーナメント準々決勝でまず関東3位の慶應大と対戦し、勝てば準決勝でおそらく関東1位の法政大と対戦する。それにも勝利することができれば、決勝の甲子園ボウルに出場できる。
ファイターズにはまだ挽回の機会はある。主力に負傷者が多く、最後まで不本意な戦いを強いられた今季の関西リーグだが、いまは我慢の時である。 全員が心を結び、火の玉となって甲子園ボウル出場に向かって戦おうではないか。
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2024年11月08日
(13)関西学院の脈動
本箱を整理していたら、興味深い冊子が見つかった。2011年10月に朝日新聞出版が発行したアエラの「関西学院大学」特集号である。「世界市民になる」というサブタイトルにある通り、世界に羽ばたく関西学院大学の魅力を様々な角度からアピールした冊子である。
その中で「関西学院の脈動」というタイトルでに大学が誇るクラブ活動を二つ取り上げ、その魅力を現場から報告している。体育会系では「アメリカンフットボール部」、文化系では「グリークラブ」。アメフット部の紹介は8ページにわたり、そのトップには、見開き2ページを使って黄色い三日月が抱える「KG」の文字が輝く青いヘルメットが据えられている。
筆者は、グリークラブがプロのルポライター、そしてアメフット部は小生。その筆者紹介欄には1968年、文学部日本文学科卒、朝日新聞社会部記者、論説委員、編集委員を経て2006年度から紀伊民報編集局長などとあり、親切なことにファイターズの公式HPでコラム「スタンドから」を連載中とも記されている。
僕はそこで、戦後の草創期から開拓されたファイターズのアメフット人脈を紹介するとともに、指導者としても大きな足跡を残された米田満さん、古川明さん、武田建さんたちの業績を取り上げつつ、その下で育ったコーチや監督が引き継いだ「よき社会人を育てる」チーム作りと、ファイターズというチームの根底を流れる取り組みの一端を紹介している。
例えば、長く監督を務められた鳥内監督は、毎年新しいシーズンが始まる前に、新4年生と個別面談。「どのようにチームに貢献するのか、どのようなチームを作りたいのか」「フットボールを通じてどんな人間になりたいのか」と問いかけ、「上に立つ者ほど重い責任を負い、規範を守る取り組みが求められる」と強調されている。
選手に負けないくらいの気概を持って取り組んでいるマネジャーやトレーナー、分析スタッフのことにも触れ、毎年、納会で表彰される「アンサングヒーロー賞」、つまり「地味な働きであっても、身を挺してチームのために貢献した部員」に光を当てる賞についても説明。これがファイターズというチームの根っこにある考え方だと強調している。
大雑把に言えば、歴代のメンバーがライバルとの戦いの中で培い、醸成してきたファイターズの歴史、その特徴について記した文章である。
こんな記事を書き、印税を頂いたことなど、すっかり忘れていたが、今季、関西リーグの最終戦、立命大との戦いの直前に、ひょっこりと本棚から見つかったのも何かの縁だろう。チームに届け、現役の諸君を応援するささやかなツールになれば、と考えている。
その中で「関西学院の脈動」というタイトルでに大学が誇るクラブ活動を二つ取り上げ、その魅力を現場から報告している。体育会系では「アメリカンフットボール部」、文化系では「グリークラブ」。アメフット部の紹介は8ページにわたり、そのトップには、見開き2ページを使って黄色い三日月が抱える「KG」の文字が輝く青いヘルメットが据えられている。
筆者は、グリークラブがプロのルポライター、そしてアメフット部は小生。その筆者紹介欄には1968年、文学部日本文学科卒、朝日新聞社会部記者、論説委員、編集委員を経て2006年度から紀伊民報編集局長などとあり、親切なことにファイターズの公式HPでコラム「スタンドから」を連載中とも記されている。
僕はそこで、戦後の草創期から開拓されたファイターズのアメフット人脈を紹介するとともに、指導者としても大きな足跡を残された米田満さん、古川明さん、武田建さんたちの業績を取り上げつつ、その下で育ったコーチや監督が引き継いだ「よき社会人を育てる」チーム作りと、ファイターズというチームの根底を流れる取り組みの一端を紹介している。
例えば、長く監督を務められた鳥内監督は、毎年新しいシーズンが始まる前に、新4年生と個別面談。「どのようにチームに貢献するのか、どのようなチームを作りたいのか」「フットボールを通じてどんな人間になりたいのか」と問いかけ、「上に立つ者ほど重い責任を負い、規範を守る取り組みが求められる」と強調されている。
選手に負けないくらいの気概を持って取り組んでいるマネジャーやトレーナー、分析スタッフのことにも触れ、毎年、納会で表彰される「アンサングヒーロー賞」、つまり「地味な働きであっても、身を挺してチームのために貢献した部員」に光を当てる賞についても説明。これがファイターズというチームの根っこにある考え方だと強調している。
大雑把に言えば、歴代のメンバーがライバルとの戦いの中で培い、醸成してきたファイターズの歴史、その特徴について記した文章である。
こんな記事を書き、印税を頂いたことなど、すっかり忘れていたが、今季、関西リーグの最終戦、立命大との戦いの直前に、ひょっこりと本棚から見つかったのも何かの縁だろう。チームに届け、現役の諸君を応援するささやかなツールになれば、と考えている。
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2024年10月29日
(12)見どころ満載の熱戦
26日は関大戦。まだ始まったばかりと思っていた今季の関西リーグも、はや終盤の戦いに突入している。
会場は東大阪市の花園ラグビー場。初めて訪れた競技場である。近鉄・東花園駅で降りて10分ほど。多分、選手やチアリーダーらの関係者だろう。にぎやかにおしゃべりながら足を運ぶおばさんたちの後ろを追いかけるように歩いていると、どでかい建物が見えてきた。外から見ても素晴らしい建物だが、入場してみると、さらに素晴らしい。美しく整備された芝生。
入場すると、美しく整備された芝生のグラウンドが広がっている。観客席はホームとビジターチームが全く平等になるように設計されており、双方の応援席に次々と応援の人たちが詰めかけてくる。私の住む西宮市から遠いのが難点といえば難点だが、そんな勝手な都合よりも観客席からグラウンド全体を俯瞰できるのが何よりだ。
ファイターズのレシーブで試合開始。その第1プレー。TE安藤がサイドライン沿いに駆け上がり、24ヤードほどのゲイン。ハーフライン付近から今度はRB伊丹が走り、パスを受けて、立て続けにダウンを更新。相手ゴール前28ヤード付近まで迫る。
押せ押せムードになったところで、なんとエースQB星野秀太が倒れた。立ち上がれないほどのダメージを受けている。先日の京大戦で復帰し、鮮やかな司令塔ぶりを発揮し、さすがはお兄ちゃん、とチームメートを安心させていたのに、復帰2戦目早々にまたもリタイア。「かわいそうに。神様もあんまりではないか」と思わず、天を仰ぐ。チームにも動揺があったのか、その次のプレーで狙ったFGは外れ、無得点で攻守交代。嫌な予感がする。
けれども、試合に臨んでいる選手たちは目の前のプレーに集中するしかない。守備陣が奮起し、1年生の時から活躍している能力の高い相手QBのパス攻撃を何とか食い止める。
「ここは我慢比べ。攻守とも我慢に我慢を重ね、機会を捕まえたら一気に爆発させてくれ」と祈るような気持である。
それにチームが応えてくれた。攻撃ではラインの面々が相手を押し込み、RBやQBが動きやすいように空間を作る。その空間を生かしてRB伊丹が立て続けに走る。素早い身のこなしとパワフルな動きで陣地を稼ぎ、あっという間に相手ゴール前10ヤード。「お兄ちゃん」に代わって出場したQB星野太吾の動きもよい。即座に8ヤードを走り、ゴール前2ヤード。相手は壁を作って防ぐが、オフェンスラインの押しが強く、その勢いを利してRB澤井がのTDにつなげる。キックも決まって7ー0。
相手も負けていない。次の攻撃シリーズではしっかりFGを決めて7ー3。2Qに入ってもスコアに差はあっても5分と5分の戦は続く。ファイターズがFGで3点を追加すれば関大も即座にFGを決めて10ー6。
「関大は自分たちの攻撃パターンを持っています。一方、ファイターズはオフェンス陣が相手を押し込んでいます。双方のチームがそれぞれの持ち味を生かした熱戦です」。ファイターズが場内だけで開局しているFM放送の解説を担当されている小野宏さんの声にも力が入ってくる。
そういう動きの中で、徐々に力を発揮し始めたのがファイターズ。自陣25ヤードから始まった次の攻撃シリーズで、まずはQB星野弟が14ヤードを走り、次はWR小段への短いパス。次はRB伊丹が45ヤードを走って相手ゴール前16ヤード。そこからRB澤井のランなどで陣地を進め、仕上げも澤井のラン。大西のキックも決まって17ー6とリードを広げる。
攻撃陣が安定すると、守備陣にも余裕が出る。第2Q終了間近に相手が投じたロングパスも、DB豊野が余裕をもってインターセプト。相手の攻撃を断ち切る。
後半になってもこの流れは変わらない。ファイターズはRB伊丹と澤井のランで陣地を稼ぎ、仕上げは星野弟からWR五十嵐へのTDパス。それが決まってさらにリードを広げる。第4Qに入っても勢いは止まらない。QB星野のドロープレーで陣地を稼ぎ、それに呼応する形でRB伊丹がTDを決める。立ち上がりの苦しさが嘘のようなゲーム展開となったが、それもこれもオフェンスラインが踏ん張り、DLやLB、DBがそれぞれの役割を忠実に果たしてきた結果だろう。格段に能力の高いQBとRB、レシーバーを有する相手が彼らの長所を生かすため、逆にプレーの幅を狭めてしまったように見えたのとは対照的な結果となった。
最終のスコアは31−15。ファイターズが勝利をつかんだが、こういう戦いぶりを目の前に見て、アメフットという競技の奥の深さをしみじみと感じた。双方がそれぞれの長所を生かそうとして知恵を絞り、技と力を真っ向からぶつけあったこの日の試合は、今後、ほかのチームにとっても格好の研究材料になるに違いない。
会場は東大阪市の花園ラグビー場。初めて訪れた競技場である。近鉄・東花園駅で降りて10分ほど。多分、選手やチアリーダーらの関係者だろう。にぎやかにおしゃべりながら足を運ぶおばさんたちの後ろを追いかけるように歩いていると、どでかい建物が見えてきた。外から見ても素晴らしい建物だが、入場してみると、さらに素晴らしい。美しく整備された芝生。
入場すると、美しく整備された芝生のグラウンドが広がっている。観客席はホームとビジターチームが全く平等になるように設計されており、双方の応援席に次々と応援の人たちが詰めかけてくる。私の住む西宮市から遠いのが難点といえば難点だが、そんな勝手な都合よりも観客席からグラウンド全体を俯瞰できるのが何よりだ。
ファイターズのレシーブで試合開始。その第1プレー。TE安藤がサイドライン沿いに駆け上がり、24ヤードほどのゲイン。ハーフライン付近から今度はRB伊丹が走り、パスを受けて、立て続けにダウンを更新。相手ゴール前28ヤード付近まで迫る。
押せ押せムードになったところで、なんとエースQB星野秀太が倒れた。立ち上がれないほどのダメージを受けている。先日の京大戦で復帰し、鮮やかな司令塔ぶりを発揮し、さすがはお兄ちゃん、とチームメートを安心させていたのに、復帰2戦目早々にまたもリタイア。「かわいそうに。神様もあんまりではないか」と思わず、天を仰ぐ。チームにも動揺があったのか、その次のプレーで狙ったFGは外れ、無得点で攻守交代。嫌な予感がする。
けれども、試合に臨んでいる選手たちは目の前のプレーに集中するしかない。守備陣が奮起し、1年生の時から活躍している能力の高い相手QBのパス攻撃を何とか食い止める。
「ここは我慢比べ。攻守とも我慢に我慢を重ね、機会を捕まえたら一気に爆発させてくれ」と祈るような気持である。
それにチームが応えてくれた。攻撃ではラインの面々が相手を押し込み、RBやQBが動きやすいように空間を作る。その空間を生かしてRB伊丹が立て続けに走る。素早い身のこなしとパワフルな動きで陣地を稼ぎ、あっという間に相手ゴール前10ヤード。「お兄ちゃん」に代わって出場したQB星野太吾の動きもよい。即座に8ヤードを走り、ゴール前2ヤード。相手は壁を作って防ぐが、オフェンスラインの押しが強く、その勢いを利してRB澤井がのTDにつなげる。キックも決まって7ー0。
相手も負けていない。次の攻撃シリーズではしっかりFGを決めて7ー3。2Qに入ってもスコアに差はあっても5分と5分の戦は続く。ファイターズがFGで3点を追加すれば関大も即座にFGを決めて10ー6。
「関大は自分たちの攻撃パターンを持っています。一方、ファイターズはオフェンス陣が相手を押し込んでいます。双方のチームがそれぞれの持ち味を生かした熱戦です」。ファイターズが場内だけで開局しているFM放送の解説を担当されている小野宏さんの声にも力が入ってくる。
そういう動きの中で、徐々に力を発揮し始めたのがファイターズ。自陣25ヤードから始まった次の攻撃シリーズで、まずはQB星野弟が14ヤードを走り、次はWR小段への短いパス。次はRB伊丹が45ヤードを走って相手ゴール前16ヤード。そこからRB澤井のランなどで陣地を進め、仕上げも澤井のラン。大西のキックも決まって17ー6とリードを広げる。
攻撃陣が安定すると、守備陣にも余裕が出る。第2Q終了間近に相手が投じたロングパスも、DB豊野が余裕をもってインターセプト。相手の攻撃を断ち切る。
後半になってもこの流れは変わらない。ファイターズはRB伊丹と澤井のランで陣地を稼ぎ、仕上げは星野弟からWR五十嵐へのTDパス。それが決まってさらにリードを広げる。第4Qに入っても勢いは止まらない。QB星野のドロープレーで陣地を稼ぎ、それに呼応する形でRB伊丹がTDを決める。立ち上がりの苦しさが嘘のようなゲーム展開となったが、それもこれもオフェンスラインが踏ん張り、DLやLB、DBがそれぞれの役割を忠実に果たしてきた結果だろう。格段に能力の高いQBとRB、レシーバーを有する相手が彼らの長所を生かすため、逆にプレーの幅を狭めてしまったように見えたのとは対照的な結果となった。
最終のスコアは31−15。ファイターズが勝利をつかんだが、こういう戦いぶりを目の前に見て、アメフットという競技の奥の深さをしみじみと感じた。双方がそれぞれの長所を生かそうとして知恵を絞り、技と力を真っ向からぶつけあったこの日の試合は、今後、ほかのチームにとっても格好の研究材料になるに違いない。
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2024年10月15日
(11)さあ、ここからが勝負!
13日は京大との対戦。かつては「宿命のライバル」と呼ばれ、何度も痛い目にあわされたチームである。僕は、朝日新聞大阪本社の社会部で「遊軍記者」として働いていたころに水野弥一監督(当時)にインタビューし、その「チーム作りの哲学」の一端を紙面で紹介したことがある。
例えばこんな言葉を覚えている。「僕は常々、選手に言うんです。1升瓶に1升の水を詰めることはだれにもできる。では、1升瓶に1升2合の水をどうしたら詰められるか」。もちろん選手は「それは無理です」と答える。「当然のことでしょう。でも、そこでまたいうんです。当然のことです、と言っている限り、初めから無理と言っている限り、関学には勝てない。何か方法はないかと考え、知恵を絞り、何とか突破口を見つけ、その壁を突破する手段、方法を考える。これまで関学に勝った先輩たちは、そういうことをやってきた。君らもそれをやらない限り関学には勝てんぞ」。
さすが「カリスマ」と呼ばれていた人の言葉である。恐ろしく乱暴な表現だが、選手を鼓舞し、やる気にさせる力があったのだろう。当時の京大は本当に強かった。
これは大昔の話ではあるが、13日、王子競技場で戦った京大の士気の高さを眼前に見て、思わずこの言葉と水野さんの魂が今もこのチームに宿っているのではないかと思ったことは確かである。
例えば立ち上がりの攻撃。彼らは能力の高いQBの力を最大限に発揮させるプレーを次々に選択。最初の攻撃シリーズでFGを決めて先制。守備陣もそれに応えてファイターズの攻撃を完封。2度目の攻撃もFGを狙える位置まで攻め込んできた。
そんな嫌な流れを変えたのがエースRB伊丹のランとQB星野弟からWR百田へのパス。それで落ち着いたのか、ハーフラインを超えたあたりから星野弟がWR五十嵐へ長いパス。それを確実にキャッチしてTD。7−3と逆転する。
しかし、相手の士気は衰えない。前半残り5分を切ったところでFGを決め、7−6と追いすがる。
それでもなんとか踏ん張るのが、今年のファイターズ。QB星野弟がWR小段や百田、五十嵐らに次々とミドルパスを通し、最後はK大西のFG。10ー6で前半を折り返す。
後半に入ると、QBが星野兄に交代。今季はけがで出遅れていたが、ようやく回復。満を持しての出場である。「大丈夫か、無理するなよ」と祈るような気持ちで見ていたが、本人は意気軒高。RB伊丹のラン、WR百田へのパスなどで陣地を進め、仕上げはRB伊丹。中央を突破してTD。
攻撃のエースが帰ってくると、チームは落ち着く。守備陣も余裕ができたのか、対応が的確になって、相手に陣地を進めさせない。
4Qに入ってすぐの攻撃シリーズも1年生WR立花へのパス、QBのスクランブル、伊丹のランなどで陣地を進める。仕上げも伊丹のランで24−6と引き離す。その後、TDを1本返されたが、相手の粘りもそこまで。ファイターズは攻守ともに次々と新しいメンバーを繰り出し、そのメンバーが期待に応える。RB井上、深村がTDを重ね、締めくくりは4年生QB柴原から3年生WR辻へのTDパス。この日、すべてのキックを決めている大西が最後のTFPも決めて45−12。前半の苦しい戦いが嘘のような結末になった。
しかし、リーグ戦はここからが勝負。続く関大、立命館には昨シーズン、苦しい戦いを強いられている。チームの真価が問われるのはここからである。気持ちを引き締め、反省すべきは反省し、一段と高いレベルを目指して励んでいただきたい。
例えばこんな言葉を覚えている。「僕は常々、選手に言うんです。1升瓶に1升の水を詰めることはだれにもできる。では、1升瓶に1升2合の水をどうしたら詰められるか」。もちろん選手は「それは無理です」と答える。「当然のことでしょう。でも、そこでまたいうんです。当然のことです、と言っている限り、初めから無理と言っている限り、関学には勝てない。何か方法はないかと考え、知恵を絞り、何とか突破口を見つけ、その壁を突破する手段、方法を考える。これまで関学に勝った先輩たちは、そういうことをやってきた。君らもそれをやらない限り関学には勝てんぞ」。
さすが「カリスマ」と呼ばれていた人の言葉である。恐ろしく乱暴な表現だが、選手を鼓舞し、やる気にさせる力があったのだろう。当時の京大は本当に強かった。
これは大昔の話ではあるが、13日、王子競技場で戦った京大の士気の高さを眼前に見て、思わずこの言葉と水野さんの魂が今もこのチームに宿っているのではないかと思ったことは確かである。
例えば立ち上がりの攻撃。彼らは能力の高いQBの力を最大限に発揮させるプレーを次々に選択。最初の攻撃シリーズでFGを決めて先制。守備陣もそれに応えてファイターズの攻撃を完封。2度目の攻撃もFGを狙える位置まで攻め込んできた。
そんな嫌な流れを変えたのがエースRB伊丹のランとQB星野弟からWR百田へのパス。それで落ち着いたのか、ハーフラインを超えたあたりから星野弟がWR五十嵐へ長いパス。それを確実にキャッチしてTD。7−3と逆転する。
しかし、相手の士気は衰えない。前半残り5分を切ったところでFGを決め、7−6と追いすがる。
それでもなんとか踏ん張るのが、今年のファイターズ。QB星野弟がWR小段や百田、五十嵐らに次々とミドルパスを通し、最後はK大西のFG。10ー6で前半を折り返す。
後半に入ると、QBが星野兄に交代。今季はけがで出遅れていたが、ようやく回復。満を持しての出場である。「大丈夫か、無理するなよ」と祈るような気持ちで見ていたが、本人は意気軒高。RB伊丹のラン、WR百田へのパスなどで陣地を進め、仕上げはRB伊丹。中央を突破してTD。
攻撃のエースが帰ってくると、チームは落ち着く。守備陣も余裕ができたのか、対応が的確になって、相手に陣地を進めさせない。
4Qに入ってすぐの攻撃シリーズも1年生WR立花へのパス、QBのスクランブル、伊丹のランなどで陣地を進める。仕上げも伊丹のランで24−6と引き離す。その後、TDを1本返されたが、相手の粘りもそこまで。ファイターズは攻守ともに次々と新しいメンバーを繰り出し、そのメンバーが期待に応える。RB井上、深村がTDを重ね、締めくくりは4年生QB柴原から3年生WR辻へのTDパス。この日、すべてのキックを決めている大西が最後のTFPも決めて45−12。前半の苦しい戦いが嘘のような結末になった。
しかし、リーグ戦はここからが勝負。続く関大、立命館には昨シーズン、苦しい戦いを強いられている。チームの真価が問われるのはここからである。気持ちを引き締め、反省すべきは反省し、一段と高いレベルを目指して励んでいただきたい。
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2024年10月01日
(10)ヒーローインタビュー余話
29日午後、王子スタジアムで開かれた関西リーグの4戦目。近畿大学との試合は44−14でファイターズの勝利。先週の神戸大学との試合と同様、能力の高い相手QBの個人技に幻惑されたが、攻撃陣が常に先手を取り、守備陣も次第に対応できるようになって、終わってみれば44―14。攻守蹴を合わせた地力の差を見せつけるような形で勝利した。
その原動力がQBの先発、星野弟とRB、WR陣。RBではリーダーの伊丹が切れ味の良い走りと強い当たりで陣地を稼ぎ、TDも決める。レシーバー陣では、ともに2年生WRの小段と百田がそれぞれ長いパスを受けてTD。28−14で前半を折り返す。
後半も似たような展開。相手の工夫を凝らした攻撃にファイターズのLB、DB陣が適切に対応。DB加藤のインターセプトやK大西の見事なFGも勝利に貢献した。
試合後、グラウンドに降りると、何人もの選手がインタビューを受けている。それを聞きながら、終わった後でそれぞれの選手にひとこと声をかける。公式インタビューが終わった後だから、ヒーローたちもほっとしているのだろう。みんな本音で答えてくれる。例えば次のようなやりとりである。
「すごくいい走りの連発やったな。当たりが強くなって少々のことでは止められなくなっているのがスタンドからでも分かるわ」
「ええ。パワーで勝負。もっと走れ、もっと当たれと思って頑張りました。次も頑張ります」(以上、1Q後半から2Qの初めにかけて、立て続けにランでゲインを重ね、2本のTDを決めたRB伊丹君)
「走って、投げて、よく頑張ったな。1年生とは全く思えないプレーに毎回驚いてるよ。小段君へのTDパス、百田君へのTDパス。それぞれ距離はあったけど、見事に決めたのがすごかった」
「お二人は確実に捕ってくださるので、思い切り投げています。百田さんの時は、一気にゴールまで、と祈るような気持でした」
隣に、けがで欠場が続いている兄の秀太君が来たので
「兄貴の留守を弟がしっかり守っている。ええ兄弟や」
そういうと、
「僕ももうすぐ復帰します。兄弟で張り合って頑張ります」という。
それを聞いた弟が、すかさず「僕も頑張ります」と声をそろえる。思わず記念写真を撮りたいような二人の笑顔だった。
その後、小段君や百田君にも声をかける機会があったが忙しそうだったので今回は省略。それでも、小段君は「けがはすっかり回復しました。出遅れた分、これから頑張ります」と宣言してくれた。
今回は、たまたまオフェンスに偏った取材をしたため、守備陣の話題を取り上げられなかったが、守備陣を含めこういう部員が日々、課題をもって練習に取り組み、心身を鍛え、どんな時、どんな相手にも、全力でプレーする。それがファイターズの魅力である。
そういえば、身近に見たRB伊丹君の体形が下級生のころとは比較にならないほど強靭になっていた。こういう4年生に接するだけでも、ファイターズというチームに出会えてよかったと思える。
その原動力がQBの先発、星野弟とRB、WR陣。RBではリーダーの伊丹が切れ味の良い走りと強い当たりで陣地を稼ぎ、TDも決める。レシーバー陣では、ともに2年生WRの小段と百田がそれぞれ長いパスを受けてTD。28−14で前半を折り返す。
後半も似たような展開。相手の工夫を凝らした攻撃にファイターズのLB、DB陣が適切に対応。DB加藤のインターセプトやK大西の見事なFGも勝利に貢献した。
試合後、グラウンドに降りると、何人もの選手がインタビューを受けている。それを聞きながら、終わった後でそれぞれの選手にひとこと声をかける。公式インタビューが終わった後だから、ヒーローたちもほっとしているのだろう。みんな本音で答えてくれる。例えば次のようなやりとりである。
「すごくいい走りの連発やったな。当たりが強くなって少々のことでは止められなくなっているのがスタンドからでも分かるわ」
「ええ。パワーで勝負。もっと走れ、もっと当たれと思って頑張りました。次も頑張ります」(以上、1Q後半から2Qの初めにかけて、立て続けにランでゲインを重ね、2本のTDを決めたRB伊丹君)
「走って、投げて、よく頑張ったな。1年生とは全く思えないプレーに毎回驚いてるよ。小段君へのTDパス、百田君へのTDパス。それぞれ距離はあったけど、見事に決めたのがすごかった」
「お二人は確実に捕ってくださるので、思い切り投げています。百田さんの時は、一気にゴールまで、と祈るような気持でした」
隣に、けがで欠場が続いている兄の秀太君が来たので
「兄貴の留守を弟がしっかり守っている。ええ兄弟や」
そういうと、
「僕ももうすぐ復帰します。兄弟で張り合って頑張ります」という。
それを聞いた弟が、すかさず「僕も頑張ります」と声をそろえる。思わず記念写真を撮りたいような二人の笑顔だった。
その後、小段君や百田君にも声をかける機会があったが忙しそうだったので今回は省略。それでも、小段君は「けがはすっかり回復しました。出遅れた分、これから頑張ります」と宣言してくれた。
今回は、たまたまオフェンスに偏った取材をしたため、守備陣の話題を取り上げられなかったが、守備陣を含めこういう部員が日々、課題をもって練習に取り組み、心身を鍛え、どんな時、どんな相手にも、全力でプレーする。それがファイターズの魅力である。
そういえば、身近に見たRB伊丹君の体形が下級生のころとは比較にならないほど強靭になっていた。こういう4年生に接するだけでも、ファイターズというチームに出会えてよかったと思える。
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2024年09月25日
(9)準備のスポーツ
22日、王子スタジアムで行われた秋のリーグ3戦目は神戸大学との対戦。これが面白かった。相手がアメフットというスポーツの特性を最大限に生かした試合運びで「ハラハラドキドキ」の場面を連発。試合巧者といわれるファイターズの面々を振り回してくれたからだ。
どういうことか。まずは試合展開を見ていこう。
先攻はファイターズ。自陣22ヤードから、まずはRB伊丹のラン、QB星野弟からWR五十嵐へのパスでダウンを更新。「おお、いい感じ。今日もこの調子で頑張ってくれよ」と、スタンドから拍手をしていたが、どっこい、相手も対策を練っている。その後の攻撃を抑えて攻守交代。
ファイターズ2度目の攻撃シリーズもQBの個人技やRBへのパスなどでダウンを更新。あっという間に相手陣に入る。さらにWR百田へのミドルパスを通すが、このプレー中に不正なブロックがあったとして逆に罰退。それでも、五十嵐へミドルパスを通し、48ヤードのフィールドゴールを狙うが、わずかに外れて0−0。攻撃権が相手に移る。
もどかしい展開のまま試合は第2Qに入る。
その直後に、守備陣がビッグプレー。LB倉田が相手パスをインターセプト。わずか3プレーで攻撃権を奪う。このプレーに刺激されたのか、今度は攻撃陣が踏ん張る。
自陣28ヤードからQB星野がWR五十嵐へのミドルパスを決め、RB伊丹が鮮やかなランで相手陣に突入。そこから伊丹が走り澤井が走る。相手の目がRB陣に集まったところで今度はQB星野がライン沿いを駆け上がる。一気に相手ゴール前に進み、仕上げは伊丹が中央を抜けてTD。大西のキックも決まって7−0。
これでファイターズのペースになるかと思ったが、相手は工夫を凝らしたプレーでガンガン攻めてくる。RBへのパス、WRへの長いパス、合間にランナーを走らせる。隙を見てQBが自ら中央を抜ける。ラン攻撃と見せかけたパス。パスと見せかけたラン攻撃。QBとRB、WRの3者が右に左に展開し、どんどんパスを投げ、自ら走ってくる。ファイターズ守備陣の反応の速さを逆手に取ったようなプレーで陣地を進める。前半残り1分ほどとなったところでフィールドゴールを決めて7−3。一気にチームのムードが高まる。
しかし、ファイターズも受け身になっているだけではいられない。相手守備陣の反応の速さを逆手に取ったRB陣への短いパスを立て続けに決め、なんとかフィールドゴールを狙える位置まで陣地を進める。前半、残り時間28秒。ボールは相手ゴール前28ヤード。「決めて当然」というプレッシャーの中でK大西が見事にフィールドゴールを決め10−3で前半終了。
試合は後半に入っても似たような展開。互いに守りあってなかなか点が入らない。3Qは0−0、4Qは10−6。互いに持ち味を発揮して相手攻撃陣を食い止め、20−9でファイターズが勝った。
しかし、スタンドから見ている僕は、この試合に備えた神戸大の周到な準備にひたすら驚き、そういう準備が試合で発揮できる力をつけていることに感服した。ファイターズ守備陣の反応の速さを逆手にとり、右と思えば左に、左と思えば右を狙い、RBを走らせると見せかけてパスを投じる。合間にQBがWRをブロッカーにして一気に駆け上がる。RBにもWRにも機敏な選手がいるから、守備陣はだれをマークすればいいのか頭が混乱する。守る方にとっては厄介な手法でガンガン攻めてくるから、守備陣の対応もより難しくなる。
攻める側は、そういう準備に充分時間がさけるが、守備陣はその場、その場で瞬時に判断し、行動するしかない。事前の準備と考える力が勝敗に直結するアメフットの特徴を生かした神戸大の選手とベンチの「力」に、思わず「脱帽」という気分だった。
アメフットは「知的スポーツ」と形容される。長年、ファイターズの戦い振りを観戦してきた中で、その言葉を実感する機会がいくつもあった。全盛期の日大との戦い、フットボール知能と根性が合体した京大、才能あふれる高校生を次々と獲得して一時代を築いた立命を相手に、苦しい戦いを強いられ、「創意と工夫」「準備の徹底」に活路を見出してきたファイターズにとって、今度は「フットボールは準備のスポーツ」と腹をくくって挑んできた神戸大もまた厄介な相手になるのではないかと考えた。
どういうことか。まずは試合展開を見ていこう。
先攻はファイターズ。自陣22ヤードから、まずはRB伊丹のラン、QB星野弟からWR五十嵐へのパスでダウンを更新。「おお、いい感じ。今日もこの調子で頑張ってくれよ」と、スタンドから拍手をしていたが、どっこい、相手も対策を練っている。その後の攻撃を抑えて攻守交代。
ファイターズ2度目の攻撃シリーズもQBの個人技やRBへのパスなどでダウンを更新。あっという間に相手陣に入る。さらにWR百田へのミドルパスを通すが、このプレー中に不正なブロックがあったとして逆に罰退。それでも、五十嵐へミドルパスを通し、48ヤードのフィールドゴールを狙うが、わずかに外れて0−0。攻撃権が相手に移る。
もどかしい展開のまま試合は第2Qに入る。
その直後に、守備陣がビッグプレー。LB倉田が相手パスをインターセプト。わずか3プレーで攻撃権を奪う。このプレーに刺激されたのか、今度は攻撃陣が踏ん張る。
自陣28ヤードからQB星野がWR五十嵐へのミドルパスを決め、RB伊丹が鮮やかなランで相手陣に突入。そこから伊丹が走り澤井が走る。相手の目がRB陣に集まったところで今度はQB星野がライン沿いを駆け上がる。一気に相手ゴール前に進み、仕上げは伊丹が中央を抜けてTD。大西のキックも決まって7−0。
これでファイターズのペースになるかと思ったが、相手は工夫を凝らしたプレーでガンガン攻めてくる。RBへのパス、WRへの長いパス、合間にランナーを走らせる。隙を見てQBが自ら中央を抜ける。ラン攻撃と見せかけたパス。パスと見せかけたラン攻撃。QBとRB、WRの3者が右に左に展開し、どんどんパスを投げ、自ら走ってくる。ファイターズ守備陣の反応の速さを逆手に取ったようなプレーで陣地を進める。前半残り1分ほどとなったところでフィールドゴールを決めて7−3。一気にチームのムードが高まる。
しかし、ファイターズも受け身になっているだけではいられない。相手守備陣の反応の速さを逆手に取ったRB陣への短いパスを立て続けに決め、なんとかフィールドゴールを狙える位置まで陣地を進める。前半、残り時間28秒。ボールは相手ゴール前28ヤード。「決めて当然」というプレッシャーの中でK大西が見事にフィールドゴールを決め10−3で前半終了。
試合は後半に入っても似たような展開。互いに守りあってなかなか点が入らない。3Qは0−0、4Qは10−6。互いに持ち味を発揮して相手攻撃陣を食い止め、20−9でファイターズが勝った。
しかし、スタンドから見ている僕は、この試合に備えた神戸大の周到な準備にひたすら驚き、そういう準備が試合で発揮できる力をつけていることに感服した。ファイターズ守備陣の反応の速さを逆手にとり、右と思えば左に、左と思えば右を狙い、RBを走らせると見せかけてパスを投じる。合間にQBがWRをブロッカーにして一気に駆け上がる。RBにもWRにも機敏な選手がいるから、守備陣はだれをマークすればいいのか頭が混乱する。守る方にとっては厄介な手法でガンガン攻めてくるから、守備陣の対応もより難しくなる。
攻める側は、そういう準備に充分時間がさけるが、守備陣はその場、その場で瞬時に判断し、行動するしかない。事前の準備と考える力が勝敗に直結するアメフットの特徴を生かした神戸大の選手とベンチの「力」に、思わず「脱帽」という気分だった。
アメフットは「知的スポーツ」と形容される。長年、ファイターズの戦い振りを観戦してきた中で、その言葉を実感する機会がいくつもあった。全盛期の日大との戦い、フットボール知能と根性が合体した京大、才能あふれる高校生を次々と獲得して一時代を築いた立命を相手に、苦しい戦いを強いられ、「創意と工夫」「準備の徹底」に活路を見出してきたファイターズにとって、今度は「フットボールは準備のスポーツ」と腹をくくって挑んできた神戸大もまた厄介な相手になるのではないかと考えた。
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2024年09月09日
(8)圧勝支える全力プレー
7日は今季2戦目の大阪大戦。3日に桃山学院大との戦い終えたばかりというのに、中3日の試合が組まれた。8月末から迷走した台風の余波とは言うものの、過去に経験したことのない過密日程に驚き、同時に選手諸君にけががないように、と祈りながら神戸ユニバー記念競技場に向かった。
グラウンドでは、京大と神戸大がロースコアの熱戦を繰り広げている。しかし、夕方とはいえスタンドには直射日光が照りつける。それを逃れるため、トイレの入り口付近の日陰に逃げ込むが、それでも熱い。
午後5時半。阪大のキックで試合開始。まずはRB伊丹が自陣11ヤード付近から左サイドを駆け上がってダウンを更新。続くプレーはQB星野弟からWR百田へ19ヤードのパス。さらに、ともに負傷から回復したWR小段とWR川崎に立て続けにパスを通してハーフラインを超える。ランプレーを一つ挟んで再び小段への長いパス。一気にゴール前に迫り、仕上げはエースRB伊丹のランでTD。大西のキックも決まって7―0。
こうなると先発メンバーに起用された1、2年生も落ち着く。逆に今季、1部に上がったばかりの相手は、前年の優勝チーム相手に自分たちの力を存分に発揮できないようだ。時にいいプレーが出てもそれが続かない。
あっという間に攻守交代。ファイターズ2度目の攻撃は自陣32ヤード付近から。まずはQB星野がミドルパスを通して相手陣に入る。相手がパスを警戒しているのを見極めると、今度はRB伊丹と澤井を続けさまに走らせてTD。キックも決まって14―0。
たたみかけるようなファイターズの攻撃を目の当たりにしたせいか、阪大の攻撃陣がぎくしゃくしてくる。ランは進まず、パスは通らない。わずか4プレーで攻守交代。
逆に、ファイターズの1年生QB星野弟は伸び伸びと持ち味を発揮する。例えば自陣47ヤードから始まったファイターズ3度目の攻撃。まずはエースRB伊丹を立て続けに走らせて14ヤードを稼ぎ、ダウンを更新。相手の注意をランプレーに引き寄せたうえで、すかさずRB澤井にパス。ダウンを更新した次のプレーで、今度はWR五十嵐に縦パスを通してTD。「これが今春、入部したばかりの1年生の動きかよ」との声が応援席から聞こえてきたが、まったく同感だった。
ファイターズはその後、第2Qに17点、第3Qに14 点、第4Qに21点を追加して合計73点。対する阪大は、随所にいいプレーが出るのだが、ファイターズの守備陣がその都度、適切に対応し、得点は許さない。後半からは次々に交代メンバーが起用されたが、大量得点を背景に彼らも伸び伸びとプレーし、最後まで得点を許さず、試合終了。
しかしながら、ファイターズが初戦で戦った桃山学院と同様、阪大も終始、知恵を絞った攻撃をかけてきた。この姿勢が続く限り、チームは成長する。彼らはやがて、京大、神戸大とともに関西リーグに並び立つ日が来るのではないか、という予感さえするチームだった。
グラウンドでは、京大と神戸大がロースコアの熱戦を繰り広げている。しかし、夕方とはいえスタンドには直射日光が照りつける。それを逃れるため、トイレの入り口付近の日陰に逃げ込むが、それでも熱い。
午後5時半。阪大のキックで試合開始。まずはRB伊丹が自陣11ヤード付近から左サイドを駆け上がってダウンを更新。続くプレーはQB星野弟からWR百田へ19ヤードのパス。さらに、ともに負傷から回復したWR小段とWR川崎に立て続けにパスを通してハーフラインを超える。ランプレーを一つ挟んで再び小段への長いパス。一気にゴール前に迫り、仕上げはエースRB伊丹のランでTD。大西のキックも決まって7―0。
こうなると先発メンバーに起用された1、2年生も落ち着く。逆に今季、1部に上がったばかりの相手は、前年の優勝チーム相手に自分たちの力を存分に発揮できないようだ。時にいいプレーが出てもそれが続かない。
あっという間に攻守交代。ファイターズ2度目の攻撃は自陣32ヤード付近から。まずはQB星野がミドルパスを通して相手陣に入る。相手がパスを警戒しているのを見極めると、今度はRB伊丹と澤井を続けさまに走らせてTD。キックも決まって14―0。
たたみかけるようなファイターズの攻撃を目の当たりにしたせいか、阪大の攻撃陣がぎくしゃくしてくる。ランは進まず、パスは通らない。わずか4プレーで攻守交代。
逆に、ファイターズの1年生QB星野弟は伸び伸びと持ち味を発揮する。例えば自陣47ヤードから始まったファイターズ3度目の攻撃。まずはエースRB伊丹を立て続けに走らせて14ヤードを稼ぎ、ダウンを更新。相手の注意をランプレーに引き寄せたうえで、すかさずRB澤井にパス。ダウンを更新した次のプレーで、今度はWR五十嵐に縦パスを通してTD。「これが今春、入部したばかりの1年生の動きかよ」との声が応援席から聞こえてきたが、まったく同感だった。
ファイターズはその後、第2Qに17点、第3Qに14 点、第4Qに21点を追加して合計73点。対する阪大は、随所にいいプレーが出るのだが、ファイターズの守備陣がその都度、適切に対応し、得点は許さない。後半からは次々に交代メンバーが起用されたが、大量得点を背景に彼らも伸び伸びとプレーし、最後まで得点を許さず、試合終了。
しかしながら、ファイターズが初戦で戦った桃山学院と同様、阪大も終始、知恵を絞った攻撃をかけてきた。この姿勢が続く限り、チームは成長する。彼らはやがて、京大、神戸大とともに関西リーグに並び立つ日が来るのではないか、という予感さえするチームだった。
posted by コラム「スタンドから」 at 18:04| Comment(0)
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